カテゴリーアーカイブ:社会の見方

人工知能時代に必要な能力

2025年6月2日   岡本全勝

5月9日の日経新聞経済教室、高東也・大阪大学准教授の「AI時代のスキル、分散化と批判的思考が軸に」から。
・・・「スキルで雇うな、態度で雇え(Don't hire for skills.Hire for attitudes)」という言葉を耳にしたことがあるだろうか。名経営者として知られる米サウスウエスト航空の共同創業者の一人、ハーバート・ケレハー氏の格言である。
この言葉の実証的な根拠は定かではないが、ここでいう「スキル」は主に仕事に特化した専門的な認知スキルを指す。かたや「態度」はモチベーションやコミュニケーション、協調性など非認知スキルを意味していると考えられる。
対話型AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」の出現以来、「AIが雇用を奪う」という懸念がくすぶり続けている。最新の経済学研究によれば、職業をいくつもの業務(タスク)に分けて代替性を分析したところ、生成AIによって完全に置き換えられる職業はそれほど多くないことが分かってきた。
とはいえそれが安心材料にはならない。職自体は失われなくても、仕事の内容は大きく変化していくことが予想されるからだ。ではAIが急速に進化するこれからの時代に、私たちはどのようなスキルを身につけるべきなのだろうか・・・

・・・一方、依然として人間ならではの優位性が残る領域がある。文脈に応じた深い理解や意図の読み取り、複数の視点を統合した倫理的判断などで、AIは対応の難しさを示している。特に「行間を読む」能力や隠された意味の理解は、AIの大きな壁となっている・・・
・・・図のスキルピラミッドの枠組みで考察すると、AI時代でさらに重要性を増すのがピラミッドの土台となる非認知スキルだ。対人関係力、協働力、社会的手がかりを理解・適応するスキルが含まれる。感情の機微や非言語的サインを適切に読み取り、真の共感に基づいたコミュニケーションや信頼関係を構築する力は、人間が依然としてAIより優位に立てる領域だ。

これに対し、今後大きく変容すると思われるのが認知分野のスキルセットである。世界経済フォーラムの「未来の仕事レポート2023」によると、最も重要とされたスキルは「分析的思考」だった。分析的思考は今後5年間で72%の成長が見込まれる。このスキルに含まれる推論や意思決定の能力が最も自動化されにくいため、将来も重要になると考えられている。

2位に続いたスキルは「創造的思考」で、分析的思考よりも速いペース(73%)で成長し、今後ますます需要が高まると予測されている。また「テクノロジーリテラシー」も急成長中の中核スキルであり、特にAIを有効活用するための能力が重要になっている。
これらの分析的思考や創造的思考は高度な専門性を発揮するための土台となる「基礎的認知スキル」である。学習や仕事をする際の情報処理や思考を担う汎用スキルであり、AIリテラシーも基礎的認知スキルの上に構築される。
このような現状を踏まえると、暗記や計算を重視した従来の教育システムを見直し、分析的思考や創造的思考を育成する教育モデルへのシフトが求められる・・・

人口は減っているが就業者は増えている2

2025年6月1日   岡本全勝

人口は減っているが就業者は増えている」の続きです。記事では、労働者不足も取り上げられています。そのような報道もたくさんあります。自治体でも、職員不足に悩んでいます。
機械化やITの活用で労働者は減ると思うのですが、なぜ、労働者不足になるのでしょうか。この点についても、識者に聞いてみました。原因は、「職種のミスマッチ」のようです。

人手不足は、典型的には「介護や看護や保育」「建設や運輸や警備」など、「エッセンシャルワーカー」と言われる方々が圧倒的に足りていません。他にも、IT人材など求められる「人財」が足りていないということもあるのですが。
建設「就業」者は、令和4年平均479万人ですが、ピーク時の平成9年から30%減少しています。高齢化にもかかわらず、介護職員は、令和5年度に、調査開始以来初めて減少に転じました。
建設業も無人化施工を進めたり、介護分野も効率化に努めたりしているのですが、この分野は、労働集約型の産業であり、人手不足の解消にはなっていないのです。

製造や建設などの現場が人手不足に苦しむ一方で、事務職は求職者が求人を大きく上回っています。
ここ30年で高卒就職者は7割減ったのに対し、大卒就職者が4割近く増えたことも原因のようです。大卒は先輩たちのように事務職を目指し、高卒が就いたような作業現場を選ばないのです。しかし、求人側はそんなに事務職場が増えるわけではありません。

人口は減っているが就業者は増えている

2025年5月31日   岡本全勝

3月31日の朝日新聞に「働き手、増える高齢者・女性」が載っていました。
・・・15歳以上の働く意思のある人の数を示す「労働力人口」が増え続けています。2024年の平均は6957万人で、7千万人に迫る勢いです。その内容を分析すると、高齢者と女性の働き手が増えていることが浮かび上がってきます・・・

4月14日の日経新聞夕刊に、「人材危機、なぜ起きた」という記事が載っていました。労働者不足についての解説です。
そこには、生産年齢人口は減っているが、就業者数は増えている(労働力調査)とあります。へえ。他方で、働き方改革が進んだとあります(古くてすみません。途中まで調べて放置してあったのです)。

日本の生産年齢人口は減っているのに、就業者数は増えている。これは、高齢者と女性の労働参加によります。ところが、労働力は不足している。なぜか。識者に聞いてみました。
就業者数が増えているのに、労働者の総労働時間数は減っているのです。「就業者数×1人当たり労働時間」という概念は「労働投入量」です。
内閣府の「日本経済レポート(2023年度)」第1節 コロナ禍を経た労働供給の動向2-1-1図(2)によると、1990年を頂点に労働投入量は減ってきています。長時間労働が減った、非正規労働者(短時間労働)が増えたということでしょう。

NTT、世界一の時価総額が6割に

2025年5月31日   岡本全勝

5月9日の日経新聞に「NTT「失われた30年」、元世界一の時価総額4割減」が載っていました。
・・・NTTは、NTTデータグループ(データG)を完全子会社化して海外市場を開拓する。背景にあるのは米IT(情報技術)大手や中国企業にイノベーションで大幅に出遅れた危機感だ。かつて世界トップだった時価総額は4割減り、30年で輝きを失った日本の歩みと重なる。再編で競争力を上げ、挽回を目指す・・・

電電公社が民営化されNTTになったのは1985年です。1989年5月末時点で時価総額は22.4兆円と世界第一位でした。1999年にNTTドコモが始めた携帯電話のインターネット接続サービス「iモード」は革新的でした。しかし海外展開には失敗。通信規格が日本独自だったのでいわゆる「ガラパゴス化」し、アップル社がiPoneを出し、スマートフォンの世界になりました。過去10年でアメリカのテック大手が台頭し、韓国、中国も技術力を高めました。

・・・この間、ドコモを含めたNTTグループは革新技術やサービスを打ち出せなかった。日本市場が一定の規模を持っていたほか、年功序列が根付く日本企業の仕組みがイノベーションを妨げたとの見方がある。時価総額は2025年4月末時点で13兆円と、199位にまで沈んだ・・・

SNS高い中毒性、脳発達妨げ

2025年5月30日   岡本全勝

5月7日の読売新聞「子どものSNS規制 世界の潮流」、川島隆太・東北大加齢医学研究所教授の「高い中毒性 脳発達妨げ」から。

・・・子どものSNS利用については、法的なものを含めて、何らかの規制が必要だ。理由は、SNSとスマートフォンには依存性と中毒性があるという一点に尽きる。また、使いすぎは脳の発達を抑制し、子どもの発達に害があるというデータもあるのだから、何らかの規制をしなければならない。
メールとは違い、SNSは、メッセージが届いたらすぐに返信しなければいけないというプレッシャーがある。例えばLINEだと、メッセージを読んですぐに返信しないと、相手が「既読無視した」と思って不快感を抱くのではないか、と不安になる人が多い。離れた空間にいるのに、同じ場所にいて会話をしていると錯覚するような仕組みになっているところが、中毒性を生む原因の一つだろう。
私たちの実験では、スマホの画面を見ていなくても、SNSのメッセージの着信音が鳴った途端、集中力が途切れて作業効率が落ちることがわかった。一方、見えないように背中側に置いた時計のアラームを鳴らしても集中力は落ちない。SNSが集中力に与える影響の大きさがうかがえる・・・

・・・2010年以降、仙台市の小中学生延べ約7万人を対象に、生活習慣と学力について調査している。勉強中に使用しているアプリと学力の関係を調べると、ゲームや動画、音楽のアプリより、SNS系のアプリを使っていたほうが学力が下がるという結果が出た。SNSの中毒性が高く、利用時間が長くなって勉強時間が減るためだろう。
さらに、5~18歳の子ども約200人の脳の発達をMRI(磁気共鳴画像)による検査で3年間調査したところ、インターネットの使用時間が短い子どもと比べると、長い子どもは大脳のうち3分の1の発達が止まり、大脳の神経細胞をつなぐ「大脳白質」という部分はほぼ全域の発達が止まっていた。長時間の利用が脳の発達を阻害している可能性がある・・・

・・・SNSのように依存性、中毒性があるものは、自分の意志ではなかなかやめられない。特に子どもは、論理的な思考をつかさどる大脳の前頭前野が発達途上のため、やめることが非常に難しい。そのために、子どものSNS利用については何らかの規制が必要だ。子どもたちが自分の人生に責任を持てる年齢までは、「中学生はスマホを持たない」「高校生はSNSをしない」などと規制するべきだ。SNSやスマホは、アルコールや薬物と同じくらい害があるということを知ってもらう、国や自治体による活動も必要だろう・・・