カテゴリーアーカイブ:社会の見方

雇用を維持するだけでなく、転職支援へ

2013年6月17日   岡本全勝

6月13日の日経新聞経済教室「成長戦略を問う―雇用」、佐々木勝・大阪大学教授の「攻めの労働移動政策を」から。
・・大学生に教える「労働経済学」の教科書では、生産要素である「労働」は一般的に可変と考える。すなわち、企業が生産量の需要や賃金に応じて自由に労働投入量を変えることができる。同時に、労働者も産業間を自由に移動できると仮定している。しかし、実際の労働市場は教科書通りにはいかない。新しい産業で急速に雇用が創出される一方で、古い産業で急速に雇用が喪失される。このように産業間で激しく労働需要が変動しているにもかかわらず、労働供給がそのスピードに付いていっていないように感じる・・
う~ん、これは教科書の方が、現実離れしているのであって、生身の各労働者は、そう簡単に転職できません。私を含めて、「明日から別の仕事に就きなさい」と言われても、例えば介護や農業の技能は持っていないし、引っ越しを伴うとなると、なおさら転職は難しいです。
この論考では、ドイツでは失業をできるだけ避けるため、経営難の企業で働く労働者の再就職支援事業に力を入れていることが紹介されています。多くの再就職支援会社が、州政府の指導の下、経営難の企業で働く労働者を受け入れて、上限1年間の職業訓練を与えて転職の準備を支援するのだそうです。結構うまくいっていると、報告されています。

・・(日本では)従来は、雇用調整助成金を柱とした雇用対策が主流であった。神林龍・一橋大学准教授の2012年の研究は、リーマン・ショックによって本来なら多くの雇用が失われるところであったが、雇用調整助成金のおかげで失業者が増加するのを防ぐことができたと報告している。雇用調整助成金は、衰退産業であっても労働者を放出しないようにして失業を回避する「守りの政策」として機能してきたが、もう次は「攻めの政策」が必要だ・・
雇用調整助成金は、失業手当ほどは知られていないようですが、ここで指摘されているように、かなりの人の失業を防いできました。特に2008年秋のリーマン・ショック後の急激な景気・雇用情勢の悪化に対応するため、支給要件が大幅に緩和されました。2009年夏には、月間約250万人が助成の対象となりました(3月13日付日経新聞)。

生活不活発病

2013年6月16日   岡本全勝

6月14日の毎日新聞「ひと」欄に、大川弥生先生が紹介されていました。「生活不活発病」の名付け親です。元は「廃用症候群」という名称だったそうです。確かにこれでは、診断された人は「廃人になるのですか」と思うでしょう。それに比べて、はるかにわかりやすい名称です。そして、対策もわかります。
被災地では仮設住宅に引きこもりになりがちで、またそれまでにはあった農作業や近所付き合いがなくなって、身体を動かすことが少なくなります。すると、歩けなくなったり、痴呆が進むという報告を聞いたことがあります。
かつてこのページで、「介護」という言葉がおむつカバーの会社が発案した名前だということを紹介しました(2007年5月30日)。介助の「介」と、看護の「護」をつなぎ合わせたのだそうです。1980年に考えられた、まだ新しい言葉です。1983年には広辞苑に載ったとのことです。これもよい命名ですね。

日本型雇用慣行は女性に不利

2013年6月16日   岡本全勝

6月12日の日経新聞経済教室「成長戦略を問う―女性活用」、川口章同志社大学教授の「日本的雇用慣行に修正を」から。
・・日本の企業、なかでも大企業で女性が活躍しにくいのは、いわゆる日本的雇用慣行と無関係ではない。日本の大企業は、終身雇用制、年功賃金制、企業内人材育成、内部昇進制、企業別労働組合などの独特の雇用慣行を持っている。実は、これらの雇用慣行が強い企業ほど、女性の活躍が難しいのである・・
あわせて、男性正規労働者の勤続年数の長さと、管理職に占める女性の割合の相関が図示されています。
その理由はまだ仮説の域を出ませんが、次のようなことが挙げられています。
1 そのような企業は、長期間離職せずに働く人材を求めている。結婚や出産で退職する女性が不利。残業、出張、転勤などを求められても、女性が不利です。
2 新卒採用が基本で中途採用がない。子育てなどで一度離職した女性が、復帰しにくいのです。
詳しくは、原文をお読みください。

衰退の原因

2013年6月12日   岡本全勝


南川高志著『新・ローマ帝国衰亡史』(2013年、岩波新書)を読みました。あのローマ帝国が滅亡したことに、多くの人は感慨を持ち、その原因を知ろうとします。
結果には、原因があります。特に「失敗」の場合には。かつてこのページでも紹介しましたが、プロ野球の野村監督がよく使う言葉に、「不思議な勝ちはあるが、不思議な負けはない」のです。
いろんな要素が絡み合って、結果が出ます。隆盛を誇った組織が衰退したときに、誰しもが「なぜ?」と思います。そう簡単に、例えば3行で表現することは難しいとわかっていても、私たちは「単純な答え」を求めます。南川先生の本も、その一つの答えだと思いますが、成功しているかどうかは、それぞれお読みになって、判断してください。
まず、東ローマ帝国と西ローマ帝国は、ほぼ千年もの時間差をおいて滅亡しています。よって、原因は違うのでしょう。この点は、南川先生の本が参考になります。
次に、滅亡とは、何をさして言うのか。王朝が途絶えることで滅亡というのか、その国を国たらしめている要素がなくなったときに滅亡というのか。軍人皇帝が次々と擁立され廃位されても、ローマ帝国はローマ帝国でした。他方で、王様の子孫がどこかで生きていても、国の中心が別の勢力に支配されていたり、国の仕組みが大きく変化していたら、それは「別の国」でしょう。その点では、ローマ帝国が滅亡したときに、かつての帝国や共和制を支えた「元老院」は、何をしていたのでしょうか。
西ローマ帝国が衰退・滅亡した要素は、何か。逆に、西ローマ帝国の末期に、帝国を支えていた要素は何か。地中海ではなく「ゲルマンの森」であり、ローマ市民ではなく「ゲルマンの民」であったのです(先生は、ゲルマン民族はなかったと主張しておられるので、誤解のないように)。しかし、それでも当時の人は、「我々はローマ帝国の市民だ」と考えていたのでしょう。
私が関心を持っているのは、ある国や組織が衰退したときに、それが外的要因(フン族の侵入なのか、自然環境の変化なのか)、内的要因(組織の腐敗か、社会構造の変化・指導者層の怠惰と安逸か)なのかです。多くの場合、外から攻められて崩壊したことより、組織内部がうまく処理できなくなって崩壊したと思います。それが顕在化するのが、環境の変化です。古代ローマ帝国を考えなくても、1990年代以降の日本、近年破綻した企業や銀行、さらには1941年の日本帝国(特に陸海軍)・・。

ゴキブリの味覚

2013年6月4日   岡本全勝


ノースカロライナ州立大学の勝又綾子研究員が、甘いものを食べないゴキブリを発見したことが、ニュースで伝えられています。4年間に7千匹のゴキブリに餌を与え、ブドウ糖を苦いと感じて、食べないゴキブリを見つけたのです。駆除剤は、ブドウ糖で包んでゴキブリが食べるように仕掛けてあります。生き延びるために、いえ食べなかったから生き延びたのでしょうが、そんなゴキブリがいるのです。甘い物好きのメタボには、朗報なのか地獄なのか・・。
今日紹介するのは、勝又さんの次のような発言です(2013年6月4日、読売新聞・顔欄)。勝又さんは2009年から、アメリカ暮らしだそうです。
・・米国生活は好きだが、レストランの味が今ひとつなのが悩みだ。「米国人はなぜ、この味をおいしいと思うのでしょうか」。いずれ、人間の味覚も研究したいという・・