カテゴリーアーカイブ:社会の見方

欧米の大手メディアの日本語版ニュースサイト

2017年4月11日   岡本全勝

4月8日の朝日新聞に「日本語サイト、開設続々」という記事が載っていました。
・・・欧米の大手メディアの日本語版ニュースサイトが次々に誕生している。公共放送、経済紙、通信社。米大統領選など世界中が注目する国際ニュースが近年多いことや、東日本大震災の発生が、日本語読者の海外ニュース需要を高めているとの見方もある・・・

日本のニュースなら日本の報道機関の方が充実しているでしょうし、海外ニュースなら通信社の配信か日本人特派員の記事で良さそうなものです。なぜか。
・・・ロイターの下郡さんと、WSJの西山さんは「日本の読者は日本が世界にどう見られているのかをとても気にする」と口をそろえる。11年の東日本大震災と原発事故が閲覧者増の一因になったとも指摘する。下郡さんは「日本メディアが政府の主張をそのまま伝えているのではないかとの不満もあり、海外から福島に入った記者の記事がよく読まれた」と振り返る・・・
・・・BBCの加藤さんは、日本の報道機関との立ち位置の違いを指摘する。「例えば日本のメディアが米国政治を報じる際には、TPPや安保などで日本にどんな影響があるのかが何よりも大事になる。我々は、日本では報道されない情報に価値を見いだしている」
在英ジャーナリストの小林恭子さんは「海外ニュースが日本語でそのまま読めるのがだいご味。学者やビジネスマンの情報収集にも便利だ。日本メディアも、ニュースに多様性を持たせることが求められているのでは」とみる・・・

日本は島国であることとともに、日本語が一番の「非関税障壁」だと私は考えています。商品はその壁を越えますが、報道、教育、研究などは、日本語の壁に守られ「鎖国」「ガラパゴス」状態でも生きてこれました。高等教育を、英米仏以外の自国語でできる国は少ないのです。多くの国で指導者層は英語でニュースを見ています。日本でも、自然科学研究分野は、日本語の壁を越えて海外へ打って出ています。
新聞社、大学、霞ヶ関が、日本語で守られた代表例です。報道で、日本語の壁をこのような形で乗り越えるとは想像していませんでした。

イスラーム

2017年4月9日   岡本全勝

NHKテキスト「宗教の時間 イスラームという生き方」が、勉強になりました。宗教の時間というより、イスラーム世界を知る文化人類学です。心の問題、悩みに答える宗教であるとともに、日常生活を律する生活の指針でもあるのですね。子供を持つことの勧め、利子を取ってはいけないという教え、ラマダン・・・。
他方で、日本やヨーロッパでは宗教・習俗が生活を律していた時代から、近代に入って世俗化が進みました。仏教は殺生を禁じましたが、私たちは、肉を食べています。そのように、近代化とともに、脱宗教・世俗化が進みます。イスラーム世界は、このまま宗教が生活を律するのか、他の世界と同じように世俗化が進むのか。

残業を減らすために日本型働き方を変える

2017年4月6日   岡本全勝

4月4日の日経新聞オピニオン欄「働き方改革 ここが足りない」から。
オリックスCEOの井上亮さん。
・・・私は就職してから40年以上、定時退社を信条としている。顧客との夜の会合などを除けば過去3回しか残業はしていない。残業をしなくて済んだのは、仕事を自分の裁量でコントロールできたからだ。新しい案件を担当するときは最終期限から逆算して、スケジュールを立てる。いつまでに何をするか。結果が伴っていれば自由裁量が許された。もちろん顧客等の要請で急きょ残業をしなくてはならない業務も一般的にはある。ただすべての業務が急に生じるわけではない・・・
・・・グローバル市場で勝ち残るためには、今までのように「会社に労働時間で報います」といった働き方はいらない。高度成長時代は労働時間の長短が企業の競争力に大きく影響したが、今はどれだけ他社にないアイデアを生み出せるかが求められている。それぞれの企業でも創意工夫によって働き方改革を実現できるはずだ・・・

リクルートワークス研究所の石原直子さん。
・・・日本企業の生産性が低い一番の理由は意思決定が遅いことだ。特に部長や本部長といった中間管理職がリスクを取らない構造に問題がある。例えば新しい事業を始めようとするとき、課長クラスは、ありとあらゆるリスクを潰してから部長に上げる。これにかなりの時間を取られる。部長はノーリスクの計画にはんこを押すだけ、というのはよくある風景だ。
現場が半年かけて準備したことが上層部の会議で「やはり実行しない」と決まることもある。この場合、現場は頑張ったけれども成果はゼロだ。いずれも、やるかやらないのかの判断を上の人がリスクを取って最初に決めてくれれば1分ですむ話だったりする。
こうした意思決定の構造を残していては生産性は上がらない。管理職の責任と権限をきちんと定義する必要がある。管理職はリスクをとるからこそ高い給料をもらっているはずだ。責任を分散する体制も意思決定のスピードを落とす。年収2000万円の部長が5人いるより、年収1億円の部長1人がリスクをとって決めた方がいい。イノベーションも生まれやすくなる・・・

残業を減らすためには、旧来の日本型働き方を変える必要があります。原文をお読みください。

アメリカ白人中年の死亡率増加の原因

2017年4月5日   岡本全勝

3月29日の日経新聞オピニオン欄、The Economist 「米の白人中年、高死亡率の理由」から。
1999年から2013年にかけて、アメリカ白人中年の死亡率が上昇しています。それまでは低下し、欧州でも年間2%のペースで減り続けています。米国白人の死亡率は、スウェーデンの2倍、自殺や薬物、アルコール中毒が原因です。

・・・両氏(ノーベル経済学賞のディートン夫妻)は、長期的により漠然とした力が働いているのではないかと推測する。根本的な要因としては、貿易の拡大と技術の進歩により、特に製造業の低技能労働者が豊かになる機会を失ったというおなじみの説が挙げられる。だが、社会的変化も見逃せないという。
つまり、生活が経済的に不安定になるにつれ、低技能の白人男性の多くは結婚より同棲を選ぶようになった。彼らは昔から地域に根づき、同じ価値観を重視する宗教ではなく、個人の考え方を尊重する教会を頼り始めた。仕事や職探しも完全にやめてしまう傾向が強まった。確かに、個人の選択を優先した結果、家族や地域社会、人生から自由になったと感じる人は多い。反面、うまくいかなかった人たちは自分を責め、無力感から自暴自棄に陥ると両氏はみている。
では、なぜ白人が最も強く影響を受けるのか。両氏は白人の望みが高く、かなわなかったときの失望がその分大きいからだと考える。黒人やヒスパニックも経済環境は白人より厳しいが、そもそも彼らは初期の期待値が白人より低かった可能性がある。あるいは、彼らは人種差別の改善に希望を感じているのかもしれない。対照的に、低技能の白人は人生に絶えず失望し、うつ病になったり薬物やアルコールに走ったりするとも考えられる・・・

数字に表せる経済的事象は、経済学が解き明かしてくれます。しかし、このような数字に表れる社会の変化でも、経済学では分析や解決ができないものがあります。社会学、政治学、行政学の出番です。これらが、政策科学として有効になるためには、これらの事象を分析し、対策を打つ必要があります。原文をお読みください。

現在の社会に「満足している」

2017年4月3日   岡本全勝

内閣府が行った「社会意識に関する世論調査」で、現在の社会に全体として「満足している」と答えた人は66%と、この調査を始めた平成21年以降、最も高くなりました。
平成21年では、40対60で満足していない人の方が多かったのですが、年々満足している人が増えて、25年に逆転し、今年は66対33にまでなりました(図14-2)。
これ自身は良いことです。ただし、その理由が何なのかが、気になります。
一般的には、若者は社会の現状に不満を持ち、年齢が高くなると満足する(納得する、あるいはあきらめる)が増えてきます。この調査でも、年齢別を見ると、だいたいその傾向なのですが、違うところがあります。20代の男性です(表14-1のエクセルを見てください)。極端に満足しているのです。不満が30%しかありません。30代男性は44%が不満で、20代女性も35%が不満です。これが「草食系男子」現象で、現状に満足して、努力や改革を目指さないのだとすると、困ったことです。

満足している要素は、「良質な生活環境が整っている」43%,「心と身体の健康が保たれる」27%,「向上心・向学心を伸ばしやすい」18%,「人と人とが認め合い交流しやすい」17%,「働きやすい環境が整っている」16%です。満足していない点は,「経済的なゆとりと見通しが持てない」43%,「若者が社会での自立を目指しにくい」36%),「家庭が子育てしにくい」29%,「働きやすい環境が整っていない」25%,「女性が社会での活躍を志向しにくい」25%です。

国の政策に国民の考えや意見がどの程度反映されていると思うか聞いたところ,「反映されている」とする者が35%,「反映されていない」とする者が62%です。
現在の日本の状況について、よい方向に向かっていると思う分野は、「医療・福祉」31%、「科学技術」26%、「治安」22%です。一方、悪い方向に向かっている分野は、「国の財政」37%、「地域格差」が29%です。