11日の朝日新聞に興味深い記事が載っていました。「「家賃保証」アパート経営、減額リスクの説明義務化」という記事です。これはこれで重要な記事なのですが、私が興味を持ったのは、その続きです。「元営業マン「世間知らず狙った」」として、次のような記述があります。
・・・「世間知らずで、プライドが高く、人に相談しなさそうな人を狙った」。賃貸住宅管理会社の元営業マンはそう明かす。特に「狙い目」だったのは教員や医者、公務員らだったという・・・
これは、営業マンの間では「常識」のようです。かつて、悪徳商法(例えば豊田商事事件。30年前の話で、若い人は知らないでしょうね)で、営業マンが「扱いやすいのは学校の先生と公務員」と言っていたことを覚えています。悪徳でなく、まっとうなセールスマンにも、同じことを聞いたことがあります。
理由は、今日の記事と同じで、プライドが高く、他人に相談しないからでした。最初は安い品を勧めて引き込んで、その後おだてて、「あなたにはもう一つ上のランクがふさわしいです」と、不相応な高額なものを売りつけるのだそうです。普通の消費者なら、家族や職場の同僚に相談するのですが、ここに登場する人たちは、それをしないのだそうです。公務員でも警察官は、職場で相談するので、「この営業術は通用しない」とも聞きました。
カテゴリー別アーカイブ: 明るい課長講座
生き様-明るい課長講座
部下の不祥事、損害請求
先日このホームページで、「職員が事故や不祥事を起こし会社に損害を与えた場合、会社はその職員に損害賠償を求めることができるのでしょうか」と書きました(職員管理、部下の不祥事。2016年7月21日)。公務員の場合どうなるのか、少し調べてみました。ある物知りが、次のことを教えてくれました。
国家賠償請求訴訟で国が敗訴し賠償金を払った場合、国が原因を作った公務員に対し求償した事例があります。それを調べた国の資料があるのです。平成20年に、参議院議員が政府に対し「質問主意書」で質問しました。それに対する政府の回答です。「国家賠償法第一条第二項に基づく求償権行使事例に関する質問主意書」参議院、平成20年10月1日。
それによると(答弁書の4)、
・検察事務官が被害者の被害感情等について虚偽の電話聴取書を作成したとするもの(5万円)
・旧防衛庁の職員が個人情報を開示したとするもの(12万円)
の2件について、国が公務員に対して求償したとのことです。
なお、次の件は、求償権はあるが、その時点では求償していないと回答しています。
・旧国立大学総長が情報公開請求について違法な不開示決定等をしたとするもの(40万円)
また、考え方として、次のように答えています。
「国が国家賠償法第一条第二項の規定に基づき求償権を取得した場合には、国の債権の管理等に関する法律(昭和三十一年法律第百十四号)第十条から第十二条まで、会計法(昭和二十二年法律第三十五号)第六条等の規定するところに従って、遅滞なく、求償権につき弁済の義務を負う公務員に対してこれを行使すべきものである。」
自治体の事例では、次のようなページがありました。
「国家賠償法第1条により、自治体が職員に求償した事例の判例はあるか」国立国会図書館レファレンス協同データベース事業。
今回紹介した事例は、国家賠償法に規定する「公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたとき」です。特定の他人に損害を与えたのではない場合、たとえば役所の信用を大きく損ねた場合などは、この規定では原因を作った公務員に賠償を求めることはできないでしょう。
国家賠償法
第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
2 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。
職員管理、部下の不祥事
読売新聞7月20日の解説欄「スポーツ選手の賭博 問題点は」、小林至・元福岡ソフトバンクホークス取締役の発言から。
・・・プロ野球選手は球団の従業員ではなく、あくまで個人事業主だ。球団と選手の関係は、雇用契約ではなく請負契約になる。一般企業ですら従業員の私生活に口出ししにくくなっている昨今、球団が選手の生活態度を指導するのは相当難しい・・・
・・・巨人は今年3月、一連の責任を取ってオーナーらが辞任した。多くの人は「当然」と受け止めただろうが、球団と選手の関係を考えると、率直なところ、「そこまでする必要はなかったのではないか」という感想を持っている。
逆に、契約に厳密な米国であれば球団が選手に対して損害賠償を請求してもおかしくない。賭博行為が発覚して出場停止処分を受けたアメリカンフットボール選手に対し、チームが報酬の返還を求めた事例もある・・・
日本航空の副操縦士が泥酔して、飛行機が欠航した事件がありました。これも考えさせられる事案です。
機長と副操縦士が、乗務終了後に飲食店で飲酒し、副操縦士が機長を殴るなどの暴行を加えました。副操縦士が、職務質問中に警察官を平手で殴ったため、公務執行妨害の容疑で現行犯逮捕されました。代わりの人員を手配できなかったため、翌朝の便が欠航になったのです。日本航空は運航規程で、「乗務開始の12時間前以降は飲酒をしてはならない」と定めていて、機長と副操縦士の両方が規程に違反していました。
さらに、問題を起こした副操縦士は、2010年11月にもサンフランシスコで飲酒による問題を起こし、その後「社内管理」及び「断酒」の条件付きで、いわゆる「操縦免許」の一部とも言える航空身体検査証明を受けていました。しかし、その後飲酒を再開し、航空身体検査証明を更新する際も、「断酒を継続している」と、うそをついていたとのことです。
この場合、職員管理に落ち度があり、欠航した会社がお詫びし責任を取るとして、会社はこの副操縦士に対し、損害賠償を求めることはできるのでしょうか。会社は、この副操縦士にだまされていたのですから。
職員が犯罪や不祥事を起こした場合、組織はどこまで責任を負うのか。難しいですよね。「二度とこのようなことを起こさないように、指導して参ります」と、記者会見でお詫びします。努力はしなければならないのですが、根絶は難しいです。大手企業の会社員や公務員だけでなく、人を教える教員も、違法行為を取り締まる警察官も、事件を起こします。このような事件を報道する報道機関の職員も、事件を起こします。
それぞれの組織は、かなりの研修をしています。そして、事件を起こす人も、立派な大人です。どこまでが、組織の責任なのでしょうか。
サイバー消防隊
「CSIRT(シーサート)」って、ご存じですか。別名、サイバー消防隊、コンピュータがサイバー攻撃に遭った際に、被害を食い止める組織です。サイバー攻撃を火災(放火)とみて、それに対する消防隊です。読売新聞7月20日、「被害拡大防止に必要なサイバー消防隊」をお読みください。
標的型サイバー攻撃が、ひどくなっています。大会社も官庁も被害に遭い、大量の情報が流出する事件が起きています。感染を100%防ぐのは、不可能とみられています。次々と新手のウイルスが出てくるのです。すると、放火されたら、なるべく早く消し止め、「延焼」を食い止めることが重要です。公共の消防隊のほか、各事務所も自衛消防隊が必要です。幹部だけでも、職員だけでも、うまくいかなかった例が紹介されています。組織管理者には、必読です。
心が折れる職場、2
続きです。第2章で、「アドバイス上手な上司が部下の心を折る」には、次のような話が載っています。
なぜあの部署では不調者が続出するのか、2人の部下を続けて不調にしたB部長、「それはあなたの仕事です」そのとき課長の心は折れた・・・
部下が困って相談したとき、上司が「それは、あなたが考えることでしょう」と答えます。案を考え直して上司に相談したとき、「それは駄目ですね。考え直してください」と突き返されます。「ではどうすれば良いのでしょうか」と聞くと、「それを考えるのがあなたの仕事です」との返答です。
このように、「できる上司」が部下を壊すのです。私が若い時に、挫折しそうになった経験(連載第2回)と似ていますね。私の連載には、その解決方法も書いてあります。