カテゴリー別アーカイブ: 再チャレンジ

行政-再チャレンジ

忖度圏と孤立圏

7月29日の朝日新聞生活面「負担感強まる中間層、どうすれば 中央大・宮本太郎教授に聞く」から。

・・・物価高騰で、くらしは厳しさが増しています。給料は上がらないのに税や社会保険料の負担感が強まり、細っていく中間所得層。中間層再生の必要性が訴えられるようになりましたが、どんな選択肢があるのでしょう。中央大学の宮本太郎教授に聞きました・・・

・・・今の世の中は「忖度圏」と「孤立圏」にわかれています。中間層が属してきた忖度圏は、いつも空気を読んでいないと追い出されてしまう場所で、ディフェンシブにならざるを得ません。
いざというときの社会保障制度は、主に正社員とその家族を守る社会保険が中心です。忖度圏から一歩外に出ると、つながりすら断たれる孤立圏に入ってしまう。中間層は忖度圏で我慢し続けることで安心を得てきました。でもその安心は、一歩間違えるとすべて失う、という不安の源にもなっています・・・

成熟社会になった日本社会の不安を、上手に表現しておられます。

子ども食堂6000か所

7月23日の日経新聞1面「データで読む地域再生」は「子ども食堂、6000カ所超 世代超えた交流拠点に」でした。
・・・子どもに低額や無料で食事を提供する「子ども食堂」が広がってきた。2012年に東京都内でボランティアが始めた取り組みが自治体や民間企業などにも担い手を広げ、21年には全国6000カ所を超えた。沖縄県、滋賀県などで加速する。経済的困難を抱える世帯の支援にとどまらず、幅広い世代が集う場としても欠かせない存在になりつつある・・・

・・・沖縄県は子どもの貧困への危機感が極めて強い。15年に県が実施した調査で3人に1人程度(29.9%)が貧困状態との結果が示され、対策が本格化した。県は16年、30億円の「子どもの貧困対策推進基金」を創設し、国も10億円の予算を確保した。
市町村はこれらを原資に食堂の規模に準じた補助金を交付する。21年10月時点の子ども食堂は241カ所と、18年比114カ所増えた。那覇市社会福祉協議会の担当者は「財政支援に加え、自治体と社会福祉協議会の担当者が連携を強めたことなどが奏功した」と説明する。
2位の滋賀県、3位の鳥取県でも行政が支援に取り組む。滋賀県では制度や財政面で後押しする体制を整えた。助成金のほか、営業許可を特例で免除し、開設のハードルを引き下げた。鳥取県では食材費なども補助対象とした。
18年から21年にかけて食堂を最も増やしたのは山口県で7.9倍となった。保険加入や講習の参加など一定の要件を満たせば食堂を開設できる独自の登録制度を設け、手続きの負担を軽減した。

子ども食堂は交流拠点として幅広い役割を併せ持つ。東京都健康長寿医療センター研究所の村山洋史研究副部長は「コミュニティーが醸成されている地域ほど食堂が多い傾向がある」と指摘する。
同研究所は全国約2万5000人を対象に地域の協調性や信頼関係を測るソーシャルキャピタル(SC)と呼ばれる指標を算出し、20年の各都道府県の子ども食堂数との相関を分析した。「地域の人は信頼できる」と答える人が多かった高知県や鳥取県などは、人口あたりの食堂数の割合も高かった。
鳥取県の子ども食堂では子どもと運営ボランティアの信頼関係が強まったことで「家庭内で困っていること」などの本音を引き出し、直接的な世帯支援につなげた。Uターンなどで地域との関わりが乏しくなっていた母子世帯の母親が地域住民とのつながりを育んだケースも多い。
「とっとり子どもの居場所ネットワーク”えんたく”」の福安潤一コーディネーターは「食堂は年代を問わず、住民間の孤立を防ぐ役割を果たしている」とみている・・・
子ども食堂の活動」「こども食堂

女性支援新法

6月20日の朝日新聞オピニオン欄、大久保真紀・編集委員の「女性支援法、生かすには 暴力・貧困…困難に応じ丁寧な対応を」から

・・・この法律(「困難な問題を抱える女性支援法」女性支援新法)は、暴力や貧困など様々な困難を抱える女性に対する公的支援のあり方を定めるもので、本人の意思を尊重しながら最適な支援を目指す福祉の視点を打ち出した。女性支援の理念の大転換と言える。
これまでの公的支援である「婦人保護事業」の根拠法は、女性を取り締まりや管理・指導の対象とする売春防止法(売防法)だった。1956年に制定された売防法は「売春を行うおそれのある女子(要保護女子)」の補導処分と保護更生によって売春を防止することがそもそもの目的だ。勧誘罪で執行猶予となった女性を婦人補導院に収容することのほか、各都道府県に設置された婦人相談所の判断で、女性を一時保護所や婦人保護施設に入れて生活や自立を支えることを規定していた。

時代とともにニーズが多様化し、婦人保護事業の対象者が家庭関係の破綻や生活困窮などの問題を抱える女性に拡大した。2001年にはDV防止法が制定されてDV被害者が、また04年からは人身取引被害者、13年からはストーカー被害者も対象になった。

だが、DV被害者が増加すると、加害者からの追跡を阻止するために一時保護所や婦人保護施設の場所を秘匿する必要が生じ、ただ居場所が必要な一般の利用者の需要には必ずしも応えられない状況が生まれていた。
虐待や貧困で居場所がなく、街をさまよう若い女性たちが、やっとの思いで自治体の窓口や婦人相談所に支援団体とともに相談に行っても、公的支援にはなかなかつながらないのが実情だ。婦人保護施設の利用には、まず一時保護所に入ることが前提になっている上、一時保護所は携帯電話の持ち込みができず、外出もできない。ルールが多く監視されるような施設に入るなら、虐待があっても家や路上の方がましだとして、施設を敬遠する女性たちは少なくない。
その結果、婦人保護施設は利用されない施設となりつつあった。入所者数は年々減少し、19年度の充足率は21・7%だった・・・

児童手当、なぜ成長とともに減額

5月26日の朝日新聞生活面に、「児童手当、なぜ成長とともに減額 中学生から一律に、高校生は0円」が載っていました。
・・・児童手当が4月から5千円減ります――。関東に住む女性(51)のもとに最近、市役所からそんな手紙が届きました。中学生までの子どもを育てる世帯に支給される児童手当が、なぜ減るのでしょう。取材すると、制度と生活実感とのズレも見えてきました・・・
児童手当は、所得制限にかからない場合、0~2歳は月額1万5千円、3歳から小学生は1万円(第三子以降は1万5千円)、中学生は1万円、高校生はなしです。

・・・「うーん。どうも納得できません……」。微妙な表情の女性が挙げた三つの疑問は、子育て中の人なら同じように感じそうなものだった。
疑問(1)子どもの年齢が上がると、なぜ児童手当の額が下がるのか(大きくなるほど食費も教育費もかさむのに)。
疑問(2)3歳から小学生までは第3子以降に加算があるのに、中学生になると一律になくなるのはどうしてか。
疑問(3)高校生になると、どうして対象外となるのか。
内閣府の担当者にこれらの疑問をぶつけると、こんな答えが返ってきた。
疑問(1)「お気持ちは分からなくはないのですが、何にいくらかかるかを積み上げて金額を決めていません。また児童手当で費用の全額をまかなうものでもありません。教育費は就学援助といったほかの仕組みで低所得の家庭を対象に補助もしています」
疑問(2)「正直に言って、政治判断で少しずつ対象を広げたり金額を増やしたりしてきたので、明確な理由を説明するのは難しいです」
疑問(3)「高校生まで広げるかについても、政治判断が必要です」・・・

政治判断で決めてきたので、この問題も国会で議論して欲しいですね。

精神疾患、高校教育

5月17日の朝日新聞教育欄に「「精神疾患」高校生にどう教える? 40年ぶり教科書に」が載っていました。
・・・今年度から、高校の保健体育の教科書で40年ぶりに精神疾患に関する記述が復活した。若者らの自殺が社会問題となるなか、どのように心の病について教えたら良いのか。教員や生徒たちが正しく理解し、受け止められるよう様々な取り組みが始まっている。

「誰でも発病する可能性があります」
今年4月から使われている大修館書店の「現代高等保健体育」では、計8ページが精神疾患に関する項目にあてられている。「およそ5人に1人以上が生涯に1回は何らかの精神疾患を経験」「約50%は14歳までに、約75%は24歳までに発病」といった説明とともに、うつ病や統合失調症、不安症、摂食障害の具体的な症状を記載した。早期発見と治療が回復の可能性を高めることも記している。
精神疾患の項目は、今年度から使われる3点の保健体育の教科書すべてに登場した・・・

日本の学校教育は明治以来、子どもが優等生になることを目指してきました。それはよいことであり、よい成果を生んできたのですが、他方で落ちこぼれた子どもを無視するという弊害がありました。
いじめ、引きこもり、集団生活になじめないことどもなどなど。つまずいた子どもたちに、つまずかないようにすることを教え、つまずくこともある、その場合にどうしたらよいか生きていく力と知識を教えることも重要です。