「明るい課長講座」カテゴリーアーカイブ

生き様-明るい課長講座

怒りをコントロールする方法

日経新聞12月4日の夕刊に「子供への怒り コントロール」が載っていました。副題は「間を6秒置き深呼吸、イライラの癖を把握」です。

・・・「もう何回言ったらわかるの!」。子供が思うように行動してくれず、イライラしたり、カッとなったり。怒りがわいた経験を持つ親は多いだろう。感情にまかせて子供を叱っても効果はない。自分の怒りの感情をうまくコントロールし、良好な親子関係を築くためのヒントを探った・・・

・・・さいたま市の飯田陽子さん(45)は子育てで「6秒ルール」を守っている。宿題をしない子供を見て怒りの感情がわきそうになったら、まず6秒、間を置く。深呼吸して心を落ち着かせ、なぜ宿題をやろうとしないのかを冷静に考えたうえで、子供が机に向かうよう促す。
飯田さんが取り入れているのは、心理トレーニング「アンガーマネジメント」。怒りそのものを否定するのではなく、「怒りの感情に振り回されずに、うまく付き合うための方法」(日本アンガーマネジメント協会理事の戸田久実さん)だ・・・

そこに、6秒をやり過ごすための5つの方法が、載っています。
1 怒りを数値化する
2 その場から離れる
3 数を数える。これは拙著『明るい公務員講座』でも、お勧めしました。
4 深呼吸する
5 心が落ち着くフレーズを唱える

それぞれに、具体的方法も載っています。これは役に立ちます。家庭でも職場でも。原文をお読みください。

「任せるけど任せない」矢内広・ぴあ社長

11月29日の日経新聞夕刊「私のリーダー論」、矢内広・ぴあ社長の「先を見て自身で決断する 」から。

・・・――チケット参入は吉と出たわけですが、その足をすくわれるような試練もありました。2008年3月期にチケットのシステム障害に伴う売り上げの急減で最終赤字を計上しました。
「経営の難しさを本当に実感した出来事でした。改修作業で取り扱うチケットの削減を余儀なくされ資金繰りが悪化。債務超過になりかねないと、先回りをしてリストラを実施しました。財務面では凸版印刷やセブン&アイ・ホールディングスへの第三者割当増資を決断しました」
「最も歯がゆかったのは結局、私はシステムは何も知らず、どうしたらいいのかわからなかったということです。権限委譲も必要なことで任せていたのですが、チケットが収益の柱のぴあにとってITは根幹になってきているから避けて通れない。私がシステムを勉強しても限りがありますから基本的には任せるんですが、任せきりにしてはいけなかった」・・・

・・・――「任せるけど任せない」というのはどういうことでしょうか。
「松下幸之助さんが残した言葉『任せて任せず』がオリジナルです。当時、社外取締役として招いた元松下電器産業副社長の佐久間昇二さんから教わりました。自分の専門外でわからないこともありますが、ビジネスには例えばコストがどのぐらいで、どんな効果があり、いつまでにやるべきで、顧客にどんなメリットがあるのかなど、基本的な考えの枠組みがある。その枠組みのところまでは任せないということです」・・・

レジリエンス2

レジリエンス」の続きです。

レジリエンスは、簡単に言うと、悲しいことやつらいことを受けた際の、精神的回復力です。
それは、個人差があります。同じような悲しい出来事でも、乗り越える人と超えられない人がいます。
『レジリエンス こころの回復とはなにか』には、ガラス製の人形、鋼鉄製の人形、プラスチック製の人形のたとえが出てきます(p32)。ハンマーの一撃を加えると、ガラス製は砕け散り、鋼鉄製は壊れず、プラスチック製は消えない傷がつきます。もっともこのたとえは、提唱者が撤回しているようです。
ガラス製のボール、プラスチック製のボール、ゴム製のボールにたとえてはどうでしょうか。叩くと、ガラス製は壊れ、プラスチック製は傷がつきますが、ゴム製はへこんでも元に戻ります。

レジリエンスは成長とともに、強くなります。精神的負荷が適当にかかり、それを順次克服していくと、精神的に強くなります。苦しいことや失敗を乗り越え、成長していくことです。先ほどのボールのたとえは、使えませんね。
これは、肉体的能力と同じでしょう。子供が運動をして、体力や走る力を向上させます。この際に負荷を掛けずにいると、強くなりません。かといって、無理をすると筋肉を痛めます。これを精神力に当てはめて理解するのが、わかりやすいでしょう。
実社会では、子供に筋肉を痛めるほどの肉体的負荷を掛けることは、少ないでしょう。ところが、精神的には、虐待、親の離婚、いじめなど、とてもきつい負荷がかかることもあります。それを、社会として、どのように救っていくか。

インターネットで調べて、久世浩司著『マンガでやさしくわかるレジリエンス』(2015年、日本能率協会マネジメントセンター)を読みました。これはわかりやすかったです。

職場のタスクとリレーション

11月26日の日経新聞「やさしい経済学」、中村和彦 南山大学教授の「組織開発で考える職場の活性化  日本企業、人間的側面を軽視」から。

・・・野球チームが優秀な選手を寄せ集めても勝てるとは限りません。同様に、人を集めただけでは職場や組織は機能しません。組織開発とは、職場や組織を機能させ、活性化させていくための、人間的側面のマネジメントの考え方や手法です。この連載では、職場や組織の活性化を阻む諸問題について、組織開発の考え方に基づいて、どのように対処していくかを紹介します。
組織には、「タスク」と「リレーション」という重要な2つの軸があります。タスクの軸とは、仕事や業績に関心を向け、その達成のために働きかけることを重視するものです。一方、リレーションの軸では、人や関係性といった人間的側面に関心を向け、関係構築を目指して働きかけることを大切にします。
職場や組織が活性化して成果を上げるためには、タスクとリレーションの両方が機能する必要があることが、組織開発や社会心理学の多くの研究で明らかになっています・・・

レジリエンス

セルジュ・ティスロン著『レジリエンス こころの回復とはなにか』(2016年、白水社、文庫クセジュ)を、たまたま本屋で見つけて、読みました。

レジリエンスという言葉を、私は最近聞くようになりました。災害復旧や国土強靱化の文脈で、災害に強い施設や仕組みと理解していたのです。
ウィキペディアなどによると、心理学で使われる用語なのですね。ストレスという言葉とともに、元は物理学の用語です。それを、心理学が借用しました。
ストレスは「外力による歪み」で、レジリエンスはそれに対して「外力による歪みを跳ね返す力」とのことです。看護学でも、詳しく解説されています。

人がストレスやトラウマ(精神的外傷)を受けた際に、それを乗り越えていく力です。この本によると、レジリエンスの概念には、3つ+1つの波があったそうです。
一つ目は、トラウマを乗り越えていく能力を、個人の「素質」に求めました。しかし、この考えでは人間が二分化され、生まれ持って克服できる人とできない人に別れてしまいます。
二番目には、「過程」と理解しました。トラウマを受ける状況の中で、行動を起こす、あるいは援助することで、その状況を乗り越えていく過程です。ところが、この考えでは、あらかじめ道筋が決まっていて、誰もがその段階を経てレジリエンスを身につけます。うまく行かない人は、その路線からの失敗者になります。
三番目には、「力」と考えます。誰もがこの力を多少とも持っていて、生まれ持った力もあれば、環境によって身につける力もあります。そして、ストレスは常に有害とは言えず、うまく付き合えばレジリエンスを強くすることができます。援助することも有用です。
さらに第四番目には、個人だけでなく、集団(社会、経済、政治)にも適用されるようになりました。「レジリエント(強靱)な都市」「レジリエント(打たれ強い)会社」というようにです。

「抵抗力」や「回復力」という訳が当てられていますが、「克服」という日本語がわかりやすいと思います。ストレスに対する抵抗力です。
私はこの分野は門外漢なのと、翻訳という制約があって、読みやすい本ではありませんでした。わかりにくいところは、サッサと飛ばして読みました。それでも、得るところは多かったです。日本語で簡単な入門書があれば良いのですが。あるのかもしれません、私が知らないだけで。
もっと早く、このような学説を知っておくべきでした。私個人の人生についても、職員たちの悩みを聞く際にもです。この項続く