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経済

経済停滞30年の原因私見1

1991年にバブル経済が崩壊し、不況になりました。政府は何度も景気刺激策を打って、公共事業などを追加しました。しかし、経済は好転しませんでした。安倍第二次政権になってインフレ目標を導入し、「異次元の」と形容される金融政策をとりました。しかし、成功したとは言えません。黒田日銀総裁は、異次元緩和の導入時に2年で2%の物価上昇を目指すと表明しましたが、任期中の10年間では実現しませんでした。

私は、金利操作による「インフレターゲット」は景気が過熱した際に下げるときには有効でしょうが、景気拡大には効果がなかったと思います。
2000年代初めに、麻生太郎総務大臣から「金利を下げても、企業が投資をしない。そんなときに何をしたらよいか、日銀総裁をはじめ経済学者に聞いたが、想定していないので答えがない」と聞きました。金利を下げ、政府の需要を拡大しても、企業が投資を拡大しないと効果はありません。ケインズ経済学の限界です。

1990年代後半に日本企業は、雇用、設備、債務の3つの過剰に悩み、これらの削減に動きました(1999年版「経済白書」)。企業はコストカットに全力を挙げ、給料も上げず、投資にも消極的になりました。これは理解できます。ところが、それらの処理を終えた2000年代、2010年代にも、企業は設備投資を手控え、利益を内部留保に蓄えました。
ここまでは経済学の説明です。では、企業はなぜ投資を拡大しなかったか。ここからは、経営学、社会学の説明です。「その2」に続く。

大企業は中小企業をいじめるな

8月18日の日経新聞、小林健・日本商工会議所会頭の「中小を為替ヘッジに使うな」から。

―中小企業への手厚い支援は、生産性が低い「ゾンビ企業」を延命させるとの批判もある。

「それはファクトをみる必要がある。日銀や財務省の統計を分析した中小企業白書によると、製造業の2019〜21年度の実質労働生産性は大企業が年率で2.4%プラス、中小企業が2.3%のプラスだ。両者の生産性の差はほぼない」
「ところが『価格転嫁力』の上昇率をみると、大企業が0.9%プラスなのに対し、中小は2.3%のマイナスだ。この2つを足した結果、企業の収益力を示す1人あたりの名目付加価値額の上昇率は中小の場合、ゼロになってしまう。つまり大企業が十分な価格転嫁を認めないために、中小が高めた生産性が吸い取られている構図だ」
「だから大企業は中小が負担する原材料価格などの上昇を、必要なコストと考えて価格交渉に応じてほしい。『もうけから還元する』という考え方は変えるべきだ。同じサプライチェーン(供給網)にある場合、大企業は中小が作る物の原価がわかり適正利益も見えるはずだ。企業数で99.7%を占める中小企業が良くなれば日本の経済も良くなるのだから、これは大企業の社会的責任だ」

根本涼、竹内宏介記者の解説
「もうけから下請けにいくらか出すという『おぼしめし』スタイルの価格交渉ではなく、コストととらえて中小企業に払う部品代を上げてほしい」。小林氏が熱弁したのは自身が身を置いてきた大企業の意識変革だった。
利益が出たら還元するという強者の論理ではなく、中小企業が最初から収益をあげられる共存共栄の姿勢を求める。供給網の一角をなす中小企業の価格転嫁が進まなければ賃上げも滞り、デフレからの完全脱却の好機を逃すとみる。
商工会議所の生みの親の渋沢栄一は、社会貢献などの公益を図りながら事業の私益を追う重要性を説いた。小林氏の「価格転嫁は大企業の社会的責任」との言葉に通じる。
もちろん中小企業にもDXなどの努力が不可欠なのは言うまでもない。稼ぐ力を高めるための最適解を探る双方の努力があってはじめて、経済停滞を克服できる。

巨大インターネット企業独占への戦い

8月7日の日経新聞に「グーグル検索、違法な独占 米司法省の訴え認める」が載っていました。
・・・米裁判所は5日、米グーグルの検索サービスが独占に当たると認める判決を出した。バイデン米政権は巨大テクノロジー企業の行き過ぎた市場支配力の是正に動いてきた。裁判所が規制当局の主張を認めたことで、米アップルなどに対価を支払ってスマホに検索機能を標準搭載する商習慣の見直しを迫られる。
「グーグルは独占企業であり、独占を維持するために行動してきた」。米首都ワシントンの連邦地方裁判所は5日、原告の米司法省などの主張を認めた・・・
・・・特に問題となったのはグーグルがアップルなどのスマートフォンメーカーに対価を支払う代わりに、グーグルの検索を標準にしてもらうという契約だ。裁判資料によると費用は21年で260億ドル(約3兆8000億円)にのぼる。
巨額の資金を駆使した手法が他社の参入を阻み、独占を生んでいるという司法省などの主張を連邦地裁が認めた・・・

・・・米国では独禁当局の訴訟が業界構造の変化を促してきた歴史がある。1970年代には司法省が通信大手AT&Tを訴え、その後の会社分割と料金競争につながった・・・バイデン政権ではテック企業の肥大化による問題の是正に動き、司法省がグーグルとアップルを、米連邦取引委員会法(FTC)がアマゾン・ドット・コムとメタをそれぞれ提訴。いわば分担するかたちで5社すべての巨大テックに対峙してきた。
欧州連合(EU)も巨大テック企業の活動を制限するデジタル市場法(DMA)の本格運用を開始し、アップルの違反を指摘した、消費者保護を強化するデジタルサービス法(DSA)と一般データ保護規則(GDPR)という3法で巨大ITの傍聴に対応している。
日本の公正取引委員会も同様だ。23年10月には米グーグルの検索サービスについて独占禁止法違反の疑いで審査を始めた・・・

奨学金返済を肩代わりする企業

8月1日の日経新聞に、「奨学金肩代わり 2000社突破」が載っていました。
・・・若手社員向けに大学などの奨学金を肩代わりする奨学金返還制度を活用する企業が急増している。5月末までに2000社を超え、前年同月比で2倍以上に膨れ上がった。企業は数年にわたって若手人材に支援を続けられることから、若年層の人手不足解消と人材の定着を狙っている。

企業の「奨学金返還支援(代理返還)制度」は2021年4月から日本学生支援機構(JASSO)が実施している。新制度は企業が直接機構に送金できるようになり、返還額は社会保険料や所得税の対象ではなくなった。返還額は法人税の控除の適用を受けられる場合があり、企業側もメリットになる・・・

・・・JASSOによると大学学部生の2人に1人が奨学金を受け取っている。労働者福祉中央協議会の調査ではのJASSOの奨学金返還者の平均借入総額は310万円で返済期間は平均14.5年だった・・・

百貨店生誕120年、激変する環境

6月24日の日経新聞に「百貨店生誕120年 稼ぎ頭、服から「ヴィトン」に 激変消費、新富裕層をつかむ」が載っていました。
記事には図がついています。1991年まで百貨店と全国スーパーの売上高は右肩上がりで伸びて、それぞれ約10兆円に達します。その後、スーパーは伸びを続け15兆円を超えますが、百貨店は右肩下がりになり、近年は5兆円程度です。そしてコンビニも伸びてきて、10兆円を超えています。

・・・百貨店の稼ぎ頭が変わりつつある。日本の消費拡大の原動力となってきた「中間所得層」が縮み、主力だった中価格の衣料品が鳴りを潜めたからだ。代わって株高などで潤う高所得層やインバウンド(訪日外国人)客を背景に「ルイ・ヴィトン」をはじめ高級ブランドや食料品の重みが増してきた。激変する消費環境へ変革待ったなしだ・・・
・・・2023年9月、セブン&アイ・ホールディングス(HD)は業績不振だったそごう・西武を米投資ファンドに売却した。ファンドから同店の不動産を買ったヨドバシHDの家電量販店が出店するため、百貨店は半分になる。西武池袋は25年の改装開業に向けた工事が着々と進み、これまでに約2割に当たる約200のテナントが閉店した。
西武池袋は中価格帯の衣料品や家具販売から手を引き、代わりにルイ・ヴィトンや「エルメス」などの高級ブランド品や化粧品、デパ地下の食品に特化した百貨店として訪日客や外商客らで潤う高額品に的を絞る・・・

・・・百貨店購買の中心だった中間所得層は縮小している。
労働政策研究・研修機構(東京・練馬)が、世帯1人当たりの可処分所得「等価可処分所得」の中央値から0.75〜2倍の範囲に所得が収まる層を「中間層」と定義して推移を調べたところ、日本の中間所得層は18年に58%まで下がった。1980年代半ばから2010年代半ばで比較した場合6.5ポイントも低い。同機構は高齢化で現役を引退した世帯の割合が高まった影響が大きいと分析する。
2040年以降、人口構成比が高い「団塊ジュニア世代」が65歳以上となり、現役世代の所得が上がらなければ中間層はさらなる縮小が予想される。中国を除く米国やドイツ、英国など主要国は軒並み同じ傾向だ。中国も足元で景気不安が高まり先行きは不透明になった。

百貨店は長年、衣料品が稼ぎ頭だった。日本百貨店協会(百協)によると百貨店市場は1991年の9兆7130億円をピークに23年は半分の5兆4211億円まで縮小した。衣料品は同時期に4兆円弱から約1兆4600億円まで減った。中間層は「ユニクロ」などの値ごろ感のある衣料専門店やショッピングセンター(SC)、アウトレット施設などに流れた。新型コロナウイルス禍で外出が減ったことも響き、百貨店衣料品は20年には食料品との逆転を許した。
中価格帯以上の衣料品をそろえてきた、国内の衣料ブランドである百貨店アパレル各社も百貨店への依存度は低下した。代表格、オンワード樫山の百貨店売上高構成比は24年2月期に38%と15年で半減。一方、SCや電子商取引(EC)がそれぞれ約3割と百貨店に迫る・・・