4月27日の読売新聞夕刊に、「東電に3100万円賠償命令」という記事が載っていました。福島第一原発事故で病院に入院中の患者がバスで避難させられ、死亡した事件です。遺族が東電に賠償を求めた裁判の、東京地裁の判決です。この事件は、原発事故とともに、避難誘導が適切に行われなかったという、反省すべきことです。
ところで、今日ここで取り上げたのは、新聞の書き方についてです。読売新聞には、「遺族側の代理人弁護士によると、東電側は避難と死亡との因果関係は争わず、賠償額が主な争点だった」と書かれています。他方で、朝日新聞夕刊は「避難患者死亡、東電に責任 東京地裁、原発事故で賠償命令」という見出しです。この見出しを見ると、東電が患者死亡について責任の有無を争っていたと読めます。記事にも、東電が因果関係は争わず、賠償額が争点だったことは書かれていません。これは、誤解を招きますね。編集者も気がついたのでしょうか、翌28日朝刊には「3100万円賠償、東電に命令 入院患者、原発避難で死亡 東京地裁判決」という見出しになっていました。
気になって他紙を見たら、毎日新聞28日朝刊は「東電は死亡との因果関係を認めており、賠償額が争点だった」、日経新聞28日朝刊は「東電側は原発事故と死亡との因果関係は認め、賠償額を争っていた」と書いています。
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低金利の副作用
景気刺激のために、超低金利政策がとられています。金を借りる側にとっては、ありがたいことです。住宅ローンとか。他方で、困る人も出てきます。基本財産を運用して事業を行っている財団です。例えば、篤志家が寄付をした基金で、その利子で学生に奨学金を支援しているような財団です。金利が下がると、受け取る利子が減り、事業を縮小せざるを得ません。その分野の方に、「どのようにしているのですか」と聞いてみました。答は、次のようなものでした。
1 財産取り崩し型=積んである基本財産を取り崩しながら、事業を運営する。これはいつかは取り崩し終わって、財団が解散する可能性があります。
2 株式移行型=財産を債権から株式へと買い替える。金利は低くとも、株式の配当は高いものがあります。ある財団は、3%で運用したとか。一方、損をする可能性、さらには元本がなくなる可能性もあります。そして、中小の財団では、運用の能力に欠けます。
3 不動産移行型=これは、株式の代わりに、財産を不動産へと買い替えます。これも不動産市況によります。
4 出捐企業補填型=親企業から、追加の資金を出してもらいます。一方このご時世、親企業もそんなに裕福ではありません。
5 ファンドレイジング型=プロジェクト単位で、外部からの寄付を募ります。この場合、ファンドレイザーという新たな専門職が必要です。
ここまでは、何らかの形で低金利に対応している型です。最後に
6 縮小型=事業費、事務局経費を削減して、耐えようというものです。財団の役員や事務局に考える力がないと、こうなります。中小の財団はこれが多いのではないか、という見立てです。
役場と企業との協働
岩手県北上市が、「地域貢献活動企業表彰」を実施しています。田村太郎さんに教えてもらいました。「日経グローカル」4月18日号。市協働推進市民会議(市民団体)と協働で、市内で地域貢献活動を行っている企業を表彰するものです。
拙著『復興が日本を変える』でも強調しましたが、今後の地域づくりには、企業やNPOとの連携は不可欠です。しかし、市町村役場は、案外と地域の企業とのつながりがありません(P302~)。消防や食品衛生などの取り締まりの対象か、納税者として終わっているのではないでしょうか。しかも、役場内の縦割り行政で、域内企業との統一的な連携は進んでいないと思います。
北上市の取り組みは、良い方法ですね。地域との絆を強める工夫をしています。単に、地域に貢献したかだけでなく、「市民と企業間などの連携や協働があるか、また、ある場合はその役割分担やバランスは望ましいものか」を審査基準にしています。
北上市は、NPOとも緊密な連携をしていることで有名です。ふだんからこのような連携をしていることが、いざというときに役に立ちます。私もかつて呼ばれて、シンポジウムに出席し、市長さんの取り組みに感銘を受けました。「講演の記録21」2014年2月1日。
有名銘柄と無名の商品。質とブランド
滝田洋一著「世界経済大乱」(2016年、日経プレミアシリーズ新書)に載っているエピソードをもう一つ。
バレンタインのチョコレートを2枚もらったトヨタ自動車の豊田章男社長。ブランド名を伏せて、味を試してと言われました。1枚は日本製、もう1枚はベルギー製。豊田社長は日本製の方がおいしく感じます。ところが値段は10分の1だったそうです(p226)。
目隠しテストをして、有名な銘柄と無名の商品の評価が反対になることは、しばしばありますよね。そこが有名ブランドの「価値」なのでしょう。いずれ、後発の良い商品に負けるでしょう。あるいは、後発の良い商品も販売戦略を考えて、市場での価値を高める必要があります。
経済の動きを測る、構造変化への対応
滝田洋一著「世界経済大乱」(2016年、日経プレミアシリーズ新書)から。
企業が投資として認識している範囲と、政府のGDP統計での投資の範囲がずれているのです(p234)。GDPでの投資は、建物や機械などの有形固定資産(約58兆円)とソフトウエアなど(約11兆円)の合計68兆円です。無形資産の多くが、こぼれ落ちています。例えば、研究開発投資(15兆円)、ブランド力や技術力など「経済的競争能力」が7兆円です。そこでも紹介されていますが、グーグルやアマゾンの価値は、コンピュータとその施設設備ではありませんよね。このほか、海外の子会社の株式取得や企業買収も、企業にすれば投資ですが、政府の統計からは落ちています。この話は、既に新聞に書かれているので、読まれた方もおられるでしょう。「設備投資とは何か 食い違う政府と企業の認識」(日経電子版、2016年1月4日)。新聞記事には、範囲のズレが図になっているので、記事本文と一緒にそれをご覧ください。
少し話はずれますが、産業の3分類も今や機能を発揮しません。習いましたよね。第1次産業=農業、林業、水産業など。第2次産業=製造業、建設業など。第3次産業=情報通信業、金融業、運輸業、販売業、対人サービス業など。わかりやすいです。
しかし、近年の産業別のGDP構成比は、第1次産業が1.2%、第2次産業が23.9%、第3次産業が74.9%です。1.2%と75%を比べても、有意な結論は出ないでしょう。もっと違った分類基準が必要です。それぞれの指標は、考案されたときは威力があるのですが、構造が変化すると、新しい物差しが必要です。