「再チャレンジ」カテゴリーアーカイブ

行政-再チャレンジ

ワーク・ライフ・バランスの実践

大学時代からの友人である、村上文・帝京大学教授が、『ワーク・ライフ・バランスのすすめ』(2014年、法律文化社)を出版されました。月刊誌に連載したものを基にしているので、各回ごとが読みやすく、また現場での実例がたくさん出ていて、わかりやすいです。どうしたら、残業を減らすことができるか、子育てママが働くことができるか。そして、仕事の業績を上げることができるか。
かつては、「夫は仕事、妻は家庭」が世間常識でした。しかし、これはある時代の、また夫が勤め人である場合の「典型例」でしかなかったのです。農家や自営業の家では、そんなことはありませんでした。我が身を振り返って、これを極端に実行してきたことを反省しています。それを疑うことなく、「企業戦士」を善と思っていました。娘が働き、結婚し、そして子供を育てているのを見ると、子育て、働く妻、働くママは、いかに大変かがわかります。
ただし、私も職場では、ある時期に考え方を変え、職員になるべく楽をさせること、残業をさせないことを、心がけてきました。部下の長時間労働は上司の責任だと、私は考えています。もちろん、突発事案などで、残業をお願いすることもあります。しかし、平時に残業が通例になっているのは、何かがおかしいのです。
ところで、「ワーク・ライフ・バランス」って、よい日本語はありませんかね。明治時代の人なら、何かよい訳語を考えたと思うのですが。
これに関連して。1月5日の日経新聞が「働きかたNext」という特集を組んでいました。アンケートによると、経営者が考えている働き方改革の重要テーマは、「長時間労働の削減」、「女性社員の採用・管理職への登用」、「休暇の取りやすい仕組み・環境作り」です。従業員の方は、「時短勤務や休暇を取得しやすいこと」が一番です。
デュアル日経」の記事によると、「日本の長時間労働の最も大きな原因はなんだと思いますか?」という問への答えは、次の通りです。1位、時間当たりの生産性を意識しない人事・評価制度 47%。2位、残業しなければ片付かないほどの限界を超えた仕事量 19%。3位、早く帰りにくい職場の雰囲気 17%。ちなみに「デュアル日経」は、働くママ&パパに役立つノウハウ情報サイトだそうです。

豊かな社会が生むリスク

11月20日の朝日新聞、神里達博さんの「月刊安心新聞。不安の源、豊かさを求めた末のリスク」から
・・いつの頃からか私たちは、新聞を開くと不安になるようになった。この夏以降だけでも、目を疑うような記事がいくつも思い出される。
住宅街が土石流にのみ込まれ、行楽客でにぎわう火山も噴火した。動機不明の犯罪が多発し、近隣諸国との不協和音も収まる気配がない。景気回復の実感は庶民に届かぬまま、国の借金だけは増え続ける。夏にはデングがやってきて、さらには、ずっと凶悪なエボラが越境の機会をうかがっている。
これらは、ジャンルも異なるし、深刻さもまちまちだが、いずれも私たちに不安を引き起こすことだけは間違いない。そんな気がかりなニュースが絶え間なく届けられる毎日。いやもちろん、それは新聞に限らない。およそ現代のメディアは、「安心」とは縁遠い存在なのだ・・
・・社会が変化していく理由は、単純ではない。だからどんな説明をしてみても、言葉はどこかしっくりこない。それでもあえて文字にしてみるならば、不安の大本の原因は、私たちの生きる世界が、複雑に絡み合い過ぎたこと、といえまいか・・
・・しかし、物質的に豊かになってくると、人は徐々に新しいモノを望まなくなる。それよりも、獲得した幸せが失われることを、恐れるようになる。築いた富が奪われる可能性、キャリアや名誉を失う可能性、自分や子孫の健康が損なわれる可能性、そういう「リスク」に注目が集まるようになってくる。そうやって不安なニュースも増えていくのだ。
このように、豊かさを求めた結果新たなリスクが生じ、また豊かであるがゆえにリスクが気になる、そういう現代社会のありようを、ドイツの社会学者ベックは「リスク社会」と名付けた・・

私は、拙稿連載「社会のリスクの変化と行政の役割」月刊『地方財務』(ぎょうせい)で、現代社会のリスクを論じました。特に、第3章(2011年1月号)で、「新しいリスクはなぜ生まれるのか-豊かさの影」では、次のような項目を立てました。そして、科学技術の発達が新しいリスクを生むだけでなく、豊かな社会が新しいリスクを生むことを指摘しました。
1 新しいリスクとは何か
2 科学技術が生む新しいリスク
3 豊かな社会の新しいリスク
なお、この連載は、2011年4月号で中断しています。リスクを論じる立場から、その対応と復興に従事する立場になって、時間がとれなくなったのです。

減りつつあるホームレス

東京都の調査によると、23区内の路上生活者数は914人で、調査を開始した1999年以来最小になりました。ちなみに、1999年には5,798人でしたから8割減です(概要)。都と区による取り組みが効果を上げているということです。一時宿泊所を用意し、自立支援を行っています。取り締まるだけでは、減らないのです。
市町村部や国管理の河川での人数を加えると、東京都全体では1,697人です。都の資料によると、全国でも最多時では2万5千人いたホームレスが最近では7,500人程度に減っています。

高齢単身女性の貧困

10月14日の読売新聞夕刊が、女性の貧困を解説していました。内閣府の「男女共同参画白書」2012年版に、男女別年齢別などの分析が載っています。貧困状態にある人の割合は、高齢期に上昇します。その中でも、単身女性は約半数が、貧困状態(可処分所得が中央値の半分以下)にあります。
そのなかでも、55歳から74歳の単身女性で年収120万円未満の割合は、離婚経験者が33%と高く、未婚19%、死別21%をはるかに上回っています。その理由として、専業主婦が離婚後に正職員の職を見つけるのは難しく、非正規雇用では年金額も低くなりがちと、指摘しています。
ただし、全年齢を通じて、母子家庭の貧困割合が飛び抜けて高く、単身女性、単身男性が次に高くなっています。

事件を起こす少年は加害者か被害者か、捨てられたという意識

朝日新聞オピニオン欄10月3日「少年事件を考える」、井垣康弘さん(元裁判官・弁護士)の発言から。
・・社会は重大事件を起こす子どもを「モンスター」「野獣」とみます。実際は、母親から「あんたみたいな子、産まなかったら良かった」などと嘆かれ、教師からは「お前は学校に来るな」とののしられ、だれからも認めてもらえないために生きる意欲を失った子どもです。自殺する子も多いのですが、親や教師を含む社会に「恨みの一撃を与えてから死にたい」と思ったごく少数の子どもが無差別の殺人事件を起こすのです・・
・・彼らがなぜこういうことをしたのか社会は克明に知るべきです。生きる意欲を失った経過、社会に対する恨みの内容、一撃を加えたいと思った理由などは家裁の調査で判明します。詳しくわかれば、事件を防ぐ方法も見つかる。そのために家裁は克明な決定書を公表すべきで、メディアも審判の代表取材を求めるべきです。社会が何を教訓としたらいいのかを知らせなくてはいけないと思います。
私は家裁で約6千件の少年審判を担当しましたが、鑑別所に入る中学生はほとんどが離婚家庭の子ども。養育費の支払いもなく父親から完全に捨てられた形になっている子は、月に5千円でも送金されている子よりはるかに自己肯定感が低い。そのうえ彼らは学校でも落ちこぼれ、分数はできず、漢字もほとんど書けません。親の離婚、再婚に関連して子どもを放任するのは、「社会的虐待」です。
親の離婚そのものは仕方なくても、子どもが「捨てられていない」と感じられることが非常に重要です。一刻も早く別れたいという思いで養育費はいらないという母親が多いですが、それは危険な行為です。日本では離婚や再婚に伴う「虐待」が平然と多量に行われていることをまず自覚しなくてはいけないと思います・・
簡単には紹介できません。原文をお読みください。