カテゴリー別アーカイブ: 明るい課長講座

生き様-明るい課長講座

『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか』3

世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか』の続きです。

2 消費が、「生存欲求」から「帰属欲求」「承認欲求」へ、さらに「自己実現欲求」へと向かっている。安くて良いものから、承認欲求や自己実現欲求を刺激するような感性や美意識が重要になっている。

なお、著者の「消費が生存欲求から帰属欲求、承認欲求、自己実現欲求へと変わっていく」主張は「マズローの欲求5段階説」に依拠していますが、「マズローの欲求5段階説は実証実験では証明されず、アカデミアの世界では眉唾と考えられていることを知らないのか」という反論が出てくるであろうと想定して、それへの答えも書かれています。
・・・科学においては「真偽」の判定が重要になりますが、「科学的に検証できない」ということは「真偽がはっきりしていない」ということを意味するだけで、その命題が「偽」であることを意味しません・・・筆者は「アート」と「サイエンス」の両方、つまり思考における「論理」と「直感」の双方を用いており、であるが故に筆者が個人的に「直感的に正しい」と考えたものについては、必ずしも科学的根拠が明確ではない場合においても、それを「正しい」(と思う)とする前提で論を進めていることを、ここに断っておきます・・・(p18)

なお、この本はもっといろいろなことが書かれています。ここで紹介したのは、その一部です。ご関心ある方は、本をお読みください。

本書に限らず、教養としての西洋美術も注目されているようです。
1月22日の日経新聞夕刊「西洋美術、背景知って鑑賞 欧米では必須の教養 歴史学ぶ講座盛況 企業の研修で採用

『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか』2

山口周著『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか』の続きです。

研究の世界でも、分析と論理で答えを出す場合ばかりではありません。自然科学の場合は、分析と論理を積み上げることも多いでしょう。しかし、「発見」は、まずは直感で当たりをつけ、それを分析、実験によって裏付ける作業になります。社会科学の場合は、もっとそうです。直感によって、論理を見いだすことが多いでしょう。アンケート調査結果の分析だけが、社会科学ではありません。

私たちの職場での仕事の場合は、さらにそうです。その場その場の判断は、経験と勘によって行われます。のんびり時間をかけて、分析しているようなものではないのです。
また、考慮すべき変数がたくさんあり、それらの各変数の重要度も、人によって違ってきます。しばしば判断結果を説明する際に、「総合的に勘案して」という言葉が使われるわけです。
役所の仕事の重要なものに、予算編成があります。かつて、PPBSやゼロベースなどの「科学的予算査定」が試みられましたが、成功していません。予算が使われたあとに、どのような効果があったかなどの分析は、意味がありますが。

中学生の時(昭和40年代)に、「直感サバンナ」という言葉が、はやったことを思い出しました。事の起こりは、因数分解の問題だと思います。xx-5x+6=(x-2)(x-3)と分解するとき、2とか3という数字を勘で数字を当ててみて、正解かどうかを試してみます。「数学はもっと論理的に積み重ねて正解を出すもの」と思っていたのです。先生に「どのようにして、答えにたどり着くのですか」聞いたら、「直感だ」と答えられました。
当時、マツダの乗用車にサバンナという車種があって、その宣伝文句が「直感サバンナ」でした。それをもじったのです。「へえ、数学でも、論理的積み重ねでないことがあるんだ」と妙に納得しました。
この項続く

ダメな会議を変える

1月30日の日経新聞夕刊「Bizワザ」は「ダメ会議 準備で変える」でした。参考になる工夫が載っています。
日本能率協会の石川忠央さんの助言も、有効です。
・しきり役が重要
・会議の必要性を確認することから始める
・結論を曖昧にしてはいけない

私が「明るい公務員講座中級編 職場の無駄」でお教えした「会議術」と共通することが多いです。

山口周著『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか』

山口周著『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか? 経営におけるアートと サイエンス』(2017年、光文社新書)が勉強になりました。
欧米のグローバル企 業の幹部トレーニングに、美意識が重要になっているのだそうです。これまでの 論理的・理性的スキルに加えて、直感的・感性的スキルが期待されているのです。関心ある方は、本をお読みください。ここでは、私が気になった点だけを紹介します。

1 これまでのような「分析、論理、理性」に軸足を置いた「サイエンス重視の意思決定」が行き詰まり、要素還元主義の論理思考でなく、全体を直感的にとらえる感性と、「真善美」が感じられる構想力が求められている。

「経験」によって経営していた企業に、コンサルタントなどが「論理と理性」を持ち込むことで、合理的な経営ができるようになった。しかし、論理と理性では 解決できない問題がある。それを科学的に結論を出そうとしても、時間がかかるばかりで、良い結論は出ない。膨大な情報を集めるには手間がかかり、それを基に判断することは困難である。
企業において、論理的かつ理性的に意思決定していると、皆が同じ結論になる。すると、競争は、スピードとコストになる。日本は長年、この勝負で勝ってきた。しかし、その点でもいずれ追いつかれ、次なる差別化が求められる。それは、論理と理性ではない。

VUCAという、アメリカ軍が世界情勢を表現するために作った言葉を引用します。
Volatility(不安定)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(あいまい)の4つの単語の頭文字をつなげたものです。
論理的思考では、課題を分析し、因果関係を見つけて、結論を導きます。しかし、このような問題の場合は、そのような分析的手法が通じません。直感的な答えを試してみて、試行錯誤を繰り返し、良い結論に至ります。もちろん、勘だけで結論を出すのではありません。他者に説明する必要があります。
この項続く

冨山和彦さん、エリートコースだけではダメ

1月24日の読売新聞「経営者に聞く」、冨山和彦さんの「デジタル革命 乱世が来た」から。
・・・経営の醍醐味って、人間ドラマにあるんですよね。いい経営をすると、そこで働いている人の人生を良くする。悪い経営をすればその人たちが不幸になる。超一流企業には、ドラマ性があるようでないのです
(山崎豊子の小説)「沈まぬ太陽」では、航空会社のエリートが左遷されるけど、ケニアに飛ばされただけでしょ。それに比べ、地方の旅館やバス会社は、切ない話がいっぱいある。来月の給料が払えないとか、連帯保証しているから自己破産するしかないとか・・・

・・・エリートコースと称して有望な若手を企画部門や管理部門に配置する大企業がありますが、最悪ですね。全く役に立ちません。その人が社長になる頃には、すべてが変わってしまっているのだから・・・
・・・これからは経営者も若者も、360度、あらゆる方向に好奇心を持つことがすごく大事です。
世の中はどんどん変化していますから、いろんな可能性があります。どれだけ多様な領域に関心を持っているか、あるいは人間関係を持っているか。
いわゆる高学歴のエリートさんの空間で生きているだけではダメです。過去はそれで成功したかもしれないけど、新しいことと接点が持ちにくくなる・・・