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社会

脳の男女差

6月8日の朝日新聞、脳科学者の中野信子さんの「脳から考える男女の差 ねたみ強い男性」が、興味深かったです。この見出しだけだと、「トンデモ本」かと思います(失礼)。しかし、肉体に男女差があるのと同じように、身体の一部である脳にも、男女差があるのだそうです。もっとも、一部の人を取り出して、全体を比較してはいけないとの、注意付きです。例えば、モデル業界だと、「女性の方が、男性より背が高い」という結論になってしまいます。また、統計的に有意であっても、個人ごとには違います。その注意点を念頭に置きつつ。
・・・男のほうが背は高く、筋肉量は多い。女のほうが背は低く、肌はきめ細かい。脳も身体の一部ですから当然、差はあります。たとえば脳には左耳の上あたりに「上側頭溝」があり、コミュニケーション能力をつかさどっています。男と女を比べると、女が大きい。お話をしたり、空気を読んだりという気質は、女が高いと言えます・・・
・・・カナダの研究者らによると、神経伝達物質のセロトニンの合成能力は、男は女より52%高く、脳内の濃度は高くなりやすい。セロトニンが多いと安心感を覚え、減ると不安になります。将来予測をすると、男よりも女が暗く、厳しくなる傾向があります。
「男はイケイケだけれど、女は慎重ということでしょうか」
・・・繰り返しますが、統計的にみれば、ということであって、個人をみれば男でも慎重な人がいる。女でも不安感を持たずに挑戦する人がいます。そこは、勘違いしないで下さい・・・
「脳科学的には、リーダーは男と女、どちらがいいですか」
・・・時代や経済環境でいちがいには言えないです。英科学雑誌ネイチャーに2006年に載った論文によると、ねたみ感情は男のほうが強くなる。外部との争いがなく、組織をまとめるときのリーダーは、男性にあまり向いていないでしょう。「あいつは同期なのになぜ社長なのか」といった感情が生まれると、組織はばらばらになります。男同士では組織内で足の引っ張り合いが起きかねません。性別が異なるほうが、ねたみは少ない。男性と女性を交ぜたほうが、組織内の対立は緩和されるでしょう・・
ご関心ある方は、原文をお読みください。

日韓関係、移ろいやすい部分と固い部分

6月1日の日経新聞が、日韓50年を特集していました。そこに、次のような両国での意識調査が載っています。2010年の調査で、日韓の現状について「悪い」「非常に悪い」と答えたのは、日本が12%、韓国では23%でした。2015年の調査では、日本は55%、韓国では79%となっています。5年間で、これだけ悪くなっています。
6月8日の読売新聞(インターネット)によると、日本で韓国を「信頼できない」と答えた人は73%、韓国で日本を「信頼できない」との回答は85%になっています。また、現在の日韓関係が「悪い」と答えた人は、日本では85%、韓国でも89%となっています。
韓流ブームが日本の茶の間を席巻し、日本人の韓国観が大きく変わりました。「冬のソナタ」が放映されたのが2003年です。その後も、韓国ドラマは、日本のテレビで次々と放映されています。私は、国民間で好感情が広がり、日韓関係は新しい時代に入ったと確信しました。それが、この5年間で急速に悪化しました。これは、予想外でした。これは、マスコミ報道による部分も大きいと思います。しかし、ビジネスマンの行き来だけでなく、観光客の多さ、そしてテレビドラマや映画などの文化の相互浸透によって、基礎部分は変わっていないと信じています。

親米日本、その理由。3

4月8日の読売新聞、吉見俊哉・東大教授の「米国の支え、揺らぐ時代」から。続きです。
・・・日本は戦後、米国の傘の下に入ることで利益を得てきた。一方、自分で自分の未来を決定するという能力を培うことを怠った。「ポスト冷戦期」は「米国の支える戦後日本」という前提が崩れ、日本が維持してきたものが揺らぐ時代でもある。「アジアの中心」という日本の近代以降の自画像についても修正を迫るものであるかもしれない。
日本は明治以来、2度の「右肩上がり」はうまくこなした。だが、右肩上がりが終わった後の25年間は、うまく対処できていない・・・
日本の現状を憂う方、日本の未来について意見のある方は、ぜひ原文をお読みください。違った視点から日本を見ることの意義、重要性がわかります。

親米日本、その理由。2

4月8日の読売新聞、吉見俊哉・東大教授の「米国の支え、揺らぐ時代」から。続きです。
・・・私は、近現代の日本は、ほぼ25年ごとに変化するという仮説を持つ。明治維新(1868年)で近代化を始め、1895年の日清戦争を機にアジアに帝国主義的に拡張。1920年頃からは国家経営を誤り、軍国主義に走り、敗戦に至る。
戦後の45年からは復興と高度成長。70年頃からは安定成長と成熟。95年は阪神大震災とオウム真理教事件が起き、日本の長い「戦後」は終わり、経済は立ち行かなくなり始める。冷戦のタガが外れ、中韓は戦前・戦中の日本の行為を糾弾し始め、日本はたじろぐ。
日本は明治維新以後、右肩上がりの50年を経た次の25年で失敗した。敗戦からは右肩上がりの50年を経て、安定が損なわれている。95年から25年後にあたる2020年は東京五輪が再度開催され、当面はそれに向けてひた走るのだろう。五輪後の2020年代に日本は正念場を迎える・・・

親米日本、その理由。吉見俊哉先生

4月8日の読売新聞「戦後70年想う」、吉見俊哉・東大教授の「米国の支え、揺らぐ時代」から。(1か月以上前の記事です。書こうと思いつつ、半封筒に入れたまま、鞄に眠っていました)
・・・親米を説明する3つの通説がある。まず「米国は民主主義をもたらし、復興を支援してくれた。感謝すべきだ」という説。それが本当なら日本人は義理堅いことになるが、私には疑問だ。次に「米国大衆文化の虜になったからだ」との説。だが、米国文化の影響は世界的で、日本は特別ではない。「占領改革で日本が骨抜きにされたから」という説もある。だが、日本の社会構造、ものごとの決定の仕組みはあまり米国化していない。
私は「米国こそが日本が戦後もアジアで支配的な地位を保ち続けることを可能にしたからだ」と考える・・・
・・・日本は戦後、アジアの経済的中心として栄える。戦前までの軍事的中心ではなくなるが、中心であることは変わらない。日本が明治維新以来の近代化で築き上げた「アジアの中心的地位」は連続する。一方で「米国に最も近い国」という地位も得た。戦前・戦中の振る舞いを巡る、近隣諸国からの激しい対日批判は抑えられた。日本は自らを変えないまま、この優位性を保つために「米国に最も近い国であり続けなくてはならない」と意識するようになる・・・