カテゴリーアーカイブ:社会の見方

取締役会の前に方針が決まっている

2024年2月14日   岡本全勝

1月24日の日経新聞オピニオン欄、藤田 和明・上級論説委員の「「稼ぐ日立」の原風景、社外取締役との対話が示した成長」から。詳しくは本文をお読みください。

・・・稼ぐ日立へ。世界標準の経営を突き詰めた原風景ともいえる記録がある。約10年前の13年6月。当時の川村隆会長が社外取締役に招いた米スリーエムの元最高経営責任者(CEO)、ジョージ・バックリー氏と対談、日立総合計画研究所の文書に残している。
スリーエムは世界屈指のイノベーション力が評価されていた。バックリー氏は前年から日立の社外取締役を務め、感じた課題をグローバル経営の視点から指摘している。

一つは取締役会のあり方。「取締役会に諮られたとき、その方針が経営によってすでに決まっていたように感じた」。米国なら意思決定前に会社側と取締役会で長く討議する。「戦略的オプションについて詳細な議論を行っただろう」。人ではなく、アイデアで競争すべきだとした。

研究者の収益意識も指摘した。米国では「多くの研究開発資金を集めるには、より多くの利益を上げることが重要と(研究者は)知っている」。研究者も事業の検討会議に出席し、収益性と優れたキャッシュマネジメントを理解すべきだ。利益創出やスピード感が日立には欠けてみえた。
「生み出すべきは新たなアイデアと成長性を兼ね備えた会社」。より速く成長し、より多くの利益を上げる。アイデアの回転数を高め新製品の導入速度を高める。「革新的でなければ、ゆっくりとしかし確実に競争力が低下する」
当時の川村氏が率直に問題意識をぶつけ、バックリー氏が経験で築いた知見で答えるやりとり。日立がその後とった10年改革に重なっている・・

「経済大国=豊か」という幻想の先へ

2024年2月13日   岡本全勝

1月20日 の朝日新聞オピニオン欄、原真人・編集委員の「日独逆転、GDP4位に転落 「経済大国=豊か」という幻想の先へ」を紹介します。日本の国内総生産が人口がはるかに少ないドイツに抜かれることも大きな問題ですが、ここでは最後のくだりを引用します。

・・・「GDPを単純に増やせばいいという発想は意味がない」と話すのは長期不況理論の第一人者、小野善康大阪大特任教授である。「日本には巨大な生産力があり、1人当たり家計金融資産は世界トップ級の金持ちで購買力もある。問題は大金持ちなのにお金を使わず、潜在能力を生かし切れていないことだ」
では何が必要なのか。「生活をいかに楽しむか、そのために何にお金を使うべきかという発想に転換し、そこに知恵をしぼるべきです」と小野氏は言う。

時代遅れのGDPに代わって真に国民に望ましい国民経済指標を見つけることに最初に挑んだのはフランス政府だ。16年前、ノーベル経済学賞学者のスティグリッツ氏、セン氏らを招いた専門委員会で検討し、社会福祉に貢献する指標を一覧で示すことが望ましいと結論づけた。
それを実践したのが経済協力開発機構(OECD)のベターライフ指標だ。雇用や住宅、環境など11分野で毎年、対象40カ国に評価点をつけて発表している。
日本は教育や安全性で平均を上回る一方で、コミュニティー、市民参加、ワークライフ・バランスなどで平均を下回っている。分野ごとに評価すれば、他国に比べて劣っている領域も浮かび上がる。GDP幻想から目を覚まし、国民生活本位の新発想に切り替える時期だろう・・・

我慢する

2024年2月11日   岡本全勝

フランス語に「我慢する」はない」の続きです。肝冷斎に教えてもらいました。

「がまん」は日本人が母語として、しかもかなり幼いころから違和感なく使うことばです。しかし、漢語でしかもサンスクリットの意訳です。
漢語の原義では、「我慢」は「慢心」の一種で、「自分に固執して他者を見下す思い上がり」というような意味です。「自慢」も同じ意味です。
「慢」(まん)はサンスクリット「マーナ」の音訳で、思い上がりの心だそうです。

それが、近世に「がまんを無くせ」が「がまんしろ」になり、「がまん」がほぼ反対の意味に転換してしまいました。

これもまた、専門家を知人に持っていると得をする例です。

鎌田先生の解説、能登半島地震の仕組み

2024年2月10日   岡本全勝

今回の能登半島地震では、場所によって4メートル隆起し、240メートルも海岸線が沖に広がったそうです。東日本大震災では、沿岸部が1メートルも沈下しました。何が違うのか、どうしてこのようなことが起きたのか。専門家の鎌田毅・京都大学名誉教授に教えてもらいました。専門家を知人に持っていると、得ですね。
その内容が、『中央公論』3月号に掲載されています。「盲点だった日本海側の防災対策 能登半島地震から何を学ぶべきか」

詳しくは記事を読んでもらうとして。東日本大震災と能登半島地震では、仕組みが違うのです。前者は沈み込むプレートが跳ね上がることで起き、後者はプレートがぶつかることで起きます。なるほど、それで一方は沈下し、他方は隆起するのですね。

能登半島は年平均で約1~1・5ミリメートルの速度で隆起していると考えられてきたのですが、今回の地震で4メートル隆起したことで、ゆっくり時間をかけてではなく3000~4000年に一度、大地震が起き、そのたびに大きく隆起したと考えられます。
能登半島の海岸には「海成段丘」(海岸線に発達した階段状の地形で、平たんな台地(段丘面)と前面の崖(段丘崖)の組合せからなる)が発達していて、輪島市や珠洲市の海岸線沿いには、3段確認されています。段丘が3段あることは、過去に大地震が3回起きたことを意味します。
私たちは、その数千年に1回程度の現象に遭遇したのです。

素人にもよくわかる解説です。ご一読をお勧めします。

一億総おひとり様社会

2024年2月9日   岡本全勝

1月13日の日経新聞一面連載「昭和99年 ニッポン反転」は「「総おひとり様」の足音 個つなぐ社会、日本モデル」でした。

・・・身元保証人がいないと入院・入所お断り――。2022年発表の総務省の抽出調査で、一般病院や介護保険施設の15.1%がこう答えた。割合を全国に広げれば「お断り」は約3千施設に及ぶ。高齢者の孤立問題に取り組むNPO法人の須貝秀昭代表(52)は「『家族』が前提の社会を変えないと、命が救えない」と訴える。
戦後、日本の基準は家族だった。1978年の厚生白書には、同居は「我が国の福祉における含み資産」との記述がある。当時は高齢者の約7割が子供と同居し、面倒をみるのが当たり前とされた。80年代には配偶者特別控除や専業主婦の第3号被保険者制度が導入され、家族像が固定化されていった。

同じころ、欧州は経済的苦境から抜け出すため女性活躍にかじを切った。日本と正反対の政策は、共働きを前提とした子育て支援につながり、比較的高い出生率の要因とされる。
京都産業大の落合恵美子教授(家族社会学)は「80年代の経済的成功が改革の意欲をそぎ、家族モデルが固定された。女性の社会進出の遅れは『失われた30年』の要因にもなった」と指摘する。

家族の姿は半世紀で一変した。2020年の国勢調査では単独世帯が一般世帯の38%を占めた。「サザエさん」型の3世代同居は4.1%。家計調査が標準世帯としていた「夫婦と子供2人」は1割を切る。非婚化が進み、およそ3組に1組が離婚し、死別後も長い人生が待つ。迫る「総おひとり様社会」と日本はどう向き合うべきなのか・・・