「再チャレンジ」カテゴリーアーカイブ

行政-再チャレンジ

「イクメン」の変化

6月24日の日経新聞夕刊、杉山錠士・総合子育てポータル「パパしるべ」編集長の「摩擦おこしたイクメンブーム 流行語から15年」から。私も、『明るい公務員講座 仕事の達人編』でイクメンパスポートを紹介しました。インターネットで調べると、名前も「ともそだてパスポート」に変わったそうです。内閣人事局のページ

・・・2021年に育児・介護休業法が改正され、22年から「産後パパ育休(出生時育児休業)」制度がスタートした。「ママのワンオペ」が当たり前のように見られた時代から、少しずつ「パパが主体的に育児する」時代へと移りつつある。働き方も見直され、それぞれの家族のあり方を追求するようになった。

筆者の長女は04年に生まれた。当時の男性の育休取得率は0.56%。保育園や平日の公園でパパの姿を見かけることはほとんどなく、先生が保護者に何かを伝えるときの対象はいつも「お母さん」だった。
ぐずる長女をベビーカーに乗せて歩いていると、見知らぬ女性から「やっぱりママがいいわよね」と声をかけられたこともあった。乳幼児健診では、会場にいるパパは自分ひとり。受付の女性からは「お母さんはどうされたのですか?」と聞かれた。
上の世代から「君は出世を諦めたのか?」「仕事と家庭、どっちが大事なんだ?」などと言われたこともあった。オムツ替えスペースに男性が入れないといったハード面も含め、男性には子育てがしにくい環境だった。
変化が起きたのは10年。「イクメン」という言葉が新語・流行語に選ばれ、男性が家事や育児を担うことに注目が集まった。この頃、育児に関わりはじめた人たちは、「イクメン第1世代」と言えるかもしれない。
ただ、あくまで「今はやりだよね」というニュアンスだったので、まだ色物扱いだったと思う・・・

・・・19年度、男性の育休取得率は7.48%。イクメンという言葉が浸透し、家事育児への認識が変わりつつあっても、育休を取る男性は10人に1人もいなかった。
まったく変化がなかったわけではなかった。スイミングスクールなど週末の習い事ではパパの姿が増えた。運動会など週末に開かれる学校行事には、パパが出席するのが当たり前になった。
この時期に家事育児に積極的に関わるようになったのが「イクメン第2世代」。変化は主に週末に起きた。「平日は仕事がメイン」という価値観は残しつつ、少しでも子育てに参加しようとする意識の表れだったのだろう・・・

・・・20年4月、コロナ感染拡大を受けて緊急事態宣言が発令され、働き方が大きく変わった。リモートワークの普及により、働き盛りの男性が平日の自宅にいるのが珍しくなくなった。
20年度の男性の育休取得率は12.65%と初めて1割を超えた。コロナ禍で取得率は一気に上昇し、23年度には30.1%と、ついに3割を突破した。働き方を見直し、家庭との向き合い方を変えたこの世代は、「イクメン第3世代」と言える。
ただし、取得率が3割に達したとはいえ、残る7割は取得しておらず、マジョリティーとは言えない。子育て講座などでも、「ママをしっかりサポートしましょう」という声かけがされる場面がある。「育児はママが主体で、パパはサポート役」という前提が、いまだに根強い。
実際、ママたちからは「受け身ではなく、もっと主体的に家事育児をしてほしい」という声をよく聞く。これからの課題は、「ママに従う」形ではなく、「自らの意思で育児に向き合う」パパをどう増やしていくか。社会もまた、そんなパパたちの働き方や生き方を受け入れ、支える方向に進んでいく必要がある・・・

増える男性の配偶者間暴力被害

5月15日の日経新聞夕刊に「増える男性のDV被害、相談10年で7.5倍」が載っていました。

・・・配偶者間暴力(DV)に悩む男性が増えている。パートナーからの暴言や暴力に苦しみながら、長年耐え続ける被害者も少なくない。行政や民間団体が支援しているが、女性の場合と同様に被害者サポートは必ずしも十分とは言えない。
「妻に何度もひっかかれた」。東京都内のあるビル内に設置された相談室ではDVに悩む男性からの電話が鳴る。妻は普段から物を投げつけるなどの行為が目立ち、抵抗すると逆に「DVだ」と騒がれる。男性は途方に暮れていた。
配偶者の暴力について警察が受け付けた相談件数を見ると、男性からは2023年に2万4000件超と10年で約7.5倍に増えた・・・

DV被害者の約7割は、女性です。一方、DVを原因とする自殺は、男性が8割です。相談できる相手がいないことも原因のようです。

祭り、年齢性別不問に

4月24日の日経新聞夕刊に「参加に年齢・性別問わぬ「祭り」」が載っていました。
・・・伝統行事や祭りで、性別や年齢など参加条件の見直しが広がる。男性中心から女性を加えて担い手不足の解決につなげる狙いのほか、参加できなかった人が声を上げる例も。多様性尊重などの考え方が広がる中、「祭りは誰のものか」を改めて考える契機でもある・・・

記事によると。福島県の相馬野馬追が、未婚の20歳未満という条件が今年撤廃されました。19歳で引退した26歳になる女性が、出場できるようになりました。宮崎県高千穂町の夜神楽では、2013年に女性演者だけの神楽が初めて披露され、犬山市の犬山祭では2022年に車山の担ぎ手に女性が参加しました。などなど、女性が参加できるようになった祭りが挙げられています。

5月2日の朝日新聞夕刊には、「21歳女性、タブーに風穴 筏下り、600年間「船頭は男性のみ」 あす和歌山で船出」が載っていました。
・・・筏(いかだ)で急流を下りながら、泡立つ瀬を越え、降り注ぐ水しぶきを体感できる和歌山県北山村の北山川観光筏下りに、今季、初の女性筏師が本格デビューする。山の神は女性だから、女性が山での仕事に就くことは忌み嫌われた――。そんな伝承も今は昔だ・・・

「伝統」という理由で限定してきたようですが、担い手不足で、そうも言っておられなくなりました。伝統は、新しくつくればよいのです。今は新しくても、10年後、50年後には伝統になっています。

「ダイバーシティ」は第3ステージ

田村太郎さんのメールマガジン(4月30日号)「自治体におけるダイバーシティ・多文化共生推進」に、次のような発言が載っています。「ダイバーシティ」とは社会の多様性、そしてそれを認め合うことと訳したら良いでしょうか。

・・・日本のダイバーシティ推進が「第3ステージ」に入った・・・民族や性別といった「表層の属性」ヘの配慮を中心とした第1ステージから、価値観や考え方などの「深層の属性」へ配慮が拡がった第2ステージを経て、マジョリティの意識変革を通した社会全体の機運醸成の第3ステージに進んでいくのではないか・・・

詳しくは、メールマガジン「ダイバーシティの第3ステージ」(2024年6月5日号)に載っています。
・・・私は日本のダイバーシティは「第3ステージ」に入ったと感じています。
日本におけるダイバーシティ推進は、企業のマネジメント手法として2000年代中頃から注目されるようになりました。ダイバーシティ研究所も2007年に創立し、当初は企業のCSRを通した多様性配慮を中心に活動をスタートしました。この頃の取り組みは、性別や民族、年代など「表層の属性」への配慮に留まっていたように思います。続いて2010年代に入ると女性活躍や多文化共生、LGBTQなど、マイノリティ分野ごとの個別課題への対応が進みます。そのなかで「表層の属性」だけでなく、価値観やキャリア、思想といった「深層の属性」へと対象が拡大していきました。ここまでが第1ステージと第2ステージです。

そして2020年前後から、マジョリティ側の意識変革や社会全体の機運の醸成による包摂的な取り組みの重要性に再び関心が戻り、企業だけでなく自治体でもダイバーシティを統括する部門を設置したり、指針や計画を策定したりする事例が広がっています。例えば、世田谷区では2018年に「多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例」を制定し、包括的な施策の推進をめざしています。また関西経済同友会では2022年度に「Diversity&Inclusion委員会」を設置して提言をまとめましたが、提言を実装する翌年の活動では「Diversity, Equity &Inclusion委員会」へ名称を変更し、組織全体、地域全体での意識変革の重要性を指摘しています・・・

男女格差解消、社会の体質改善が必要

3月21日の日経新聞経済教室は、相澤美智子・一橋大学教授の「男女格差解消、社会の体質改善が必要」でした。

・・・以上の方針は、いずれも歓迎されるべきものだ。しかし女性活躍を冠した法律の改正という「対症療法」で、女性活躍社会を真に実現できるかといえば疑問である。女性の活躍不全という形で現れる現代日本社会の病根は深く、その克服には根本治療が必要である。
私見では、現代日本社会の病名は「日本版アンシャンレジーム(旧体制)の未清算」である。日本人がそこから解放され、日本国憲法が想定する人権意識を真に獲得できるよう、国家・社会があらゆる努力をすることが根本治療となる。
日本版アンシャンレジームと筆者が呼ぶのは、次のような状況である・・・

・・・戦後の日本国憲法は、人々が水平的(ヨコ)に結合する社会を創出すべく家制度を廃止し、両性の平等を定めた。しかし日本版アンシャンレジームないし身分制的タテ社会の伝統は、なお克服されていない。
法律に規定される夫婦同氏強制は、日本版アンシャンレジームの名残をもっとも分かりやすく示す例である。また労働契約は、労働力と賃金の交換という取引契約の外観を呈しているが、人々の意識においては身分契約(企業という団体に所属する身分を獲得する契約)のように観念されている。ここにも日本版アンシャンレジームを認めることができる。
企業における身分制的タテ社会は年功序列的人事や、人の能力を格付けする職能給制度などに認められ、正規・非正規労働者の著しい格差としても現れている。そこに、男女格差が複合的に重なる。

このように人を年齢、性別、雇用形態などによって身分制的に組織し評価するという日本企業特有の雇用のあり方を、最近では「メンバーシップ型雇用」と称することが多くなった。
メンバーシップ型雇用が確立したのは高度成長期の1960年代といわれている。この見方に従えば、この型の雇用は、成立からまだ60年程度しかたっていない。
しかし、メンバーシップ型雇用の本質が企業における身分制的タテ社会であるとの認識に基づけば、そうした社会編成の歴史は1300年に及ぶ。女性が活躍できない社会の基層に岩盤のごとく存在する、身分制的タテ社会の伝統克服が根本的課題である・・・