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社会

大阪でのひったくり件数が100分の1に

朝日新聞ウエッブニュース「ひったくりは「大阪名物」、ベテラン警部の悔しさ 捜査のいまは」(10月30日)から。
・・・2000年には大阪府内で1万973件を数え、全国最悪だったひったくりが、20年は100件と、100分の1以下になった。ここまで減らせた背景に何があったのか。大阪府警のベテラン捜査官に聞いた。
「常習犯を繰り返し検挙したことで、『ひったくりをすると捕まる』というふうに加害者側の意識が変わってきた」
ひったくりなどの窃盗事件を専門とする府警捜査3課の橋本一範警部は言う・・・

・・・ひったくり減少の要因として、橋本さんが挙げるのは、「防犯カメラと科学捜査技術の進歩」だ。
ひったくりは路上で短時間に起きることが多く、指紋などの証拠が残りにくいのが特色だ。
かつては、犯行時間帯や区域、被害者の性別や年齢などを過去の記録と照らし合わせることで、「常習犯」を絞り込む「手口捜査」が主流だった。府警捜査3課も専門の「分析班」を置いた。
「犯行が繰り返されると出てくる容疑者の癖を見抜き、割り出していった」と橋本さんは説明する。

近年の防犯カメラの普及が、そんな捜査手法を大きく変えた。
初期の防犯カメラは画質が悪かったり、記録容量が小さかったりして、犯行前後の一部しか映っていないことが多かったが、最近はカメラの性能が劇的に向上し、犯行の一部始終を鮮明にとらえていることが増えた。
各地に設置されているカメラの数も増えた。事件前後、周辺のカメラの情報をたどり、記録されている容疑者の足取りをつなげて追っていくことで、事件後、どちらへ逃げたかを絞り込めるようになった。
18年5月、大阪市などで連続ひったくり事件が起きた。容疑者の男が大阪市内で単車を乗り捨てて徒歩で駅に向かい、京都市内の自宅付近まで戻る様子が、防犯カメラ映像の「リレー」で浮かび上がり、検挙につながったという・・・

睡眠不足が生産性を下げる

10月24日の日経新聞に「眠れない日本、生産性低く」が載っていました。
・・・日本の睡眠不足が国力をむしばんでいる。社員の睡眠時間の多寡で、企業の利益率に2ポイントの差が生じるという研究結果が出た。睡眠時間が米欧中など主要国平均より1時間近く短いことや、睡眠の「質」の低さがパワハラやミスの温床との指摘もある。睡眠不足を個人の問題と捉えず、欧米のように社会全体の課題として解決する必要がある・・・

欧米各国との比較が図になってついています。それらの国の睡眠時間が7時間から7時間半に対し、日本だけが6時間22分です。そして一人あたり生産性は、それらの国の10万ドルから14万ドルに対して、日本は8万ドルです。日本の生産性の低さは、このホームページでも、しばしば取り上げています。
生産性は、睡眠時間だけが要因ではないでしょうが。日本は、夜更かしをしていて(場合によっては長時間残業をしていて)、生産性が低いのです。

私は、日本の職場に原因があると考えています。一つは、だらだとした仕事ぶりです。成果で測らず、長く職場にいることを善しとする風潮です。「定時に退社すると批判された。変えてやる
もう一つは、仕事への愛着度です。日本の従業員は「働き蜂」とよばれながら、実際は会社への愛着や仕事への意欲が低いのです。「働きがい、仕事への意欲
その根本にあるのは、一括採用、年功序列、終身雇用という日本型雇用慣行と、各人の任務を明確にしない大部屋主義、前例主義です。

未婚の増加、その対策は

10月24日の日経新聞オピニオンランは「未婚社会を生きる」でした。詳しくは原文をお読みいただくとして。

藤波匠・日本総合研究所上席主任研究員は、若者の結婚と出産への意欲の低下の原因は所得や雇用環境の悪化にあるとして、「若者の雇用改善急げ」と主張しています。
井上高志・ライル社長は、住居費を減らすことで多様な生活の選択を後押しするべきと主張しています。

林伴子・内閣府経済社会総合研究所次長は、女性が仕事と家庭を両立させにくい労働市場の硬直性、所得が高くないと結婚できないという思い込みなどに原因があるとして、「結婚のハードル下げよ」と主張しています。
林さんは内閣府男女共同参画局長も務めましたが、経済政策が専門(旧経済企画庁採用)で、長くそれに従事してきました。霞が関には、まだ若者政策、結婚や子育て政策の専門家が育っていないのです。

看護師の謎の規則

10月20日の朝日新聞夕刊に「看護師の現場、謎ルールだらけ 靴下は白・上着ダメ・水分補給ガマン」が載っていました。

・・・職場にある様々なルール。でも、それが納得できないものだとしたら……。看護師の現場で考えた。そもそも、ルールはどうあるべきなのだろう。
東京都内の大学病院。ある日、看護師の女性(27)は職場で上司に呼び止められた。「その靴下の色って何色ですか? なんで黒なんですか」
「靴下を切らしてしまって……」。連日の勤務に疲れ果て、洗濯もままならなかった。くるぶしまでしかないタイプで、ズボンの裾から、ほんの少し黒みが見えるだけだ。「靴下は白」がこの病院のルール。だが、医師は好きな色の靴下をはいている。「どうして看護師だけ、だめなんでしょうか」

納得できないルールはほかにもあるという。看護服は半袖しかないが、冬の寒い日でも、患者の前ではカーディガンを羽織ることを禁じられている。夜勤の時は「すごくつらい」。
ナースステーションでは水分補給をしない。そんな「暗黙のルール」もある。勤務中はがまんをして、昼休みに休憩室で水を飲む。「水分補給はこまめに、と呼びかける側なのに。理屈に合ってなくておかしいですよね」
この女性は最近、なぜ靴下は白なのか、上司に尋ねてみた。返ってきた答えは「私もわからない。伝統だから」だった・・・

笑ってはいけませんが、これは面白いお話です。「前例通り」には、時に不合理なことがあります。
少し違いますが、半ズボンが決まりだった小学校で、寒いから長ズボンをはいたら、先生に叱られたという話を読みました。「先生は長ズボンなのに」と言って、さらに叱られたそうです。

大学卒業後の進路を考える時期

10月18日の日経新聞夕刊「就活のリアル」、栗田貴祥・リクルート就職みらい研究所所長の「卒業後の進路考える時期 日本は海外より遅く」から。

・・・日本では「新卒一括採用」という独自の就業システムが長く続けられてきた。そうした背景から、就職活動を始める時期が「自分の進路を考え始める時期」と重なっている学生も少なくない。では、世界の若者と比べ、進路を決める時期にはどのような特徴があるのだろう。
リクルートワークス研究所が2012年に行った「Global Career Survey」では、日本を含む世界13カ国の20代、30代の大卒者に「大学卒業後の進路を決めた時期」を聞いている。
日本は「大学生の後期」との回答が66%と他国よりも圧倒的に多く、「大学生の前期」は12%。「高校時代」は2.3%だった。一方、米国で「大学生の後期」と回答した人は21%、ドイツでは19.1%で、オーストラリアやインド、マレーシア、インドネシアなど多くの国で2割前後だった。
日本と比べて、「大学生の前期」「高校時代」に卒業後の進路を決定したという割合が多い。米国は32.5%が「大学生の前期」、20.2%が「高校時代」と回答。ドイツでは「高校時代」が33.6%を占めた・・・

・・・では、卒業後の進路について考え始めた時期は、働く意欲にどう影響するのだろうか。
リクルート就職みらい研究所では22年大卒生を対象に「卒業後の進路について具体的に考え始めた時期別の就職活動開始時点での働く意欲」を調査した(就職白書2022)。働く意欲が「十分ある」と答えた学生は、高校生以前に進路を考え始めた学生では36.5%、大学1、2年時に考え始めた学生は30.6%だった。大学3年前期になると23.5%、大学3年後期では16.8%と減少傾向にあり、早い段階から自分の将来を意識して学ぶ学生のほうが、より意欲が高くなることがうかがえる。
世の中にはどんな仕事があり、その仕事についている人はどんな勉強をしてきたのだろう。そう考え、早い段階から仕事についての情報に触れることで、学業と将来のキャリアを結び付けて考えられるようになるのではないか・・・

良い学校に進学することが人生の目標になっていたことが、この問題の背景にあると思います。かつては、良い学校を卒業すれば良い職業に就けるという人生が読めたのですが、高校進学率がほぼ100パーセント、大学進学率が50パーセントになると、良い学校を出ると良い職業に就けるとはならなくなりました。原点に戻って、各々の人生を考え、どのような職業に就きたいのかを考え、それから学校を選ぶ形に変える必要があります。