カテゴリーアーカイブ:社会の見方

経済成長の軌跡

2017年3月30日   岡本全勝

この表は古く、別に新しい図表があります(2021年9月24日)。

(日本の経済成長と税収)
戦後日本の社会・政治・行政を規定した要素の一つが、経済成長であり、その上がりである税収です。この表は、拙著「新地方自治入門-行政の現在と未来」p125に載せたものを更新したものです。
次の4期に分けてあります。すなわち、「高度経済成長期」「安定成長期」「バブル崩壊後(失われた20年)」、そして「復活を遂げつつある現在」です。
1955(昭和30)年は、戦後復興が終わり、高度経済成長が始まった年。1973(昭和48)年は、第1次石油危機がおき、高度成長が終わった年。1991(平成3)年は、バブルがはじけた年です。第2期は「安定成長期」と名付けましたが、この間には石油危機による成長低下とバブル期が含まれています。2012年が区切りになるかどうか。それは、しばらく見てみないと分かりません。ひとまずの仮置きです。


高度経済成長が、いかにすごかったかがわかります。年率15%の成長は、3年で1.5倍、5年で2倍以上になるという早さです。池田総理が「所得倍増論」を唱えました。それは「10年で所得を倍にする」というものでした。名目値では、5年で倍になりました(もちろん物価上昇があったので実質価値では違います)。

税収も同じように伸びていますが、実はこの間に毎年のように減税をしました。累進課税なので、減税をしなければ、もっと激しく伸びたと予想されます。石油ショック後も結構な成長を続けたこと。バブル後はそれが止まったことも。
そして、参考(65歳以上人口)に示したように、高度経済成長期は日本が「若く」、社会保障支出も少なくてすみました。当時ヨーロッパ各国は、すでに10%を超えていました。現在ではヨーロッパ各国を追い抜いて、世界一の高齢国になっています。人口の増加率も、もう一つの要因でしょう。2004年をピークに減少し始めました。
なお、より細かい景気循環については、次のページを参照してください。
内閣府の景気基準日付 http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/150724hiduke.html
日本の30年 http://www.geocities.jp/sundayvoyager/index.html

(GDPの軌跡と諸外国比較)
次は、日本、アメリカ、韓国、中国の4か国のGDPの軌跡です。「新地方自治入門」p6の図表「日本の国民一人当たりGDPの軌跡と諸外国の比較」を更新したものです。この図は、縦軸が対数目盛になっています。一つ上は2倍でなく10倍です。等間隔目盛にすると、とんでもない急カーブになります(縦に100枚つないだ状態を想像してください)。
これを見ると、かつてなぜ日本が一人勝ちできたのか、そして近年そうでなくなったかが、わかります。上に掲げた、日本の経済成長の数字だけでは見えないものが見えてきます。2018年12月23日に図を更新しました。今回も、小黒桂君の助けを借りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これらの図表は、昔から使っていたものです。なかなかの優れものです。日本の社会と行政を規定する経済要因を、2つの図表で示すことができます。

今回は、小黒桂君の助けを得ました。旧サイトの「戦後日本の経済成長と税収」のページ(引っ越しの際にリンクがうまく移行できなかったらしく、新しいサイトでは、一部の図表が出てきません。よって、ページを作り直しました)。

外国人の目で見る日本

2017年3月26日   岡本全勝

3月20日の読売新聞文化欄「外国人の目で見る日本」から。
・・・外国人観光客をガイドする通訳案内士は、彼らが見せる意外な疑問や驚きに日常的に接している。業界団体の一つ、日本観光通訳協会の萩村昌代会長が明かしてくれた・・・
・・・修学旅行で行儀良く行動する中高生や、観光バスの運転手が乗客を駐車場で待つ間にタイヤのホイールを拭く姿などにも感銘を受ける外国人観光客がいた。「彼らは『日本人は客が見ていないところでも働くのか』と感激し、写真を撮っていた。私たちは、どこで見られているか分からないし、意外なものが観光資源になり得る証だ」・・・

このほかに、訪日外国人が驚き、感動する例として、次のようなものが挙げられています。
・小学生が1人で登下校している(危険ではないのか?)
・ハイテクなトイレ(買って帰りたい!)
・音をたてて麺を食べる(不快に感じる)
・富士山頂に雪がない(一年中白いはずでは?)
・アイスコーヒー(コーヒーは温かいものでは?)
・ごはん(白飯)に味がない(どうして食べられるの?)

街角の自動販売機が壊されないことも、びっくりだそうです。「お金が入っているのに、なぜ壊されないのか」と。東日本大震災の際も、「こんな時に、暴動と略奪が起きないのは、日本だけだ」とあきれられ、笑われました。日本は、それくらい成熟した社会です。

水町先生の労働法入門

2017年3月23日   岡本全勝

水町勇一郎著『労働法入門』(2011年、岩波新書)が、すばらしいです。出版されたときは、「法律の入門書、しかも労働法を新書で書いて、面白いのかなあ」と思って、読みませんでした。2月12日の日経新聞読書欄で、川本裕子・早稲田大学教授が紹介しておられたので、読みました。読んでみると、新書という読みやすさと、新書とは思えない内容の濃さです。

1 具体事例から入るので、わかりやすいです。海外旅行の予定を立てていたのに、上司から仕事のために時期を変えて欲しいと指示された場合。定年間近になって、後輩に職を譲るために自宅で休養を命じられた場合。
2 国や時代によって労働に対する考え方が違い、労働法はその社会の考えを反映していること。また、法律を変えることで、働き方を変えることができること。
3 西洋の市民革命で、領主や同業組合に縛られていた人々を解放し、自由で独立した存在としました。しかし、自由に働くことができる反面、それまであった共同体の保護を失うことになりました。そして、労働者は過酷な条件の下で、働かざるを得なくなりました。そこで、契約の自由と言う原則を変え、労働契約は法律で一定の規制をかけることにしました。そして、集団としての労働者を守ることも、導入しました。
4 ところが、20世紀の後半から、従来の労働法が前提としていた状況が変わってきました。工場で集団で働くといった標準的な労働者が減って、より自由な裁量で働くホワイトカラーや専門技術者が増え、またパートタイム労働者や派遣労働者も増えました。すると、従来の労働法では、社会の変化について行けなくなったのです。そのために、各国は1980年代以降、労働法のあり方に修正を加える改革を進めています。
私は、1970年代に大学で労働法を学びましたが、その後の社会の変化とそれに対応するための労働法の改革の動きが、とても勉強になりました。労働組合が機能不全になっているのも、この社会の変化によるのでしょう。
5 日本の労働関係の特殊性も解説されています。終身雇用、よほどのことがない限り解雇しないことを前提とした雇用システムです。メンバーシップ型労働社会であり、職に就く就職でなく、会社に入る就社です。それによって、法律や判例が諸外国と異なるのです。
6 労働法には、労働基準法のような規制の法律とともに、雇用政策の法律があること。働けなくなったときに生活を保障する失業手当です。このような消極的労働市場政策だけでなく、より積極的な労働市場政策もあります。雇用調整助成金や職業訓練助成です。
7 社会の変化に応じて、労働政策を変えていく、そして労働法制を変えていく。それが、国家や会社、社会に求められています。

法律というと、無味乾燥な世界と思われるでしょうが、こんなに面白いのです。そして、社会や国家の役割が大きいことがわかります。勉強になりました。

上手な事故対応を学ぶ

2017年3月21日   岡本全勝

3月7日の読売新聞に、辻伸弘さんの「サイバー攻撃 事後対応で評価」が載っていました。
・・・サイバー攻撃が巧妙化する中、セキュリティー事故はどんな組織で起きても不思議ではない。
ひとたび、情報漏洩などが発覚すれば、社会から糾弾され、時には「袋だたき」にあうこともある。セキュリティー対策の甘さや対応の遅れが検証されることは当然必要だ。だが中には、発覚後の情報開示や再発防止策の内容の感心させられるケースもある。きちんと対応したところと、ほとんど何もしなかったところが同じように扱われるのはおかしいのではないかー。
そんな問題意識から、私を含むセキュリティー業界の有志5人で昨年から始めたのが「情報セキュリティ事故対応アワード」である。情報開示と説明責任の観点から事後対応を評価し、表彰する取り組みだ。事故を起こしたことを責めるばかりでは萎縮してしまう。むしろ適切な対応を褒めることで社会全体の対応を向上させようという「北風より太陽」作戦である・・・

詳しくは原文をお読みいただくとして、今年の表彰結果がインターネットで見ることができます。

国立公文書館特集

2017年3月17日   岡本全勝

先月、このページで国立公文書館を紹介しました(2月23日)。月刊「東京人」4月号が、国立公文書館を特集しています。良い企画ですね。雑誌にとっても、公文書館にとっても。
このような施設は、展示品を見ただけでは、その展示物のもつ意味がわからないのです。解説が必要です。