4日の朝日新聞「分裂にっぽん-政府の役割」は、「国際競争、働き手守れ。再チャレンジ支援、自助努力任せ」でした。日本の雇用政策にかける公費が先進国で最低レベルであること、就職支援策や職業訓練が先進国に比べおろそかになっていることを指摘しています。
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行政-再チャレンジ
新しい仕事26
再チャレンジ支援策を考えていると、行政のあり方を考えることにつながります。ここでも何度か書きましたが、日本の行政は、任務と手法について、大きな曲がり角にあります。再チャレンジ支援策は、それが典型的に表れるのです。
これまで中央省庁は、いわゆる業界の振興を主な任務としてきました。産業の振興であり、公共サービスの拡大です。それらは、業界を通じて行われてきました。しかし今、再チャレンジ支援政策が対象としなければならないのは、人、国民一人一人です。ここに、行政の大きな転換の方向があります。任務=対象の転換です。金融行政や食の安全などを、このHPでは代表例として示しました。
また、従来の行政は、産業の振興や公共サービスの拡大であったので、「財政資金による整備や支援」と「法令による規制や保護」で達成することができました。今、再チャレンジ支援策が取り組まなければならないのは、従来の規制を改革することとともに、社会の仕組み、国民の意識の改革です。その際、規制の改革は、法制度の改革で達成できますが、社会の仕組みや国民の意識改革は、予算と法律では達成できないのです。この例としては、男女共同参画社会形成があります。
このように、再チャレンジ支援策は、行政の任務と手法において、これまで100年の行政と違った、新しい次元への挑戦でもあるのです。拙著「新地方自治入門-行政の現在と未来」の続編は、このようなことも、盛り込まなければなりませんね。
新しい仕事25
今日30日に経済財政諮問会議が開かれ、山本有二大臣が、取り組み状況「再チャレンジ支援策の総合的推進」を説明しました。また、参考資料として、「支援プランの主なもの・検討中」も公表しました。プランは、12月中に作ることとしてあります。すなわち、予算査定や法案の正式決定がないとつくれない=公表できないのですが、今回、概要を知ってもらうために、検討段階で公表しました。何人かの記者さんに、「11月に、こんなのが出てくるとは思わなかった」「霞ヶ関では珍しい」とお褒めをいただきました。確かに、霞ヶ関では、正式決定や、その前の根回しが済まないと、資料を公表しませんからね。もちろん、変わったことをしようとすると、いろんな抵抗もあります。この陰には、協力してくださった各省、それを催促し説得してくれた職員の努力があるのです。
プラン案では、対象別に政府が行うことを、18年度、19年度、20年度以降に分けて整理してあります。また、なるべく数値目標を書くようにしました。もっとも、まだまだですが。予算と法律は、別に特だしして整理してあります。記者さんからは、「わかりやすくて良い」とも、褒めてもらいました。これからいろんな人の意見を聞いて、完成させます。
昨日は、山本大臣とともに、総理にご説明しました。今朝の朝日新聞にも出ていましたが、総理からは、支援寄付税制の創設とパートへの社会保険拡大について、特に指示がありました。これらも汗をかかなければ、あるいは、かいてもらわなければなりません。あっという間に、11月が過ぎました。まずは、順調に進んでいると思います。職員や関係者のおかげです。もっとも、まだまだいろんな課題もあるのですがね。
新しい仕事24
28日の日経新聞経済教室「再考セーフティネット」は、八田達夫教授の「就労意欲促す生活保護に。再挑戦しやすく。国の負担率は引き上げを」でした。現行の生活保護制度の問題点を指摘し、再チャレンジ=就労意欲を促す仕組みとするべきだとの主張です。先般の知事会と市長会の提言「新たなセーフティネットの提案」を引用しておられます。
また、地方公共財は自治体が工夫すると担税力のある住民が増えるが、生活保護は自治体が優れた制度を設計すると担税力のない人口が流入する。生活保護の支出額決定が分権されると、自治体はなるべく貧弱な制度を作ることになる。生活保護は分権せず、国が定めた基準の全額を国が負担すべきだ、と主張しておられます。
新しい仕事23
日本の雇用、労働法制の問題点を勉強するべく、八代尚宏著「雇用改革の時代-働き方はどう変わるか」(中公新書、1999年)を読みました。勉強になりました。私は労働関係の専門家でないので、先生の指摘がすべて正しいかどうかは分かりません。しかし、日本が労働関係の面でも、これまで発展途上国・高度成長期に適合した仕組みが、成熟国・低成長期に足かせになっていることについて、目から鱗が落ちました。
今の労働法制が、結果として企業の正社員優遇となっていて、それ以外の働き方、特にパート・派遣・女性・中途採用・転職者に不利になっていることは、ここでも何回か指摘しました。
これまでの日本の労働法制は、過去の雇用形態・社会意識を背景にしたものでした。それは、未熟練労働者があぶれていて、その「弱者」を守ってやらなければならない社会、労働者は大企業で一生働き昇進することを望み、妻は家庭を守るのでそれを養うだけの給与をもらうことが理想とされた時代の産物でした。そして、それはうまくかみ合ったのでした。もちろん、この理想型に乗らない人も多かったのですが、みんないつかはそうなるとあこがれて努力したのです。
長期不況と言うより低成長に入って、正社員以外の働き方が増えてきたこと、すると日本の雇用は非正社員にはとても冷たいことが見えてきたのです。また、会社は永遠のものでなく倒産することもあること、すると年功序列と退職金を期待していては損をすることがあること、また中途採用者に冷たいことが見えてきたのです。
これまでの日本型社会は、「ムラ社会」と呼ばれます。それは、身内には優しく、外部の人(よそもん)には冷たいという性格を持っていました。またその構成員は、戸主であって婦女子は正メンバーではありません。大企業の終身雇用を理想とする雇用形態も、これですね。
(諸制度のビッグバン)
このように日本が成熟国・低成長期になったことに従い、これまで適合的だった諸制度が大きく改革を迫られています。経済で見ると、国内で威張っていた会社も、国際的に生き残れるか試練に立たされています。それに勝ち残った会社だけが、生き残るのでしょう(実は国際的な企業は、日本人には日本型給与制度を適用し、外国人にはそうでない給与制度を適用しているのです)。経済界に君臨していた銀行はいくつも倒産し、生き残ったものは大再編を経験し、さらに新しい金融モデルを模索しています。
公共の面でも、例えば司法制度が、大改革を進めつつあります。介護保険を導入し、年金制度も大改正を迫られています。市町村は大合併を行い、公共事業を大幅に削減し、また事務を民間へ大胆に委託を始めました。もう右肩上がりではないのです。
後世、この前後20年は、大変革の時代と評価されるでしょう。その方向は、これまで官と民が仕切られた業界ごとに拡大と保護を目指したのに対し、新しい時代は海外との競争で仕切りが低くなり、業界ではなく顧客・国民を相手にしなければなりません。また、画一大量でなく多様な要求に答えなければならず、拡大ではなく維持と質の勝負です。
国内の仕切られた競争・成長の時代から、仕切りの低い質の競争への転換です。「ビッグバンの時代」と言って良いでしょう。この変化を先取りし改革したものが、勝ち残り、あるいは国民に評価されるでしょう。過去の成功にとらわれていると、傷口を広げ、国民の負担を増やすのです。その象徴は財政で、公共事業拡大と国債増発でした。行政分野では、ここで取り上げた労働法制以外では、教育・農業などが心配です。そして、公務員制度、霞ヶ関も転換に遅れています。