カテゴリー別アーカイブ: 明るい課長講座

生き様-明るい課長講座

君は間違っていない、しかし

今日の夕方、赤坂見附駅から丸ノ内線に乗ってきた君。30代だろうか。蒸し暑い今日も、スーツをぴしっと決めて、いかにも仕事ができそうな姿だったね。
2人分の席が空いていて、君はスマホを見ながら、その一つの席に足早に座った。両耳にはイヤホンがあった。

君は気づかなかっただろうけど、隣の扉から乗った2人の高齢のご婦人が「あそこが空いているわ」と言って、その席に向かって歩いてきていた。ご婦人方は歩みがのろいので、あなたはサッサと座った。君はそれに気づかなかった。君は、スマホに夢中だったから。君は、間違ったことはしていない。
それを見ていた別の席の方が立ち上がって、2人のご婦人に席を譲った。そう、君はそれにも気づいていない。君は、スマホに熱中していたんだから。君は間違っていない。
そして、四谷三丁目駅で、颯爽とビジネスバックをもって降りていった。私は、少し離れたところから、それを見ていた。

君は間違ったことはしていない。しかし、もしぼくの部下だったら、「周囲に目配り、気配りすることも、出世するために必要な資質だよ」と教えただろう。
参考「公衆の場でのスマホ操作、両耳イヤホン

男の仕事社会の変貌

男性が家族を顧みないで仕事に打ち込む。これがかつての、仕事人間の理想像でした。私も、そうでした。毎晩遅くまで仕事をし、さらに飲みに行きました。今は反省しています。
最近、「時代は変わりつつあるなあ」と考える事件に遭遇しました。

先日、旧知の女性記者さんから、意見交換会(会食)のお誘いがありました。「でも、あんたは育休明けで、子育て中だろう?」と聞くと、「はい、できれば昼食でお願いします」とのこと。で、昼ご飯を食べながら、意見交換をしました。
次に、別の女性記者からも、意見交換会のお誘いが。今度も「あんた子育て中だから、昼の方がええんやろ?」と聞くと、「はい」とのこと。で、霞が関近くで、昼ご飯を一緒することにしました。
続くときは続くものです。久しぶりに会った別の男性記者からも、「意見交換会お願いします」。「あんたも、昼の方がよいのかい?」と聞くと、「はい」と即座に返事が来ました。

彼女彼らは、かつて遅くまで飲んでいた人たちです。
まあ、酔った勢いで、ふだん言えないことを言っていたことも事実ですが。そんな、危険かつ不健康なことをせず、まっとうな意見交換がよいですね。

見えにくい仕事能力の育成と評価

成果の見えやすい仕事と見えにくい仕事」の続きです。

・・・このことを一般向けに解説したものとして、組織の経済学の分野で著名なジョン・ロバーツ米スタンフォード大教授による「現代企業の組織デザイン」を挙げておこう。米国企業の実例を基に、見える仕事にだけ焦点を当てた成果主義の弊害、内発的動機付けと長期雇用の重要性を指摘した。
経済環境の変動に対応して、労働資源が最も必要とされる産業や企業に効率的に投入されるには、円滑な労働移動が重要だ。一方、労働資源が投入される職場で最も効率的に活用されることも重要だ。

後者の点では、見えにくい仕事にインセンティブを与えるには、働く場所を移動すると報酬が下がる仕組みが必要となる。もし移動してもすぐに同じ報酬が得られるならば、契約で明示されておらず、しかもその成果が見えない仕事に頑張ろうとはしないからだ。
また見えにくい仕事は前もって約束しにくく、定型化しにくい。人間に優位性があるのは定型化しにくい仕事だ。事前に明確にできないことに柔軟に対応することに、人間の優位性と労働者を雇用するメリットがある。明確にできる仕事は機械に代わられ、外部に委託され、労働者を雇う必要性が小さい。雇われても対価は高くないことが多い・・・

・・・どこにでも役立つ一般的技能は労働者の生産性のコアだ。古典的な人的資本理論では、一般的技能の習得費用は労働者個人が負担すると考えられていた。にもかかわらず、外国語学習のように一般的技能の習得を企業が支援してきたのは、従業員が長期的に貢献してくれるという期待があったからだ。それが失われるならば、自分で自分に投資する金銭的余裕のない者は能力の向上が妨げられる。
これは企業が抱え込みたい優秀な人材は会社から能力向上の機会を与えられる一方、そうでない人は機会に恵まれないことになり、二分化が進むことを意味する。実際、短時間労働者の推移をみると、どの国でも女性での割合が高い(図2参照)・・・

成果の見えやすい仕事と見えにくい仕事

9月13日の日経新聞経済教室、江口匡太・中央大学教授の「70歳雇用時代の正社員改革(下) 能力評価、中高年活用の鍵」から

・・・人事管理の問題の一つは働きぶりをどう評価するかだ。仕事には成果が見えやすいものと見えにくいものがある。もし労働者の仕事ぶりや労働サービスの成果が見えるなら、その仕事自体を外部に発注できる。例えば不動産登記や税務に関わる文書作成、広告や印刷物のデザイン、オフィスの清掃や警備は、労働者を直接雇用するより外部の業者に委託されることが多い。
成果の見える仕事ばかりならば、企業の存在理由を初めて考えたノーベル経済学賞受賞者のロナルド・コースの推論のように、究極的にはすべての仕事を個人事業主に外注することも可能だ。だが現実は異なる。主要7カ国(G7)諸国などでは、経営者や自営業者といった雇用されない働き方は就業者全体の1割程度にすぎない(図1参照)。

労働者が雇用されるのは外部に簡単には発注できない仕事があるからだ。とりわけ成果が見えにくいものは、契約で約束できず外部に発注しにくい。そのため労働者を直接雇用して、成果の見えにくい作業をさせることになる。成果が見えにくい仕事は、短期的にインセンティブ(誘因)を与えるのも簡単ではない。
いくつか例を挙げよう。将来に向けて必要な投資や人材育成は、効果が見えるまで時間がかかる。製品の生産量やサービスの提供時間といった数量は見えやすいが、製品・サービスの品質や顧客満足度は見えにくい。重要なノウハウや企業機密を守っているかどうかも知りようがない。漏洩が露見して初めて事態がわかるものであり、そもそも漏洩してからでは遅い。
人材育成、顧客満足度の向上、機密保持などは企業経営にとって重要であり、短期的には見えにくくても長期的には企業収益に反映される。長期的に雇用されて働くならば、企業の収益が減れば自分の報酬が下がり、雇用が失われることもあるから、そうならないようにするだろう。一方、雇用期間が短期であれば、あとは野となれ山となれと考えても不思議ではない・・・
この項続く。

働き方改革は社員のやりがいから

9月8日の朝日新聞オピニオン欄、真山仁さんの「働き方改革」から。

・・・働き方改革とは、社員が仕事が楽しい、自分が社会の役に立っていると実感することではないか。
今まで私自身が抱いていた思いだが取材を重ねてさらに強く感じた。
そして、働きがいというものは、制度や環境では続かない。自分が積極的に働きたいと思えるモチベーションが必要なのだ。
その源泉が企業哲学だ。誰もが社内で自由に発言し、それを共有化するという一体感が、働き方を進化させる。
改革というと、一度断行すれば、それで事足りるという勘違いが日本にはある。中でも、政府にはその志向が強い気がする。
だが、改革には終わりがない。最近の流行語で言うならば、持続可能性がなければ、それは改革と呼ばない。社員と企業が共に成長し、結果を出すからこそ働きがいは生まれるのだから・・・