カテゴリー別アーカイブ: 再チャレンジ

行政-再チャレンジ

こども食堂

「こども食堂」と聞いて、皆さんはどのようなことを思い浮かべますか。貧困家庭の子どもが食事を提供してもらう場所と想像する人が多いでしょう。ところがそれだけではなく、もっとさまざまな機能を提供しています。そして、これからの行政のあり方を示しています。
湯浅誠著『つながり続けるこども食堂』(2021年、中央公論新社)を、お読みください。

確かに、貧困家庭の子どもの食事対策になっているのですが、子育てに疲れているお母さんの息抜きの場、相談する相手や話し相手がいないお母さんのつながりの場にもなっています。子どもたちも、栄養を補給するだけではなく、異年齢の子どもやお兄さんたち、おじいさんやおばあさんと遊んでいます。ほかにそのような場がないのです。おじいさんやおばあさんも、居場所を見つけています。

貧困家庭(赤信号)だけでなく、そこまではなっていないけれど困っている家庭(黄信号)を救っています。さらに問題ない家庭(青信号)にも、子どもや親の居場所を作っています。行政が業者を使って提供する食事でなく、おじいさんやおばあさんも役割を持つことで、その人たちが生きがいを見いだします。
食事というものを配っているだけでなく、つながりという目に見えない安心を配っている、その場を提供しているのです。

コロナ禍での「集まってはいけない」は、こども食堂に大きな制約を課します。食事を配るだけでは、居場所としての機能を果たすことができないのです。孤独・孤立問題に対して、何が重要かがよく分かります。詳しくは本を読んでください。
この項続く。「こども食堂の活動

孤独・孤立実態調査

4月8日に内閣府が孤独・孤立実態調査結果を発表しました。各紙がその概要を伝えています。朝日新聞「孤独・孤立の実態調査の結果を公表

詳しくは発表資料を見ていただくとして、孤独感があると答えた人は4割です。孤独感が「しばしばある・常にある」と答えた人は男女とも30代が最も多く、70代が最も少ないです。

この調査は、孤独・孤立担当大臣が置かれて、政府が初めて行ったものです。政府に担当部局が置かれると、資料の収集や対策の検討がされ、また社会にこの問題と窓口があることが周知されます。解決への第一歩です。

ヤングケアラー調査

4月7日の新聞各紙に、厚生労働省が行ったヤングケアラー調査結果が載っていました。朝日新聞「小学生の15人に1人はヤングケアラー 長時間ケアが学校生活に影響」。厚労省ホームページ調査結果

・・・大人の代わりに介護や家事など家族の世話をする「ヤングケアラー」が小学6年生の15人に1人、大学3年生では16人に1人いることが7日、厚生労働省の調査でわかった。この年代を対象にした国の調査は初めて。小学生では長時間のケアが学校生活に影響し、大学生は就職とケアの両立に悩むなど、課題の変化も浮かび上がった・・・
・・・小学6年生で世話をする家族が「いる」と答えたのは6・5%。ケアの対象は、きょうだいが最も多く71・0%、母親が19・8%で続いた。きょうだいの割合が高い傾向は、昨年調査の中高生と同じだった。

「父母」の世話をする子のうち、父母の健康状態を33・3%が「分からない」と回答。子ども本人が状況を理解できずにケアをしている可能性がある。調査報告書は「周囲の大人へ相談しづらい理由の一つと考えられる」と分析した。

長時間のケアをするほど小学校生活に影響が及んでいた。ケアが7時間以上の子は学校を「たまに欠席する」が28・9%。3~7時間未満の21・5%を上回った。自由記述では「お母さんがいない間、弟、妹の世話をして、学校へ行くのがおくれてしまう」「つらさを分かってほしい。私の気持ちを聞いてほしい」などとつづられていた・・・

夫の引きこもり

3月24日の日経新聞夕刊に「夫のひきこもり 家族の対応は コロナ離職の影、早めに相談を」が載っていました。

・・・新型コロナウイルス下で厳しい雇用環境が続き、離職をきっかけとするひきこもり増加の懸念が高まっている。なかでも配偶者、特に夫のひきこもりについては第三者に支援を求める事例が少なく、実態を把握しきれていない。核家族化が進んだ今、悩みを抱える当事者と妻たちの社会的な孤立をどう防げばいいのか・・・
・・・2018年度に内閣府が実施した調査で、中高年(40~64歳)のひきこもりが全国に推計61万人いることが分かった。この調査にはもう一つ気になる数字がある、ひきこもり当事者の同居者には「母親」53%に次いで「配偶者」36%が多かったことだ・・・
詳しくは、原文をお読みください。

新しい生活困難層への安全網を

3月4日の日経新聞経済教室「社会保障、次のビジョン」下、宮本太郎・中央大学教授の「新しい生活困難層に安全網」から。
・・・新型コロナウイルス禍が困窮と孤立を広げている。セーフティーネット(安全網)をどう張り直すか、次のビジョンが問われる。
厚生労働省はこれまで3重のセーフティーネットという考え方をしてきた。第1が安定雇用を前提にした社会保険、第3が生活保護などの公的扶助であるのに対し、両者の間すなわち生活保護の前の段階で、第2のセーフティーネットを充実させるという主張だ。そこでは失業などで困窮した人を支援して安定就労につなぐことが期待された。具体的には職業訓練中の所得保障である求職者支援制度や、生活再建について相談支援をする生活困窮者自立支援制度が導入された。
コロナ禍が改めて示したのは、この3重のセーフティーネット論が現実を必ずしも正確にとらえていないということだ。安定的に就労し社会保険に加入できている層と生活保護を受給する層の間に「新しい生活困難層」と呼ぶべき人々が急増している。非正規雇用などの不安定就労層、ひとり親世帯など、自分や家族の多様な困難から困窮や孤立に陥っている人々だ。

安定就労層、新しい生活困難層、福祉受給層は、3重のセーフティーネット論が想定するように、上から順繰りに3段階で沈み込んできているのではない。むしろそれぞれの層が固定化してきている。
新しい生活困難層の多くは、就職氷河期世代にみられるように、最初から正規雇用に就けないままだ。そしてコロナ禍の経済的打撃がこの層に集中し所得がさらに減少しても、生活保護に移行する人は少ない。生活保護受給の実人数はコロナ禍の下で減少すらしている・・・

・・・新しい生活困難層が急増し、3層が分断されている状況下で、いかにセーフティーネットを張り直すか。
両極のいずれを拡張していくかで、大きく2つのアプローチが対立している。
第1のアプローチとして安定就労の側から就労機会を拡張していくことが主張されてきた。具体的には、職業訓練などの就労支援を重視することだ。トランポリン的な機能で雇用につなぐ第2のセーフティーネットというのは、このアプローチの一環といえる。また13年には政府の産業競争力会議が、労働移動支援助成金を大幅に増額して労働移動を促す一種の積極的労働市場政策を打ち出した。
だがスウェーデンなどで積極的労働市場政策がセーフティーネットとして効果を発揮できたのは、困窮のリスクが主に失業に起因していて、なおかつ職業訓練などで安定就労につなげることが期待できたからだ。不安定就労層としてキャリアをスタートさせ、職業訓練や保育サービスを利用する生活の余裕すらない人が増大し、他方で生活の安定に直結する就労機会が減じていれば、前提は崩れる・・・