9月21日の朝日新聞オピニオン欄、ジャン・ピサニフェリー教授のコラムは、「リーマン・ショック5年」でした。
・・米国の投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻が金融の大混乱や大不況を引き起こして5年が過ぎた。混乱はまだ収まっていないかもしれないが、これまでの教訓と残された課題を三つのキーワードにまとめた。
まず浮かぶキーワードは「回復力(resilience)」。5年前、多くの人が1930年代の大恐慌の再来を恐れた。実際、経済学者のバリー・アイケングリーン氏と経済史学者のケビン・オルーク氏が示したように、2008年から翌年への世界の工業生産の落ち込み方は当初、1929年当時と同様だった。世界の貿易量と株価指数の下落ぶりは当時よりも深刻だった。
幸いなことに歴史は同じ道をたどらなかった。1929年の大暴落から5年が過ぎても世界はまだ不況に沈み、貿易も縮小していた。現在、米国はいまだ雇用不況に直面し、欧州経済も危機前の水準に回復していない。だが2008年以降、世界の生産は15%増え、貿易量は12%以上拡大した。
世界は第2の大恐慌を免れた。2008年に起きたのは米国の危機であり、金融システムが米国とほぼ完全に一体化していた欧州にも災いが広がった。ただ、中国や他の新興国は輸出面で深刻なショックに見舞われたが金融不安には襲われなかった。逆に、中国などが保有する米国債の価格は、金利低下を受けて上昇した。
回復の背景には主要20カ国・地域(G20)による時宜を得た対応もあった。2009年、新興国と途上国は初めて協調して、金融緩和による景気刺激策を実施した。先進国と共に、保護主義に対抗することも約束した・・
続きは、原文をお読みください。
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進化する政策、当てにならない「常識」
9月20日の朝日新聞オピニオン欄、中村秀一さんの「老人福祉法50年。利用者本位、大部屋から個室へ」から。
・・1963年に老人福祉法が制定されてから50年になる。この法律によって、介護施設である特別養護老人ホームが誕生した。特別養護老人ホームは「定員80人の施設がわずかに1施設あるだけ」(1963年厚生白書)からスタートして、今日では7552施設、定員49万8700人を数えるまでになっている。
老人ホームは今も昔も同じと思われるかもしれないが、この半世紀の進歩は著しいものがある。40年前に長野県松本市の老人ホームに調査に行ったことがある・・畳敷きの1部屋に8人の高齢者がひしめくように暮らしていた・・
・・私は、80年代前半にスウェーデンで勤務し、帰国後、90年に厚生省の老人福祉課長となった。当時の特別養護老人ホームは4人部屋が中心で、個室は定員の1割に限られていた。スウェーデンでは個室が原則だったので、個室化の推進について施設関係者に打診したが、否定的な答えしか返ってこなかった。「高齢者は大部屋のだんらんを好む」「個室にすると職員の移動距離が増え、負担が増す」「重度の高齢者に個室は不要」などがその理由だった。やむを得ず、個室の限度割合を3割に引き上げることにとどめた。。
その後、留学先のスウェーデンから帰国した建築家の外山義氏の実証研究によって、大部屋では互いに隣のベッドの人が存在しないかのように振る舞い、「だんらん」は成立していないことが明らかになった。また、個室に転換した施設で職員の歩数を転換前後で比較したところ、個室化後にむしろ減少したといったデータも示され、4人部屋をよしとする神話は崩れていった・・
・・このような先駆的な取り組みを踏まえ、2002年から個室ユニット型の整備が国の補助対象となった。03年の介護報酬の改定で、個室ユニット型の報酬も設定され、制度化が完了した。11年10月時点で、個室ユニット型の施設は、特別養護老人ホームの施設数の 36.8%、定員27.8%を占めるに至っている。なお、居室数では、すでに全居室の3分の2が個室となっている・・
・・今後の高齢者介護の課題は、この半世紀の間に発展を遂げてきた介護サービスを、施設内にとどまらず、地域の中で提供していくことである。特別養護老人ホームの使命は、地域のケアを支える拠点として、地域包括ケアに貢献していくことだ・・
3人に1人は、家にトイレがない
NHKインターネット・ニュースに、「途上国のトイレを考える」がありました。世界の人口70億人の内、25億人もの人は、家庭にトイレがないのだそうです。これは、大変ですね。
官位を欲しがる中世人
本郷恵子著『買い物の日本史』(2013年、角川ソフィア文庫)が、おもしろかったです。「買い物の日本史」と表題がついていますが、内容のほとんどは、中世の官位を金で買う事情です。この表題には、やや疑問あり。
律令制が崩壊してから、官位は金とコネで買えるようになりました。相模守とか左右衛門尉とか、時代劇でおなじみの官位が、その役職に就いていなくても、もらえるのです。そのために、朝廷に対して、あるいは幕府を通じて、申請します。もちろん、相場の金額を納める必要があります。そのお金は、朝廷の収入になったり、社寺の造営の費用に充てられます。取り次ぎをする貴族たちも、手数料を取ります。
そんな官位ですから、もらっても収入が増えるわけでもありません。何故、皆がそんな肩書き=紙切れを欲しがるのか。この仕組みを成り立たせているのは、官位をもらわないと社会で名乗りをできない=一人前と認めてもらえないという風習です。現代だと、名刺がないということでしょうか。だから、猫も杓子も、少々の金と地位のある者は、官位を欲しがります。そして、さらに上の位を目指します。朝廷、幕府、貴族、社寺が、これらによって一つの秩序を構成します。公共システムを、成り立たせているのです(p122)。
恐るべし、官位の価値。逆にいえば、それも手に入れることができるという、貨幣の価値。
もっとも、時代とともに、ものの値打ちが下がることは、世の常です。どんどん、手数料が下がります。
そして幕末になると「七位、八位ならば、無位無冠の方がよほど良うございます。何故と申しますと、下駄屋、魚屋、そんな者が七位になるのでございます」という状態になります(p187)。なぜ、このような人たちまでもが、官位を欲しがるのか。そして手に入るのか。それは、本をお読みください。
もっとも、現代人も官位を欲しがります。中世の人たちを笑うことはできません。
精巧だけど安い日本の時計、ブランドで売るスイスの時計
朝日新聞別刷りGlobe9月15日号は、時計の特集でした。2012年、シチズンとセイコーの2社でムーブメント(時計の中身=機械部分)の販売個数は、5億個以上。世界の時計の生産数は推計10億個なので、2個に1個はセイコーやシチズンのムーブメントが入っています。普及用だと単価は100円しないとのことです。1個100円ですか。儲かりませんね。
日本のメーカー全体では、時計とムーブメントの出荷数は約6億個。うち完成品は6,700万個なので、ほとんどはムーブメントで出荷されています。
完成品の輸出個数は6,000万個で、金額は1,000億円。これに対し、スイスは、完成品の輸出個数は約3,000万個で、金額はなんと2兆1,000億円。日本の半分の個数で、20倍の金額を稼いでいます。単純平均すると、日本製は1個2千円で、スイス製は7万円です。私の計算は間違っていませんよね。
う~ん。ブランド恐るべし。日本メーカーはかつて1970~80年代に,クオーツ式腕時計を開発して、スイスの時計産業を壊滅状態まで追い込んだのですが。見事に復活していますね。日本は安くて精巧な機械で売っていては、部品メーカーで、いずれ新興国に追いつかれますね。