カテゴリーアーカイブ:社会の見方

世界の長期的構造変化、改革と被害者

2019年1月23日   岡本全勝

1月21日の日経新聞「月曜経済観測」、玉木林太郎・国際金融情報センター理事長の「試練の世界経済 長期の構造問題、議論必要」から。

・・・今の世界経済をどうみますか。
「世界は長期的な大きな構造変化期にある。グローバル化がモノやカネから人にまで及び様々な問題を引き起こす。デジタル化が企業や社会生活そのものを完全に変えようとしている。温暖化防止への脱炭素という課題ものしかかる。こうした要因が所得、資産の格差を拡大する方向に働き、政治的にはポピュリズム(大衆迎合主義)、反移民感情などにあらわれる」
「かつては経済の先行きはマクロ経済のトレンドをみればよかったが、今は長いスパンの構造問題の議論が必要だ」

―構造問題への対応が進んでいる国は。
「驚くかもしれないが、ある意味で中国、インドなど新興国はできあがったシステムがないので、解決法も見いだしやすい。先進国はできあがったシステムを壊さなければならない」
「トランプ米政権は炭鉱労働者を保護せざるを得ないが、中国は国全体の排出量取引市場を作った。やることが大胆でスピード感がある。デジタル化もそうだ。守るべきものがある人々と、ない人々の差だ」

―日本では過激な反動は起きていません。
「大きな抗議行動がないのは、敗者を生まないシステムだということだ。日銀は金融緩和をずっと続け、大胆な経済開放、規制緩和に踏み切らず、基本はゆっくりとした改革を続けている。徐々に競争力は低下するが、被害者という勢力は出てこない面もある」・・・

歩くことで健康を

2019年1月22日   岡本全勝

1月21日の読売新聞が2ページを使って、体を動かすことの重要性を解説していました。
一つは、歩くことです。現代人の1日の歩数は、7千歩。狩猟時代は3万歩、江戸時代も3万歩と推定されています。狩猟時代は1日に30キロメートル歩いていた可能性があるとのこと。江戸時代の旅は、1日に男が40キロ、女が36キロ。1日に60キロ歩くこともあったそうです。
日本陸軍は、休憩を入れて1時間に4キロ、1日に24キロでした。1時間に6キロ、1日に40キロという話もあります。重い荷物をしょっていますから、そんなに早く遠くまで歩けたとは思えないのですが。
たまに日曜日に10キロ歩いた、それもゆっくりでは、ご先祖様に叱られます。

人類は何万年もの間、歩き続けました。交通機関が発達して、歩かなくなったら、体力が落ちるでしょう。いまの高齢者は、若いときは歩いて鍛えた世代です。今後、若い世代が歩かなくなると、健康寿命は短くなる可能性があります。

1に日にどれくらい座っているかの、各国比較が出ています。
ブラジル180分、アメリカ240分、ノルウェー360分、日本は420分です。
う~ん、これも我が身を省みて、そうですね。

また、30代の日本人の都市別歩数も出ています。
5万人未満の地方では6.2千歩、都市が大きくなるほど増えて、大都市だと1千歩です。これは、実感します。
東京だと、歩く距離が増えます。鉄道や地下鉄で移動して、そこからバスに乗るかタクシーですが、階段の上り下りがあり、少々の距離なら歩きます。また、建物が大きいので、その移動も歩きます。総務省から財務省まで歩くと結構な距離です。地方から来た人は、「車で行かないのですか」と言います。
地方都市だと、近い距離でも車で移動することが多いですよね。皆さん車を持っているし。
これが続くと、都会人の方が、健康で長生きすることになります。

記事のもう一つは、運動すると肉体だけでなく、脳を活性化するらしいのです。これも、実感できますよね。
じっと座っていることが続くと、良い考えが浮かびません。休日にごろんごろんしていると、すっきりしませんよね。

日本社会は変わった、年金制度が前提としていた家庭

2019年1月21日   岡本全勝

1月19日の朝日新聞オピニオン欄「安心できる老後って?」、四方理人・関西学院大准教授の発言から。
・・・国民年金ができた1961年と現在では、人口構造が異なります。現在の年金は、現役世代が働いて支払った保険料を、そのまま高齢者の年金に回す「世代と世代の助け合い」です。支える側が減れば、保険料を上げるか、給付を下げるしかありません。
もう一つ、大きな構造変化は、家族です。当時はまだ、3世代同居が基本で、家族に養われることが高齢者の主な生計維持のあり方でした。それを前提として制度を考えたのだと思います。年金の水準も低いものでした・・・

・・・制度が前提としていた家族のあり方は、大きく変わりました。年金があるために高齢者だけでも暮らせるようになった面もあると思いますが、いまは3世代同居は少数派で、1割にすぎません。
高齢者の貧困はすでに深刻です。大きな要因は単身高齢者の増加です。1人分の基礎年金額が、生活保護制度で「最低生活費」と定められた金額を下回っており、生活保護に流入する高齢者が増え続けています。夫婦世帯を想定し、「2人分の年金でみれば、基礎的な消費支出を上回る」と説明してきた政府にとって、現在の状況は想定外だったでしょう。

より深刻なのは、「団塊ジュニア」と呼ばれる世代です。少子化対策が遅れ、下の世代に同じ規模の人口を残せませんでした。労働環境も変わり、非正規雇用が増えたため、厚生年金にも十分に加入できず、国民年金保険料の未納も多いです。団塊の世代に比べて団塊ジュニアは、低年金になる可能性が高いのです。
今のところ団塊ジュニア世代の経済状態は、極端に悲惨にはみえていません。安定した収入と持ち家を有する親と同居できているためです。親が仕事を引退しても親の年金をあてにできます。しかし、親が亡くなれば、自由に使えるお金は一気に減り貧困に陥る人がでてきます。配偶者や子どもを持たない経済的に困窮する高齢者が増えることは、社会全体にとってのリスクだと思います・・・

『時がつくる建築』

2019年1月19日   岡本全勝

加藤耕一著『時がつくる建築 リノベーションの西洋建築史』(2017年、東京大学出版会)が、面白く勉強になりました。西洋の古代から現代までの、建物の再利用の歴史です。

古代ギリシャ、ローマでは、神殿など巨大な石造建築が造られました。その後、使われなくなった建築物の石材をはぎ取って、別の建物に使います。
キリスト教が国教となると、それまでの神殿が、改築して教会に転用されます。
ローマ帝国がつくった競技場には、中世になって、住民が住み着いて住宅になります。
ルネッサンスは、それまでの中世建築をゴシックとおとしめ、古典古代に帰ることを理想として、建築物の改修をします。
(と書いたら、19日夜のNHKブラタモリで、古代ローマの巨大浴場を教会に転用した事例などが紹介されていました。)
イギリス国教会成立の際に、修道院が捨てられます。フランス革命で、たくさんの教会や修道院が廃棄されたり、他の目的に再利用されます。モンサンミッシェル修道院が、監獄に転用されたのは有名です。
都市での人口増加で都市の再開発が行われます。既存建物の破壊を伴う、再開発です。
そして、近代になって保存の概念が出てきます。歴史的建造物を保存する動きです。世界遺産などの制度もできます。

以下、本を読みながら考えたことです。
人の暮らしの変化、科学技術の発達などによって、建物や都市は絶えず変化します。その際に、既存建物をどのように扱うか。
面的広がりを持つ都市計画や、住民の共通認識(どのような建物を理想と考えるか)があれば、秩序ある町の景観ができます。
また、建築技術と素材が限られていた時代には、自ずと同じ様式の建物が建ちました。
しかし、近代の技術と経済力の発達で、既存建物は容易に壊され、様々な様式の新しい建物が建ちます。そして、人口密度の高い都市では、敷地は狭いままかあるいはさらに細分化され、住宅が建つことになります。

工務店も建築士さんも、古い建物を壊して新しい建物をつくることが商売です。まだ、既存建物を再利用するというより、新しい建物を造ることに価値がおかれています。
石やレンガ造りでなく、日本の木造建築は再利用が難しいとの意見もあります。しかし、寺社建築や豪農の家は手入れをしながら、長年使われています。
耐用年数の短い建物を、造っては壊しています。経済的には、短期的にはDGPを押し上げるのですが、長期で見ると蓄積ができず、ムダが生じています。
かつて、矢野暢さんに『フローの文明・ストックの文明』という優れた分析がありました。
近年の住宅の性能の向上(電気、ガス、断熱、冷暖房)で、新築住宅は住みやすいです。私も、わが家で体験しています。それにしても、昔の家は寒かったです。
この技術発展が一段落して、そして日本の経済力が落ちたときに、既存建物を再利用しようという風潮が広がるのかもしれません。

宗教の役割

2019年1月18日   岡本全勝

1月17日の朝日新聞に「阪神大震災24年 被災者へ祈る支える」という記事が載っていました。大震災の際の、宗教者の役割や活動についてです。
私も、東日本大震災の際に、宗教の役割を再確認しました。

まずは、弔いです。宗教施設も葬祭場も被災し、各地で十分なお葬式をあげることができませんでした。火葬場も使えず、仮埋葬することもありました。遺族の方が、「せめて、お坊さんにお経をあげてもらいたい」とおっしゃったのです。遺族にとって、お葬式を出すことが、一つの心の区切りになります。
各宗教団体も「協力します」と申し出てくださったのですが、行政として十分な斡旋をできませんでした。政教分離の原則を気にしたからです。
もっとも、これは工夫によって(宗教団体やNPOに斡旋をしてもらう。役場の窓口は、そこを紹介する)解決できます。

つぎに、被災者の心のケアです。心のケアというと、精神科医を想像しますが、心の平静を受け持ってきたのは、人類の歴史において長年にわたり宗教の役割でした。
ここは、宗教団体に対し、もっと活躍してほしいです。