カテゴリー別アーカイブ: 再チャレンジ

行政-再チャレンジ

自殺意識の高まり

9月1日の読売新聞に、日本財団の自殺調査結果が載っていました。「10代後半5%が自殺未遂」。日本財団「第4回 自殺意識全国調査報告書」。
詳しくは報告書を見ていただくとして、主な点は次の通り。

4人に1人が「本気で自殺したいと考えたことがある」
自殺未遂経験者は6%。
自殺念慮、自殺未遂ともに15~20代のリスクが高い。
「在職(休職中)」「無職(求職中)」、持病で「心の病気」を持つ層、疎外感や孤立感を感じている層、家族等に助けや助言を求める相手がいない層、周囲で自殺で亡くなった方がいる層などが1年以内の自殺念慮や自殺未遂の割合が高い。
自殺念慮や自殺未遂経験者の7割が自殺を考えた時に誰にも相談していない。
自殺念慮や自殺未遂経験がある層はない層に比べて、普段から家族に助言を求める割合が低い。

連載「公共を創る」で取り上げている孤独・孤立の問題が、はっきりわかります。

障害者支援の少ない日本

8月25日の日本経済新聞朝刊1面に「パラと歩む共生社会」が載っていました。
そこに、国内総生産(GDP)に占める障害者らに対する公的支出の割合が出ています。日本は1.1%と、OECD平均の2%の半分です。西欧各国はほぼ3%です。
企業などに一定割合の障害者雇用を求める法定雇用率は、ドイツは5%、フランスは6%であるのに対し、日本は2.3%です。

公的教育支出や若者への支出が、先進各国の中でも、日本は低いことが指摘されています。

児童相談所、自治体業務の現場

朝日新聞夕刊「現場へ」は、8月23日から「変革期の東京・児童相談所」を連載しています。
23日は「あの虐待死、もし関わるなら」です。
・・・「もういいだろ。子どもは寝ている。帰れ!」。6月中旬、東京都千代田区のJR秋葉原駅近くにあるビルの一室で、男性の野太い声が響いた。
「お子様の様子だけでも確認させてください」。児童福祉司の2人が穏やかな口調で食い下がる。虐待を隠そうとする父親はいらだち、何度も声を荒らげた。
これは東京23区の職員を対象とした児童虐待への対応の研修風景だ。両親役と児童福祉司役には、家族の事情やこれまでの経緯が記されたシナリオが渡される。演じている様子はほかの研修生がタブレット端末で撮影した。役を演じることで、それぞれの当事者目線を学ぶことが目的だという・・・

・・・シナリオは、2018年3月に東京都目黒区で起きた船戸結愛(ゆあ)ちゃん(当時5歳)の虐待死事件を担当した都の児童相談所(児相)から招かれた職員が用意した。職員は「内容は目黒の事件を意識した。実際の現場では難しい判断が迫られる。どう対応するかを考えてほしい」と語った。またこの日の午後には、千葉県野田市で19年1月に起きた栗原心愛(みあ)さん(同10歳)の虐待死事件を踏まえて、家族との面接の演習も行われた。
研修を企画したのは、23区の共同事務を扱う特別区人事・厚生事務組合「特別区職員研修所」だ。「23区に対するアンケートでも、より実践的で、即戦力を育てる内容が求められている」と担当の桜井安名教務課長(47)は話す・・・

・・・喫緊の課題が人手不足と人材育成だ。研修を取材した6月中旬は、都内に新型コロナウイルスの「緊急事態宣言」が発令されていたが、オンラインではなく、研修生たちはマスクの上にフェースシールドをつけて実地研修に臨んだ。「会話や表情など微妙なニュアンスはオンラインで伝えるのは難しい。実際に自分で感じないと理解できない部分も多い」と、桜井課長は説明する。
研修生は若手職員が大半を占めているが、ベテラン職員も交じっていた。都内では、ほかの自治体で児相の職員として経験していた人の採用も進み始めている。東京の児相にくわしい職員は「児相新設の水面下で、ヘッドハンティングもあると聞く」と打ち明ける・・・

ゲーム依存で壊れる生活、家族

8月5日から読売新聞くらし面で「依存社会 ゲーム」の連載を始めました。子どもがインターネットゲームにのめり込み、親が悩むだけでなく、暴力をふるわれる実態が報告されています。

・・・「なんで回線切んねん!」
中部地方の高校に通う聡さん=仮名=が、血相を変えて2階から下りて来た。2019年9月。1日15時間もゲーム漬けの日が半年も続いていた。たまりかねた母の美雪さん(48)=仮名=がネットの回線契約を解除したのだ。
聡さんは台所から包丁を取り出した。「刺される」。しかし、聡さんは刃先を自分の首元に突きつけ、声を震わせた。「ゲームがないと、俺、死ぬ」。何かにとりつかれたような苦しそうな息子の表情に、美雪さんは胸をつかれた。「ゲームをやめないのは、ただ楽しいからではないのでは」・・・
・・・ 筑波大教授(臨床心理学)の原田隆之さんによると、依存症は脳の病気だ。依存物の摂取や行動の反復により脳の機能が変化しコントロールが利かなくなった状態をいう。「意志や心がけで対処できるほど、依存症は生やさしいものではない」と指摘する。
旭山病院(札幌市)精神科医長の中山秀紀さんは「依存症は、快楽と不快が同時進行する」と話す。快楽を求めてゲームをするが、様々な要因から依存症になると今度はゲームをしないと不快になる。不快を解消するためにまたゲームをする。「人は快楽の消失は諦められても、不快を我慢し続けることは難しい」・・・

インターネットなし、スマートフォンなしの生活は考えられません。自己管理のできない、自己管理を勉強中の子どもには、スマホは便利であるとともに、危険な道具です。
どのように与え、教育するか。多くの親が悩んでいることでしょう。学校の先生も、悩んでいることと思います。まだ、これだという教育方針はないのでしょう。技術の進歩は、さまざまな悩みを生みます。

子どもや若者にとっての居場所の重要性2

子どもや若者にとっての居場所の重要性」の続きです。「「孤立」が子どもや若者を苦しめる。だから私たちは「居場所」をつくる 下」(7月13日掲載)から。

・・・私たちが2011年に「たまり場」を作ったのは、(1)学校や社会の「階層格差によって作られたトラック」で競争に耐えられなくなった子どもたちが一時的にでも避難や休息ができ、他者からの視線に耐える力を育てること、(2)異なる価値観をもつ人が集う場で人間の連帯を体験し、社会で協働の機会を得る「場」を創設することが、多様な価値観が交錯する社会で生きていく上で必要だと考えたからである。
(3)居場所に多様な若者たちが集まり、交流することで受容し合える力を若者たちに育てなければならないとも考えた。さらに、(4)外国人の若者が日本の同世代の若者と最初に交流できる場にもなっていた。様々な目的で日本にやってきて、不安の中で暮らす外国人の若者たちが日本語の習得や仲間づくりに利用できる場になっていた・・・

・・・さいたまユースが運営する居場所は、学校や家族の中で孤立し、仕事や学校で躓いた若者たちが利用している。中には精神疾患や障がいで悩んでいる若者も少なくない。
「学校は勉強ができるか、運動がうまい人のためにある」と話した「ルーム」に通う若者がいたが、この言葉を否定する説得力のある言葉を私たちはもっていない。
また「ぼくはみんなと違う。同じようには生きられない……」。この言葉も今の若者を象徴する言葉だ。多くの学校も職場も「みんな同じでなければならない」という同調圧力の中にある。日本の若者たちは日々、この空気の中でプレッシャーを受けながら生きている。
「たまり場」や「ルーム」は、支援する側・される側に拘わらず、日本社会で生きにくさを抱えた人々の社会的居場所となっている。利用者の多くは、生活保護や障がい者支援制度の枠から外れた若者がほとんどだ。「たまり場」と「ルーム」はそんな若者たちが生きがいや社会での役割を見つけ、生きる意欲を探す場所として機能してきた。

若者たちに居場所が求められる背景に、学校での競争がさらに低年齢化し、緊張と不安の中で子ども世界の歪みが大きくなっていること、そして子ども世界のいじめも社会的にも大きな話題になり、教員たちが懸命に対応しても一向に収束する気配はないことがある。
「競争教育」の深刻化と貧困と格差の拡大が進み、子どもや若者たちの社会(他者)に対する信頼感が失われていく中で起きている現象なのである。教育の市場化が進行し、勝者のない、しかも社会的弱者が切り捨てられる状況を目の当たりにしながら、子どもや若者たちの中に社会への信頼や他者への信頼など生まれるはずがないのである。努力しても報われないとあきらめの中で若者たちは社会への関心を失っていく。しかし、人間は他者の存在なくして生きてはいけないこともまた事実であり、そのはざまで若者たちは居場所を求め続ける・・・
連載「公共を創る」で孤立問題を取り上げているので、現実を知ってもらうために、紹介します。