カテゴリーアーカイブ:社会の見方

世間という同調圧力

2022年2月1日   岡本全勝

1月25日の読売新聞くらし面「今を語る」は、佐藤直樹・九州工業大名誉教授の「「世間」が生み出す同調圧力」でした。

・・・推奨されてはいるが、強制されているわけでも義務でもないのに、ほとんどの人が常時マスクをつけて生活をしています。
なぜか。感染防止意識が強いだけではありません。日本には「法のルール」の前に「世間のルール」が存在し、この「世間」が同調圧力を生み出しているからです。
日本では多くの人が、「世間に迷惑をかけないことが大切だ」と刷り込まれて育てられます。だから、政府や自治体による強制力のない要請であっても、空気を読んで、自主的に従います・・・

・・・長い歴史を持つ世間では、「友引の日に葬式はしない」など、たくさんのルールが作られてきました。それがたとえ合理的な根拠のないものであったとしても、多くの人は律義にこれらを守ることで秩序を維持してきました。しかし、やっかいなことに「世間のルール」は明文化されていませんし、その輪郭もはっきりしていません。

地域のつながりが減少し、目に見えない仮想化した世間では、何が批判されるのかもわからない。過度にお互いの心中を察し、「空気を読め」と要求されます。
共感過剰シンドローム(症候群)と呼んでいます。会議で周囲と違う意見が言えない、終業時間になっても同僚が仕事をしていれば帰宅しにくい。「自分は自分、他人は他人」と考えることができません。
逆に、空気を読まず、ルールに従わない人は「迷惑な人」であり、バッシングしても構わないという心理を正当化しやすくなります。異論や少数意見を許さない、息苦しい同調圧力が生まれます。コロナ禍で、「感染よりも世間の目が怖い」という声を耳にした人も多いのではないでしょうか・・・

佐藤先生とその先達になる阿部謹也先生の著作は、私も参考にしています。連載「公共を創る」にも引用しています。

家族は幸せの象徴ではない

2022年1月31日   岡本全勝

加害者家族への批判」への続きです。阿部恭子さんへのインタビュー「「家族神話」の正体とは」から。

・・・あるとき、40代の女性の相談を受けた。「20代の娘が化粧品を万引きして逮捕された。お金は自由に使わせていたのに、理由がわからない」
話を聞くと、女性は貧しかった自分よりも幸せになってほしいと、娘に幼い頃から習い事やダイエットを強要していた。過度な期待による重圧が娘の万引きの一因になっていた。
女性は当初それを虐待とは認識していなかった。阿部さんと対話を重ねるうち、育て方の問題に気づき、娘とともにカウンセリングに通うようになった・・・

・・・伝統的な家族観が加害者家族の生きづらさにつながっていると阿部さんはみる。家族は幸せの象徴、もめ事は恥。そんな価値観は型にはまった幻想だという意味で「家族神話」と呼ぶ。
神話は、加害者の更生を担う司法の場にも蔓延している。
公判では加害者の罪を軽くするための情状証人として家族が呼ばれることが多い。子を虐待していた事実に気づいていない親、過剰な依存関係にある配偶者。そうした人たちが監督を約束しても、結局果たせないという現実を何度も見てきた。
「『家族がいれば安心』という神話をうのみにし、家族が本当に更生の支え手になれるのか、という検討はほとんどなされない。実際は家族こそが要因で、家族と離れる選択が更生につながる人もいるのに」・・・

・・・そもそも被害者側と加害者側の線引きは簡単ではない。法務省によると、19年に容疑者が検挙された殺人事件約900件のうち、54%が家族間で起きた。家族間の殺人では、加害者家族でもあり被害者遺族にもなる。
近年、虐待やDVといった家庭内暴力も犯罪として広く認知されるようになった。阿部さんは「誰もが事件の関係者になりうる時代だ」と指摘する。
世間体、空気感、同調圧力。家族神話はそう言い換えることもできる。それらを生み出すのは多くの場合、社会の多数派だと阿部さんは言う。
「今日の被害者が、明日の加害者かもしれない。家族神話からの脱却が、誰にとっても寛容な社会への一歩になる」・・・

なお、阿部さんは、1月7日の読売新聞「加害者家族のそばに…中傷から守る 支援10年超」にも出ておられます。

加害者家族への批判

2022年1月30日   岡本全勝

少し古くなりましたが、1月8日の朝日新聞夕刊、加害者家族を支援するNPO法人代表の阿部恭子さんへのインタビュー「「家族神話」の正体とは」から。

・・・家族こそが人を幸せにする。犯罪加害者の家族の支援に取り組んできた阿部恭子さん(44)は、それを幻想だと断じる。日本の伝統的な「家族神話」が、多くの人たちを苦しめるのを見てきた。阿部さんは問いかける。「家族って、そんなに大事ですか」・・・

・・・あなたの家族が罪を犯して逮捕されたら、どうなるだろう。
社会から向けられる憎悪は加害者本人にとどまらない。「なぜ止められなかったのか」「家族も同罪」。ネット上では家族への批判が渦巻き、名前や自宅をさらす投稿もあふれる。転居や転職を余儀なくされ、自殺してしまう人さえいる。
連帯責任論が今も根強く残っている」。多くの加害者家族を支援してきた阿部さんは、家族が誹謗中傷にさらされる原因をこう分析する。
日本では、子が何歳になっていても親が監督責任を問われる風潮が強い。大阪府吹田市で2019年、交番が襲撃され、男性巡査が重傷を負った事件では当時33歳の男が逮捕された。大手メディア役員だった父親は謝罪コメントを出し、辞職した・・・

・・・連帯で犯罪を抑止できるという考え方が前提だが、阿部さんは「逆効果だ」と言い切る。
連帯責任を求める社会では、家族は問題を隠そうとして孤立しがちだ。責任を家族が肩代わりし、本人への援助を続ける。それは本人の自立を妨げ、むしろ犯罪を助長しかねない。
「家族に責任がある場合もあるし、加害者への厳しい姿勢は必要だ。でも、家族への中傷は反論しづらい相手を利用してうっぷんを晴らしているだけ。社会の未熟さを表している」・・・

広告主からの報道への圧力

2022年1月28日   岡本全勝

1月22日の日経新聞夕刊、中野香織さんの「ハウス・オブ・グッチ公開 ブランドの闇 扱いに今昔」が興味深かったです。公開中の映画についての評論です。

・・・実は、ブランドの暗部でもあるこの話が映画化されたことじたい、モード記事を長年書いてきた私にとって驚きだった。10年ほど前までは、雑誌によってはこのエピソードに触れると、その部分は削除された。ブランドからの広告で成り立つ雑誌は、広告主がチェックし、不都合とみなすことは掲載されない。そういうビジネスモデルなのである。
広告主が関わらないメディアで「不都合な」話を書くと、ブランドからショーや展示会の招待状は来なくなる。見られなければ記事も書けない。日本に本来の意味でのファッションジャーナリズムが存在しえなかったことの背景の一つだ・・・

・・・自分のささやかな経験からの臆測にすぎないが、ブランド側も映画に協力しており、この話をどこに書いても削除されなくなったことに隔世の感を覚える。
関係者や遺族から「事実はああではない」とのクレームも来る状況で、自分の作品としてどっしり構えるスコット監督の勇気ある態度そのものが、映画の内容以上に感慨深い・・・

何かわからない英略語

2022年1月27日   岡本全勝

1月22日の日経新聞別刷りプラス1は、「英略語 知らずに使っている?」でした。
・・・URLやIoT、SDGs…。よく耳にするけれど何の略か分からない英略語は意外と多い。
ニュースや日常生活で聞く英略語のクイズを1000人超の日経プラス1読者に出題。正答率が低かったものから順にランキングした・・・
で、並んでいるのは、次のような言葉です。
PFI、URL、PR、ICU、IR、PDF、IoT、CC、BMI、NPO、5G、IT、SDGs・・・

あなたは、どれくらい分かりましたか。日経新聞読者でこの調査に参加した人は、このような知識の高い人と思われますが、PFIで30%、NPOで66%です。
記事には、漢字の略も取り上げています。国連(国際連合)、公取(公正取引委員会)です。漢字の略なら、元の言葉を類推できます。UNでは、元の言葉は類推できません。

私のカタカナ語嫌いについては、次をご覧ください。「頭は類推する。カタカナ語批判。3