カテゴリー別アーカイブ: 再チャレンジ

行政-再チャレンジ

社会の安心、つながり

読売新聞連載「安心の設計 支え合い あしたへ」1月4日は「住民つなぐ みんなの居場所」でした。

・・・新型コロナウイルスの感染拡大で、人と人の距離をあけることが強く意識されている。しかし、私たちの暮らす社会は、支え、支えられという関係なしには成り立たない。急激な高齢化や単身化でそうした結びつきが弱まっているとされるなか、いかに支え合いを再構築できるかが地域の未来のカギを握っている・・・

団地にできた集会所で、高齢者と子どもが一緒に時間を過ごす様子が紹介されています。
・・・建設から約半世紀が過ぎた茶山台団地(928戸)では、契約者の半数超が現在60歳以上で、独居も多い。急激に高齢化が進み、地域の支え合いの維持が課題となっている。「としょかん」は、団地再生に向け、大阪府住宅供給公社が開設。子育て中の住民らを中心に絵本の読み聞かせ会や健康講座などのイベントを開催し、そこに集う住民同士の「つながり」を増やしてきた。
「としょかん」が住民の新しい居場所として機能するようになると、「一人で夕食を食べるのは寂しい」「買い物に行くのが大変」といったお年寄りの声が聞こえてきた。
そこで約2年前、今度は、団地1階の空き室を「やまわけキッチン」という名の食堂に改装。週4日、小分けにした総菜などを販売し、その場で食事もできるようにした。
「足が弱く、タクシーで駅まで買い物に行かなければならなかった。ここができて本当に助かる」。「キッチン」が入る棟の向かいの棟で一人暮らしをしている女性(85)は笑顔を見せる。昼食と夕食の分の総菜を買いに来て、この食堂を切り盛りしている湯川まゆみさん(41)らとおしゃべりするのが楽しみという。
コロナ下で、住民の居室に弁当を配達するサービスも始めた。常連客が顔を見せなければ様子を見に行ったり、高齢で日常生活に支障が出始めた住民を心配する声が寄せられたりと、「よろず相談所」としても機能しつつある。
湯川さんは「遠くの親戚より近くの他人。きっかけさえあれば困っている人を助けたい、と思っている住民はたくさんいる。住民同士のつなぎ目になり、支え合いの輪を広げていきたい」と話している・・・

詳しくは記事を読んでいただくとして。安心には、人とのつながりが必要であること。つながりが、支え合いと居場所をつくります。
年金や介護保険制度をつくって、高齢者を支えてきました。しかし、それだけでは、安心は提供できません。そして、このようなつながりは、お金と施設だけではできません。
それを、これからの日本は、どうつくっていくのか。連載「公共を創る」での、私の主張です。

居場所のない若者、SNSが避難先

12月19日の日経新聞夕刊に「居場所なき若者 SNS「避難先」」という記事が載っていました。
・・・神奈川県座間市で9人を殺害した罪に問われた白石隆浩被告(30)は、東京地裁立川支部の裁判員裁判で死刑判決を受けた。公判では、悩みを抱える被害者がツイッターで弱音を吐いたところに被告がつけ込んでいた経緯が明らかになった。幼少期からインターネットが身近な若者にとってSNS(交流サイト)は日常から逃れられる「避難先」になり、トラブルに巻き込まれやすい実態も浮き彫りになった・・・

詳しくは記事を読んでいただくとして。
家庭でも学校でも落ち着けない、居場所のない若者が、交流サイトに避難先や居場所を求めるのだそうです。交流サイトの多くは匿名なので、弱音や本音を言いやすいのでしょう。しかし、それが犯罪の温床になるのです。

拙稿「公共を創る」第64回では、職場以外に居場所のない中高年男性社員を取り上げましたが、若者もまた居場所を探しているのですね。孤立、孤独の問題です。
本屋で、浅見直輝著『居場所がほしい――不登校生だったボクの今』 (2018年、岩波ジュニア新書)を見つけました。ここにも、居場所の問題があります。

若者の家族介護

12月10日の読売新聞社会面に「高2の25人に1人 介護 ヤングケアラー 埼玉県県調査」が載っていました。
・・・埼玉県内の高校2年生の25人に1人が家族の介護や世話に追われる「ヤングケアラー」を経験しているとの調査結果を同県がまとめた。ヤングケアラーに関する全県的な調査は全国で初めて。悩みを相談できる人がいないとの回答も多く、苦悩している姿が浮き彫りになった。厚生労働省は今月、中高生対象の全国調査に乗り出す・・・

・・・家族の介護や世話を担った経験があるのは4・1%の1969人。このうち、「毎日」が35・3%と最多で、「週4、5日」も15・8%に上った。
複数回答が可能な設問では、理由について「親が仕事で忙しい」(585人)が最も多く、「親の病気や障害などのため」(407人)、「ケアをしたいと自分で思った」(377人)と続いた。学校生活への影響は「孤独を感じる」(376人)、「勉強時間が十分にとれない」(200人)が目立った。
一方で501人が「ケアに関する悩みや不満を話せる人がいない」と回答。必要な支援では「困った時に相談できるスタッフや場所」(316人)、「信頼して見守ってくれる大人」(286人)などが挙がった・・・

「ヤングケアラー」とは、次のように説明されています。
埼玉県が3月、全国で初めて制定した県ケアラー支援条例では「親族や身近な人に対して無償で介護や世話などを提供する18歳未満の者」と定義。日本ケアラー連盟は18歳未満を「ヤングケアラー」、18~30歳代を「若者ケアラー」としている。

家庭の収入による子の体力格差

11月18日の朝日新聞スポーツ欄「子の体力格差、家庭の収入が一因に」から。
・・・収入が少ない家庭の子どもほど体力がない――。そんな「スポーツ格差」があることが、筑波大の清水紀宏教授(スポーツ科学)の研究チームによる実証研究でわかった・・・

清水教授の発言
「収入が高い家庭の子の方が、低収入家庭より、体力テストの総合点が高い。地域クラブや民間のスクールといった学校外スポーツプログラムへの加入率も同傾向でした。特にシャトルランと50メートル走で差が顕著です。運動習慣や頑張ったら褒められる環境で育っているか、が関係するのかもしれません」
「スポーツの習い事化が進む中、家庭の経済的な条件による格差が確認されたことで政策的な提言もできると思います。特に、格差が幼児段階から現れていることに注目すべきです。親頼みになる就学前のスポーツ習慣にも焦点を当てる必要性がわかったからです。格差は学年の進行とともに広がっており、幼少期のスポーツ投資の成果が蓄積されると推察されます」
「体力が高い子は、『何でも話せる友だちや仲のよい友だちがいる』と回答する率が高いのに対し、体力が低い子は孤独を感じている傾向がみられます。休み時間を、体力が低い子は、教室で一人で過ごす傾向がある。学校生活が心身発達のベースになることを考えると深刻です」

コロナ禍による生活危機の安全網

11月16日の朝日新聞オピニオン欄、清川卓史・編集委員の「コロナ、広がる生活危機 期限切れ迫る支援策、次の一手を」から。

・・・新型コロナウイルスで緊急事態宣言が出た4月から、雇用・生活相談や炊き出しの現場に足を運び、取材を続けてきた。感じるのは、想像以上に広範な層が生活危機に直面しているということだ。
リーマン危機(2008年~)による貧困拡大局面では、工場で働く派遣社員など非正規雇用の男性(現役世代)を中心に、まず問題が顕在化した。「派遣切り」で職と住まいを失った人を支える「年越し派遣村」の取り組みは、広がる貧困を可視化して強い印象を残した。
今回のコロナ禍では、飲食業などの自営業者や正社員、フリーランスの芸術家やインストラクターなど、多様な職種の人々が生活の困窮状態に陥った。女性の雇用が大きなダメージを受けていることも特徴として指摘される。奨学金とアルバイトで生計を立てる大学生から、年金不足で仕事を続ける高齢者まで、年齢層も幅広い。日本で暮らす外国人の深刻な危機も表面化している・・・

・・・ 貧困危機への公的支援をみると、リーマン危機後の数年間は生活保護の利用者が急増した。11年度には、現行制度下で最多だった1951年度を上回る約207万人に。2015年3月(約217万人)にピークに達し、その後は減少傾向が続いていた。
今年4月の生活保護申請は前年同月比24・8%増とはね上がったが、5~8月の申請は前年水準を下回っている。要因として指摘されるのは、生活保護の手前の安全網を国が大幅に拡充し、それを多くの人々が利用していることだ。
柱は、家賃補助にあたる「住居確保給付金」(原則3カ月、最長9カ月)と、社会福祉協議会が窓口になる無利子・保証人不要の特例貸し付けだ・・・
・・・こうした安全網の大胆な拡充が今まで一定の歯止めになってきたことは間違いない。だがコロナ禍の影響で解雇や雇い止め(見込みを含む)にあった人は厚生労働省の集計で7万人を超え、厳しい雇用情勢は続いている・・・一時的な給付金や貸し付けの延長に加えて、追い詰められた人を生活保護につなぐ態勢づくりが求められる・・・

記事についている図「コロナ禍による生活危機の安全網」が、わかりやすいです。