カテゴリーアーカイブ:著作と講演

連載「公共を創る」第87回

2021年7月16日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第87回「社会の課題の変化―孤独・孤立問題に政府の取り組み」が、発行されました。前回に続き、孤立問題への取り組みについて説明しています。
イギリス政府が、2017年に孤立問題を検討し対策を取りまとめました。そして2018年に、担当大臣を置きました(スポーツ・市民社会担当大臣(副大臣級)の所掌事務に追加)。
日本でも、2021年2月に、一億総活躍担当大臣が、孤独問題も担当することになりました。特徴的なのは、内閣官房に置かれた担当室が、非営利団体と連携して取り組んでいることです。これらの問題では、行政より先に非営利団体が対応しました。また、行政には、この問題を直ちに担うだけの組織と人員がありません。私の主張している三元論が現れつつあります。このあと、官民連携がどのように進むか、見守りましょう。

さて、格差と孤立は、これまでの生存や安全、豊かさとは違った次元の被害や不安です。豊かな社会を達成し生存の問題を解決したと思ったら、生きがいが問題になりました。有名なマズローの要求5段階説を思い出します。人間の欲求を、生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求の5段階に分けたものです。生理的欲求と安全欲求が実現されると、社会的欲求や承認欲求が求められます。
そして、ここにおいても「後ろの安心とともに前の希望」が重要になります。昭和後期は貧しく経済格差もあったのに不安が目立たなかったのは、前に「豊かになれるという夢」があったからです。社会が成熟すると、「落第しない程度の成績でよい」「頑張っても仕方がない」という意識が広がります。どのようにしたら、若者に希望を持てる社会をつくることができるか。難しい問題です。

ロシアの文豪トルストイの小説「アンナ・カレーニナ」の冒頭に、有名な文句があります。「幸せな家族はいずれも似通っている。だが、不幸な家族にはそれぞれの不幸な形がある」
確かにそうなのですが、現在日本の社会生活問題には、共通の根があるのです。小説は不幸の違いを描きますが、社会学と行政は共通の原因を見つけ、対策を考えます。
身近な問題から、マズロー、トルストイ。我ながら、この連載は広い範囲です。

読売新聞「復興脱税」に発言が載りました

2021年7月13日   岡本全勝

7月13日の読売新聞社会面「復興脱税 特需の裏で 下」に、私の発言が載りました。
記事は、福島での除染事業で工事を引き受けた会社の幹部が、下請け会社から多額の接待を受けるだけでなく2億円もの金銭を受け取っていたという事件についてです。

通常の利益のほかに2億円もの利益が出るとは、常識では考えられないことです。どうしたら、公共事業でそれだけの「利益」が出るのか。そしてそれを秘密裏でできるのかが、不思議です。どこにそのからくりがあるのか、役所もゼネコンもそれを明らかにしてほしいです。そうでないと、国民の公共事業に対する疑念はなくなりません。

私の発言は、これらの事業が全額国費でまかなわれ、被災自治体の負担がなかったことについてです。
・・・元復興庁次官の岡本 全勝 氏(66)は、この仕組みが費用を膨張させたと指摘し、「各事業に自治体負担を5%でも入れておけば、市街地整備や道路造成などについてより丁寧な議論が行われ、費用が削減できただろう」と振り返る・・・

ただし、正確には次のように考えるべきだと思います。
1 原発災害での復旧は、加害者である東電と国の責任です。よって、除染経費に(賠償済みの帰還困難区域を除く)、地元負担を求めるのはおかしいです。
2 津波被災地での公共施設復旧については、ほかの災害の例からしても、地元負担を求めて当然です。どの程度なら負担できるかは、検討しなければなりません。
3 原発被災地での公共施設復旧については、1に準ずるのでしょう。復旧以上の工事については、議論の余地があります。

連載「公共を創る」第86回

2021年7月9日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第86回「社会の課題の変化―自由な社会で重要な他人とのつながり」が、発行されました。前回に続き、引きこもりが増えた背景として、生きづらい社会について説明しています。

他人から干渉されない自由は楽しいものですが、他方で、自分で選ばなければならないという「つらさ」も伴っています。しかも、何でも自由に手に入るものではなく、自らの力量や努力によって制約があります。うまくいかないときに、自由は重荷になります。
さらに日本では、「世間の目」という縛りがあります。自由な行動を世間が許さないのです。「我が道を行く人」にとっては負担ではありませんが、「繊細さん」にはつらいことです。

人とのつながり、社会での居場所が、孤立を防ぎます。しかしそれは、待っていても与えられるものではなく、自分でつくらなければなりません。各種の中間集団は、その機会を提供します。血縁、地縁、社縁などが薄れたいま、社会での新しいつながりをつくる必要があります。
他方で、孤独や孤立に悩む人に相談窓口をつくること、その人たちを発見して支援することも重要です。

経済同友会大震災シンポジウムに登壇

2021年7月4日   岡本全勝

今日7月4日は、仙台で開かれた「全国経済同友会東日本大震災追悼シンポジウム」で基調講演をしました。全国各地の経済同友会の方が参加されました。

経済同友会は、このホームページでも紹介しているように、発災直後から10年にわたり、被災地の復興を支援してくださっています。会員から集めた多額の寄付金を、被災した実業高校の実習備品購入などに支援してくださいました。金銭支援だけでなく、人材育成にも協力してくださいました。「IPPO IPPO NIPPON プロジェクト

また、毎年被災地を訪れ、政府に向かって提言を出してくださいました。私も何度も同行し、現地で説明をしました。経済界のオピニオンリーダーが、復興に関心を持ち、理解してくださることは、ありがたいことです。よい意味での「世論工作」でしょうか。
今日は、そのお礼と、今後の期待をお話ししました。お世話になった方々とも、久しぶりにお会いでき、お礼を言うことができました。また、それ以外の話も聞くことができました。シンポジウムはオンラインでもできますが、それ以外の話は対面でないとやりにくいですね。

そのほかの討論でも、いろいろと勉強になる話がありました。被災した企業の直後の対応、そこでの気づきなど。いくら事前に備えても、想定外が起きます。その際に、社長が取るべき行動、現場が取るべき行動、そして現場が社長の指示を待たずに行動する社風など。今日勉強したことは、いずれ報告しましょう。

連載「公共を創る」第85回

2021年7月2日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第85回「社会の課題の変化―増える引きこもりに居場所の確保を」が、発行されました。前回に続き、孤立の具体例として、引きこもりを説明しています。
彼ら彼女らの内面は、他者からはわかりません。私の読んだ本や見聞から、孤立問題として説明しました。
どのような原因で、引きこもりが起きるのか。本人は、何に困っているのか。何が救いになるのか。そのような状態に追い込む日本社会の「欠点」などを説明しました。
学校や会社などでうまくいかなくなり、居場所がなくなって、引きこもりになるようです。相談できる人がいないことで、一人で悩みます。学校や会社以外の逃げ場、複数の居場所があれば、引きこもりは防げます。

NHKウエッブサイトに、「つらくても相談なんてできないよ 13歳僕の叫び」(6月28日掲載)が載っていました。合わせてお読みください。