カテゴリーアーカイブ:社会の見方

ご苦労さま、坪井記者

2023年12月1日   岡本全勝

朝日新聞夕刊、題字下の「素粒子」、5年8か月書いてこられた坪井ゆづる記者が、11月30日で引退されるとのことです。
30日の素粒子の最後に、次の文章がありました。
「これにて「×  ×印」は書き納め。5年8カ月、あまたのおしかりに深謝します。」

かつては、地方分権の論陣を張ってくださいました。素粒子は、私と意見が異なることもありましたが、短い文章で社会を切り取る術は、素晴らしいものがありました。
字数の決まっている各行の頭の文字をつなげると意図が読める文章(在原業平のカキツバタの歌と同じ)は、頭をひねられたでしょうね。
ご苦労さまでした。

生物学的なヒトの寿命は55歳

2023年11月29日   岡本全勝

11月12日の読売新聞「あすへの考」、小林武彦・東大定量生命科学研究所教授の「老いて病む 人間の進化」から。哺乳類の総心拍数が種が異なっても同じという説は、「象の時間、鼠の時間」として何度か紹介しました。

・・・哺乳類の心臓は、総心拍数が20億回ぐらいに達すると終わりになるという仮説があります。60年生きるゾウも、2年しか生きないネズミも、トータルで約20億回は同じ。だからゾウの心臓はゆっくり2秒に1回ぐらい拍動するのに対し、ネズミの心臓は「トトトトトッ」と1秒間に10回ぐらいものすごい速さで打つ。
人間の総心拍数が20億回に達するのは、大体50歳前後です。また、がんで亡くなる人が55歳あたりから増えることや、女性の閉経年齢が50歳前後であることを踏まえ、私は生物学的なヒトの寿命は55歳ぐらいではないかとみています。

とはいえ、ヒトは最大で120歳ぐらいまで生きますよね。これは進化の過程で老いた個体、あるいは老いたヒトがいる集団の方が生存に有利に働き、選択されて長生きできるようになったためと考えられます。
もっとも、寿命にも限界はあります。世界中で115歳を過ぎた人は非常に少ない。どれだけ健康で体が丈夫でも越えられない壁がある。今なら120歳前後です・・・

・・・そもそも寿命がある、つまり「死」があるってことは、生物の進化に必要なんです。生物学的に考えると死があるから進化できた。古い世代が死に、新しい世代が生まれ、環境に適応するよう進化していくことで生物全体の生命が連続していく。ちょっと逆説的に聞こえるかもしれませんが、死ぬものだけが進化できて、今、存在しているのです。
進化は「変化」と「選択」から成り、変化は多様性であり、選択は、たまたまその環境で生きることができたものだけが生きてほかは死ぬということです。そこには意図も目的もない。キリンの首が長いのは、上のものを食べようと必死に努力したからではありません。変化により、たまたま首の長いのが誕生して、たまたまいい場所に葉っぱがあって、選択により、たまたま首の長いのが生き残った。生物学ではそう考えます・・・

強くなった日本の団体球技

2023年11月28日   岡本全勝

11月12日の日経新聞スポーツ欄パリへの道 強化の今4」「団体球技、長期低迷に終止符 外国人監督・海外組けん引」が良い分析を書いていました。
・・・2023年のスポーツ界は「日本代表」の活躍に沸いた。ワールド・ベースボール・クラシックを制した侍ジャパン、ラグビーワールドカップで強豪相手に奮闘した桜戦士だけではない。この夏以降、バスケットボール、バレーボール、ハンドボールの日本男子代表が立て続けにパリ五輪予選を突破する”サプライズ”を起こした・・・

詳しくは原文を読んでいただくとして。開催国として出場した2021年の東京オリンピックを除くと、バレーボールは16年ぶり、ハンドボールは36年ぶり、バスケットボールは48年ぶりの自力での出場だそうです。3競技とも、オリンピックに出場できるのは世界で12チームですから、とても狭き門です。
3チームに共通するのは、外国人監督と海外で活躍する選手の存在です。
なるほどね。

毎年同じことを講義した教授

2023年11月25日   岡本全勝

読売新聞連載「時代の証言者」化学者の岡武史さん、11月23日に次のような文章があります。こんな時代があったのですね。それとも、自分で勉強せよという時代だったのでしょうか。

・・・1951年春に東大に入り、最初の2年間は駒場キャンパス(東京都目黒区)での教養課程です。これはよかった。まだ有名になっていない、新進気鋭の先生方が素晴らしいんです。好きな数学はもちろん、近代経済学なども、ズバズバッとよく分かる講義でした。
ところが、理学部化学科へ進み、本郷キャンパス(文京区)で講義を受け始めたら、全く面白くない。化学教室の先生方はもう堕落しててね。ある先生なんか、1学年上の人から貸してもらったノートと、話すことが冗談まで一言一句同じ。何十年一日のごとく、毎年同じものを読み上げていたのでしょう。偉い先生はとにかく威張ってばかり。

ちょうど学外の活動で忙しくなったこともあって、大学へ行くのは、学生同士で自主的に専門書や論文などを読む輪講くらいになりました。朝4時に起きて自習した後、8時から10時頃まで輪講をして、偉い先生方が講義室へ来る時間になると、僕は大学から逃げ出していました・・・

クラウドファンディング

2023年11月24日   岡本全勝

クラウドファンディングという言葉を、よく聞くようになりました。上野の科学博物館が実施したところ、1億円の予定に9億円集まったとか。ところで、クラウドファンディングという言葉は、分かったようでよく分からないので、調べました。

クラウド(群衆)とファンディング(資金調達)組み合わせた言葉とのことです。ウィキペディアによると、「多数の人による少額の資金が他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを意味する」。
インターネットで使われるクラウドは雲ですが、こちらは群衆なのですね。

さらに、「クラウドファンディングという言葉はカタカナ語としては新しい言葉ではあるが、後述の通り古くから使われている言葉である。また、全く同じ意味としてロシア語由来のカンパという言葉もある」
なるほど。それなら、募金と言えばよいのに。あるいは特定目的募金でですかね。
(追記)
読者から、「群集型資金構築」ではどうかという提案がありました。

次のような説明もあります。
「クラウドファンディングは資金提供者に対するリターン(見返り)の形態によって下記の3類型に大別される。
・金銭的リターンのない「寄付型」
・金銭リターンが伴う「投資型」
・プロジェクトが提供する何らかの権利や物品を購入することで支援を行う「購入型」」

商品だけでなく、事物にもカタカナの名前を付けて新奇性を売ることが多いです。でも、内容を理解してもらい、長く覚えてもらうなら、従来からある日本語を使うとか、それを改変して新語を造るべきでしょう。このような言葉は関係者がつくりますが、それをそのまま使う報道機関に責任があると思います。