カテゴリーアーカイブ:社会の見方

便益と隠れた費用

2019年4月11日   岡本全勝

4月6日の朝日新聞オピニオン欄、安田陽さんの「再生エネの出力抑制、長い目で見ると得」から。本論ではないか所を紹介します。

・・・そもそも、なぜ再エネを入れるのでしょうか。それを考えるうえで、どうしても使いたい言葉が二つあります。「便益」と「隠れた費用」です。便益は費用と対になる言葉で、国民全体、地球市民全体が享受できるメリットのことです。特定企業の利益とは違います。隠れた費用は、化石燃料による大気汚染や地球温暖化、原発の事故対策コストなど、これまで十分考慮されてこなかった費用です。

これまで安いとされてきた石炭火力発電や原発に世界的にブレーキがかかっているのは、隠れた費用が本当は大きいという認識が広がったからです。隠れた費用の少ない再エネが、多い既存電源に取って代われば、社会的便益が大きい。だから各国は導入を促す政策をとっているのですが、日本ではそうした数字に基づく議論が乏しく、好き嫌いによるいがみ合いになってしまいがちです・・・

平成は悪い時代だったか。

2019年4月9日   岡本全勝

NHKの世論調査です。4月8日掲載。
「平成」という時代に、日本の社会は、よい方向に向かったと思うか聞いたところ、「よい方向に向かった」が19%、「悪い方向に向かった」が18%、「どちらともいえない」が60%でした。

平成という時代がどのような時代であったかは、もう少し時間が経つ必要があるのでしょう。
識者やマスコミが平成時代を振り返る企画をたくさんやっていますが、「停滞の時代」「混乱の時代」出会ったという評価が多いようです。
それは、昭和(特に後期)の経済成長に比べての認識だと思います。たしかに、ジャパン・アズ・ナンバーワンといわれた時代に比べると、経済成長が低下し、中国に抜かれるなど、停滞の時代に入ったことは間違いありません。
他方で、治安が良く、安全安心できる社会は、健在です。そして、大震災の際の助け合いや、ボランティア・NPOの貢献など新しい共助も大きくなっています。格差が広がっていますが、諸外国に比べるとまだましなようです。すると、まだまだ日本は捨てたものではありません。
世論調査の「良いと悪いが拮抗している」結果は、国民の多くが、「悪かった」という判断をしていないことだと思います。

もっとも、平成が良い時代であったかどうかは、今後の日本の状態によります。
すなわち、とてもひどい状態になったら、「あのころは、まだましだったなあ」と思われるでしょう。もっとも、「平成の時代に、改革に遅れたからこんな状態になったんだ」と批判されることもあり得ます。
良い状態になって、その基礎を平成時代が準備したなら、「平成の苦労が良かった」と評価されるでしょう。

優位に立つ地理的条件?

2019年4月8日   岡本全勝

世界史の新常識』(2019年、文春新書)が面白かったです。18人の碩学が、それぞれのテーマごとに解説した文章を集めたものです。
・古代ギリシアはペルシア帝国に操られていた
・ローマ帝国を滅ぼした「難民」と「格差」
・明を揺るがした日本の火縄銃
・産業革命がイギリス料理をまずくした
など、「へえ」と思うような内容、肩の凝らない話が並んでいます。

ところで、P131に、戦国時代に日本でなぜ鉄砲が急速に普及したかが、解説されています。
その理由の1つに、
火山国である日本では、火薬の原料になる硫黄が豊富に産出したことと、
同じく原料になる硝石は、日本では産出しないが、交易を通じて安定的に輸入できたことが、挙げられています。

???
面白いですね。豊富な原料とない原料。それがともに、普及を支えるのです。
「資源が豊かなこと」が産業発達の要素と思いますが、そうでもありません。戦後日本は、石油、鉄鉱石をはじめ資源が乏しい中で、工業発展に成功しました。そのような自然条件でなく、人間の意欲と努力が産業を興すことが、よくわかります。

昭和は遠くなりにけり

2019年4月7日   岡本全勝

「降る雪や 明治は遠くなりにけり」

俳人、中村草田男の有名な句です。
草田男がこの句を詠んだのは、昭和6年(1931年)のことです。明治は45年(1912年)までですから、それから約20年後です。というか、20年しか経っていないのです。
そこで、「遠くなりにけり」と詠んだのです。20年間のうちに、明治、大正、昭和と元号と時代が変わったことの、感慨があったのでしょう。

彼は、明治34年(1901年)の生まれ。明治45年には11歳、尋常小学校でした。そしてこの句は、母校を訪ねて詠んだようです。その時には、30歳です。
私は、この事実を教えてもらったときに、びっくりしました。
もっと時代が経ってから、そして老人が詠んだ句だと思っていたのです。草田男の表現力の素晴らしさとともに、その早熟なことにも驚きました。
江戸から明治。日本は特に東京は、大きく変貌しました。草田男は、江戸時代を直接知りません。江戸時代を知っていた人は、もっと大きな変化を見ています。

来月には、平成が終わり、令和になります。
明治時代の変化、また敗戦と高度成長時代の変化に比べれば、平成の30年間の変化は大きくないかもしれません。さはさりながら、昭和30年(1955年)生まれ、高度成長以前の村の暮らしを知っている私にとっては、この半世紀の変化はびっくりするものがあります。

そこで、草田男の句を借りて、一句。
「散る桜 昭和は遠くなりにけり」

芭蕉の句に「さまざまのこと思い出す桜かな」があります。
桜は、日本人に様々なことを思い浮かべさせます。その中でも、散る桜は、特に深い思いを引き出させてくれます。
東京は、いま桜が満開です。

現代の宗教事情3、日本は宗教に寛容か

2019年4月6日   岡本全勝

現代の宗教事情2」の続きです。

「日本人は他宗教に寛容なのか」(P203~)に、興味深い指摘があります。「日本人は多神教なので、排他的な一神教に比べ寛容、平和である」という通説が、覆されています。世界価値観調査によると、次のようになっています。

他宗教の信者も道徳的であるは、アメリカ80%、ブラジル79%、インド61%、中国14%、日本13%です。
他宗教の信者と隣人になりたくないは、アメリカ3%、ブラジル3%、インド28%、中国9%、日本33%。
移民・外国人労働者と隣人になりたくないは、アメリカ14%、ブラジル3%、インド47%、中国12%、日本36%です。

日本は、他宗教にとても不寛容です。そして、他宗教や移民に対しても、嫌悪度が高いのです。
日本は信頼の高い社会と言われていましたが、それは「身内」には親切ですが、「ソトの人」には冷たい社会でした(山岸俊男著『信頼の構造』1998年、東大出版会)。