カテゴリー別アーカイブ: 社会と政治

社会と政治

東京の火葬料、千葉の15倍

8月1日の日経新聞に「東京の火葬料、千葉の15倍」が載っていました。

・・・日本に住むほとんどの人が人生の最後に迎える「火葬」。東京23区の料金は全国でも際立って高い。6月に9万円に上がり、6000円で済む千葉市の15倍になった。背景には、域内9カ所の火葬場のうち7つが民営という特殊性がある。電力や鉄道と異なり、寡占企業が価格を上げやすい状況だ。火葬は「事業」か「公共サービス」か――。その境界は曖昧だ。

火葬料は自治体によって異なる。総務省の小売物価統計(6月時点)によると、東京23区の料金は9万円と全国で断トツだ。2位の那覇市は2万5000円で、火葬が有料の自治体のなかで最安の津市(3000円)とは30倍もの開きがある。札幌市や新潟市などは無料だ。
23区とそれ以外で差が大きいのは、火葬場の運営主体が違うためだ。厚生労働省によると、東京以外のほとんどは地方自治体が運営する公営だ。公費の補助があり安く抑えられる場合が多い。一方の23区は9カ所のうち公営が2、民営が7。民営のうち6カ所を広済堂ホールディングス傘下の東京博善が手掛ける・・・

銭湯の入浴料は知事が決めます。火葬料も、入浴料に近い性格だと思いますが。

デモのない日本

7月14日の日経新聞、峯岸博・編集委員の「ろうそくデモのない日本 政権批判めぐる韓国との差」から。

・・・「韓国なら間違いなく『ろうそくデモ』があちこちで起こっていますよ」。自民党派閥の政治資金問題で染まった先の通常国会のあいだ、韓国の政府やメディアの知人からしょっちゅう聞かされた言葉だ。
2016年の冬、いてつくソウルで、ろうそくを手に朴槿恵(パク・クネ)大統領の即時退陣を迫る大規模集会をもみくちゃにされながら幾度も取材した。
友人による国政介入事件を機に、国会での弾劾訴追から罷免、逮捕まで国家元首の転落はあっという間だった。当時、拘置所で朴氏が収容者番号「503」で呼ばれていると聞き、韓国政治の苛烈さを思い知った。

韓国の外交官らは非常事態のたびに日本人の振る舞いに驚かされてきた。
1万5000人超の犠牲者を出した東日本大震災で被災した人々の姿や、中東で過激派組織に拘束・殺害された被害者の家族が「国民や政府にご迷惑をおかけし、心からおわびする」と語った場面などだ。
「韓国では新型コロナウイルス禍でも何でもまずは政府に怒りがぶつけられる。日本政府がうらやましい」。そんな声を聞いた。

反政権デモが勢いづくのは成功体験に基づく。1960年の李承晩(イ・スンマン)大統領の退陣、87年の民主化宣言と憲法改正なども学生を含む市民の怒りがきっかけだった。
政治家や法律が間違っていれば変えたり、直したりするのが当たり前だと考える。「それが民主化運動の中で育まれた文化だ」と保守派の重鎮は語る・・・

フランスをはじめ先進国でも、街頭デモはしばしば起きます。日本で起きないのは、その成功体験がないこと、中心になる人たちや組織がないからでしょう。

本庶佑先生、政治と科学振興

日経新聞私の履歴書、6月はノーベル賞受賞者の本庶佑先生でした。26日の「総合科学会議 司令塔、学者主導に移行を 役人の美辞麗句で動く政治」から。

・・・在任中、一番重要な仕事といえば第3期(06年度から5年間)の科学技術基本計画の進捗をチェックすることだ。
私が担当する生命科学は重点分野である。予算シーズンになると、各省庁からあがってくる関連プロジェクトを「SABC」の4段階で評価する。アドバイザリーボードにおいて専門家の立場から研究の重要度を見極める。
いまでも覚えているのが「がんワクチン」計画だ。第2段階の臨床試験(治験)をやるというが、動物実験の成果しか出ていない。計画書に記されたエビデンスをみても、一例のみで似たような研究はいくらでもあった。
がんワクチンが効くのなら、国が予算をつけ国費を投じなくても製薬会社が飛びつく。口のうまい研究者が政治や霞が関と結託し、予算を分捕ろうとする例はよくある・・・

・・・霞が関のなかで仕事をしてわかったが、役人が発言権を持ちすぎる。美辞麗句を並べ、どこか夢を語るようにして政治を動かそうとする。
経済産業省の官僚が総合科技会議を仕切りだしたのがよくなかった。「オープンイノベーション」の旗を振った。企業は基礎研究にコストをかける必要はない、色々なリソースは外からとればいい、と。
経営者にとっては聞こえがいいだろうが、これは大間違い。内で研究せずに外の研究を評価できるはずがない。大手電機は基礎研究から手を引き今の衰退につながった。
米国では政府が予算の大まかな配分だけを決め、中身は学者が決めていく。総合科技会議も司令塔をうたうのなら、官僚主導から学者主導にしなければならないが、現実は逆の方向に進んだ。日本の科学技術の力が落ちぶれていくのは必然だった・・・

教員の長時間労働

3月11日の朝日新聞オピニオン欄「記者解説」、「先生を、教育の質を守る 給与や長時間労働、予算かけ抜本策を」が、教員の長時間労働や精神疾患を取り上げています。詳しくは記事を読んでいただくとして。そこに、各国の中学教員の1週間あたりの労働時間が図になって載っています。

経済協力開発機構(OECD)の「国際教員指導環境調査2018」によると、中学校教員の1週間の仕事時間は、OECD加盟国のうち調査に参加した31カ国の平均が38・8時間だったのに対し、日本は56・0時間。アメリカが46・2時間、韓国は34時間です。
書類作成などの「事務仕事」は、参加国で最長の週5・6時間だそうです。

なぜ、こんなことが長年にわたって放置されているのでしょう。先進諸国を手本に発展を遂げた日本が、いつの頃からか、独自路線を歩んでいます。それがよい結果をもたらしているならよいのですが、これはひどいですよね。教育分野でも成功を収めた日本が、慢心したのでしょう。
予算がないというなら、文科省と財務省の責任は重いです。与党はどうしたのでしょう。年金や公共事業費も重要でしょうが、未来の日本人をつくることがより重要だと思うのですが。

一億総おひとり様社会

1月13日の日経新聞一面連載「昭和99年 ニッポン反転」は「「総おひとり様」の足音 個つなぐ社会、日本モデル」でした。

・・・身元保証人がいないと入院・入所お断り――。2022年発表の総務省の抽出調査で、一般病院や介護保険施設の15.1%がこう答えた。割合を全国に広げれば「お断り」は約3千施設に及ぶ。高齢者の孤立問題に取り組むNPO法人の須貝秀昭代表(52)は「『家族』が前提の社会を変えないと、命が救えない」と訴える。
戦後、日本の基準は家族だった。1978年の厚生白書には、同居は「我が国の福祉における含み資産」との記述がある。当時は高齢者の約7割が子供と同居し、面倒をみるのが当たり前とされた。80年代には配偶者特別控除や専業主婦の第3号被保険者制度が導入され、家族像が固定化されていった。

同じころ、欧州は経済的苦境から抜け出すため女性活躍にかじを切った。日本と正反対の政策は、共働きを前提とした子育て支援につながり、比較的高い出生率の要因とされる。
京都産業大の落合恵美子教授(家族社会学)は「80年代の経済的成功が改革の意欲をそぎ、家族モデルが固定された。女性の社会進出の遅れは『失われた30年』の要因にもなった」と指摘する。

家族の姿は半世紀で一変した。2020年の国勢調査では単独世帯が一般世帯の38%を占めた。「サザエさん」型の3世代同居は4.1%。家計調査が標準世帯としていた「夫婦と子供2人」は1割を切る。非婚化が進み、およそ3組に1組が離婚し、死別後も長い人生が待つ。迫る「総おひとり様社会」と日本はどう向き合うべきなのか・・・