カテゴリーアーカイブ:社会の見方

OECD経済審査報告書

2021年12月14日   岡本全勝

OECD経済審査報告書」(2021年12月)が公表されました。経済協力開発機構(OECD)は、加盟国の経済情勢や政策動向を定期的に審査しています。

我が国の経済情勢や政策動向は、毎日、マスメディアが大量の情報を伝えてくれます。それは重要なのですが、細かい大量の情報を得ても、私たちは消化しきれません。そして、毎日のニュース報道では、中長期の動向が分かりません。
経済協力開発機構の審査報告書は、その点で項目が絞られていて、大きな観点からものを見ることができます。合わせて、海外からは日本がどのように見えているのかが分かります。
報告書の「主な結論」が、簡潔です。

日本の設備の長期停滞

2021年12月13日   岡本全勝

12月5日の日経新聞1面「チャートは語る」は、「日本の設備 停滞の20年」でした。
・・・日本の設備投資の低迷が続いている。この20年間で設備の総量を示す資本ストックは1割たらずしか増えなかった。米国や英国が5~6割ほど伸びたのと差がついた。企業が利益を国内投資に振り向けていないためだ。設備の更新が進まなければ労働生産性は高まらず、人口減の制約も補えない。低成長の構造要因として直視する必要がある・・・

記事によると、
2001年から2019年までの経済成長率は、アメリカ2.1%、イギリス1.8%に対し、日本は0.8%です。その原因として、設備投資の低さが上げられています。
生産的資本ストック(ハードとソフト)の2000年から2020年の伸びは、アメリカ48%、イギリス59%、フランス44%、ドイツ19%で、日本は9%です。設備投資しないと、生産や売り上げは伸びません。

日本企業は、儲けていないわけではありません。しかし、お金を設備投資に回していないのです。ただし、海外には投資しています。企業にとって、日本が魅力のない国に見えているのでしょうか。

「誹謗中傷犯に勝訴しました」

2021年12月13日   岡本全勝

moro 著『誹謗中傷犯に勝訴しました ~障害児の息子を守るため~』(2021年、竹書房)を読みました。新聞の書評欄に載っていて、気になったので。

障害を持った子どもの母親が筆者です。子どもと同じ小学校の保護者を名乗る加害者が、ネット上で子どもと母親を誹謗中傷します。そして、学校名、子どもの名前を探し当て、保護者たちに誹謗中傷に参加することを誘います。
読んでいて、気分が嫌になります。加害者は匿名をよいことに、他人になりすまし、事実無根のことを書き続けて、被害者を苦しめます。
筆者は訴訟を起こし、書き込んだ加害者を特定し、さらに損害賠償を求めます。加害者は裁判には出廷せず、逆にさまざまな抵抗をします。

世の中では、ほかにもネット上でひどい誹謗中傷が行われているようです。このような本が読まれて、そのような行為に歯止めがかかればよいのですが。
加害者がどのような人で、どのような意図でこのようなことを続けたのかを知りたくなります。加害者は出てこないので、その点は分かりません。
このような書き込みと拡散は、重大な人権侵害と思いますが、刑法や法務省の対応はどのようになっているのでしょうか。

各国での単身世帯の増加

2021年12月12日   岡本全勝

日経新聞12月9日の1面連載「人口と世界 新常識の足音」は「「おひとりさま」家族の標準 広がる孤独 官民で克服」でした。
経済で人口を取り上げる場合は、人口の増減、高齢化などが主な主題です。しかし、この回は、単身世帯の増加を取り上げています。

記事についている図表では、各国で、全世帯のうち3分の1が単身世帯になっています。
日本でも一人暮らし=単身世帯の増加が大きく、私の連載「公共を創る」でも、それが社会の安心に与える影響を取り上げています。
一人暮らしは気ままですが、家庭という保障機能が低下するのです。経済的な安定が弱くなるだけでなく、孤独という心身の負担が増えるのです。前者は社会保障で補うことができますが、後者はお金では買うことができません。

国内の学会と海外学会

2021年12月8日   岡本全勝

11月30日の日経新聞教育欄、恩蔵直人・早稲田大学常任理事の「人文社会科学の学会、世界での競争不可避に」から。

・・・国際的に活躍する研究者の中には積極的に海外学会で活動する人もいたが、言語や地理的な壁や研究テーマによって、国内学会と海外学会はすみ分けがされていた。
ところが近年、海外学会とのすみ分けが崩れ始め、海外での報告が優先されるようになっている。
グラフは、ある国内学会における研究報告件数である。報告件数は開催都市などによっても左右されるので単純に比較はできないが、10年前と比べて減少傾向にあることは確かだ。こうした傾向は、他の国内学会でも確認できる。研究者たちの間で、報告をするなら海外学会でしたいという流れがあるようだ。理由はいくつかある。
まず有益なコメントを得やすいこと。海外学会は世界から研究者が参加する。当該分野の第一人者が参加することも多く、有益で価値あるコメントは自らの研究のブラッシュアップに役立つ。
また、一部の研究分野では、学会報告が評価対象としてカウントされるという背景もある。この場合、同じテーマによる複数回の報告は制限されており、国内学会よりも海外学会の方が高い評価を得やすい。
さらに海外学会では、査読と呼ばれる事前審査があり、一定水準に到達していない報告は受け付けてもらえない。こうした制度が整っていることも、海外学会の支持に結びついている。競争は厳しくても評価が明確な場を求めるというのは、スポーツの分野において、一部のプレーヤーが海外での活動を選ぶのに似ている・・・

・・・海外学会での報告にしても海外論文誌への投稿にしても好ましい傾向であり、我が国の研究水準の向上には不可欠である。研究活動がいちはやく国際化した医学分野、理工学分野、経済学分野などでは、ここで述べたような問題は過去のものかもしれない。しかし、依然として国内での研究トピックが存在している多くの人文社会科学分野の学会は大きな転機を迎えているといえよう・・・

横山晋一郎・編集委員の付記
・・・日本の大学の世界ランキングが振るわない一因は、人文社会科学系の評価が低いことだといわれる。論文の多くが日本語で書かれ、研究対象も日本特有の事象が少なくないからだ。
大学の国際競争が激しくなると、いつまでも〝内弁慶〟でいることは許されない。海外学会志向の強まりは当然といえる。
問題は、それが国内学会の衰退を招きかねないことだ。全ての大学が国際舞台で活動するわけではないように、全ての研究者が海外学会に所属する必要もない。学会は若手研究者養成の貴重な場でもある。恩蔵氏の問題提起の意味は重い・・・