カテゴリーアーカイブ:著作と講演

連載「公共を創る」第154回

2023年6月22日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第154回「社会像と行政手法の転換」が、発行されました。国家の役割と機能の見直しを迫る要因を説明しています。今回は、前提とする社会像や市民像が転換していることを説明しました。

西欧近代国家そして日本が前提とした「自由で自立した市民」は、理想であっても、現実ではありませんでした。自立できない市民を発見し、それへの支援を整備してきたのが、この200年の歴史です。そして、さらに「社会生活での自立が難しい人」が生まれてきたのです。人は自立しているのではなく、互いに依存して生きているのです。
それは、公私二元論にも修正を迫ります。

政府が取り組むべき課題が変わることで、手法も転換する必要があります。その一つは、実施の手法です。支援対象となる個人は、引きこもりのように役所の窓口には来ません。これまでのように、請求があって支給する方法は機能しません。
また、社会の意識を変える必要がある場合も多いです。それについても、経験は少ないです。

講義、働き方改革

2023年6月20日   岡本全勝

今日6月20日は、市町村アカデミー「自治体の働き方改革」で「働き方の変化と課題(体験談を基に)」を講義しました。「時間割
担当教授の指示は、「学長はワーカホリックだったと聞いた。その話、特にひどかった実態を経験談として話せ」とのことでした。職場に泊まり込み、1週間も自治省の建物から出なかった、2週間も寮に帰らなかった経験を持っていますから、お安いご用ですが・・・。

当時はそれが当たり前、そのようにして官僚は鍛えられるのだと信じていました。一種の誇りでもありました。報道機関も、官僚の長時間労働をよく取り上げ、敬意を持って褒めてくれたのです。
今から思うと、おかしなことでした。家庭や私生活を省みなくてもよい、あるいは省みない「健康な、世間常識を欠いた、男性」だけの世界です。

確かに仕事は山のようにあり、覚えるべきこともたくさんありました。しかし、長時間労働は「入力・インプット」であり、「産出量・アウトプット」でも「成果・アウトカム」でもありません。それを考慮しない長時間労働は、賢くないですね。
自分が好きでやってもよいですが(それもいけないことですが)、職員にさせるようでは上司として失格です。

私は途中で気がつき、反省して、コペルニクス的に考えを変えました。管理職になったら、職場で居残らないようにしました。特に、部下への配慮です。「それでも厳しかった」と部下からは、批判が出そうですが。

連載「公共を創る」第153回

2023年6月15日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第153回「課題の転換を迫る背景」が、発行されました。
前回まで、政府の役割を再定義する前段として、その分類を行いました。ところが社会の新しい課題の多くは、これまでの分類にうまく当てはまりません。

これら新しい課題の多くは個別ばらばらに生じているのではなく、共通した背景と原因を持っているというのが私の分析です。この大きな動きを押さえた上で、場当たり的でない国家の役割と機能の見直しが必要なのです。それは、行政分野の拡大や手法の改善などという微修正では済まず、市民像や公私二元論といったパラダイム(ものの見方、考え方の枠組み)の転換が必要となります。
これまで述べてきた国家の役割の見直しを迫る背景や見直しの方向などを順次、要約します。

まずは、課題の転換を迫る背景です。大きな課題であった貧困からの脱出に成功したのに、なぜ社会に不安が生じているのか。それは、経済発展によって私たちの暮らしが変化したことで、新しい不安が生じたためです。
そして、日本においてこのような不安が顕著なのは、成熟社会に見合った意識への転換が遅れているからです。それは、いくつかの場面で現れています。

家族と会社、自由な暮らしと必要な覚悟

2023年6月13日   岡本全勝

日本はこの半世紀で経済発展を遂げ、豊かで自由な社会を手に入れました。しかし、社会の仕組みや国民の意識が、その変化に追いついていないことを指摘しています。
ムラや家族、会社は個人を束縛しますが、個人にとっては頼りになるものです。うまくいかないときも、その束縛を言い訳にすることもできます。しかし、自由な社会で自分が選択する場合は、その結果にも責任を持たなければなりません。その覚悟が必要になります。

例えば一人暮らしは、自由で快適な生活ができますが、困ったとき、悩んだときに助けてくれる人がいません。一人暮らしをするには、その覚悟が必要です。そのような孤独に陥らないため、つながりをつくる努力をするのか、一人の不安に耐えられるだけの精神力をつけるのか、いずれかが必要です。
孤独にならないためには、他人とのつきあいが必要ですが、じっとしていてもつきあいはできません。かつては、村での集まりや親類などさまざまな中間集団に否応なく組み込まれたのですが、それも少なくなりました。結婚もまた、かつては世話焼きの人が異性を紹介してくれたりしましたが、現在では自分で探さないと相手は見つかりません。

日本型雇用慣行は、新卒一括採用、年功序列、終身雇用が特徴です。従業員は特定の技能を持って特定の職に就く就職ではなく、白紙の状態で会社に採用され、社内で技能を身につけるという就社です。多くの学生は何になるかを考えず、技能を身につけずつけずに、大学生活を送ります。就社すると、その後の処遇は会社任せになります。希望する部署に就けないと不満をためますが、外部雇用市場がないので転職することは困難です。
日本型雇用慣行は、ムラでの暮らし方を職場に持ち込んだものです。会社任せにせず自分で技能を磨き仕事を見つけるには、前段で述べたと同様に自立の覚悟が必要になります。
一人暮らしの孤独が問題になっているように、今後ジョブ型雇用が広がると、この問題が顕在化するでしょう。

立命館大学法学部「公務行政セミナー」講師

2023年6月9日   岡本全勝

今日6月9日は、立命館大学法学部「公務行政セミナー」の講師に行ってきました。去年に引き続き2回目です「2022年6月10日立命館大学」。
立命館大学では、公務員を目指す学生の教育に力を入れています。地方公務員、国家公務員になる人も増えているとのことです。今朝の報道によると、2023年春の国家公務員総合職試験の合格者数が、東大が193人、京大が118人。立命館大学が78人だそうです。

この講座は、国家公務員や地方公務員の先輩たちが話をします。
私の話が直接役に立つかどうかは別にして、「こんな世界もあるのか」と知ってもらえれば、うれしいです。私は自治省に入るまで、そんな話は聞いたことがなく、身内や周りに官僚がいなかったので、全く知らずに役所に入りました。

約90人の学生が、目を輝かせて聞いてくれました。経験談の中でも、悩んだことの話が、受けたようです。講義後の質問も、たくさん出て、話し甲斐がありました。