カテゴリー別アーカイブ: 知的生産の技術

生き様-知的生産の技術

ぼんやり考える時間

物事を考えるときには、二つの状態があるようです。
一つは、ある課題を集中して考える場合です。試験勉強や、差し迫った仕事の課題を考える場合、締め切り間近の原稿を書く場合です。これは、皆さんおわかりでしょう。
もう一つは、ぼんやりと考える場合です。特段の課題はなく、締め切りもない状態です。新聞や本を読んでいて連想がわく。布団の中でふと思いつくことなどです。

不思議ですよね。課題があって考える場合は、それにつながりがあることを考えつくのは分かりますが、後者の場合は、何も焦点がないのに連想が続きます。かつての体験を思い出したり、ある風景を思い浮かべたり、音楽を口ずさみます。
私たちの脳は、いろんなことを、脈絡もなくミラーボールのように映し出しているようで、それを別の脳細胞が取り出すのでしょう。つながりがないように思えても、脳は何か「同じような映像の形」あるいは「ある鍵となる言葉」をつながりとして、ほかの記憶を呼び起こしているようです。

このホームページの記事の半分は、読んだ新聞や本、体験から主題を考えつきます。残りの半分は、ぼんやりしているときに「こんなことも記事になるなあ」と思いつくのです。
しかも、一生懸命考えている場合より、ぼんやりと考えている場合の方が、さまざまなことを思いつきます。布団の中、電車の中、職場での仕事の合間などです。
頭の中の引き出しから、いろんなことを引っ張り出すようです。もちろん、引き出しにいろんな記憶が入っていないと、取り出すことはできませんが。引き出しに入っているだけでは、出てきません。何が、引っ張り出すきっかけなのか。よく分かりませんね。
脳の働きと仕組み、推理の能力

構想は紙に書いて

3月26日の読売新聞夕刊、石田衣良さんの「物語は余白に広がる 紙を使った小説発想法」から。
・・・原稿用紙のひとマスひとマスを手書きの文字で埋めていく。そんな小説家は今や少数だ。人気作家の石田衣良さんも、もちろんパソコン派。しかし、執筆前に構想を練る段階では紙にキャラクターの特徴や話の流れを書き込むという。なぜ、紙とパソコンを使い分けるのか・・・

・・・構想段階では、紙が持っている軽さとか自由さみたいなものがいいんですよね。ディスプレーに向かうよりは。余白が広いし、継ぎ足してどんどん広くできる。パソコンもウィンドーをたくさん開けますけど、紙の方がもっと自由に組み替えられますね・・・
・・・アイデアのメモ用には無地のはがきを1000枚くらい買ってあって、なくなれば補充。家にいるときは万年筆、外では水性ボールペンで書いていきます。
いいアイデアは机の前の壁に貼り、目につけばちょっと考えるということを繰り返します。今貼ってあるのは7、8枚。この段階では思いついたものを「こんなのつまらない」と捨てず、全て取っておいた方がいい。そういう無駄なことも紙だといいんですね・・・

紙で読む良さ

9月25日の読売新聞夕刊「紙で読む良さがある」から。
・・・ニュースや小説、書類を紙で読むか、デジタルで読むか、いつも悩ましい。そもそも、デジタルに比べて紙の方が優れている点って何だろう。読み書きメディアとしての紙とデジタルを比較研究する群馬大の柴田博仁教授に聞くと、それは「操作性」だという・・・

実験A
間違い探し。参加者は20〜30代の24人だ。同じB5サイズの紙とタブレット(iPad)で、1ページ分の文章から、文脈上おかしい点(「増加した」であるべきなのに「減少した」になっているなど)を探してもらった。
制限時間内の検出率は、紙のほうがタブレットより17・2%高かった。

実験B
2枚の文書(1ページ目が本文、2ページ目が注釈)を行き来しながら朗読をする実験で、紙とパソコンを比べた。ページを移動する際生じる中断は、紙のほうがパソコンより短かった。多くの人が2枚の紙の間に指をはさみ、読み終わる前にページをめくっていたことなどが理由と考えられる。
「目次のある本で『3章を開いてください』というと、ほぼ全員が、目次を見た後、目次に指をはさんだまま3章を開きます。もしページが違っていたらワンアクションで戻れます。習ったわけではないのに、身についている」

「目で情報を取るだけなら、紙でもデジタルでも、読むスピードや理解度はあまり変わりません。でも、読書の途中で著者情報を見たり、参考文献を見たりといったページを行き来する操作は、紙が抜群にしやすく、読みを阻害しない。デジタルは、ページをめくるなどの際、思考にプチプチ中断が入ってきます」
柴田教授自身が1年あまりの間「デジタルペーパーでだけ本を読む」という体験をしてみたそうだ。すでに持っていた紙の本も、250冊以上を裁断、スキャンして取り込んだ。
「私1人の例に過ぎませんが、気付いたことがいくつかありました。たとえば、自分が本のどのあたりの位置を読んでいるかがわからなくなりました。もちろん数字では『何ページ』と表示されますが、紙の本のように重さや厚さで感じるのとは違う。『終わりが来るぞ来るぞ』感もなく、いきなり終わったと感じたこともありました」

紙の方が頭に入る

7月1日の読売新聞解説欄、「デジタル教科書 消えぬ懸念…有識者会議第1次報告」に、紙に書かれたものとデジタル画面との特徴が表になって比較されています。

・・・国内外では、デジタル媒体に比べ、紙媒体が、文章の内容を深く理解するのに向くとの研究結果がでている。
イスラエルの小学5、6年生男女82人を対象にした研究(2018年発表)では、複数の文章を紙とコンピューターで読んで問題に解答したところ、紙の方が成績が良かった。一方、アンケートでは、約6割の子供がコンピューターで読むことを「好む」と答えた。
紙媒体の方が文章内容などの深い理解が得られるにもかかわらず、スマホなど手軽な手段で読みたがる傾向がみられる。

今年3月、東京大の酒井邦嘉教授(言語脳科学)の研究チームが、紙の手帳にスケジュールを書き留めると、電子機器よりも短時間で記憶できるとの研究結果を発表した。書いた内容を思い出す際の脳の活動も高まるという。酒井教授は、「紙の教科書やノートを使った学習の方が効果が高いとの根拠が示された」とする・・・

覚えやすさ スマホより紙

3月20日の読売新聞に「覚えやすさ スマホより紙」が載っていました。

・・・東京大などの研究チームは19日、紙の手帳にスケジュールを書き留めると、スマートフォンなどの電子機器を使う時よりも短時間で記憶でき、記憶を思い出す時には脳の活動が高まることがわかったとの研究結果を、海外の専門誌に発表した。紙の教科書やノートを使った学習の効果が示された成果としている。
研究チームは、18~29歳の男女48人に、ある文章の中から14のイベントの日程を抜き出して、記録する課題に取り組んでもらった。記録の方法は〈1〉紙の手帳にペンで書き込む〈2〉タブレット型端末に専用ペンで書き込む〈3〉スマホに入力する――の3パターンで、各16人ずつで実験した。
その結果、紙の手帳を使ったグループは、電子機器を使ったグループよりも、全ての日程を書き終える時間が25%短かった。
1時間後にイベントの日付や内容などを思い出してもらうテストをすると、正答率は3グループとも差がなく、紙の手帳を使ったグループが短時間で記憶を定着させたと推測できた。
テスト中の脳の状態を観察すると、紙の手帳を使ったグループは、言語や視覚、記憶に関わる領域の血流がより多くなり、活発に働いている様子がうかがえた・・・