カテゴリーアーカイブ:社会の見方

ノーベル賞真鍋さん、日本に帰りたくない理由

2021年10月16日   岡本全勝

10月9日の朝日新聞夕刊「真鍋さん、言葉濁した日本への思い」から。

・・・97年、真鍋さんは約40年ぶりに日本に戻り、科学技術庁(当時)の地球温暖化予測研究領域長のポストに就いた経験がある。だが、2001年秋、気候変動予測のスーパーコンピューター「地球シミュレータ」が稼働する前に辞任した。
《温暖化研究、第一人者失う》。当時の朝日新聞はそんな見出しで真鍋さんの辞任を報じている。

会見では国籍を米国に変えた理由も聞かれた。
「日本で人びとは常に、お互いの心をわずらわせまいと気にかけています。とても調和の取れた関係性です。日本人が『イエス』と言っても、それは必ずしも『イエス』を意味せず、『ノー』かもしれません」
「なぜなら、誰かの感情を傷つけたくないからです。アメリカではやりたいことができる。他人がどう感じているか、それほど気にしなくていい」
「米国で暮らすって、素晴らしいことですよ。私のような科学者が、研究でやりたいことを何でもやることができる」
「私は調和の中で生きることができません。それが、日本に帰りたくない理由の一つなんです」
会場が笑いに包まれる。真鍋さんは4秒間、観客を見渡した。笑わせようと冗談を交えたのか、あるいは本気で言ったのか。表情からは、読み取れなかった・・・

謝るが認めない日本型謝罪

2021年10月13日   岡本全勝

10月6日の朝日新聞オピニオン欄「その謝罪、何のため」、梁英聖(リャン ヨンソン)さん(反レイシズム情報センター代表)の発言から。

・・・今回のテーマがもし「正しい謝罪のあり方は?」を問う内容なら、答えようがありません。その問題設定自体に、日本で人種差別の言動が止まらない原因の根がある、と思うからです。
「ご迷惑をおかけした」「不愉快な思いをさせた」といった謝罪を、私は「日本型謝罪」と呼んでいます。
欧米では、差別的言動があると、基本的に四つのステップで対処されます。まず(1)事実を調べ、(2)それがルール(社会正義や法)違反と言えるかどうかを判断する。
(1)(2)で差別だと判断された場合に限り、(3)「謝罪や処罰、賠償」と、(4)「再発防止」の策定に進む。
重要なのは、差別かどうか(1)事実と(2)ルールに基づいて判断を下すことです。差別でないなら謝罪などしない。差別なら(3)(4)の責任をとる。選択肢は二つに一つです。

ところが「日本型謝罪」はそのどちらでもない。(1)事実と(2)ルールによる判断を下さないまま、世間や相手の心情に謝罪する。謝るが差別は認めないので、将来も同じことを繰り返す自由が残ります。
(1)事実調査と(2)ルールこそ、将来にわたって差別・人権侵害をさせないという実効的な再発防止につながるわけで、これを回避すれば、何万回でも同じことが起きます・・・

商売、ブームになると飽きられる

2021年10月12日   岡本全勝

10月5日の読売新聞『経営者に聞く」は、回転ずし首位の「スシロー」運営会社の水留浩一社長でした。「いいネタ安く 終わりなき戦い

・・・競争の激化を懸念する声はあります。しかし既存店の売上高は、前年度比プラスを維持しています。店舗数は、現在の約600店から、800店以上に増やせると考えています。
スシローの客単価は1000円超で、それほど高くはない。お客さまには日常の中で楽しんでもらいたいのです。「今日はお母さん、仕事で遅くなったからスシローに行きましょう」という形で、気軽に利用していただきたい。
その意味で、一時のブームにしてはいけないと気をつけています。スシローに行くのが「かっこいい」と捉えられると、いずれ「もう古い」と飽きられてしまいます・・・

・・・<全く未経験の回転ずし業界に転じたのは、幾つか受けた提案の中で、一番可能性があると判断したからだ>
海外の都市を訪れる度に、日本ほど良心的な価格でおいしいものが食べられる国はないと感じていました。安全や衛生、自動化などの技術でも優位性があります。すしは日本起源の料理として知名度があり、うまく輸出できたら高い競争力を発揮するはずだと思ったのです。

製品はコピーされたらおしまいですが、サービスは簡単にまねできません。従業員をトレーニングして味や接客を再現するには、ものすごく手間がかかります。外食をはじめとするサービス産業は、日本から海外に打って出て戦える最後の業界ではないでしょうか。その突破口をスシローが開きたいと考えています・・・

個人による安全網、日中の違い

2021年10月12日   岡本全勝

10月5日の日経新聞オピニオン欄、本社コメンテーターの梶原誠さんによる「恒大が暴く「富む前の老い」」に次のような話が載っています。

世界の株式市場を揺らした中国恒大集団の経営危機が、世界の株式市場を揺らしています。中国国内では、深圳にある恒大本社に人々が詰めかけています。「カネを返せ」と抗議をやめない人、社屋に乗り込む人、抵抗して警官に引きずり出される人。恒大が販売した「理財商品」を購入して財産を失いかねない人たちです。
中国人には、「日本はなぜ失われた30年を、社会不安もなく過ごせたのか」と不思議に思う人もいるそうです。その背景を、梶原さんが説明します。

日本はバブルが崩壊する前に豊かになっていたから、なんとか耐え抜けた。
1990年に家計が保有していた金融資産は1000兆円強。国内総生産(GDP)の2.2倍で、一人あたり800万円強。昨年は2000兆円弱と、GDPの3.7倍、一人あたり1500万円台に増えている。中国も増やしてきたが、2018年の資産は2300兆円台でGDPの1.6倍、一人あたりは170万円弱にとどまる。
中国でのGDPに対する保険料の割合は4.5%で、日本や世界の6割以下。生命保険などの普及が遅れています。

子どもを産みにくい日本

2021年10月11日   岡本全勝

10月3日の日経新聞1面「チャートは語る」は「育児男女差際立つ日本」でした。わかりやすい図が着いています。ご覧ください。

・・・様々な社会要因のなかでも男性の育児や家事など家庭進出の度合いが出生率に影響があることは大きなヒントとなる。
女性に家事や育児の負担が偏るのは、程度の差こそあれ多くの国や地域で根強い。見逃せないのは、その差が男女で大きくなればなるほど少子化が進みやすいことだ。
経済協力開発機構(OECD)のデータ(19年)で日本と韓国の男女差が際立つ。日本の女性が家事や育児に割く時間は男性の4.76倍、韓国は4.43倍にのぼる。ともに男性の参加時間は女性の2割ほどの計算だ。両国とも急速な人口減少につながる出生率1.5を下回り、韓国は20年の出生率が0.84まで低下した。男女差が2倍以内の国ではおおむね出生率1.5以上を維持している・・・

・・・日本の場合、子育て支援に注ぐ予算が十分とはいえないことも問題視されてきた。OECDのデータ(17年)では、児童手当や育休給付、保育サービスといった日本の家族関係の公的支出は国内総生産(GDP)比1.79%。比率ではフランスやスウェーデンの約半分の水準にとどまる。
支出が多い国は出生率も比較的高い。問題はその使い道だ。ドゥプケ教授の研究では、保育所整備などを通じて母親の負担を減らすほうが父親への給付金支給より出生率の押し上げ効果が高いうえ、政策に要するコストは約3分の1に抑えられるという。
男性が家事育児に参加しやすい環境づくり、そして子育て関連予算の充実と効率的な配分――。日本の出生率向上にはこの両輪が欠かせない・・・