カテゴリーアーカイブ:社会の見方

国家ブランド指数、第1位

2024年2月23日   岡本全勝

2月9日の日経新聞「私見卓見」は、ナンシー・スノー、カリフォルニア州立大学フラトン校名誉教授の「日本はブランド力を生かせ」でした。

・・・アンホルト―イプソス社が毎年発表している「国家ブランド指数」で、昨年、日本が初めて60カ国中1位となった。このランキングは世界的にどのように認識されているかによって各国をランク付けするもので、フランスの市場調査会社イプソス・グループが6万人以上を対象に実施したインタビューに基づいている。
国家ブランドとは、単にその国の良い評判のことだ。特定の企業や人に良い評判や悪い評判があるように、国にも良い評判や悪い評判がある。日本の国家ブランドの将来性は高まっている・・・

日本が総合ランキングで1位になったのは、製品の信頼性と他国にはない魅力です。世界経済のリーダーという項目でも、総合2位です。
もっとも、スイスのビジネススクールIMDが毎年発表する「世界競争力ランキング」では35位です。政府とビジネスの効率性、上級管理職の国際経験、語学力、デジタル技術力が最下位に近いようです。

製品の信頼性が高いのはよいのですが、性能偽装のニュースが続くようでは、これも危ないです。

日本のGDPが世界4位に

2024年2月21日   岡本全勝

内閣府が、2023年の国内総生産の数値を公表しました。各紙が「ドイツに抜かれた」と伝えています。
・・・2023年の国内総生産(GDP)は、物価の影響をふくめた名目GDPが前年より5・7%増え、591・4兆円だった。米ドルに換算すると1・1%減の4・2兆ドルで、ドイツ(4・4兆ドル)に抜かれて世界4位に転落した。1968年に西ドイツ(当時)を追い越して以来、55年ぶりに日独が逆転した・・・「日本GDP、4位に転落 円安響きドイツ下回る」2月16日の朝日新聞。

報道では、第4位に転落したことを強調していますが、問題はそこではありません。ドイツの人口は8000万人余りで、1億2000万人の日本の3分の2です。すなわち、一人あたり国内総生産では、日本はドイツの3分の2なのです。それは、個人の豊かさと言い換えることができます。

2月17日の日経新聞5ページに、「物価を考える 名目GDP600兆円」という記事が載っていて、各国の名目GDPの伸びがグラフで出ていました。
このグラフでは、1993年を起点に100として、日本やアメリカ、ヨーロッパ先進国の名目GDP(自国通貨建て)の伸びを示しています。アメリカ、イギリスは3倍以上、フランス、イタリア、ドイツが2倍以上、日本は横ばいです。毎年2~3%程度の伸びがあると、30年間でこれだけの差が出るのです。日本だけが独自の道を歩んでいます。

30年間とは結構長い時間です。どこに問題があったのでしょうか。昭和後期に奇跡のような高度成長を遂げ、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われて自慢していたのに。
数字では見えない、悪いことがあります。企業はリストラという名の下に社員を解雇し、非正規や派遣社員に置き換えました。役所も行政改革の旗印の下、職員を非正規職員に置き換えました。そして、就職氷河期、年越し派遣村、子どもの貧困、結婚できない若者という言葉に象徴されるような、不安な社会を作ったのです。子どもの数が減るのも、これが大きな要因でしょう。
数字の上では横ばいですが、正規と非正規の間の格差、社会の分断を生んでいるのです。社会は悪くなっています。

日本経済の再生は人づくりが課題

2024年2月19日   岡本全勝

1月31日の日経新聞大学欄に、大竹文雄・大阪大学特任教授の「日本経済の再生 人づくり蛾課題現状維持の誘惑絶つ」が載っていました。「この国のかたち」を変えることの重要性と難しさが分かります。

―教育システムのどこに問題がありますか。
「先進国に必要な人材教育ができていません。先端を走る国々では常に技術革新が起きている。新しいことを考えて挑む人を育て評価する仕組みがあるからです。いまだに日本はそうなっていない。そこに30年以上続く停滞から抜け出せない根本原因があります」
「これを変えるのはすごく難しい。これまで長所だった協調を極端に重視した教育を見直す必要があるからです。高度成長期などキャッチアップの時代には、他の成功モデルを学んで改善すれば、うまくいった。みんなで協力して生産性をあげることが重要だったわけです」

「協調重視の発想が社会に広がり、教育にも浸透しています。幼稚園や保育園の教育でも友人関係や協調性を非常に大事にする。一方で論理的思考や人と違う考えを重視してこなかった。いま大事なのは技術革新を生む発想、間違ってもいいからアイデアを出し試す思考法です。それができる人の育成、失敗を許す教育に転換すべきです」
「悩ましいことに、人口減少と高齢化が変化を難しくしています。新しい発想を認めない、現状でいいという保守的な人が増えていきます。まず、この流れを止めないといけない」

―学校や会社も変わらざるを得ません。
「日本社会には新しいことを許容しない特性があり、行動経済学でいう現状維持バイアス(ゆがみ)が強く働いています。人や企業が変化か現状維持かで迷う場合、変化より現状が必ず良く思えてしまう。このゆがみを除くことで、変化が起きます」

わかりづらいカタカナ語をなぜ使うのか

2024年2月18日   岡本全勝

2月2日の朝日新聞オピニオン欄「わかりづらいカタカナ語、なぜ使うの 社会言語学者・井上逸兵さんに聞く」から。

・・・たしかにカタカナ語がよく使われていますね。言葉には、情報伝達のほかに、その言葉を使うことで「自分は何者なのか」を示す機能があります。ビジネスの世界で使われるカタカナ語は、後者の機能を果たしているのではないでしょうか。つまり、顧客や同僚・上司に「私は『イマ風』の仕事の仕方をわかっていますよ」と、自分自身がその分野に詳しい人物であることを示しているのです・・・

・・・カタカナ語を使うのは悪いことではありません。一方で、行政が安易に使うのは問題があります。行政の役割は、必要な情報をわかりやすく万人に伝えることです。意味がわからない言葉を使えば、当然、情報伝達ができない。さらに自分は排除されているという感覚まで生み出してしまう恐れがあります。
特にコロナ禍では、行政のカタカナ語の使用が目立ちました。わかりやすい例で言えば「ステイホーム」といった言葉。日本語だと目新しさを感じないので、注目を集めるという意味では成功したと思います。一方で、老若男女すべての人が意味を理解できたかというと、少し疑問があります・・・

意図の伝達、対話の手段でなく、顕示欲の手段なのですね。高級銘柄品(カタカナ語で言うと「ブランドもの」)を持ち歩く意識と同じです。威信財の一種でしょうか。
とすると、高級銘柄品を持つことが一部の人たちの間では恥ずかしいことと認識されるので、そのような意識が広がると、カタカナ語を使う人も恥ずかしい人と思われるときが来るのでしょうか。いえ、それら高級銘柄品の価値が下がると新しい銘柄を探すように、新しいカタカナ語を使うのでしょうね。

『行為主体性の進化』

2024年2月17日   岡本全勝

マイケル・トマセロ著『行為主体性の進化 生物はいかに「意思」を獲得したのか』(2023年、白揚社)を読みました。

宣伝には、次のように書かれています。
「認知心理学の巨人トマセロが提唱する画期的な新理論!
何をするべきかを自分で意思決定し、能動的に行動する能力、それが「行為主体性」だ。生物はどのようにして、ただ刺激に反応して動くだけの存在から、人間のような複雑な行動ができるまでに進化したのか?
太古の爬虫類、哺乳類、大型類人猿、初期人類の四つの行為主体を取り上げ、意思決定の心理構造がどのように複雑化していったのかを読み解いていく」

主体性の進化に着目するとは、なかなか素晴らしい着眼点ですね。生物が生まれた時は、刺激に対し反応するだけでした。著者は、その後に4つの段階を経て、現在の人間のように考え行動できるようになったと説明します。
まず、太古の脊椎動物が、目標指向的行為主体となります。次に、太古の哺乳類が、意図的行為主体になります。そして、太古の類人猿が、合理的行為主体となり、太古の人類が、社会規範的行為主体になります。
それを生んだのは、それぞれの生物のおかれた生存環境です。そこで生きていくために、意図による行動が生まれ、集団での行動が生まれます。環境が主体性を生むのです。この説明はわかりやすいです。推測でしかありませんが。

もう一つ知りたいのは、そのような意識が、脳の中でどのようにして生まれているのかです。まだまだ、わからないことばかりですね。