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社会

やめる勇気、スポーツを楽しむ

3月30日の朝日新聞スポーツ面「勝利ばかり評価、日本社会の問題 山下会長が語る、小学生の柔道全国大会廃止」から。

・・・行き過ぎた勝利至上主義が散見される――。そんな理由で、小学生の柔道の全国大会が廃止されることになった。大会を主催する全日本柔道連盟(全柔連)の山下泰裕会長(64)に決断の理由を聞いた・・・

――大会にはどのような問題があったのですか。
「柔道の楽しみは、練習した技で相手を投げること。この大会では、勝つために組み手争いばかりしている試合もある、と聞いていた。そうすると、柔道の試合で勝つことだけが好きになってしまう」
「強いチームにもしっかり基礎を固め、子どもの自主性、安全に配慮しているところはある。だが、全体的には勝利志向が強すぎる。これは指導者の問題だけではない。試合に勝つことばかりを評価する日本社会の問題でもある。子どもたちにはのびのびと柔道をやってもらい、魅力を実感してもらいたい。柔道を好きになってもらいたい」
――全国大会の問題点はどこですか。
「トーナメントでは、勝者は優勝者1人。あとはみんな敗者となる。体が丈夫になった、友達ができた、新しい技を覚えた、と柔道をしたことがその子の人生にプラスになれば、全員が勝者になれる。小学生の全国大会があまりにも勝利にフォーカスされている状況はマイナスだ」
「苦しさを克服してトップを目指すのもスポーツの一部。もっと高みに挑戦したいと希望する人は、自らチャレンジすればいい。ただ、それは小学生のころに決める必要はない」

――廃止の決断は、他競技からも賛同の声が上がっています。
「同じような問題意識を共有しているのでしょう。世の中にスポーツ嫌いの人はいる。勝ち負けで、常に優劣をつける。それがスポーツ嫌いになる理由の一つではないだろうか」
「日本スポーツ界では、スポーツは若い人がやるもの、勝ち負けが大事、きつく苦しいもの、というイメージが強い。それを打破していかないといけない。スポーツは楽しいもの、自らやるもの、人生を豊かにするものになっていってほしい」

――そうした考えになるきっかけはありましたか。
「現役引退後にイギリスに留学した経験が大きかった。イギリスではスポーツが人々にとって身近だった。当時、私はまだ20代後半。時々通っていた柔道場には様々な人が来ていた」
「ある日、50歳くらいの方に練習の相手を頼まれた。軽く襟をつかんで、技をかけないでいると、『もっと真剣にやってくれ』と言う。けがをしないように足払いや腰技で軽く投げると、『きょうは最高の日だ。世界チャンピオンの技を体で感じることができた。受け身が気持ち良かった』と言われた」
「練習が終われば、パブ(酒場)でいろんな話をした。『なぜ、柔道をしているのか』と聞くと、『終わった後のパブが楽しいからだ』と。彼らのほとんどは、試合に勝つためにやっていない。だけど、みんなお金を払ってクラブに行く。それぞれの感覚で、スポーツを楽しんでいた」

――日本と欧州の違いを感じますか。
「日本ではコロナ下で『スポーツは不要不急』と言われた。我々のこれまでの努力不足、力のなさが原因だ。人はスポーツで人生の勝者になれる。そのために、まず楽しむことを知ってほしい。今回の廃止の決定が、その第一歩になってほしい」

経済格差の意識調査

3月27日の読売新聞社が、格差に関する全国世論調査結果を伝えていました。

・・・日本の経済格差について、全体として「深刻だ」と答えた人は、「ある程度」を含めて88%に上った。「深刻ではない」は11%だった。
具体的な格差7項目について、それぞれ今の日本で深刻だと思うかを聞くと、「深刻だ」との割合が最も多かったのは「職業や職種による格差」と「正規雇用と非正規雇用の格差」の各84%だった。岸田首相は「新しい資本主義」を掲げ、これまで市場に依存し過ぎたことで格差や貧困が拡大したと繰り返してきた。調査からも、格差への問題意識が広く共有されていることが明らかになった。

自分自身が不満を感じたことがある格差(複数回答)としては、「正規雇用と非正規雇用の格差」の47%が最も多く、「職業や職種による格差」42%、「都市と地方の格差」33%などが続いた。格差縮小のため、政府が優先的に取り組むべき対策(三つまで)は、「賃金の底上げを促す」51%、「大企業や富裕層への課税強化など税制の見直し」50%、「教育の無償化」45%などの順で多かった。
日本の経済格差が今後どうなると思うかを聞くと、「拡大する」が50%で、半数が悲観的だった。「変わらない」は42%で、「縮小する」は7%にとどまった・・・

またその分析では
・・・経済格差が広がるのは誰の責任が最も大きいと思うかを聞くと、「政府」49%、「個人」24%、「企業」20%の順だった。「政府」は全ての年代で最多だったが、高齢層ほど「政府」の割合が高く、若年層ほど「個人」の割合が高い傾向がみられた。
経済格差を縮小するために、政府が優先的に取り組むべき対策を8項目の中から3つまで選んでもらうと、「賃金の底上げを促す」51%、「大企業や富裕層への課税強化など税制の見直し」50%、「教育の無償化」45%、「社会保障の充実」43%などの順だった・・・

曖昧な表現

先日読んでいた文章に「現在絶滅していない動物も・・・」という表現がありました。???
まだ絶滅してはいなくて、今も存在するのか。すでに絶滅して、現在は存在しないのか。どちらだろうかと考えました。この文章は「現在絶滅していない動物もいずれ絶滅する」と続くので、前者だと分かります。

原稿を書いていて、「政府の出番が少なくてもよい社会が生まれます」という文章を書きました。これでは、「出番が少なくてもよい」のか、「良い社会」なのか、曖昧ですね。

しばしば悩むのが、「私はあの人のように急がない」です。私は急がないとして、あの人は急ぐのか、あの人も急がないのか。
「毎日新聞を読む」は、毎日欠かさず新聞を読むのか、(朝日新聞でなく)毎日新聞を読んでいるのでしょうか。
「会議机の書類を片付けなくてよいでしょうか」と聞いて、「いいよ」と答えられたら、片付けるのでしょうか、放っておいてよいでしょうか。

話している本人は、このあいまいさに気がつかないものです。私の原稿も、右筆や校閲が指摘して手を入れてくれて、自分の文章のあいまいさに気がつくことがあります。

外国人児童生徒の進学

3月22日の日経新聞教育欄、石塚達郎・日立財団理事長の「外国人生徒らの高校進学 学びの機会拡充、公民連携で」から。
・・・日本の高校進学率は98.9%(21年度)。つながる子ども(「外国につながる子ども」すなわち外国籍だったり、日本国籍でも日本語が不自由だったりして、就学・進学に困難を抱えている子ども)の進学率のデータはまだないが、外国人登録者数と高校在籍者数から試算すると約37%にとどまる。外国人の場合、小中学生世代の就学率も7割程度と見られるが、低い高校進学率の問題はより大きい。
18年の文部科学省調査では、日本語指導が必要な生徒らの大学などへの進学率は42.2%(公立高校生全体は71.1%)。高校段階の単年度中退率は9.6%(同1.3%)で、高校卒業までの3年間に入学者の約3割が中退する計算だ。

非正規就職率は40.0%(同4.3%)、進学も就職もしていない者の割合は18.2%(同6.7%)。つながる子どもが成長し社会で活躍する機会は日本人生徒に比べあまりに少なく、本人・家族だけでなく社会的にも大きな損失だ。

次に注意を促したいのが、親に帯同されて来日し「家族滞在」の在留資格で暮らす子どもの存在だ。高校生世代の外国籍者約4万人のうち約15%、6千人が該当する。彼らは日本学生支援機構の奨学金受給資格がない。就職する場合の労働時間は週28時間以内に制限され、正規就労は難しい。ただ現行制度では義務教育修了と高校卒業で「定住者」、高卒と就職内定で「特別活動」の在留資格が得られ、労働時間の制約がなくなる。彼らにとって高卒資格の価値は格別に大きい・・・

大学の評価

ある大学の法学部と大学院の、外部評価委員を引き受けています。先日オンラインの委員会に出席し、意見を述べる機会がありました。その際に考えたことです。

外部評価委員の役割は、学校が行っている自己評価を確認することと、外部から見た大学教育の評価です。
1 大学による自己評価
自己評価については、報告をきくと、きちんとなされていました。

2 学生の満足
その際の評価基準の一つは、学生の満足度です。学生アンケートもしっかり取られています。
アンケートの役割は、どの程度満足されているかの傾向を見ることと、不満と感じている点を改善することです。満足度が高いならば喜ばしいことであり、必要なのは不満とされた点を改善することです。学生の声を拾い上げ、改善を続けることが重要です。

3 社会での評価は
評価のもう一つは、卒業生が社会で活躍することです。教育機関の目的は、ここにあります。
外部から見た大学教育については、卒業生と、卒業生を受け入れた会社さらには社会が大学をどのように評価しているかを見る必要があります。
この学校では、卒業生および受け入れ企業へのアンケートがなされているので、それを今後の改善に生かすことでしょう。卒業後の進路には、法曹関係とそのほか一般企業などがあると思います。すると、その二つで教育の内容が異なってくると考えます。
社会での評価は、財界などの人たちが、学校に何を求めているのでしょうか。
また、同じような法学教育を行っている他大学関係者(業界内)では、本学はどのような評価になっているのでしょうか。それも、参考になると思います。