カテゴリーアーカイブ:著作

連載「公共を創る」第198回

2024年9月12日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第198回「政府の役割の再定義ー官僚という職業を選んでもらうために」が、発行されました。

若者が公務員を選ばず、国でも地方自治体でも公務員が不足していることを議論しています。
役所はこれまで、人事政策を重要視しておらず、人事政策の専門家がいなかったと評価しました(第170回)。もちろん人事課長以下の人事担当者はいました。しかし、彼らの仕事は人事異動表を作成することが主で、職員の処遇や働き方の改善には積極的に取り組んでいたとは言えません。

土木、保健などに従事する職員について企業との奪い合いが起こっており、処遇が理由で官庁より企業が選択されることが起こっているようです。特に業務の電子化に関する専門家は、民間企業でも国際的に奪い合いになっているほどで、公務員として提示できる給与では太刀打ちできないのです。
外部委託にする方法もありますが、その仕事に通じた職員がいないと、発注と完成検査ができず、相手の言いなりになってしまいます。清掃や印刷など労力が主な仕事は、外注に向いています。しかし、業務の電子化は、プログラムを書くことは外注できても、何をどのように電子化するかの判断は、組織の業務に精通してなければできません。

公務員を若者に選んでもらえる職業にしなければなりません。しかしその問題の前に、日本全体の労働力不足があるのです。

コメントライナー寄稿第19回

2024年9月10日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第19回「行政改革と縮み思考から卒業を」が9月10日に配信され、iJAMPにも転載されました。

歴代内閣は、行政改革に取り組んできました。中曽根行革では国鉄の分割民営化、橋本行革では中央省庁改革、小泉行革では郵政民営化や規制改革など。現内閣も「政改革推進本部」を設置しています。しかし、現在の行政改革は、何を目的として行われるのでしょうか。国民も「小さな政府」や「身を切る改革」といった言葉を支持します。その中身はなんでしょうか。

1990年代には、経済停滞からの脱却のために、企業は事業の縮小や従業員数と給与の削減を進めました。ところが、その目的を達したのに、引き続き縮小を続けたのです。それでは消費も拡大せず、経済も社会も発展しません。一方、政府も予算と職員の削減を続け、社会に生まれてきていた新しい課題に取り組むことができませんでした。

やがて「縮小の思考」は社会の通念となり、企業や役所が新事業へ挑戦することや、新しい政策を企画することをためらわせました。30年間も続くと、現在の企業や役所の幹部は、入社・入庁以来、挑戦や成長を経験したことがないのです。それが、経済停滞と社会の不安を長引かせたのです。
この間に、一人あたり国民所得は経済開発協力機構加盟38カ国中21位に落ち、アメリカの3分の1、ドイツの2分の1になってしまいました。

ようやく物価、給与、株価が上昇し始めました。成長のためには、政府も行政改革を卒業し、国民に向かって縮み思考から脱却することを宣言すべきです。

連載「公共を創る」第197回

2024年9月5日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第197回「政府の役割の再定義ー成熟社会の到来と変化する国のかたち」が、発行されました。

前回から、若者が公務員を目指さないこと、採用されても早期に退職する者が増えてきていること。その背景に、転職自由社会が到来し、社員や職員の人事政策の前提としていた日本の労働慣行 が崩れつつあることを説明しています。

早く必要な技能を身に付けて、自分の考えを実現していきたい人。会社を否定するわけではないが、自分の職業人生のための過程(ワンステップ)にすぎないと早期の転職を考える人が増えています。これは、年功序列による職員の選抜と技能や経験の蓄積という、従来の企業側の戦略とは相いれない思考です。

このような変化は、職場だけでなく、私たちの暮らしのかたちを変えました。暮らしを形作る主要な枠組み、修学、働き方、家族の形が、昭和後期の経済成長期とともに、平成時代にも大きく変わったのです。それぞれ自由になり、選択肢も広がったのですが、その結果、従来の日本人に安心を提供していた血縁、地縁、社縁が薄くなりました。

連載「公共を創る」第196回

2024年8月29日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第196回「政府の役割の再定義ー転換を迫られる公務員の人事政策」が、発行されました。

まず、ここまで述べてきた官僚育成論を整理しました。管理職と幹部官僚とは役割が異なること。企業幹部と幹部官僚に求められる能力の違い。幹部官僚はそのための育成が必要なことなどです。

ところが、実態は急速に変化しています。優秀な若者が必ずしも官僚を目指さないこと、採用されても早期に退職する者が増えてきたこと、さらに日本でも転職自由社会が到来し、日本の労働慣行であった新卒一括採用、人事課による配属決定、年功序列、終身雇用が崩れつつあることです。
それは民間企業だけでなく、公務員の世界にも押し寄せてきています。これまでの人事政策は、革命的転換を迫られています

これまでは、公務員制度改革が議論されてきたのですが、制度が前提としていた実態が大きく変化し、いかに運用していくかが課題となってきたのです。
それを引き起こした「黒船」は、「転職が不利にならなくなった」ことです

連載「公共を創る」執筆状況

2024年8月19日   岡本全勝

毎日、多くの人にこのホームページをご覧いただき、ありがとうございます。もうじき、430万人に達します。久しぶりの「連載「公共を創る」執筆状況」です(前回4月6日)。
8月29日掲載予定の第196回は校閲もすみ、掲載待ちです。9月5日掲載予定の第197回はゲラができて、校閲待ちです。9月12日掲載の第198回は、原稿を編集長に渡しました。

これでひとまず、第170回(去年の12月)から続けてきた「官僚の人事政策」が終わります。さらに、去年5月から書いてきた「第4章 政府の役割再考 3 政府の役割の再定義(1)社会の変化と行政の役割」が終わります。
いつものことですが、こんなに長くなるとは思いませんでした。書いていくうちに、「そうだこんなこともある」「これにも触れておこう」と次々と広がります。また、原稿に目を通してもらっている右筆さんが、欠けている点を指摘してくれます。

私は先週から、次の「政治の役割」を書いています。なので、第196回、第197回、第198回、第199回が、同時に走っています。
新しい項に入るので、まずはその中の構成を思案中です。連載執筆で、一番悩むのは、この構成を考えることです。それができれば、別途書きためてある「部品」を集めて、文章にすればよいのです。もちろん、その作業も簡単ではありませんが。
夏休みで気分は緩み、執筆意欲は落ちるのですが、締め切りを考えるとそんな悠長なことは言っておられず。早起きして、原稿に向き合っています。その甲斐あって、なんとか、粗々の構成を作り、最初の部分を書き始めました。

当初、「全体の構成」では、「政治の役割」は一つの項を立てることなく、「(1)社会の変化と行政の役割」の中で、「政と官」を書けばよいと考えていました。この連載の副題は「新たな行政の役割」です。
しかし、機能不全と思える官僚機構を機能させるためには、官僚の努力だけでは限界があります。政治主導の時代に、官僚だけが勝手なことはできないのです。官僚機構を使いこなすのは、政治の役割であり、国民の意向です。そこで、「政治の役割」を項として立てることにしました。これも、書こうと思えば、書くことはたくさんあります。