「明るい課長講座」カテゴリーアーカイブ

生き様-明るい課長講座

チェシャー猫

チェシャー猫(チェシャ猫。Cheshire cat)って、ご存じですか。「不思議の国のアリス」に出てくる猫です。公爵夫人の家で、アリスが出会います。木の上などから、ニヤニヤしながら見下ろしています。
ウィキペディアでは、「歯を見せたニヤニヤ笑いを常に浮かべ、人の言葉を話し、自分の身体を自由に消したり出現させたりできる不思議な性質を具えた、劇中で最も異能の存在として描かれている」と紹介されています。

肝冷斎と、「職場に入った電子機器類(ワープロ、パソコン、電子メール、エクセルやパワーポイント)は、私たちの仕事を楽にしたか」を議論していて、この猫の話になりました。
オフィスオートメーションといった言葉がありましたが、全然そのようにはなりませんでした。私の結論は、「電子機器類は肉体作業を楽にしてくれたけど、頭脳作業は何も変わらない。そして、これらは時間泥棒である」「機械を使っているようで、機械に使われている」です。この一端は、「明るい公務員講座」でも述べました。

肝冷斎は、私たちが電子機器類を使っているようで、実は機器類に使われているのではないかという状態を、チェシャー猫で表現してくれました。
電脳空間には、影の支配者「チェシャー猫」がいます。この猫は見えたり見えなかったりしながら、みんなが快適で便利になるように見守ってくれている、と思っていたんですが。彼が支配しているのは、実は以前より厳しい関係を作り出す悪意ある空間かも知れないのです。どう使っていくか考えていかないと、便利どころか機械やソフトウエアに私たちが支配されるのです。
上の絵が良いチェシャー猫、下の絵が悪いチェシャー猫です。

 

 

 

社会問題、大きな物語と個別の物語

1月15日の朝日新聞オピニオン欄、山本太郎・長崎大熱帯医学研究所教授の「感染症と生きるには 新型コロナ」から。

4千人以上が国内でも亡くなっている現状をどうみますか。
「二つの物語が進んでいます。一つはウイルスとの共生、社会経済との両立、集団免疫の獲得という大きな物語。もう一つは個別の物語。たとえば『祖母が感染して亡くなった』というものです。社会全体からみれば10万人に1人の死でも、家族にとれば大切な一人。医師としては、個別の物語に寄り添いたいとの思いをもちつつ、大きな物語を意識せざるをえない。中長期的に、あるいは公衆衛生学上、ウイルスとの共生が望ましいとしても、そのために命が失われてかまわないということではありません。個別の物語に寄り添い、葛藤を乗り越え進んでいかなくてはならないと思うのです」

そうなんです。私も被災者支援をしたときに、個別の方の事情を聞いて支えたいと思いつつ、私の仕事は個別の被災者相手ではなく47万人が相手だと、自分に言い聞かせました。

西井・味の素社長。方向性を示す

西井・味の素社長。労働時間が増えて売り上げが伸びない」の続きです。

――社長就任後、最もリーダーシップを発揮したのは。
「16年に導入した、完全ジョブ型の人事制度です。人事部長時代にも人事制度改革に挑戦したのですが、経営会議のメンバーに多数決で負けて中途半端な方式になってしまいました。でも、徹底的にダイバーシティーをやるならジョブ型しかない、と信念を持っていました。なので、社長就任から一年もたたずに完全ジョブ型に変更したのです」
「ジョブ型には良い面と悪い面があります。会社組織には、頑張ってようやくそのポストに就いた人や、レールを上がってきた人もいます。でも、ジョブを優先すると人材が若返り、実力主義になります。年功序列じゃないと困るのは上司なんです」
「自分がそうされてきたし、後ろについてきている人もいて、もはや部門の利益の代表になってしまっているからです。企業の古い価値観を変えるには、ジョブ型が絶対に必要だと思います」

――ブラジルでは多様性に戸惑いませんでしたか。
「全くありませんでした。ブラジル味の素は16年に創業60周年でしたが、60年間ずっと日本人が社長を務めていました。でも、全従業員の前でブラジル味の素の経営方針と『3年後にこう向かうぞ』というビジョンを話したのは、私だけだったと聞いています。長い時間をかけてプランを作って、1時間半話しました。会社の向かっていく方向性を示して、権限を委譲して、自分で模範を示す。やはり自分で汗をかかないといけません」

西井・味の素社長。労働時間が増えて売り上げが伸びない

1月14日の日経新聞夕刊、私のリーダー論。西井孝明・味の素社長「大企業病 若返りで打破」から。
・・・味の素の西井孝明社長は働き方改革を推し進める。管理職へジョブ型雇用制度を導入したほか、労働時間の短縮にも取り組んできた。西井社長は「味の素には典型的な大企業病の兆しがあった」と分析、「生産性を改善するにはD&I(ダイバーシティー&インクルージョン)が重要だ」と自己変革がカギと指摘する。味の素の生き残りと成長のため、組織の若返りが不可欠だと説く・・・

「ブラジル子会社の社長から戻って、味の素の社長に就いたのですが、とても危機感を持ちました。日本の味の素に、典型的な大企業病の兆しが見えていたからです。具体的には2つです。1つは味の素単体の生産性が低い点です。売り上げは伸びないのに、費用などはどんどん膨らんでいました」
「最大の要因は長時間労働です。2013年まで味の素で人事部長として、労使でワークライフプロジェクトを進めていました。当時の総実労働時間は長かったのですが、それでも、職場によって長いところと短いところでバラつきがありました」

「ところが15年にブラジルから戻って調べてもらったら、全職場おしなべて長いのです。平均で年間2100時間働いていました。はっきり言って、仕事の質が劣化していると感じました」
「もう1つは成長性が鈍っていました。本社の人材が均質化してしまって、しかも同じ方向を向いている。だから、生産性が低かったんです。一例を挙げると、過去15年以上、新卒採用の3~4割を女性が占めているのに女性の管理職は6%にとどまっていました」

「日本企業がなかなかD&Iがうまくいかないのは、企業が男性中心の組織だからです。日本が成長しない中で、女性にポストを充てようとすると、そのポストをあけないといけません。そこには主にシニアの男性社員が就いているわけです。だから、シニア期のキャリアにしっかり向き合う必要があります」
――反発はなかったのですか。
「ダイバーシティーに理解を示さない人を説得するために、先ほどのデータを用意したんです。多様な組織の方がリーダーは大変です。なぜこの仕事をしないといけないのか、目標と目的をしっかりと語る必要があります。これはものすごい労力がかかります」
「もちろん、頭でわかっていても嫌だという人はいます。そういう方には退場してください、と言います。そう言えるのは上司だけですが、そこには対話が必要です。転身支援も上級役員が対象者に丁寧に面談を繰り返して納得してもらったと思っています」
この項続く