「再チャレンジ」カテゴリーアーカイブ

行政-再チャレンジ

一人親の技能習得支援

ひとり親(シングルマザー)の技能習得支援を紹介します。機会があれば応援してください。
一般社団法人日本シングルマザー支援協会が「ICT支援員養成講座」を行っています。シングルマザーにICTの技能を身につけてもらって、就職につなげようとするものです。既に認定試験に合格した人も出ています。課題は、この人たちを雇ってもらうことです。想定されているのは学校現場ですが、シングルマザー支援は、多くの自治体では福祉部門が所管していて、教育部門とはあまり連携が取れていないのです。

取り組みの概要は、次の通りです。「報道資料
ひとりで子育てと仕事の両立をするシングルマザーの困窮は、近年の社会課題の一つです。調査によると、シングルマザーの平均年収は243万円で、就業している約169万人の47%がパートや派遣社員などの非正規雇用で不安定な生活を送っています。
こうした問題を解決するため、需要が高まるデジタル人材としてのスキル・知識をシングルマザーに習得してもらい、ICT支援員に採用されることを目指しています。この職は、小中学校でのICT教育の実務的な支援をする専門スタッフのことで、授業で使うICT機器の準備、先生や児童・生徒のICT機器の操作のサポート、授業で使うソフトやアプリの操作指導などを担います。文部科学省は2018~2022年度の「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」で、4校に1校のICT支援員の配置目標水準を設けています。

ICT支援員の勤務時間は小中学校に通う子ども授業の時間と重なるため、仕事と子育ての両立に適しているとされています。何よりシングルマザーが、需要が高まるIT・デジタルの知識・スキルを身につけることで、将来に子育てを終えた後などに、小中学校以外にも様々な企業で求められる人材になれると考えました。
シングルマザーがICT支援員として自治体や学校などに採用されやすくなるよう、「ICT支援員認定試験」(特定非営利活動法人情報ネットワーク教育活用研究協議会が実施)の合格を目標に、受験対策講座を始めました。
技能研修は進んでいるのですが、課題は、彼女たちを市町村教育委員会や学校に受け入れてもらうことです。そのような機会があれば、ぜひ彼女たちに挑戦の機会を与えてください。

行き場のない少女、ホームレスへのワクチン接種

11月9日の朝日新聞夕刊1面に「家庭内暴力や虐待、行き場失った少女たち」が載っていました。
・・・ 新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が解除されても、家庭内での暴力や虐待を受ける児童の相談は後を絶たない。10代少女らの支援のため一般社団法人「Colabo」が東京・歌舞伎町で開催するカフェには、行き場を失った少女らが身を寄せる。深夜の活動に同行した・・・
・・・家族の暴力から逃げてきたり、家出したものの生活費がなくなったり、集まる子の理由は様々だ。15歳の少女は児童相談所に家庭内の虐待を相談したが、対応してもらえず、家出した。知り合った男性宅やホテルを転々とし、生活費のために年齢を偽りバイトしているという。17歳の少女は生活費に困り、駆けつけた。「学費のための奨学金を親が彼氏に使い込んでいる」という。生活費を抑えるため、十数人でビジネスホテルの一室を借り宿泊している少女たちもいた。
「親のテレワーク」と「子どもの休校措置や短縮授業」が重なり、家庭内でのトラブルや暴力が増え、虐待につながっているという。「Colabo」代表の仁藤夢乃さん(31)は「親の経済状況が悪化し、しわ寄せは子どもたちに来ている」・・・
・・・高校を中退し、親からの虐待の影響で自殺未遂経験がある18歳少女のSNSには「コロナに感染できたので、ホテル療養になれて、家から離れられた」とあった・・・
・・・「既存の支援から、こぼれ落ちている子どもたちが増えている」と仁藤さんは懸念。「24時間対応する窓口を設けるなど、若年女性への公的支援の拡充が急務」と指摘する・・・

このような人たちをどのように見つけ、支援するのか。重要で難しい課題です。
他方で、次のような記事もありました。11月12日の朝日新聞「家がなくてもワクチン打てます ホームレス状態の人へ接種、自治体対応
・・・路上やネットカフェなどで暮らすホームレス状態の人たちへの新型コロナウイルスのワクチン接種が東京都内の自治体で進んでいる。定まった住所がないため、住民票に基づいて発送されるワクチン接種券を受け取れないことなどが壁となり、接種が進んでおらず、厚生労働省が自治体に対応を求めていた・・・豊島区では6月から住民票や身分証のない人への接種券の発行を開始した。これまでも約100人に対して接種券を発行してきたが、接種についてはいずれも住民向けの会場を案内しており、今回のような集団接種は初めてだった。集団接種の日時や会場は、支援団体が炊き出しの際などにチラシを配布して周知した。
豊島区の場合、住民票や身分証がない人は、本人の申し出による名前と生年月日をもとに、接種券を発行する方式をとった。担当者は「希望しても接種にたどり着けていない人が多くいることが分かった」と言い、今後も接種券の発行を受け付ける。
東京都内には約860人(今年1月現在)の路上生活者がいるとされる。
台東区では、身分証がない場合の本人確認に一手間加えた。接種券の発行の際、名前と生年月日のほか、本籍地や両親の名前など本人しか知り得ない情報も聞き取った。接種当日にも同じ質問をすることで、その回答と照らし合わせて本人確認をしたという。こうした手法で接種券を発行し、10月上旬には接種を希望するホームレス状態の人ら85人に対して2回目の集団接種を終えた・・・

小中学生、誰にも相談せず不登校に

11月1日の朝日新聞に、「誰にも相談せず不登校に4割 小6中2、文科省が初調査」が載っていました。

・・・不登校の小中学生が増えるなか、不登校になるまでに誰にも相談しなかった小中学生が約4割に上ることが、文部科学省が不登校生を対象に行った初めての調査でわかった。どんなことがあれば休まなかったと思うかについては「特になし」が6割近くを占めた。

調査は昨年12月、協力してくれる学校から、2019年度に不登校だったことのある子に調査票を渡してもらい実施した。小学6年生713人、中学2年生1303人が回答した。
最初に学校に行きづらいと感じ始めたきっかけ(複数回答)は多岐にわたる。中2は「身体の不調」「勉強が分からない」「先生のこと」がそれぞれ約3割で、小6は「先生のこと」「身体の不調」「生活リズムの乱れ」がいずれも3割近かった。きっかけを大きく分類すると、小6、中2ともに8割近くが「学校生活」の関連を挙げていた。
学校に行きづらいと感じ始めてから休み始めるまでの間に相談した相手(複数回答)で最も多かったのは「家族」で、小6、中2とも約5割を占めた。次は「誰にも相談しなかった」で小6が36%、中2が42%。「学校の先生」は1割台で、「学校のカウンセラー」は1割に満たなかった・・・

支える側と支えられる側の二分法の終わり

10月25日の読売新聞、社会保障欄、宮本太郎・中央大学教授の「変わる支え合い 社会参加を後押しする」から。

・・・社会保障を考える上で、現役世代を「支える側」、高齢者などを「支えられる側」と単純に分ける見方は改める必要がある。少子高齢化で「支えられる側」が膨らむ一方、「支える側」は先細りになるためだ。
「支えられる側」と決めつけられることを嫌い、地域で力を発揮したいと望む高齢者も多い。反対に、現役世代でも支える力を発揮できない「新しい生活困難層」が拡大している。
非正規雇用やフリーランスなどで就労が不安定な人や、心身の不調を抱える人、老親の介護で時間的な制約がある人などだ。正社員雇用の手厚い恩恵は受けられず、かといって、対象が絞られた福祉の制度の利用もままならない。このまま高齢期を迎えた時に、低年金などで「支えられる」ことも難しいかもしれない。いわば、雇用と福祉のはざまに落ち込んだ状態だ。

「支える側」「支えられる側」の二分法は、時代に合わなくなった。社会保障や福祉の目的を「社会参加のための後押し」に組み替えて、老若男女を問わず、「元気人口」を増やしていくことが求められる。
例えば、ひきこもりの人が自宅で仕事ができたり、高齢者が短時間出社したりと、それぞれの事情に応じた柔軟な働き方ができる環境づくりが大切だ・・・

・・・就労だけでなく、地域で育児や介護などのボランティアをしたり、子どもと高齢者が共生型のデイサービスで交流したりといった居場所づくりも大事だ。
「全世代型社会保障」を打ち出すなど、こうした改革に向けた政府の動きもあった。高齢世代のための社会保障の費用削減が先行してしまったが、現役世代への支援がより重要だろう。
地域の福祉では、多様な社会参加と就労機会を目的に「地域共生社会」という考え方も広がっている・・・

宮本太郎教授、日本の社会保障のほころび

10月20日の朝日新聞オピニオン欄、宮本太郎・中央大学教授の「新自由主義と社会保障」から。

「いまの日本は3層に分断されています。まず、正社員として働いて社会保険に入れる安定就労層と、生活保護などを受ける福祉受給層。これまでの社会保障はこの2層を想定していました。働けるか、働けないかの二分法です。ところが、この二つの層の狭間で、社会保障制度の支援が届いていない新しい生活困難層が拡大しています。この3層の間での相互不信も強まっています」
「新しい生活困難層には非正規雇用、フリーランス、一人親世帯などが多く、老親の介護や自らのメンタルヘルス、子どもの発達障害など複合的な困難を抱える人も少なくありません。安定的に働いて社会保険に入ることも難しく、対象が絞り込まれた福祉も利用できない。コロナ禍の打撃もこの層に集中しており、どう支えるかが喫緊の課題です」
――どんな型の社会保障に変えていくべきでしょうか。
「3層の分断を乗り越えるような社会保障です。働けない人に限られていた福祉の給付を、働けても低所得の人たちに広げていくこと。さらに、安定就労層に限られていた就労の機会を、さまざまな困難を抱えている人にも広げることが必要です」
「いまの福祉の給付は、生活保護のように、対象を厳しく絞って、最低限の生活費用をまるごと保障する『代替型』が中心です。でも、新しい生活困難層は、働けるけれども、いろいろな困難を抱えている。そこに手当てをして、無理なく働ける条件をつくり、所得が足りない時は住宅手当などで『補完型』の給付を提供すべきです。だれもが活躍できる社会は、このような回路を整備して、初めて幻想から現実に近づきます」

――野党側は社会保障の財源である消費税の税率を5%に下げるべきだ、と主張しています。
「人々から集めた税を、社会に必要な形に変換して返すのが政治の技というものでしょう。その過程で、市場で解決できない困難を打開する政策や制度が生まれるのです。ところが与野党を問わず、入り口から『お代はいただきません』と言ったり、出口で『お代はそのままお返しします』と特別定額給付に頼ったりしています」
「減税をして歳入が減れば、社会的弱者への支給が真っ先に減らされる可能性が高い。それでいいのでしょうか。集めた税を、納得感のあるサービスや給付で人々に『倍返し』できるような政治の技を示すべきだと思います」

「私は、官邸や霞が関にごりごりの新自由主義者はそう多くないと思っています。だからこそ、雲行き次第で転換を掲げ、積極財政や分配を言い始めるのです。でも、日本には強い新自由主義的な『磁場』ともいうべきものがあるので、注意が必要です」
――どういうことでしょうか。
「日本には、政策や制度を作ろうとすると、結果として新自由主義的な形になるような構造があるのです。私は、『磁力としての新自由主義』と呼んでいます。政治家や官僚一人ひとりは新自由主義を信奉していなくても、磁石に引き寄せられるように、新自由主義的な方向に向かってしまう」
――なぜ、そんなことになるのですか。
「国と地方の借金がふくらむなか、支出や人員の削減が進み、集めた税が地域でいかされず、納税者の社会保障や税制への不信が強まっていく。このため、問題解決のための増税は封印され、政治の選択肢は狭まり、選挙になると、『お代はいただきません』という減税に頼る。その結果として、支出や人員をさらに切り詰めることになるという悪循環です」
「平成以降、構造改革の名の下で、地方公務員の数が50万人以上減らされたのは決定的でした。政策を実行しようにも人手が足りないのです。与野党ともに『新自由主義からの転換』を言うのに、この磁力からどのように抜け出すのかが見えてきません」

――宮本さんは戦後の自民党政治には生活保障の面から評価すべき点があったとしていますね。
「現在との対比で言えば、戦後に築かれた日本型資本主義には、弱者を支える仕組みが備わっていました。株式の持ち合いで経営者と従業員の共同体としての企業が確立し、公共事業や業界の保護は、都市に集中する雇用を地方に再分配してきた。利権政治ではありましたが、地方の弱い立場の人たちに向かいあっていた」
「小泉純一郎首相の構造改革は利権政治を『ぶっ壊す』ことを掲げましたが、何の青写真もなく、地方の人々の生活を壊してしまいました。ところが利権政治のほうは別の形で生き残り、その対象が大きく変わった。モリカケ問題や通信事業者による官庁接待からうかがえるのは、新自由主義が強まった社会で、権力者に近い、強い人をより強くするような新たな利権政治の姿です」