カテゴリー別アーカイブ: 社会

社会

スマートフォンの多様な副作用

40肩顛末記」の続きです。
40肩にしろぎっくり腰にしろ、運動不足と同じ姿勢を長時間続けることが原因の一つだと言われています。電車の中で、スマートフォンに熱中している人がいます。猫背になって、目を近づけ、その姿勢を長く保っています。この人たちも、40肩やぎっくり腰の予備軍ですね。

私はスマホを「猫背・近眼製造器」「脳力低下装置」「時間泥棒」「周りが見えない人製造器」「気配り破壊器」と呼んでいますが、「将来のぎっくり腰・40肩製造機」も付け加えましょう。

スマートフォンは、子どもたちにとって有害であることが報告されています。分別ある大人への悪影響とは違い、笑い話ではないので、ここには含めないでおきましょう。

若い女性の地方からの流出

12月14日の日経新聞夕刊に「ジェンダー平等へ動く地方 若い女性の流出に危機感強く」が載っていました。
・・・若い女性の流出をどうすれば止められるのか―。地方がその解決の糸口としてジェンダーギャップ解消に乗り出している。伝統的な価値観が色濃く残り、女性に魅力的な仕事の少ないところもある。ただ現状に甘んじていては男女の人口比は崩れて未婚率が高まり、人口減は加速する。地元企業や地域住民を巻き込んだ試行錯誤が始まった・・・
詳しくは記事を読んでください。

地方から東京への人口移動が止まりません。大きな原因は、大学に進学したり就職したりした若者が戻ってこないことです。特に女性が戻ってこないのです。
10年近く前に地方の方と話していて、消防団員の減少が話題になりました。私が「この時代、男性だけでなく、女性にも声をかけないといけませんよ。どの程度、女性団員がいますか」と聞いたら、あきれられました。「岡本さん、若い女性は戻ってこないので、声をかけようにも地域には一人もいないのです」とのことでした。

男性に比べて女性の若手流失率が多い都道府県の数値が載っています。北陸、北海道、北関東などが、女性の流出が多いようです。
住みやすさ指標で高い順位の県で、なぜ女性の流出が多いか。この問題に詳しい天野馨南子さんに聞いたら、「そこに住むのがいやな人が出ていき、住みたい人が残っているので、住んでいる人を調査すると「住みたい人」が高くなる」という趣旨のことを教えてもらいました。納得。
この件については、また日を改めて議論しましょう。

タクシー免許試験、20言語対応

12月12日の日経新聞に「タクシー試験 20言語対応」が載っていました。
・・・タクシーやバスの運転手に必要な第2種運転免許の試験が外国語で受けられるようになる。現行は日本語のみだが外国人にとってハードルが高い。警察庁は例題を20言語に翻訳し、各地の警察が実施する試験で多言語対応できるようにする。旅客輸送の分野で外国人材の確保につなげる狙いがある。
人手不足の業種で働く在留資格「特定技能」はタクシーやバスのドライバーを対象としていない。国土交通省が2023年度中にも自動車運送業を加える方向で関係省庁と協議している。試験の多言語化と合わせて実現すれば外国人の就労環境が整う・・・

12月25日の朝日新聞1面には「2種免許試験、20外国語OK 各警察判断で問題作成 タクシー・バス運転手不足対策 警察庁方針」が載っていました。そこには、20言語が列記されています。
<欧米> 英語、ポルトガル語、スペイン語、ロシア語、ウクライナ語
<アジア> 中国語、ベトナム語、タガログ語、タイ語、インドネシア語、ネパール語、クメール語、ミャンマー語、モンゴル語、韓国語、ウルドゥー語、シンハラ語、ヒンディー語
<中東> ペルシャ語、アラビア語

かつて北欧を旅行したとき、タクシーの運転手が中東から来た人たちでした。「そうか、外国人が就きやすい職種だ」と思ったことがあります。カーナビ、スマートフォンが広まった現在では、より就業しやすいでしょう。
また、外国語と言えば英語を思い浮かべることが多いですが、この20カ国語を見ると世界は多様だと気づきます。日本も国際化が進みますね。その過程では、さまざまな戸惑いや軋轢が生じるでしょう。

忙しい時代に0.75倍速

日経新聞夕刊月曜日連載の「令和なコトバ」は、現代社会を切り取る興味深い記事です。12月4日は「0.75倍速 タイパ時代 あえて引き延ばし」でした。

動画配信サービスには、1.25倍速とか1.5倍速という設定があります。普通の再生速度より早く再生してくれるので、急ぎで見る場合は便利です。しかも、音声はそんなに変になりません。
とろが、0.75とか0.5といった遅い速度もあるのです。私はこの記事を読むまで気がつきませんでした。

使われる理由は、練習の教材としてだそうです。ダンスや音楽の練習にです。外国語なども早くて聞き取れないときは、使えそうです。
もう一つは、時間稼ぎだそうです。子どもに静かに動画を見ていて欲しいときに、引き延ばすのだそうです。そんな使い方もあるのですね。

読者から、早速反応がありました。「私もギターの運指をコピーするときに、0.5倍速で見るときがあります」とのことです。

佐藤俊樹著『社会学の新地平』

佐藤俊樹著『社会学の新地平 ウェーバーからルーマンへ』(2013年11月、岩波新書)を紹介します。

書名を見たときは、これからの社会学について論じたものかと思いましたが、内容は副題の「ウェーバーからルーマンへ」です。岩波のホームページの「マックス・ウェーバーとニクラス・ルーマン―産業社会の謎に挑んだふたりの社会学の巨人。彼らが遺した知的遺産を読み解く」が良く表しています。さらに言えば、「近代の合理的組織を生んだ資本主義の精神とは何かを読み解く」でしょうか。

佐藤先生はいつも切れ味が良いのですが奥深く、この本も岩波新書にしては少々難しい本です。
私の理解では、前半は
・ウェーバーの「資本主義の精神」とは何かの、謎解き
・これまでの日本の学会でのウェーバーの「誤読」を暴く
でしょうか。ウェーバーの親族の会社から読み解くのは、推理小説のようでした。

そのような「謎解き」を経るのですが、私はこの本を読んで、ようやく資本主義の精神や合理的組織が理解できました。
ウェーバーの書名は「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」です。プロテスタントの倫理が近代資本主義を生んだとは主張していないのですね。私たちは、そのように理解してきましたが。「資本主義の精神」について、私も十分に理解できていませんでした。佐藤先生によると、ウェーバー自身も答えにたどり着かないままだった、それが後世の誤読を招いたようです。

勤勉の倫理なら、江戸時代の日本や中国にもありました。そして、よく機能する官僚組織もありました。しかし日本も中国も、資本主義経済や合理的組織を生み出しませんでした。
他方で、かつて私が抱いた疑問はこのほかに、禁欲が資本主義経済を生んだという点もあります。みんなで倹約して貯金をしたら、経済は拡大しません。近代経済学では常識のことです。どうみても、プロテスタントの禁欲倫理が資本主義経済の発展を生んだとは思えないのです。読んでいて、何か奇術を見ているようでした。資本主義経済のためには、近代組織の合理性が重要なのです。

ルーマンによる、官僚制の階統制も意思決定の連鎖であるとの説明も納得です。官僚制の中で生きてきた人間としても、目から鱗でした。専門家の間では常識なのかもしれませんが。