カテゴリー別アーカイブ: 歴史

外国人観光客が期待していたこと

11月28日の読売新聞に「訪日客 地方にも広がり」が載っていました。
訪日客が急増しています。定番の東京、富士山、京都、大阪だけでなく、各県でも増えています。
そこに、「外国人観光客が期待していたこと」が載っています(観光庁調べ、複数回答)。景勝地より、日本食と買い物なのですね。繁華街や日本酒も多いとは。

・日本食を食べること、81%
・ショッピング、62%
・自然・景勝地観光、55%
・繁華街の街歩き、55%
・日本の酒を飲むこと、33%
・日本の歴史・伝統文化体験、27%
・美術館・博物館等、27%
・四季の体感、25%
・温泉入浴、24%

『グローバル・ヒストリーとは何か』

パミラ・カイル・クロスリー著『グローバル・ヒストリーとは何か』(2012年、岩波書店)を読みました。『中央公論』11月号「世界史を学び直す100冊」で興味を持ったので。
歴史学の変遷や歴史の見方に興味を持って、いろいろ読んだことがあります。「歴史学の擁護

書店の宣伝文には、「急速なグローバル化が進展するなか,一国史的,地域史的な枠組みを脱して,人間の歴史を世界大,地球大で捉える歴史研究が注目を集めている.それは従来の歴史学と方法論的にどう異なるのか.いかなる理論とナラティヴを特徴とするのか.グランドスケールの歴史叙述を広く見渡しながら,新たな歴史ジャンルの特色を浮き彫りにする」とあります。

グローバル・ヒストリーは、世界史とは違うようです。各国や各地域の歴史を並べるのではなく、地球規模での「流れ」を読み解くと言ったらよいでしょうか。それぞれの地域での独自の発展とともに、共通した発展と、それらの間の相互作用を重視します。
ウォーラーステインの世界システム論や、ジャレッド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』、ウィリアム・マクニールの『世界史』などが取り上げられます。ヘーゲルやマルクスもです。

著者は、それらの視点を「発散」「収斂」「伝染」「システム」の4つに分類します。この分類は納得できます。
次に期待したいのは、これら歴史学の成果を踏まえた「世界史」またはグローバル・ヒストリーです。一冊の本にするのは、難しいのでしょうか。

渡部佳延著『知の歴史』

渡部佳延著『知の歴史:哲学と科学で読む138億年』(2023年、現代書館)を本屋で見つけて、読みました。西洋哲学史の概説書です。文字以前の時代も扱われていますが、主に古代ギリシャから現代までの哲学者を取り上げています。

これだけのものを一人の方が書かれたとは、驚きです。ある哲学者を詳しく紹介することはたぶん時間があればできるのでしょうが、これまでの西洋哲学を作ってきた著名な学者を網羅し、簡潔に紹介することはかなりの読書量と分析力、労力が必要だったでしょう。著者は学者ではなく、「講談社選書メチエ」や「講談社学術文庫」の編集長をなさった方です。

西洋哲学史の入門書として、良い本だと思います。私が次に読みたいのは、「史」ではなく、「哲学概観」です。
古代西洋哲学から自然科学が分離独立して、壮大な自然科学大系を作りました。数学、物理、化学、天文学、地学、生物学、医学・・・と。もちろんこれらも「史」はあるのですが、現代人は「史」を学ばなくても、それぞれの分野の概要、現在たどり着いた知識の全貌を知ることができます。

社会科学にあっても、経済学、法学、社会学などは「史」を知らなくても、現時点での知識の概要を知ることができます。ところが、哲学の概要書はほとんどが「史」であって、現時点での到達点をわかりやすく示してくれないのです。
門外漢には、哲学の「知図」が欲しいのです。それがないと、一般人は哲学について会話が成り立ちません。

自衛隊発足70年

11月13日の関西学院大学シンポジウム「霞ヶ関は今」、黒江哲郎・元防衛次官の講演で、印象に残ったことがあります。私の受け止めであって、黒江次官の発言を正確に引用しているわけではありません。

1 自衛隊が1954年に発足して、今年で70年です。黒江次官の説明では、その半分35年の折り返しは、1989年です。この年はベルリンの壁が崩壊し、東西冷戦が事実上終わった年です。これは、私にとって大いにびっくりでした。それから35年も経っているということです。
私が自治大臣秘書官の時に、竹内行夫総理秘書官(後の外務次官、最高裁判事)から「全勝君は、戦後の日本を二つに分けるとしたら、いつと思うか」と質問されて、「そりゃ、1973年の石油危機でしょう。ここで日本の高度成長が終わったのですから」と答えました。竹内先輩は「そうか、僕にとっては60年安保だよ」と言って、その趣旨を説明してくださいました。この話は、連載「公共を創る」第184回に書きました。
自衛隊70年は戦後79年とは異なりますが、戦後の日本の歩みを考える際の一つの物差しとなります。

2 もう一つは、黒江次官が防衛庁に入った頃は、所管法令が3つだけだったそうです。防衛庁設置法、自衛隊法、給与法です。組織法しかなかったのです。
これは、自衛隊の置かれた状況を反映しています。一言で言うと、自衛隊は「動かない組織」「動けない組織」だったのです。外交安全保障で何か事件が起きても、防衛庁・自衛隊の出番はありませんでした。
ソ連が崩壊し、東西冷戦が終わりました。世界に平和が訪れたら良かったのですが、重しがなくなった世界は、各地で紛争が勃発するようになりました。さらに軍隊ではないテロが頻発するようになりました。日本も「一国平和主義」を続けることができなくなり、世界の平和維持に責任を担わなければならなくなりました。

防衛庁・自衛隊に出番が回ってきたのです。この劇的な変化は、黒江次官の著書『防衛事務次官冷や汗日記』に赤裸々に書かれています。そして、防衛庁は防衛省になり、所管法令(作用法)が激増します。「防衛省所管法令」特に有事法制です。
日本の経済や政治行政にとっては「失われた30年」と総括されますが、安全保障については、「転換の30年」でした。このことは、拙稿「Crisis Management」(『Public Administration in Japan』所収)でも書きました。

『中央公論』11月号、世界史を学び直す100冊

月刊『中央公論』11月号が、「世界史を学び直す100冊」を特集しています。どんな本が取り上げられているのか知りたくて、買いました。
ヨーロッパ、アジア、アメリカ、イスラム・・・をそれぞれの専門家が、解説をつけて並べています。10冊で紹介するとなると、難しいです。担当した学者も、悩んだでしょうね。新書など、読みやすい本が挙げられています。10冊×10分野、書名を眺めるだけでも楽しいです。

「へえ」と思うような本もありました。読んだ本とともに、買ったけど読んでない本、読もうと思ったけど買わなかった本が、たくさん載っています。
あなたは、どれくらい読んでいますか。

これから歴史の本を読もうとする人には、良い道しるべになると思います。大学時代に、こんな紹介があったら良かったです。
書名、著者名、出版社名、値段が載っているのですが、出版年が載っていません。これは載せて欲しいですね。