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社会

若者の社会参加

10月31日の朝日新聞「みんなが一票 衆院選」、両角達平さんの「若者が社会を変える存在に」から。

・・・私が研究するスウェーデンは、若い世代の6~7割が「若者団体」で活動しています。趣味のサークル、居場所づくり、移民支援など各自がやりたいことに取り組み、社会環境の改善が必要とあれば公的機関に求めます。「社会に影響を与えられる」との感覚が生まれ、若者が社会を良くする存在になっていく。

日本はどうでしょう。若者は18歳や22歳の節目に向けて学業や部活、アルバイト、就職活動に忙しい。社会にもの申す時間もなければ、そもそもそれが聞き入れてもらえる社会だという感覚もありません。

多様な生き方を支える若者政策の存在が社会参加を生み出し、スウェーデンの民主主義を支えている。国政選挙の投票率は80歳以上を除く全年代で80%超。高い投票率はこうした社会だからこそ実現している。これが本来目指すべき姿だと思います・・・

集団主義だと言われた日本が、実は個人主義になっています。そして、社会参加の場面が少なく、個人が孤立するとともに、公共が弱くなていることを、連載「公共を創る」で論じています。若者だけでなく、どのようにして国民の社会参加の機会や場を作るか。日本の大きな課題です。

歩きスマホの危険

道路や駅など公共の場で、歩きスマホはやめて欲しいです。私も、何度かぶつかりそうになりました。NHKが、大変な事故の例を紹介して、注意を喚起しています。

危険なのは自分だけではなかった」(11月2日掲載)
・・・「額にはプレートが埋め込まれています。大変な手術でした」
まぶたが紫色に腫れ上がった、痛々しい写真。全治1年以上の大けがで、今も仕事に支障をきたすほどだといいます。
この男性、誰かに襲われたわけでも、けんかしたわけでもありません。
原因は「歩きスマホ」でした・・・

死亡事故も起きています。
踏切で“待っていた”だけなのに…死亡事故はなぜ起きたのか」(9月8日掲載)
・・・事故が起きたのは、ことしの7月8日。
警視庁によると、亡くなった31歳の女性は駅の改札を出た後、踏切を渡ろうとした際にはねられたとみられています。
その時の様子が、現場周辺の防犯カメラに写っていたということです。
女性は午後7時半ごろに踏切を渡り始めました。この時、両手でスマートフォンを持ち、歩きながら画面を見ている様子だったといいます。
すると遮断機が下り始め、まわりの人たちは足早に踏切の外へ。
しかし、女性に急ぐ様子は見られませんでした。それどころか、下りた遮断機の手前で立ち止まったというのです。
そして数十秒後、左から来た列車にはねられ、亡くなりました。
警視庁が防犯カメラの映像を解析した結果、女性の顔は最後までスマホに向けられていたということです・・・

転職理由は収入増ではなく、労働環境

転職者数の増加」の続きです。10月21日の朝日新聞「日本経済の現在値2」「キャリアアップは一部だけ 13人に1人、25~34歳の転職」から。この記事は昨日30日に載せたのですが、順番を間違えたので掲載し直します。

・・・業界大手のマイナビの調査をみて驚いた。正社員で転職した人の平均年収をみると、転職前は461・2万円だったのが、転職後は453・0万円に減っていたのだ。リクルートワークス研究所の調査でも、転職後に年収が5%以上あがったと答えた人は日本では39・7%のみ。海外では米国やフランスが75%以上で、日本の低さが際立つ。
では、いったい何のために転職しているのか。

マイナビの調査によると、転職先の条件としてこだわった点には、給料アップよりも希望する勤務地や休日・休暇制度が整っていることを挙げる回答のほうが多かった(複数回答)。厚生労働省の19年の雇用動向調査をみても、転職の理由は収入よりも「労働時間・休日等の労働条件」や「職場の人間関係」の方が多い。
マイナビの関根貴広研究員は「最近はワーク・ライフ・バランス(WLB)への注目を感じる。テレワークや育休へのニーズも強くなり、自分らしく働ける仕事を求める意識が高まっている」と話す。

ただ、様々なデータをみる限り、転職のあり方が昔に比べて大きく変わったとは言いがたい。海外のようにキャリアアップで高い賃金を得られるような転職は一部に限られ、むしろ、非正規労働者が仕事を転々としたり、正社員も職場の環境が悪いために転職を望んだりしているようにもみえる。転職しやすい環境を整え、成長分野に人材がスムーズに移動できれば経済も活性化する。そんな政府や経済界が強調してきた転職像とは、ギャップがあるのではないか・・・

転職者数の増加

10月21日の朝日新聞「日本経済の現在値2」「キャリアアップは一部だけ 13人に1人、25~34歳の転職」から。

・・・最近、テレビやインターネットで転職業界のCMや広告をよく見るようになった。まわりでも若い人の転職が増えた気がするが、実際はどうなのだろう。海外では賃金などの条件がいい会社へと転職を繰り返し、キャリアアップをしていくのが当たり前だとも聞くけれど、日本もそんな社会になってきたのだろうか。

まず、総務省の労働力調査を見てみると、たしかにコロナ禍前の2019年の転職者数は過去最多の351万人だった。働く人全体に占める割合を示す転職率も、ちょうど記者(29)と同年代の25~34歳は7・8%と過去最高水準で、13人に1人が転職していた。
ただ、過去にさかのぼってみると、むしろ、どの年代も転職率は00年代半ばごろがピーク。とくに若年層の15~24歳では、05~06年に14%超と、足元を超える転職率だ。いったい、何が起きていたのか。
当時の労働経済白書などをもとに理由を探ると、企業の倒産が相次いだ00年前後の就職氷河期に、希望する待遇や職種の企業に入れなかった人たちが、景気の回復にあわせて転職するケースが多かったようだ。
じつは統計上、転職者数には、景気によって雇い止めなどにあいやすい非正規の働き手も含まれている。19年の転職者も半数以上の192万人が非正規で、同様な傾向は少なくとも00年代初めから続いていた。
00年代半ばに増えてきた転職は、08年のリーマン・ショック後の不況で再び減り、ここ数年でリーマン前の水準に戻ってきた。ただ、その理由を探っていくと、以前とは違う要因も見えてきた。

エン・ジャパン社で人材紹介サービスを統括する藤村諭史さんは、人手不足と若者の意識の変化を挙げる。「人手不足で12年から売り手市場が広がり、18年までは特に若手採用が活況だった。最近の若い世代は自分のキャリアを自分でつくっていく、という風潮がある」と指摘。企業側も即戦力の人材を求める傾向が強まっていて、「35歳以上の世代の転職も今後増えていくのではないか」という。
海外では、自分で将来のキャリアを考え、転職を繰り返すのが当たり前とよく聞くけれど、どれぐらい違うのだろうか。
同じ企業に10年以上働く人の割合を、労働政策研究・研修機構の資料で比べてみた。日本は45・8%で、20%台の米国や韓国との差は大きい。一方、解雇規制が比較的厳しいとされるフランス(45・6%)やドイツ(40・3%)は、日本とそれほど変わらなかった・・・
この項続く

親ガチャという不平等

10月14日の朝日新聞オピニオン欄は、「親ガチャという「不平等」」でした。
・・・「親は選べず、親次第で人生が決まってしまう」。そんな人生観を表す「親ガチャ」を巡り、論争がわき起こった。SNSのスラングとされるこの言葉になぜ人々は反応するのか・・・

土井隆義・筑波大学教授の発言「実は親でなく社会の問題」から。
・・・親ガチャを巡っては、「自分の努力不足を親のせいにするな」という中高年に対し、若い世代は「分かっていない」と反発しています。
私は、世代間の認識ギャップとして、この問題を理解する必要があると思います。
まず努力の認識が世代によって違います。日本経済が大きく成長していた1990年代までを体感した中高年は、進学・就職・昇進などで自分のなした努力以上のリターンを得ることができた。一方、30代以下は経済成長率が1%台の世界を生きてきた世代です。努力しても、そのリターンは小さなものになっている。「人生は努力する価値がある」と言われても、「努力して成果があるのか」と疑念が先に立ってしまうのです・・・
・・・私は、親ガチャという言葉で自分の境遇を憂える若者にも、認識上の錯誤があると考えます。格差は私たちが作る社会制度によって解消されるべきものだからです。社会の問題を、個々の家庭の問題にすり替えてはいけません。
若者自身も、この状況を改善するため、社会に対して声を上げてほしいと思います・・・

五十嵐衣里・東京都議会議員・弁護士の発言「「頑張れば」は呪いの言葉」から。
・・・自分の置かれた境遇を嘆く人に対し、「頑張れば成功できる」と説く人はたくさんいます。私はこの言葉は「呪いの言葉」だと思っています。貧困を生んでいるのは政治や社会なのに、個人に責任を押し付けているからです。
私はたまたま勉強が苦でなく、勉強できる環境も整っていました。でも、環境が整っていない人や、何を頑張ればいいかわからない人もいます。そんな人たちにも、あきらめを強要する言葉です・・・
・・・政治の役割は家庭に恵まれなかった人のために環境を整えることです。必要な知識や技術を身につける学びの場を増やし、金銭的支援もする。多様な経歴や背景を持つ人たちが政治に関わり、それぞれの視点で支援策を提案していければ、「親ガチャ社会」を変えられるはずです・・・