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社会

曖昧な表現

先日読んでいた文章に「現在絶滅していない動物も・・・」という表現がありました。???
まだ絶滅してはいなくて、今も存在するのか。すでに絶滅して、現在は存在しないのか。どちらだろうかと考えました。この文章は「現在絶滅していない動物もいずれ絶滅する」と続くので、前者だと分かります。

原稿を書いていて、「政府の出番が少なくてもよい社会が生まれます」という文章を書きました。これでは、「出番が少なくてもよい」のか、「良い社会」なのか、曖昧ですね。

しばしば悩むのが、「私はあの人のように急がない」です。私は急がないとして、あの人は急ぐのか、あの人も急がないのか。
「毎日新聞を読む」は、毎日欠かさず新聞を読むのか、(朝日新聞でなく)毎日新聞を読んでいるのでしょうか。
「会議机の書類を片付けなくてよいでしょうか」と聞いて、「いいよ」と答えられたら、片付けるのでしょうか、放っておいてよいでしょうか。

話している本人は、このあいまいさに気がつかないものです。私の原稿も、右筆や校閲が指摘して手を入れてくれて、自分の文章のあいまいさに気がつくことがあります。

外国人児童生徒の進学

3月22日の日経新聞教育欄、石塚達郎・日立財団理事長の「外国人生徒らの高校進学 学びの機会拡充、公民連携で」から。
・・・日本の高校進学率は98.9%(21年度)。つながる子ども(「外国につながる子ども」すなわち外国籍だったり、日本国籍でも日本語が不自由だったりして、就学・進学に困難を抱えている子ども)の進学率のデータはまだないが、外国人登録者数と高校在籍者数から試算すると約37%にとどまる。外国人の場合、小中学生世代の就学率も7割程度と見られるが、低い高校進学率の問題はより大きい。
18年の文部科学省調査では、日本語指導が必要な生徒らの大学などへの進学率は42.2%(公立高校生全体は71.1%)。高校段階の単年度中退率は9.6%(同1.3%)で、高校卒業までの3年間に入学者の約3割が中退する計算だ。

非正規就職率は40.0%(同4.3%)、進学も就職もしていない者の割合は18.2%(同6.7%)。つながる子どもが成長し社会で活躍する機会は日本人生徒に比べあまりに少なく、本人・家族だけでなく社会的にも大きな損失だ。

次に注意を促したいのが、親に帯同されて来日し「家族滞在」の在留資格で暮らす子どもの存在だ。高校生世代の外国籍者約4万人のうち約15%、6千人が該当する。彼らは日本学生支援機構の奨学金受給資格がない。就職する場合の労働時間は週28時間以内に制限され、正規就労は難しい。ただ現行制度では義務教育修了と高校卒業で「定住者」、高卒と就職内定で「特別活動」の在留資格が得られ、労働時間の制約がなくなる。彼らにとって高卒資格の価値は格別に大きい・・・

大学の評価

ある大学の法学部と大学院の、外部評価委員を引き受けています。先日オンラインの委員会に出席し、意見を述べる機会がありました。その際に考えたことです。

外部評価委員の役割は、学校が行っている自己評価を確認することと、外部から見た大学教育の評価です。
1 大学による自己評価
自己評価については、報告をきくと、きちんとなされていました。

2 学生の満足
その際の評価基準の一つは、学生の満足度です。学生アンケートもしっかり取られています。
アンケートの役割は、どの程度満足されているかの傾向を見ることと、不満と感じている点を改善することです。満足度が高いならば喜ばしいことであり、必要なのは不満とされた点を改善することです。学生の声を拾い上げ、改善を続けることが重要です。

3 社会での評価は
評価のもう一つは、卒業生が社会で活躍することです。教育機関の目的は、ここにあります。
外部から見た大学教育については、卒業生と、卒業生を受け入れた会社さらには社会が大学をどのように評価しているかを見る必要があります。
この学校では、卒業生および受け入れ企業へのアンケートがなされているので、それを今後の改善に生かすことでしょう。卒業後の進路には、法曹関係とそのほか一般企業などがあると思います。すると、その二つで教育の内容が異なってくると考えます。
社会での評価は、財界などの人たちが、学校に何を求めているのでしょうか。
また、同じような法学教育を行っている他大学関係者(業界内)では、本学はどのような評価になっているのでしょうか。それも、参考になると思います。

マスクの脳や心の発達への影響

3月6日の朝日新聞教育欄「コロナと子ども:4」明和政子・京都大教授の「脳や心の発達、マスクの影響は」から。

――人との接触を避ける生活が続き、子どもたちの脳や心の発達には、どのような影響が出ていると考えられますか

脳が発達する過程では、環境の影響を特に受けやすい「感受性期」という特別な時期があります。この時期の環境や経験は生涯もつことになる脳と心の柱となる重要なものです。
例えば、大脳皮質にある「視覚野」や「聴覚野」の発達の感受性期は、生後数カ月から就学期前くらいまでです。脳の発達のしくみを考えると、視覚野や聴覚野の感受性期にある子どもたちが現在置かれている状況を、軽視することはできません。マスクをした他者とすごす日常では、相手の表情や口元から発せられる声を見聞きし、それをまねしながら学ぶ機会が激減しているからです。
乳幼児期の脳や心の発達を守るために、何をすべきか。幼児にもマスク着用を求めることで、どのくらい感染リスクが下がるのか。そうした議論が十分にないまま、一律に「マスク着用」を求め続けている現状を憂慮しています。

――コロナ禍が子どもの発達に及ぼした影響を示す調査はありますか

米ブラウン大学が昨年8月に出した報告によると、コロナ禍以前に生まれた生後3カ月から3歳の子どもたちの認知発達の平均値を100とした場合、コロナ禍で生まれた同年代の子どもたちは78まで低下しているそうです。マスク生活によるものなのか、身体活動の制約が大きい日常や、親のストレスによるものなのか。原因ははっきりしていません。日本でもこうした調査を公費で早急に行うべきです。

――脳の発達の面では、どうでしょうか

前頭前野の感受性期は、4、5歳くらいから始まります。前頭前野は、相手の心を、自分の心とは異なるものであることを前提に、理解する働きをもちます。それにより、相手の視点で想像したり、相手の置かれた状況に応じて協力したりすることができるのです。
前頭前野の発達にも環境が大きく影響します。共感できてうれしい気持ち。分かり合えず残念に思う気持ち。それを味わえる日常の経験が必要なのです。

内申書のあり方

3月4日の朝日新聞オピニオン欄「内申書と「態度」の評価」、柳沢幸雄・北鎌倉女子学園学園長の発言から。

・・・米国の学校にも日本の調査書(内申書)のように、志望校に出す成績表と推薦状の仕組みがあります。ただ、日本と違うのは、成績表は学校の署名、推薦状は個人の署名で書かれている点です。
米国の推薦状の場合には、生徒が自分を評価するのに適していると思う人に推薦状を依頼します。推薦状が信頼されるか否かは、何より推薦者が教育のプロとして認められているかにかかっています。書く側が、個人として中身に責任を負っているのです。

日本の調査書は、多くの場合は本人に公開されず、組織の匿名性の中に逃げ込んでいる。「受験戦争が過熱するなかで、生徒が日頃の努力で報われるように」「素質をよく知る人が評価して次の学校に伝える」という理念や、うたい文句はきれいですが、調査書の実態がそうなっていないのが問題です。評価する側が、筆先だけでいろいろ書けてしまう現状では、信頼性が乏しいのです。
態度を評価する時、これで人物の行動を評価できるというような標準的なパターンはありません。なぜなら、生徒は千差万別だから。特に思春期の成長は長い目で、流れとしてみることが大事です。それをあえて評価するというのなら、書く側がプロとして、個人の責任を明確にすることが非常に重要になります。

そもそも態度を評価して何をしたいのか。型にはめるような教育で生まれるのは「空気が読める」若者です。この場では手を挙げた方がいい。目をらんらんと輝かせて、聞いているような顔をした方がいい。その結果、滅私奉公の人間ができあがります・・・