「行政」カテゴリーアーカイブ

行政

自治体の職員不足

4月29日の日経新聞東京面に「きしむ地方自治 人材不足、業務の維持限界」が載っていました。
・・・地方自治の限界が各地であらわになっている。地域を支える自治体職員などの人材確保は年々難しさを増し、行政サービスの維持にきしみが生じつつある。人口減少社会に耐えうる行財政基盤を目指した「平成の大合併」のピークから今年で20年。地域社会をどう守り続けるかが問い直されている・・・

市町村の方に聞くと、土木、建築、保健などで職員採用ができないそうです。デジタル化に必要な技術職員はもっと、集まらないそうです。日本全体での若者減少、民間企業との競争に負けています。常勤職員が集まらない分を、非常勤職員で埋めている自体もあります。これについては、別途書きましょう。

記事では、日本総合研究所の蜂屋勝弘・上席主任研究員の試算では、業務に必要な職員の確保割合を示す充足率は2030年に92%、2045年には78%に低下します。
日本全体で人手不足なのですから、役所だけが別というわけにはいきません。これまでは、過疎化・人口減少が多くの自治体の課題だったのですが、地域の人口減少だけでなく、役所の職員不足も課題になりました。

復興庁オーラルヒストリー3

復興庁オーラルヒストリー2」の続きです。「東日本大震災に関するオーラルヒストリー」に、追加がされています。
佐藤 慎一・元内閣官房内閣審議官と田島 淳志・元東日本大震災復興対策本部事務局参事官、元復興庁参事官(総括班)の記録が、興味深かったです。発災直後から、政府として何をするべきかを考えていたのです。そして、復興法案等準備室をつくり、復興基本法の案を作成し、構想会議を立ち上げ運営し提言をとりまとめます。
復興構想会議の審議(迷走ぶり)は報道で知っていましたが、知らなかったことが多いです。私が被災者生活支援本部で、被災者の支援と被災地の応急復旧に取り組んでいた時に、内閣官房ではこのようなことが行われていたのですね。

佐藤さんは、想像力を生かすことと、業務の日程管理、担当者の配置、彼らへの指示に気を遣います。このあたりは、私と同じ苦労ですね。前例のない緊急事態の際の対応は、いかに人によるかがわかります。
このような知恵と苦労について、行政文書にはどの程度残っているのでしょうか。かつての公文書にしろ新しい概念である行政文書にしろ、ここに記された佐藤さんの苦労ぶりや知恵の出し方は、残らないと思います。聞き書き(オーラルヒストリー)が持つ効果でしょう。

後に被災者支援本部を閉じて、復興本部をつくる際(2011年6月)に、被災者支援本部事務局と法案準備室とが合体することになりました。当然、佐藤審議官が新しい本部の責任者になる(私はお役御免で元の職場に戻る)と思っていたのですが、佐藤審議官は財務省に復帰し、私が復興本部に勤めることになりました。

法案準備室は主に頭脳作業をしていて、被災者支援本部は現地で汗をかいていた(服装は出動服)ので、私は冗談で「法案準備室は頭脳労働者、被災者支援本部は肉体労働者」と表現していました。その二つの組織と職員を合体させることは、うまくいくか心配でした。
法案準備室から来る田島参事官と2人で、新しい組織をどう作るか打ち合わせをしました。初対面でしたが、話しがかみ合って安心しました。私が本音をぶつけても、全て理解して対応してくれたのです。
で、復興本部とその後の復興庁の組織編成や職員集めは、ほぼ田島参事官に任せました。2人で、前例のない大胆なことをしました。いろいろ悩むこと困ったこともありましたが、うまくいったと思います(正確には悩んでいるひまがなく、次の課題を片付けなければならなかったのです)。田島君のおかげです。

国家公務員行動規範の策定

5月15日に、人事院が「国家公務員行動規範」を策定しました。「人事行政諮問会議」の最終提言を受け止め、人事院が策定したとのことです。3つの柱からなっています。
1 「国民を第一」に考えた行動
2 「中立・公正」な立場での職務遂行
3 「専門性と根拠」に基づいた客観的判断

人事行政諮問会議の答申には、次のようにあります(6ページ)
1 国家公務員の行動規範の策定
【全職員を対象/本提言後直ちに】
今後、これまでにも増して多様な人材が公務で活躍することが見込まれる中、組織パフォーマンスの向上につながるよう人的資本の価値を最大化するためには、組織と職員の業務遂行双方における目的や方向性が一致することが不可欠である。したがって、職員が仕事をするに当たって判断のよりどころとなり、自身の仕事を意義付け、国民からの信頼の下に円滑な公務運営を行えるよう、国家公務員に共通して求められる行動を明確にすることが必要となる。しかし、これまではこうした行動が分かりやすい内容で言語化されていたとは言えない。
こうした状況を踏まえ、当会議では、全ての国家公務員が職務を行うに当たって常に念頭に置くべき基本認識を言語化し、共通して求められる行動の指針となる「行動規範」を策定することが適当と考え、定めるべき内容を第9回及び第11回会議で議論した。この結果、「全体の奉仕者」(憲法第15条第2項)として国家公務員に求められる行動規範を分かりやすく言語化することが適当であるとの結論に至った。具体的には、①国民を第一に考えること、②中立で公正な公務運営を意識すること、③根拠に基づいた客観的判断を行うことの3つの要素を中核的なものとして検討した。
このような議論の結果、「国家公務員行動規範」として望ましい内容を次のとおり提言する。

内容は至極まっとうなことで、良いことだと思います。ただし、このような規範を定めなければならいとするなら、なぜなのか、このような規範を逸脱するどのような行為がなされているのかを、明確にするべきでしょう。
かつて過度な接待を受けていた問題では、該当者が処分され、国家公務員倫理法が定められました。事件の反省に立って、何をしてはいけないかが具体的に示されています。「よくある質問」を読むと、よくわかります。
では、今回の「行動規範」では、何をしてはいけないのでしょうか。職員研修などでは、どのように教えるのでしょうか。具体事例(してはいけない事例)を示さないと、職員の頭には入らないのですよね。

私が聞いた、若手官僚の悩みは「どのようにしたら良い仕事ができるか」「どのようにしたら官僚としての能力が身に付くか」といったことよりも、次の三つでした(連載「公共をつくる」第157回)。
・ 生活と両立しない長時間労働がいつまで続くのか
・ 従事している仕事が国家・国民の役に立っているのか
・ この仕事で世間に通用する技能が身に付くのか

これらの悩みと疑問に応えないと、良い目標を掲げても、官僚たちはついてこないと思います。

祭り、年齢性別不問に

4月24日の日経新聞夕刊に「参加に年齢・性別問わぬ「祭り」」が載っていました。
・・・伝統行事や祭りで、性別や年齢など参加条件の見直しが広がる。男性中心から女性を加えて担い手不足の解決につなげる狙いのほか、参加できなかった人が声を上げる例も。多様性尊重などの考え方が広がる中、「祭りは誰のものか」を改めて考える契機でもある・・・

記事によると。福島県の相馬野馬追が、未婚の20歳未満という条件が今年撤廃されました。19歳で引退した26歳になる女性が、出場できるようになりました。宮崎県高千穂町の夜神楽では、2013年に女性演者だけの神楽が初めて披露され、犬山市の犬山祭では2022年に車山の担ぎ手に女性が参加しました。などなど、女性が参加できるようになった祭りが挙げられています。

5月2日の朝日新聞夕刊には、「21歳女性、タブーに風穴 筏下り、600年間「船頭は男性のみ」 あす和歌山で船出」が載っていました。
・・・筏(いかだ)で急流を下りながら、泡立つ瀬を越え、降り注ぐ水しぶきを体感できる和歌山県北山村の北山川観光筏下りに、今季、初の女性筏師が本格デビューする。山の神は女性だから、女性が山での仕事に就くことは忌み嫌われた――。そんな伝承も今は昔だ・・・

「伝統」という理由で限定してきたようですが、担い手不足で、そうも言っておられなくなりました。伝統は、新しくつくればよいのです。今は新しくても、10年後、50年後には伝統になっています。

大震災融資の返済繰り延べ

4月20日の読売新聞に「168事業者 返済繰り延べ 大震災融資 岩手・宮城・福島 100億円超す」が載っていました。

・・・東日本大震災で被災した中小事業者の復旧費用を国と県が4分の3負担する支援制度「グループ補助金」を利用した岩手、宮城、福島3県の事業者のうち、自己負担分の残り4分の1を制度の枠組みである無利子融資で賄った30事業者が破産し、168事業者が返済を繰り延べたことが、各県への取材でわかった。同制度は復興を推進した一方、100億円超が繰り延べされ、識者は融資やその後の支援のあり方を見直す必要があると指摘する。

無利子融資は「高度化スキーム貸付」と呼ばれ、2024年末現在、3県で計947事業者に647億円を貸し付けている。同補助金を利用した事業者の約1割にあたる。返済開始には5年の猶予が設けられ、その後も事業者が県に申請して認められれば月や年度単位で繰り延べできるが、20年以内の完済が必要だ。
返済を繰り延べた168事業者の内訳は岩手75、宮城69、福島24。昨年末現在に繰り延べ中の貸付残高は計119億円で、宮城県が79億円で最も多い。収益が改善せず、何度も繰り延べる事業者もある・・・

・・・施設や設備を原状復旧するのが同補助金の主な目的だが、破産や返済に窮する事業者の中には、震災前から経営不振だった事業者もあった。一方で、復興に向けて迅速な対応が求められたため審査が甘く、「書類を出せばお金が出る」という状況があったとされる・・・