カテゴリー別アーカイブ: 再チャレンジ

行政-再チャレンジ

高齢者の就労・社会参加の形

5月31日の読売新聞「安心の設計」は「変わるシルバー人材センター」でした。

・・・60歳以上の高齢者の仕事探しを後押しする「シルバー人材センター」が岐路に立たされている。保育や介護といった人手不足の業種で事業拡大が期待される一方、企業の雇用延長制度などで会員数の伸び悩みにも直面している。試行錯誤しながら変わっていくセンターの姿を追った・・・
・・・シルバー人材センターは時代の変化に直面している。雇用延長制度の広がりや、高齢者の健康状態の改善、「60歳代はシルバーではない」という意識変化を背景に、“シルバー離れ”が目立ち始めた・・・
詳しくは、記事をお読みください。

「高齢者の就労・社会参加のイメージ」という図が載っています。横軸に収入が、縦軸に負荷が取られています。右上の雇用や起業から、左下に向かって、シルバー人材センター、ボランティア(有償、無償)などが載っています。
・・・高齢者が「働きたい」と考えた時、就労先を探す手段は様々だ。
内閣府が収入のある仕事に従事している60歳以上の男女を対象として「今している仕事を見つけた方法」を尋ねたところ、「知人・友人等の紹介」が28.1%で最も多かった。
次いで「自分で起業」(15.7%)、「ハローワーク」(8.6%)、「求人情報誌」(7.8%)が続いた。「シルバー人材センター」は3.8%にとどまった・・・

ヤングケアラーを支える

5月26日の日経新聞夕刊が「ヤングケアラー支えたい 交流の場づくり、経験者も動く」を載せていました。
・・・家族の介護や世話を担う18歳未満の子ども「ヤングケアラー」を周囲がどう支援するかが課題となっている。新型コロナウイルス禍もあって心身の負担はさらに重くなっているとみられる。ヤングケアラーだった人、現場で支援に携わる人に実情や悩みを聞いた。
「母の表情が暗くなり、仕事もやめてふさぎ込むようになった。私が母のサポートを引き受けるしかなかった」。こう話すのは坂本拓さん(30)。中学2年生で母がうつ病とパニック障害を発症。「誰にも相談できなかった」と振り返る・・・

ヤングケアラーは、近年「発見」された社会生活の問題です。私たちは、「介護」を高齢者を世話する、その人は連れ合いか子どもなので高齢者や熟年だと、思い込んでいました。しかし、親や兄弟の面倒を見ている子どもや若もがいたのです。
核家族化もその要因にあります。子どもなので、助けを求めることができないのです。連載「公共を創る」の「孤立」の項目で、ヤングケアラーを取り上げています。
澁谷智子著「ヤングケアラーー介護を担う子ども・若者の現実」(2018年、中公新書)が参考になります。

高校教科書、足し算や九九を教える

5月8日の日経新聞夕刊に「高校教科書 学び直し対応」という記事が載っていました。
・・・「3×8=」「36+42=」……。来春から主に高校1年生が使う「数学Ⅰ」のある教科書には、2桁同士の足し算や引き算、九九といった演習問題が並ぶ。さまざまな事情で基礎学力が身に付かないまま高校に進学した生徒のために編集され、文部科学省の検定に合格。学習指導要領にも記載された「学び直し」のニーズの高まりに応えたものだ。
作ったのは東京書籍。数学Ⅰは難易度が異なる4種類があり、その中で最も易しいものに盛り込んだ。数学編集部の提橋正一部長が高校を訪れた際、教員が小学2年生用の算数教科書を使って教えているのを見て、必要性を強く感じた。「これまでは大学入試の方ばかりを向いて作っていた」と振り返る。

約170ページのうち、冒頭の約30ページが主に小学校の復習だ。整数の足し算と引き算から始まり、「37+28=65」などを筆算で解く方法を示す。九九では「7×5」を「7+7+7+7+7」と、7を5つ足したものだと丁寧に解説している。
続けて割り算、小数、分数、速さの求め方などを説明し、最後に中学1年で習う負の数を紹介する。項目ごとに演習問題があり、教科書に直接書き込めるよう余白を確保した。
高校の学習範囲も基礎的なものに絞り、漢字には極力ルビを振った。提橋部長によると、小中学校を休みがちだった生徒も含め、多様な学力層が在籍する通信制高校などでの採用を見込む・・・

なるほどと思うとともに、そのような学力でも小学校や中学校を卒業させることがよいのか、高校には何を求めて進学しているのか、疑問になります。
なんのための義務教育であり、なんのための高校なのでしょうか。

技能実習生の実態

商売と人権」の続きです。佐藤暁子さんの「人権とビジネス、企業のあり方は」には、次のような指摘もあります。

・・・人権侵害は日本にもある。弁護士として案件に向き合ううち、日本の貧困や格差にもより敏感になった。
「『技能実習生』として海外から受け入れ、日本で働く人々の人権に、どう対応しているでしょうか。自らの基本的な権利は、必死で守らなければ権力者から奪われかねないという緊張感はあるでしょうか」・・・

これについては、5月2日の朝日新聞が1面「失踪村 ベトナム人技能実習生」でも取り上げています。「失踪村、お金も仕事もない 元実習生たち 過酷な労働、夢砕かれて」
・・・途上国への技術移転の名目で、安い労働力として働かされていると指摘されてきた技能実習生。その半数以上を占めるのがベトナム人だ。劣悪な労働環境などから失踪する例が後を絶たない。「失踪村」にたどりついた元実習生たちから何が見えるのか・・・
詳しくは、原文をお読みください。

若年介護者(ヤングケアラー)

4月21日の日経新聞「私見卓見」は、宮本恭子・島根大学法文学部教授の「若年介護者を生まないために」でした。

・・・家族の介護や世話の負担が手伝いの範囲を明らかに超え、時間を費やすことが常態化している18歳未満の子どもをヤングケアラーという。「見えないケアラー」とも呼ばれ、どう発見するかが最初の課題とされる。筆者が島根県の子どもの生活実態に関する調査を独自に分析した結果から、島根県内だけでもヤングケアラーは推計1000人いることが分かった。
これらの子どもには、勉強がわからないことが多いなど学校生活への影響や、よく眠れないことがある、孤独を感じることがあるといった心身への影響もみられた。親の就労状況をみると、土日勤務や夜間勤務の割合の高さが目立つ。また、金銭的な余裕がない世帯の割合も高かった。
「見えないケアラー」が生まれてしまう背景には何があるのか。まず、社会環境の変化に追いついていない介護者支援の問題がある。以前に比べて世帯を構成する人数は少なくなり、介護を担うことのできる大人が家庭内におらず、必然的に子どもが引き受ける結果になっている実態に対応しきれていない。「介護の社会化」が不十分ということである・・・

・・・最後に「見えないケアラー」の正確な把握という課題がある。子どもは自分が行っていることが労働であるとか、それが介護であるという事実に気づくことも簡単ではない。家の手伝いをしている程度だと考えてしまっている可能性も高いだろう。したがって、子どもの側からSOSの声が上がるのを待っていることはできない。大人の側がこれを把握していくための仕組みが必要である・・・