カテゴリーアーカイブ:社会の見方

学校教育ベルトコンベア型システムの弊害

2022年7月23日   岡本全勝

7月5日の日経新聞教育欄、苫野一徳・熊本大学准教授の「学校の存在意義 自由を尊重、経験積む場に」から。

・・・私自身、これまで長らく、公教育の誕生以来ほとんど変わることのなかった教育システムを大きく転換する必要を訴えてきた。すなわち「みんなで同じことを、同じペースで、同じようなやり方で、同質性の高い学年学級制の中で、出来合いの問いと答えを勉強する」システムの転換である。
この約150年間続いてきたベルトコンベヤー型のシステムこそが、いわゆる「落ちこぼれ」やその反対の「吹きこぼれ」、不登校やいじめなど様々な問題の元凶になっているのだ。
みんなで同じことを同じペースで勉強していれば、それについていけない子が構造的に生み出される。自分のペースで自分に合った学び方で学んでいれば、落ちこぼれることなどなかったかもしれないのに。
「同じ年生まれの人たちだけからなる集団」は、学校のほかにはおそらくほとんど存在しない・・・その意味で「誰もが、いつでも誰とでも学べる社会」の実現は、確かに目指すべき近未来の教育のビジョンである。私たちは必ずしも、みんなで同じことを、同じペースで、同質性の高い学級の中で学ぶ必要はないのだ・・・

・・・人類は、1万年以上の長きにわたって、凄惨な命の奪い合いや、ごく一部の人が大多数の人々を支配する時代を生きてきた。今日の民主主義は、そのような歴史を何とか終わらせるために、最近になってようやく登場したアイデアである。
もし、人類が平和に、自由に生きたいと願うのならば、私たちはまず、お互いの自由を認め合う必要がある。そして、一部の支配者ではなく、対等な市民たちの手によって共に社会を築いていくほかにない。
これを「自由の相互承認」の原理という。現代の民主主義の最も根幹をなす考えであり、人類史上最も偉大な発明の一つであるといっていい。実際、人類の多くは今日、政治的・社会的自由を手に入れ、そして意外かもしれないが、この2~3世紀を通して戦争は確実に減少したのだ。
この「自由の相互承認」を実現するための、最も重要な制度。それこそが学校教育にほかならない。お互いの自由を尊重し、この社会を共につくり合うこと。学校は本来このことをこそ、子どもたちに教える場でなければならないのだ・・・

ネット左翼の「キャンセルカルチャー」

2022年7月20日   岡本全勝

7月2日の朝日新聞オピニオン欄「キャンセルカルチャー考」。
・・・著名人が過去の言動を強く非難され、社会的地位を失う。昨年来、国内でも目につくようになった。これは行きすぎた「キャンセルカルチャー」なのか。正当な抗議申し立てなのか・・・

辻田真佐憲さんの発言から。
・・・2021年は日本のキャンセルカルチャー元年でした。東京五輪開会式の小山田圭吾さんが典型ですが、過去の発言を掘り返し、現在の基準で判断した上で抗議する。場合によっては職を失わせるまで追い込んでいくといったことが多く起こりました。
そうしたことは以前にもありましたが、去年、特に広がった一因はコロナ禍だと思います。キャンセルを推進するうちに、自分は正義と一体化しているという感覚に陥りがちです。さらにコロナで家に閉じこもり、SNSの狭い世界に入り浸っていると、「正義」が暴走しやすい。

ネットでの炎上は昔からありましたが、以前は、いわゆるネット右翼的な人たちが火付け役でした。キャンセルカルチャーでは正義をふりかざす「ネット左翼」が発火点になっている。その背景には、「左」が目標を見失っていることがあると思います。
少し前なら、「アベ政治」が闘うべき対象としてあった。しかし今は、安倍晋三さんのような明確な標的がなく、野党が政権をとれるという見込みもほとんどない。長期的な展望がないから、目の前のわかりやすい正義に飛びついてしまうのでしょう・・・

将来に悲観的な日本人

2022年7月19日   岡本全勝

7月4日の朝日新聞文化欄「世界で何位?から考える 次世代」に、「今の子どもたちが成長したとき、親世代よりも経済的に豊かになるか?」と言う質問をしたところ、17の国の中で日本がフランスと並んで一番悲観的でした。豊かになるが16%、厳しくなるが77%です。シンガポールとスウェーデンを除き、他の国は厳しくなるとの回答が豊かになるより多いのですが、日本は飛び抜けて、悲観的です。

小島庸平・東大准教授の発言から。
・・・日本で経済の見通しが悲観的なことに違和感はない。政府や日銀の対応も手詰まり感がある。最大の要因の一つは少子高齢化。増え続ける高齢者を、減り続ける現役世代が支える。年金の目減りを見越し、家計は消費や投資をおさえ、貯蓄にまわす。国内の市場拡大は見込めず、企業も投資を控える。ただ少子高齢化は他の先進国も同じ。なぜ日本が特に悲観的かを考えると「世代の問題」に行き当たる。

バブル崩壊後の長期不況に苦しんだ「ロストジェネレーション」と呼ばれる世代がいる。約2千万人いるといわれるロスジェネ世代が就職や結婚、出産といったライフイベントを迎える時期に、バブル崩壊後の不況が重なった。結婚や出産は個人の選択で、多様な方が望ましい。ただ当時の不安定な就業や失業を理由に、結婚や出産を望んでいたのにできなかった人は、少なくなかったのではないか・・・

・・・構造的な困窮を「自己責任」として放置したために、少子化と人口減が後戻りできない状態になり、経済の停滞を招いた。昨年刊行した『サラ金の歴史』では、ロスジェネ世代の経済的な弱者を狙ったサラ金の規制が何度も持ち越されたことを指摘した。
格差を放置したツケを払う形で、停滞に陥ることになった。この経験から学ぶとしたら、格差や不公正さを解消した方が、長い目で見るとこの社会を豊かにする、ということだろう。社会が人々の暮らしに対し、公正に配慮するという期待や安心感があるからこそ、人々は安心して家族を作り、消費できる。もうけることと公正さの追求は矛盾しないと思う。

人口が減少する確度が高い未来で、いかに平等さや公正さを確保するか。目先の景気ではなく、100~200年先を見通して、あえて青臭く理想の社会を描く。そんなグランドデザインを、政治には示して欲しい・・・

ゴルバチョフ大統領の役割

2022年7月17日   岡本全勝

6月23日の日経新聞夕刊「私のリーダー論」亀山郁夫・名古屋外国語大学学長の「教養なくして人動かず」から。亀山さんはロシア文学者です。

――現代において外国語を学ぶ意義を教えてください。
「私たちが判断に迷わず、嘘か真実かを見分ける能力を身に付けるためにも、外国語・外国文化の学びは不可欠です。将来的には英語に加えてもう一言語という能力が求められると思います。どれほどの高性能の自動翻訳機も、胸の中の外国語ほどの価値はありません。自動翻訳機では文化を知ることができないからです。文化を知るとは、歴史を知り、歴史の根底に潜むメンタリティーのコアを把握することです。言語を学ぶことなしには絶対に理解できない精神性、異なるメンタリティーというものがあるのです」

「世界は単一的なグローバル化の流れの中で順調に進んでいるように見えるが、それとは関係ない個々のうめきが世界中にあふれていることを知らなければいけません。それを知るのが外国語学です。日本に何十万人という学生がいるなら、何百人かは、一人ひとりがひとつの国の運命を見守っていくことが必要じゃないでしょうか。私がロシアを見守るなら、ある学生はカンボジアかもしれない。それが全部アメリカと英語の勉強で終わってしまうのは悲しむべきことです」

――ロシアの歴史上の人物で、模範となるリーダーはいますか。
「ゴルバチョフ元ソ連大統領です。彼には国民の良識を信じるオプチミズムがあった。ゴルバチョフはソ連を崩壊させましたが、本当はその役割は他の人に任せて、その後の国づくりのところで登場すべきだった。彼はヨーロッパの家という思想を持っていて、ヨーロッパの中にあるべきロシアを位置づけしようとしていた。そうすれば歴史はいまと違っていたかもしれません」

変な人たち、男性社員編

2022年7月11日   岡本全勝

今回もまた、このホームページで定番のお話しです。

電車の中や駅で、変なおじさんやお兄さんを見かけます。この夏は例年にまして暑いです。なのに、黒や紺の背広上下を着て、汗をかいている人です。
暑い夏に、黒の背広はやめませんか。上着を着たいなら、もっと涼しいのがあるでしょう。あるいは、上着をやめてシャツだけにしませんか。ネクタイは締めないのだし(中には、ネクタイをしている人がおられますが、何か事情があるのでしょうね)。

私は夏は、薄い青色やネズミ色系の上着にしています。シャツは青の縦縞模様が多いです。ボタンダウンで、ネクタイをしません。
後輩たちが黒の背広で来たら、「君たちが貧乏でスーツをたくさん持っていないことは分かるけど、夏に黒はやめてくれ。夏用の上着を持っていないなら、黒の上着を着てくるなよ」(笑い)と忠告します。

女性がさまざまなおしゃれをしているのに、男の人はなぜこんな暑い格好をしているのですかね。「熱帯地方」の日本に、黒の背広上下は罪です。