ハジュン・チャン著『世界経済を破綻させる23の嘘』(2010年、徳間書店)が、頭の整理になりました。新聞の書評などでも取り上げられているので、読まれた方もおられると思います。著者はソウル生まれで、ケンブリッジ大学准教授です。あまりに単純化された「自由市場経済主義」の問題点を、具体例を挙げながら論破します。取り上げられている項目=通説=嘘は、次のようなものです。
市場は自由でないといけない。すべて市場に任せるべきだ。企業に自由にやらせるのが国全体の経済にも良い。経済を発展させるには小さな政府の方がよい。市場がうまく動くのは、人間が利己的だからだ。途上国は自由市場・自由貿易によって富み栄える。世界は脱工業化時代に突入した。
日頃変だなあと思っていたことが、なるほどと納得できます。ご関心ある方は、ご一読ください。
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安全基準の日本標準と世界標準
2月13日の日経新聞「中外時評は」、滝順一論説委員の「原子力もガラパゴス。安全規制を世界標準に」でした。日本の原子力発電所の安全規制についての「特殊性」を論じています。
日本の安全規制は、これまでの事故などを踏まえて、積み重ねられてきました。それはそれで意味があるのですが、結果として安全性が高まったのかというと、専門家は首をかしげるそうです。国民へのリスクが増した恐れすらあるそうです。
安全を重視することはよいのですが、パッチワークの積み重ねで、全体を通した視点が欠けているようです。これは、外国の規制と比較した時に、明らかになります。島の中では素晴らしいと思っていても、島の外から見ると変だというのが、ガラパゴスです。外との競争のない世界では、独自の変化が起き、それが必ずしも合理的でないという例です。
その結果、施設や技術としては世界最先端であっても、管理ノウハウや安全の法体系は後れを取り、世界に輸出できないことになります。日本の社会のソフトエアが、世界に輸出されていないことについては、「社会の制度・インフラの輸出」(1月10日の記事)に書きました。
地域社会の開国
日本では、行政が個人を把握する制度が、いくつかあります。一つは戸籍です。これは、国家が、個人の身分関係(出生、親子、夫婦関係など)を登録するものです。もう一つは住民基本台帳です。これは、地方自治体が住民を把握し、行政サービスの基礎とするためのものです。そして外国人には、別に外国人登録制度があります。
ところで、平成24年7月までに、外国人住民も住民基本台帳に載るようにする改正されます。これまでは、日本人と外国人を分けて把握していたのです。市町村が行政サービスをする際に、外国人住民を十分に把握できませんでした。そこで、外国人住民も住民基本台帳に載せるように変えることになりました(詳しくはこちら)。
これまでの登録制度は、外国人を「管理」するためでしたが、「住民としてサービスするために把握する」ものに変わるのです。これについて、「外国人住民を日本人と同様に扱い、地域社会の構成員として共生する基盤ができる」という評価もあります。外国人も、地域の住民として同様に扱うということです。こんなところにも、古い考え方が残っていたのですね。
この改正を議論した研究会の報告書(平成20年12月)に、興味深い数字が載っています。少し古くなりますが、紹介します。外国人登録者数は215万人で(平成19年末)、総人口の2%です。この数字は、10年間で1.5倍に増加しています。国際結婚は17組に一組です。
近隣諸国に学ぶ
1日の読売新聞文化欄に、『東アジア人文書100』(2011年、みすず書房)が取り上げられていました。日本、中国、韓国、台湾、香港の編集者が、それぞれの国や地域の優れた人文書を選び、紹介するガイドブックです。
江戸時代まで日本は、中国や朝鮮から、たくさんの文化を学びました。漢文、漢詩、書道、中国の古典と歴史、特に論語は、日本人の素養でした。明治以来、日本は「脱亜入欧」、西欧にお手本を乗り換えました。そして、近隣諸国の事情には疎くなりました。私たちは、西欧の指導者や学者、芸能人の名前を何人も挙げることはできますが、アジアの近現代の人の名前は一部の人を除いて知りません。
東アジア各国が経済発展を遂げ、日本との経済社会的な格差が縮まりました。ようやく、日本がアジアを「同じ平面で」見るようになった、ということでしょう。韓国ドラマや芸能人の日本での流行がよい例ですが、小説などはまだのようです。
先日紹介した「政権交代の先進国」(2010年12月13日の記事)も、西欧を見なくても、近くに先例があるということでした。昨日、在東京韓国大使館の知り合いの外交官と、お話しする機会がありました。こんなに近いのに、私には知らないことが多いです。社会の仕組みについて、いろいろ教えてもらいました。文化的背景の違う西欧より、ずっと勉強になると思いました。
頑張れ浅川さん。国際機関での日本の貢献
今日の朝刊に、財務省の浅川雅嗣副財務官が、OECDの租税委員会議長に就任することが載っていました。国際的な税制ルールづくりの場だそうです。国際機関で日本政府や日本人が活躍するのは、うれしいですね。
浅川さんとは、麻生内閣の秘書官として、一緒に仕事をしました。アメリカ発の世界同時不況に際し、日本政府がIMFに1千億ドル(約10兆円)の融資をし、中小国の資金繰りを助けたのは、その時の話です。国際金融の話は、私には新鮮で、たくさんのことを教えてもらいました。今朝、携帯電話にお祝いのメールを打ったら、夕方にパリから返事が来ました。
日本人の活躍とともに、このようなニュースが記事になることが、うれしいです。読者の関心がないのか、書く能力を持った記者が少ないのか、それを理解できる編集長がいないのか。このような記事は、めったにお目にかかれません。また、解説がないと、ほとんどの読者はわからないのではないでしょうか。
たぶん、それを書ける記者を、養成していないのだと思います。かつて書きましたが、日本の新聞やニュースの国内閉鎖性は、世界でも珍しいと思います。1億人の市場、日本(その国)だけで通じる日本語(言葉)、英語でなくてもできる大学教育。これを満たしている国は、日本くらいでしょう。フランス語やドイツ語、ロシア語は、1国だけではありません。エリートと財界人が、外国語(英語)なしで仕事ができる数少ない国なのです。
先に述べた1千億ドルの融資についても、総理記者会見の際に質問をした記者は、一人もいませんでした。また、大きな記事にならなかったので、ほとんどの日本人は知りません。そしてそれがどのような効果を持ったかも、記事になっていません。
日本が国際社会で貢献するには、輸出や援助も一つのバロメーターですが、このような国際経済対策やルールづくりも重要です。そして、それを理解して記事にできる記者を養成することも、必要ですね。次は、浅川議長の活躍を伝える記事を、期待しましょう。