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経済

外国との経済格差

この30年間、日本の経済が発展せず、所得が上がりませんでした。その間に、欧米は先に行き、アジア各国が追い上げ追い越していきました。日本は、安い国になりました。

9月25日の日経新聞、石鍋仁美・編集委員の「JRが外国人パスを大幅値上げ 訪日客価格、手本は途上国」に次のような話が載っています。
・・・10月1日、JRグループが大幅値上げを実施する。購入方法によるが、上昇率は普通車で49〜69%、グリーン車56〜77%になる。ただし一般の日本人はほぼ関係ない。対象は訪日観光客が買える全国乗り放題の「ジャパン・レール・パス」。売れ筋の7日間用だとこの上げ幅になる。
今の7日券の店頭価格は東京・大阪間の新幹線往復と大体同じ・・・

これまで安くしていた外国人観光客用料金を、日本人並みに上げたのです。それでも、一人あたり所得が日本を超える諸外国観光客からは、まだ安い価格です。
「松竹梅3段階の価格を用意すると、日本人は竹、外国人は松を選ぶ」という業者の話も紹介されています。
都市の高層ホテル、地方の古民家改装宿など外国人狙いの宿泊施設も、高級物件が多いとのこと。東京六本木には、1杯1万円のラーメン店ができたそうです。

一つの国土に、二つの経済圏ができています。
でも、かつて途上国に仕事や観光に行ったとき、同じことを経験しましたよね。悲しいのは今回は状況が逆転して、豊かな訪日外国人に対して、貧しい日本人がサービスを売ることです。

9月29日の日経新聞「経済教室」、吉田二郎・ペンシルベニア州立大学教授「世界一の大都市形成に寄与 住宅市場の特質と課題」には、安い日本の住宅が取り上げられていました。
ワンルームおよび1LDKアパートの家賃は、東京都心では平均約14万円ですが、ロンドンでは約39万円、ニューヨークでは約56万円です。
住民にとってうれしいですが、他の条件の違いがあるとしても、それだけの経済格差があるということでもあるのでしょう。

預金金利と配当利回りの比較

川北英隆先生のブログ、10月2日は「預金金利と配当利回りの比較」でした。
定期預金と普通預金と株式配当利回りが1985年以降折れ線グラフで図示されています。わかりやすいです。

・・・定期預金金利として1000万円以上の定期預金のデータを用いた。大雑把には、高度成長期から1985年頃にかけ、1年定期で4%から7%の間で推移している。
預金金利の現状は、周知のように限りなくゼロに近い。7月末現在、1000万円以上定期預金でさえ0.059%である。
一方の株式配当利回りはといえば、足元で2%を超えている。定期預金金利と逆転したのが1995年頃である。それ以前は、普通預金金利を下回っていたこともある・・・

私の年代は、子どもの頃に貯金を教えられました。株式投資は、危ないと聞いていました。社会人になったときに、生命保険を勧められました。その後、個人年金もできましたが、あまり関心はありませんでした。
この図を見ると、かつては預金で持っていても正しかったのです。しかし、今は状況が大きく変わりました。

日本社会の大企業志向

8月14日の朝日新聞夕刊「大企業志向――技術あるのにスタートアップ低調な日本 起業ノウハウ学ぶ場、もっと」から。

革新的な技術やビジネスモデルを伴って起業し、短期間で急成長するスタートアップ(新興企業)が、日本では育ちにくいとされる。かつては「ものづくり大国」と言われた日本で、何が問題となっているのか。日本通のベンチャーキャピタリスト、アニス・ウッザマン氏(47)に聞いた。

――日本のスタートアップを取り巻く現状は、世界各国と比べてどんな課題がありますか。
日本政府によると、日本には現在、約1万社のスタートアップがありますが、世界のスタートアップのうち、1割以下という少なさです。数年前に比べれば増えていますし、人々の認知も広がったと思いますが、グローバル水準で見たとき、スタートアップやイノベーションのハブになれるかというと、あと一歩足りない。シリコンバレーやイスラエルのような地位をアジアの中で築いて欲しいです。

――そうはいっても数年前と比べて日本でスタートアップが増えてきた背景には何があるのでしょうか。
政府の政策だと思います。日本経済復活のため、イノベーションが大事ということを政府が悟り、シリコンバレーの状況を研究するなどしてきたからだと思います。それに合わせて一部の大学も活発に動き始め、イノベーションやアントレプレナーシップ(起業家精神)関連のプログラムが行われたり、大学発のファンドができたりしています。

――政府が支援に力を入れ始めたのは日本経済に対する危機感の表れなのでしょうか。
そうでしょうし、国が支援する方向性は正しいと思います。日本の技術者には十分ポテンシャルがあります。私も東工大にいたことがあるので、日本の研究や技術のレベルの高さは知っています。ただし、そうした深い研究などが実用化されたり、法人の設立まで至らなかったりしているのが課題です。実用化や法人化にはビジネスのアイデアや知識が必要ですが、日本では技術者がそういったことに触れる機会が少なく、結局、大企業に就職する傾向があると思います。

株式投資

株価の変動は、円ドル相場とともに、社会人になってから仕事にも関係あるので、気にするようになりました。しかしそれは、経済の動きとしてであって、自分の財布とは縁遠い話と思っていました。知人には、「儲けた」「損をした」という人もいましたが。日経新聞の多数のページを占めている株価欄も、邪魔なだけでした。

子どもの時に学校でも、貯金の重要性は教えられました。貯金箱も、いろんなところでもらいました。郵便貯金もさせられました。他方で株については、「怖いものだ」と教えられました。「祖父が買った株や国債は、敗戦で紙切れになった」と父に教えられました。
どこでどのように買うかも知りませんでした。大きな街には証券会社の建物がありましたが、縁の遠い存在でした。そもそも、若いときは給料で生活することが精一杯で、その後は家を建てた借金を返済することが先決でした。

株式投資の専門家である川北英隆先生のブログに、しばしば株のすすめが書かれています。「株式投資は実践あるのみ-1」以下の連載が、わかりやすいです。

個人加盟の労働組合

7月17日の朝日新聞くらし欄に「初の「非正規春闘」、どうなった パートらユニオンに加入、一律10%の賃上げ要求」が載っていました。

価高や人手不足を背景に、30年ぶりの高い賃上げ率となった今年の春闘。労働組合がない会社のパートやアルバイトらが、個人加盟型の労働組合(ユニオン)に入って一律10%の賃上げを求める「非正規春闘」も初めて行われた。会社側とどう交渉し、どんな成果を得られたのか。舞台裏を取材した。

「ウソでしょ」。靴小売り大手ABCマートの千葉県内の店舗で働くパート女性(47)は昨年12月、耳を疑った。物価高の中、時給が1月から下がるというのだ。会社が従業員の評価方法を見直したためだった。
女性の時給は基本給1千円と能力に応じた加算給30円の計1030円だったが、見直しで加算給が20円減った。まわりのパートも軒並み下がった。

「あり得ない」。社内に労働組合はなく、相談した労働基準監督署の担当者が教えてくれたのが「ユニオン」だった。一人でも入れる企業横断型の労働組合のことで、企業別の組合と同じように労使交渉できる。
その一つ、総合サポートユニオン(東京)に相談すると、青木耕太郎共同代表(33)から「賃下げ撤回だけでなく、10%の賃上げを求めてみませんか」と提案された。2月、同社の全てのパート・アルバイト(約5千人)について提案通りの要求をしたが、会社からは書面で拒否された。
3月9日、ユニオンはストライキを14日に行うことを会社側に通告し、本社前で抗議活動をした。するとその夜、会社側は女性の賃下げを撤回すると電話で伝えてきた。ただ、賃上げには応じなかった。
スト前日。会社側と初めての労使交渉が開かれた。女性は机の下で足を震わせながらも、言った。
「いくら売っても給料で認めてくれない。人として見てくれているんですか」
業績を考えても、時給アップはできるはずだ。2023年2月期は増収増益の見通しだった。それでも会社側は、「賃金はまわりの相場に比べ低いとは考えていない」と譲らなかった。

翌日、女性は一人でストを決行した。15分早帰りしただけだ。職場の仲間には迷惑をかけたくなかった。それでも、会社側へのプレッシャーになった。
3月30日の2回目の団体交渉で、会社側は5%賃上げをすると回答した。なぜあと5%できないのか。会社側は「今後、新店舗や設備の導入で、大型投資もあり得る」と主張した。
だが、投資は銀行からの借り入れもできるはずだ。「あと半分、まだ妥結はできない」。4月21日に2度目のストをすると予告し、その前日に3回目の団体交渉が開かれた。
そこで指摘したのが、創業家が同社の株の約6割を持ち、年間約80億円の配当を得ていたことだ。一方、パートら約5千人の人件費は組合側の推計で約40億円。女性らはこう訴えた。
「10%の賃上げは5億円でできる。労働者の生活を守るべきではないですか」
交渉開始から90分が過ぎ、相手の弁護士が休憩を取りたいと席を立った。戻ると、6%の賃上げでの妥結を提案した。
女性は「納得はいかないけれど、早く賃上げしないとみんなの生活も苦しい。業界トップ企業として来年も賃上げをしてほしい」と求め、提案を受け入れた。