「明るい課長講座」カテゴリーアーカイブ

生き様-明るい課長講座

ドイツの社会的能力

先日紹介した、高松平蔵著「ドイツの学校にはなぜ『部活』がないのか」に、「社会的能力」の説明があります(156ページ)。
子ども向けスポーツの広告に、運動能力と並んで、社会的能力が促進されることが書かれています。では、社会的能力とは何か。商工会議所が掲げる説明が紹介されています。

1 自己認識と外部認識
自分で自分のことをどう捉えているか。他人は自分をどう見ているかを認識する能力
2 コミュニケーションスキル
まざまな人と関係をつくっていく能力です。
3 異なる視点から見る能力と共感する能力
これも、他者と仕事をしていくために、相手を理解するために必要な能力です。
4 摩擦、批判の能力
仕事がうまく行かないとき、批判されることも批判することもあります。その摩擦、ストレスに耐える能力です。
5 チームワーク
上に述べた1~4の能力は、これに収斂されます。

著者は、日本企業がしばしば求める「体育会系」との違いを指摘します。特に4は、先輩の指示を聞くだけの人物ではダメだということです。
なぜ、商工会議所の解説が取り上げられているか。ドイツでは、日本と異なり、教育と職業がかなり密接です。そして、どの会社に属するかでなく、どのような職業かが重要です。大学に進学しない場合は、職業学校への就学が義務づけられています。職業教育を終えると、試験が行われ、商工会議所が職業資格を発行します。職業人に求められる資格が、定義づけられているのです。

新年度、期待と不安

4月になって、新年度が始まりました。
職場の異動があった人、新しく社会人になった人は、大きな夢と少々の不安とで仕事を始めているでしょう。異動がなかった人も、上司との期首面談や、今年度に処理する仕事の計画を立てて、決意を新たにしていることでしょう。その意識を忘れず、頑張ってください。
週、月、年度という区切りは、仕事を進める上で重要です。区切りがないと、仕事の計画は立ちません。区切りがないと、毎日がのんべんだらりと進んでしまいます。終わったときに、「何をしたんだっけ」と反省することになります。

新入生、職場を異動した人、今年は成果を上げようと思っている人に、参考書を紹介します。拙著「明るい公務員講座」の3冊です。新入生には「明るい公務員講座」、中堅職員には「明るい公務員講座 仕事の達人編」、管理職または管理職を目指している人には「明るい公務員講座 管理職のオキテ」です。
多くの人が悩むことについて、わかりやすく解説しました。高尚なことは書いてありません。普通の職員が悩み、普通にやればできることです。読んでみて、なるほどと思ったらあなたも実践してください。知っていることばかりなら、安心してください。

仕事を、山登りに例えてみましょう。初めて山に登るときに迷わない方法は、地図を見ることと、経験者に案内してもらうことです。この3冊は、その地図になります。経験者については、先輩を見つけて相談しましょう。
悩んでいる同僚や後輩、応援したい職員がいたら、あなたの持っている本を貸してあげるか、教えてあげてください(拙著の宣伝です)。

短い演説の準備

3月18日の読売新聞1面コラム「編集手帳」に、次のような話が載っていました。

・・・雄弁家として名を残す第1次大戦時の米大統領、ウッドロー・ウィルソンにジョークめいた逸話がある。
ある人が10分の演説にどれだけの準備が必要かと尋ねた。大統領は「2週間だね」と答えた。次に1時間の演説ならどうか聞くと、「1週間だな」と答えた。では2時間の演説は? この質問に大統領は笑いながら答えた。「2時間も話していいなら、今すぐ始めてもいいよ」・・・

100%の稼働率は効率的ではない

2月28日の読売新聞、西成活裕・東大教授の「ウィズコロナのあり方 3密解消も急がば回れ」から。

・・・渋滞は時間の無駄です。渋滞学を分野横断的に展開する中で、工場などの生産現場の無駄の排除にも関わるようになりました。
実地のヒアリングによれば、工場の稼働率は30%程度の余裕を持たせた方が効率的です。誤解を受けがちですが、100%の稼働率が最も効率的というわけではないのです。フル稼働だと機械のメンテナンスの時間が取れないし、試作品も作れません。
バケツリレーを模した数理モデルによる解析でも、水の量をバケツの7割とした場合が最も効率的に運べました。

会社などの組織や社会も同じです。その時の環境に完璧に適応し無駄がないと、環境が変化した時に不安定になってしまいます。環境が変わってもそこそこ対応できるようにしておく方が、長い目で見てトータルのコストが少ない可能性が大きいのです。
コロナ禍でも病床不足などの問題が生じました。「見える無駄」を徹底的に排除し、効率を上げようという短期的視点だけを重視すると、有事に対応できません・・・

・・・渋滞学でも、車間距離40メートルを保てるかが渋滞が生じるボーダーラインとなっています。車間距離がそれ以上短くなるとスピードが落ち、後ろの車に増幅して伝わります。その結果、十数台後ろの車を止めてしまうほどの渋滞を引き起こすのです。
つまり、急いでいるからと車間を詰めるほど、時間当たりの交通量は低下します。利他心を発揮し、全ての運転手が車間距離を無駄と思わずに保つ方が結局、目的地に早く着きます。「急がば回れ」というわけです・・・

スポーツ選手の緊張への対処方法

2月25日の朝日新聞スポーツ欄、スポーツ心理学者の荒木香織さんと、バレーボール日本代表主将の柳田将洋さんとの対談「柳田将洋の不安、五郎丸のルーティーン発案者が導く答え」から。

〈柳田は2017年に欧州に挑戦した。荒木さんの指導を受けたのは渡欧直前だった〉
柳田 当時は2年目で、いろいろチャレンジしようという時。不安や悩みがいっぱいあった・・・
柳田 「しんどかったら、普通に帰ってきたらいいやん」と言われた。「そうか。自分のやりたいこと、やればいいんじゃん」と腑に落ちた。自分がやりたいようにやって、楽しんでいったら一番プラスと、海外に行けた。楽しいと思えたのは、きつかったら帰ればいい、とりあえず今年やってみるかぐらいの感覚でできたから。3シーズン、ガッツリできた。得るものも大きかった。
荒木 人は、先が明確でない状態が一番不安にはなる。行ってダメだったら、通用しなかったらどうしようと。心理学的には、不明瞭なことをどれだけ取り除いていくか。
「頑張れ、頑張れ」と言っても、不安を増すだけ。心理的に帰る場所があると思っていたら、そんなに不安にはならない。別に無理して海外でプレーしなくても、日本でもいろんなチャンスはある。励ましの意味も込めて、「ダメだったら帰ってくるのもいいんだし、問題ないと思うよ」という声かけをした。
柳田 「自分の好きなようにしたらいいや」と、今の環境をどう楽しむかにフォーカスを当てられるようになった。大事なのは自分が何をするか、どういうマインドで試合に臨むか。その癖や習慣がついた。

〈五輪のプレッシャーや不安に対処できず、パフォーマンスが悪くなることがある。「オリンピックの魔物」にどう立ち向かえばいいのか〉
荒木 対処法の一つに変わりない。ダメっぽい顔を伝えておく。「これ、今やばい時」というサインを作って、伝えておくのは一つ。パニックになって、サインも分からなくて、「ヤバイです」と言われたら、声かけに行く。
五郎丸選手も、W杯の最初のゲームの前、国歌斉唱の後は、気持ちが高ぶりすぎているはずだから、「みんな俺に声をかけてくれ、体を当ててくれ」とお願いしていた。実際、号泣してしまって。自分が予想していた通りになったから、みんなが声をかけ、体を当てに行って。それでも、落ち着ききれなくて、最初のプレーでタックルされるのにも気付かず、体当たりした。すごくいい突進で。そこからやっぱり、あの試合は変わった。本人も「お!」と目が覚めた。
いくら想定していても、対処しきれないことも出てくるかもしれない。それが「オリンピックの魔物」といわれるところ。みんなで協力して、越えられないことは絶対ない。みんなでいつも通りにコミュニケーションを取って。ただ、準備を怠るとダメ。たぶんこんな感じだからできるかな、ではたぶんいけない。あらゆるシナリオを持って準備しておく。指導者が想像できないことも、選手はたくさん想像できる。シチュエーションを考えつつ、話し合っておく。練習の前後に時間をもらってやってみる。そういう工夫をする。

〈荒木さんは眠れないという選手には、不安を書き出してもらったという〉
荒木 前々から、困りそうなことを言ってしまうのはあり。なかったことにしない。あることにして対処する。お互いを頼ってやっていくのもあり。寝られない、食べられない、あんまり体が動かない。息が浅くなって、深呼吸しなさいと言われる人もいる。いろんな現象が起きます。すごいことになります。でもそんなものです・・・