7月12日に総務省が、2012年の就業構造基本調査結果を公表しました。「要約」(11ページ)が、わかりやすいです(ちなみに、昔の調査結果には付いておらず、付いていても工夫が足りないです。例えば平成4年。かなり進化しています)。
男性の場合は、年齢別有業率をグラフにすると、20歳前後で就職し、60歳以降で退職するので、台形になります。しかし女性の場合は、結婚や子育てで仕事を離れることが多く、25~39歳のところでくぼむM字カーブです。その落ち込みが減ってきて、台形に近づいてきました。日経新聞が、1997年以降の変化をわかりやすいグラフにしています。年々、へこみが小さくなっていることがわかります。
5年前に比べると、製造業、卸小売業、宿泊・飲食業が減って、医療・福祉、そのほかのサービス業が増えています。産業の構造変化が見えます。農林業が増えているのは、退職サラリーマンが農業を継いだということでしょうか。
非正規職員の割合は、女性で58%、男性で22%です。20年前(1992年)では、女性が39%、男性が10%でしたから、大きく増えています。
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行政-再チャレンジ
シングルマザーの職業紹介
2月11日の朝日新聞に、「求む有能シングルマザー、東京杉並の職業紹介会社」という記事が載っていました。社会に埋もれた有能なシングルマザーを掘り起こして、企業の正社員にする。そんな会社を、5年前に一人の女性が始めました。社員5人だそうです。
私は、この記事を読んで、「なるほど」と思いました。シングルマザーは子どもさんを抱え、収入を得るために必死です。しかし、普通の職員採用では、はねられることもあると思います。でも、腰掛けやええ加減な意欲の人より、よく働かれるでしょう。有能な人も多いです。その人たちを斡旋する。とても効果的な職業紹介です。
これまでに、100を超える会社に紹介してきたとも、書かれています。ぜひ、これからも紹介を求める人からの登録と、斡旋がうまくいくことを期待します。
新卒一括採用、年功序列、終身雇用。これが日本の「標準的雇用」でした。しかし、そのコースを外れる人も多いです。子育てのために退社した女性。就職した会社が、合わなかった若者。会社の職員整理にあった職員。体を壊した職員などなど。そのほかにも50歳代や60歳代で途中退職した人や定年退職した人など、働きたい人はたくさんいます。その人たちの意欲と技能と経験を、生かしたいです。
日本には、まだまだ潜在的労働力がたくさんいます。それを活用しない手はありません。その人たちと職場をつなぐ。そのつなぎ手が必要なのです。これら「働きたい人」の斡旋業が出てくることを期待します。
これからの行政や商売のキーワードの一つは、「つなぐ」ですね。被災地のニーズと支援したい人や支援制度をつなぐ。働きたい人と求めている企業をつなぐ。人やお金はたくさんあるのですが、それが生かされていない。それをつなぐ。これまでの制度や常識を破って、新しい仕組みを考えるのは、両方の知識を持った人しかできません。
ソーシャルワーカーという仕事
宮本節子著『ソーシャルワーカーという仕事』(2013年、ちくまプリマー新書)を紹介します。「ソーシャルワーカー」という言葉は、皆さん聞かれたことがあると思います。でも、その仕事の内容を知っている人は、多くはないでしょう。私も、そうです。
カタカナであることが、まだ身近でないことを表しています。例えば「介護保険」という言葉の方が、後からできたと思いますが、こちらはほとんどの人が知っているでしょう。「ケア・マネージャー」となると、どうでしょうか。
宮本さんは、次のように書き出しておられます。
・・・私たちは、生まれてから死ぬまでの人生を歩む時、さまざまな幸せな出来事や不幸な出来事に遭遇します・・不幸せな時にはさまざまな手助けを得ながら持ち直して暮らしを立て直していきます。ソーシャルワーカーの仕事は、この”手助け”をすることです。つまり、この社会で生きていく中でのある種の生きづらさに遭遇してそれを緩和したい、よりよく生きていきたいと人が願う時、ソーシャルワーカーの出番がきます・・・
そして、次のような場合を挙げておられます。
・失業、疾病、老齢、障害等で、経済的に生活が立ちゆかなくなった時
・経済的には何とかなるが、疾病、老齢、障害等で、日常生活を過ごすことができなくなった時
・高齢となり身体やメンタルな介護が必要になった時
・離婚等で家族関係を再構築しなければならなくなった時
・保護者がいなくなったり、虐待をする不適切な保護者であったりする時
・学校に居づらくなったり、学校に行けなくなってしまった時
・配偶者から深刻な暴力を受けて生活を維持できなくなった時
・地域社会から孤立している時
・刑務所から出所したが生活の再建がうまくいかない時
「ひとの生活に介入し、個人と社会をつなぎ直す」とも、書いてあります。私のこのHPで書いている「社会関係リスク」の、「お医者さん」と言ってもよいでしょう。
この本では、著者の経験した実際のケースを元に、一人で暮らしていけない人を救うとはどういう仕事か、そして知識と技術と心が必要だということが、述べられています。かなり「厳しい」ケースが載っています。この職業が大変なものだとうことが、わかります。
プリマー新書は、中高生を対象とした新書のようですが、この人たちにわかるように書くのは、難しいです。だから、大人が読むと、わかりやすいです。
赴任地の困難さ、孤立感
1月23日の日経新聞「アジア跳ぶ、現地ルポ」に、ミャンマーの首都ネピドーの丸紅出張所長の話が紹介されていました。ネピドーは旧の首都ヤンゴンから300キロメートル離れ、密林を切り開いてできた町です。住んでいる日本人は、もう一人の職員と合わせ2人だそうです。
安全な町なのですが、居住困難度は最も高いと判定されました。理由は、孤立感と医療水準の低さだそうです。周りに、日本人どころか外国人がいない。ミャンマーの政府高官も、週末はヤンゴンに戻ります。空港はあるのですが、国際線が就航していません。万が一、重病になっても医療設備の整った近隣国に駆け込むことも難しいのです。気候の他、風土病や食糧事情が悪い国での生活は大変だと知っていましたが、「孤立感と医療水準」の2つは、なるほどと思います。
新しい社会のリスク、セルフネグレクト
1月22日の日経新聞夕刊に、セルフネグレクトの記事が載っていました。アメリカで生まれた概念で、「高齢者が通常1人の人として、生活において当然行うべき行為を行わない、あるいは能力がないことから、自己の心身の安全や健康が脅かされる状態に陥ること」だそうです。
内閣府の経済社会総合研究所の調査では、自治体の地域包括支援センターや民生委員が把握している件数は、7,394件です。これをもとに推計すると、全国では約1万人のセルフネグレクト状態の高齢者がいることになります。
高齢者が一人住まいになると、自分の生活に関して意欲や能力が低下して、無頓着になります。家の中が散らかり、ゴミ屋敷にもなります。各自治体が、ゴミ屋敷対策に乗り出していますが、このような高齢者を支えないと、ゴミ問題は繰り返されるだけです。
一方、「監視社会になってはいけない」という指摘もあります。自己決定権を、他人が邪魔をしてはいけないのです。しかし、健康や判断能力が低下している場合は、後見人制度など、支えが必要でしょう。意識がしっかりしていて、「放っておいてくれ」という人をどうするか。これは難題です。
孤独な社会での、新しいリスクです。この調査は、昨年1月に公表されているようです。よい調査をしてくださっていたのですね。かつて経済企画庁に「国民生活局」があったのですが、なくなってしましました。私がこのホームページで取り上げているように、「生活の安心」を所管する部局が、国にも自治体にも必要です。