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行政-再チャレンジ

犯罪被害者基本法15年

12月1日の読売新聞が、犯罪被害者基本法15年として「事件の傷ケア 早く長く」を大きく取り上げていました。。犯罪被害者給付金支給法ができたのは、その前の1980年でした。
・・・犯罪に巻き込まれた人や遺族ら犯罪被害者の「権利」を明記した犯罪被害者基本法は1日、成立から15年を迎えた。深く傷ついた心身のケアに、加害者側に賠償を請求するための方策……。被害者を取り巻く環境は改善されてきたが、いまだ十分といえない。被害者の現状と課題を考える。
死傷者が年間2万5000人を超える犯罪被害者への支援は、事件直後に始まり、裁判後も続く。その流れと実態とは・・・

まだ、できて15年です。多くの方は、詳しくは知らないと思います。また、この法律の適用がない方がよいのですが。記事と共に図で、支援制度が解説されています。
・まず必要になるのが、心身の傷の治療です。
・事件現場が自宅だと、ホテルなどに一時避難したり、転居する必要があります。
・家事や育児ができなくなることもあり、その際は生活支援が必要です。
・裁判になると、弁護士の支援が必要です。

かつての刑事事件は、加害者を罰することで終わりました。しかし、加害者の社会復帰を支援し、再犯防止をすることが必要です(刑期を終えても、また起こす人がいます。自立できない人も多いのです)。
そして、被害者は、加害者からの賠償以外は、何の手当もありませんでした。
いまから考えると、冷たい社会でした。たぶん、以前は、親族や地域社会で助けることと理解されていたのでしょう。
これらの制度は、前進です。もちろん、このような支援を受けても傷は治りませんが。

ネット・ゲーム依存症調査結果

11月28日の各紙が、厚生労働省が、生活に支障が出るほどオンラインゲームなどに没頭する「ゲーム障害」に関する初の実態調査の結果を発表したことを伝えていました。
「10~20代のゲーム利用者のうち、7%が授業中や仕事中にもゲームを続けているなど、一部に依存症状が見られた。休日には12%がゲームを6時間以上していた」日経新聞

ネット・ゲーム使用と生活習慣に関するアンケート調査」です。
今年1~3月に、無作為に抽出した全国の10~29歳の男女9千人を対象として、5096人が回答しました。
それによると、過去1年間にゲームをしたことがあるのは、85%。機械は、スマホが81%、据え置き型ゲームが48%です。オンラインでゲームをする人は48%。
平日のゲーム時間は、男性では3時間以上が25%、うち4%は6時間以上。女性では3時間以上が10%、うち2%は6時間以上もやっています。

ゲームを止めなければいけないときに、ゲームが止められなかったか。ゲームのために、スポーツ、趣味、友達などと会うといった大切な活動に対する興味が著しく下がりましたか。ゲームのために学業に悪影響が出たり、仕事を危うくしたりしても、ゲームを続けましたか。ゲームのために睡眠障害や憂鬱になっても、ゲームを続けましたか。といった質問が並んでいます。
多くの人が「はい」と答え、プレイ時間が長い人ほど学業・仕事への悪影響だけでなく心身の問題も起きています。
大きな社会問題です。
依存症対策全国センター(国立病院機構久里浜医療センター)

松元崇さん、若者の働き方支える視点を

11月1日の日経新聞経済教室は、松元崇・元内閣府事務次官の「全世代型社会保障改革に向けて 若者の働き方支える視点を」でした。
ポイントは、次のようです。
・スウェーデンは高成長で政府規模を縮小
・有意な転職支える流動的な労働市場カギ
・国が成長しなければ国民の所得増えない

・・・スウェーデンについては1995年から2015年にかけての20年間の動きが矢印で示されており、この間に政府規模が英国やドイツよりも小さくなったことが分かる。スウェーデンはかつて大きな政府で有名だったが、高い経済成長率により状況が変化したのだ。
ビル・エモット氏の著書「『西洋』の終わり」によると、スウェーデンは高い経済成長率を持続することで、93年に国内総生産(GDP)比で72%もあった政府規模を07年には49.7%に引き下げた。GDP比で約22ポイントの引き下げは、GDPが550兆円の日本の感覚に当てはめれば、約120兆円にも相当する。

スウェーデンの高成長の背景にあるのが選択と集中だ。選択と集中の時代には、企業の栄枯盛衰や個人の転職が当たり前になった。そこでは転職に際して、学校などで新たな技術を学び直す、そうした個人をしっかりと支える仕組みを持つ国の経済が成長するようになった。個人のキャリアアップを支える流動的な労働市場を持つ国の成長率が高まるようになったわけだ。
かつて転職が珍しかった時代には、そうした仕組みは経済成長にほとんど役に立たなかったが、それが様変わりしているのだ。
図でスウェーデンと正反対の動きを示しているのが日本だ。その大きな要因は、個人のキャリアアップを支える労働市場がほとんどないことによる低成長だ。日本の経済成長率は先進国の平均を1%ほども下回っている。その分だけ図の潜在的国民負担率の分母が大きくならず、負担率が上がっていくことになる・・・

・・・日本でも個人のキャリアアップを支援する取り組みは始まっている。19年6月の「骨太の方針」では、就職氷河期に正規社員になれなかった人々の再チャレンジを支援する方針が打ち出され、7月には内閣官房に就職氷河期世代支援推進室が設置された。就職氷河期世代の正社員を30万人増やす目標が掲げられている。
18年4月の週刊ダイヤモンドによれば、就職氷河期に就職できなかった人々がそのまま老後を迎えると、生活保護に依存せざるを得なくなる。「生活保護予備軍」は約147万人にのぼり、生活保護費は約30兆円にも達すると試算されている。そうした人々が再チャレンジして就職し、生活保護予備軍から脱却すれば、当人も幸せだし、日本のGDPも相当押し上げられるはずだ。ちなみに再チャレンジは、第1次安倍内閣が06年に掲げた政策目標だ・・・

原文をお読みください。
松元さんの主張については、著書『日本経済 低成長からの脱却』をこのホームページで紹介しました。

貧困専業主婦

10月10日の朝日新聞オピニオン欄、周燕飛・労働政策研究・研修機構主任研究員へのインタビュー、「貧困専業主婦のワナ」から。
・・・かつては中流家庭の象徴だった専業主婦。経済の低迷により給料が下がるなどして共働きが増えると、「勝ち組」などと称されるようになった。だが一方で、「貧困専業主婦」と呼ばれる人たちもいるという。新たな格差問題につながると指摘する周燕飛さんに聞いてみた。「貧しくても専業主婦」の何が問題なのですか?・・・

問 その存在に目が向けられてこなかった理由は何でしょう。
答 本人が自ら進んで専業主婦を選び、大きな不満を持っていないため、当事者からの訴えが少ないからでしょう・・・調査では、貧困専業主婦の3人に1人が、とても「幸せ」と感じています。

問 この問題が注目されるようになったのはなぜですか。
答 日本の人口と経済構造が変わり、「夫は外で働き、妻が家庭を守る」という専業主婦モデルが崩れつつあるからです。大卒男性の生涯賃金は、1996~97年のピーク時の8割程度に減っています。世帯の消費額から算出すると、片働きでやりくりするには、およそ年収480万円以上が必要です。しかしこの基準を満たす男性世帯主は約4割しかいません。
同じ学歴の男女が結婚する「同類婚」が増えていることもあります・・・今は晩婚化で、高学歴・高所得者同士の「パワーカップル」が増えています。低学歴同士の結婚で、専業主婦を選ぶと、貧困世帯に陥りやすくなります。

問 国が、個人の生き方に介入してもいいのでしょうか。
答 問題は、本人だけでは気づきにくい「欠乏のわな」があることです。100グラム58円の豚肉をまとめ買いするために、自転車で30分かけてスーパーに行くという女性がいました。こうした生活を繰り返していると、金銭的な欠乏のほかに、時間の欠乏が起こり、余裕がなくなり思考も欠乏します。目先のやりくりで精一杯になると、長期的なことが考えられなくなってしまいます。このような貧困専業主婦には、意識と現実のズレをなくすために、軽い政策誘導が必要だと思います。

原文をお読みください。
最後の「国が、個人の生き方に介入してもいいのでしょうか」は、重い問いです。引きこもりの人などへの支援の場合も、議論になります。

外国人の子供、2万人が不就学

日本に住む外国人の子ども、約2万人が就学していない可能性があること、各紙が報道していました。9月28日付け朝日新聞

・・・ 調査は、今年4月に外国人労働者の受け入れを増やす改正出入国管理法が施行されたことなどを受けて実施。全国の教委を通じて、今年5月時点で住民基本台帳に記載がある外国人の子らを対象に調べた。
その結果、保護者に面会するなどして不就学と確認された子は1千人、戸別訪問時に親が不在などで就学状況を確認できなかった子は8768人、台帳に記載はあるが教委が状況を確認していない子が9886人に上った。不就学の可能性がある子は、東京や神奈川、千葉、愛知、大阪など都市部に多かった。
外国人の子がいる家庭に就学案内を送っていない自治体も4割近くあった・・・

・・・一方、文科省の別の調査では、日本語指導が必要な小中高校の児童生徒らが昨年度、2年前から6812人増えて過去最高の5万759人(外国籍4万485人、日本国籍1万274人)に上った。このうち2割以上が補習など特別な指導を受けていなかった。一般の高校生と比べて中途退学率が7・4倍と高く、非正規就職率も9・3倍、進学や就職していない人の割合は2・7倍だった・・・

この問題は、かなり前から指摘されていたことです。教育委員会は、学校に来る児童生徒を相手にすることが、主たる任務でしょう。すると、この子供たちは、取り残されてしまいます。
かつては、「学校に行きたいのに、貧しいなど家庭の事情で行けない」ということが、問題でした。しかし今は、登校恐怖症やこのような日本社会から取り残された子供たちが、重要な課題になってきました。