カテゴリー別アーカイブ: 明るい課長講座

生き様-明るい課長講座

雑談が生産性を高める

8月3日の日経新聞に「職場の雑談は「1回3分」 リアル出社の利点引き出す」が載っていました。職場での「心理的安全性」が注目を浴びていますが、簡単にいうと、思いついたことを同僚に話せること、雑談ができることです。

・・・オフィス回帰が進み、同僚らと雑談する機会が増えた。雑談には生産性を高める効果があるとされ、職場での会話を促進する様々なしかけも考案されている。一方、ウェブの対話では同様の効果は限定的なようだ。
職場での雑談は3分程度がちょうど良い――。サントリー食品インターナショナルは昨年、職場で雑談が生まれやすくなる条件を調査した。
同社が法人向けに展開している「社長のおごり自販機」を設置した120社が回答した・・・

・・・雑談が生まれるとの口コミで導入が広まった。背景にあるのは新型コロナウイルス禍。コクヨのコンサルティング部門であるワークスタイルイノベーション部の伊藤毅さんは「コロナ禍を経てオフィスの位置づけが変わった」と指摘する。「リモート勤務ではタスクだけで仕事が終わってしまいがち。出社した時に会話が生まれるしかけをオフィス内に設定したいというニーズが強まっている」

コクヨは22〜23年、オフィスの使われ方の実態を把握するため、自社の特定の部屋の社員数や空間の音量を測定した。
会議や議論を行う場所ほどにぎわいが大きく、机で作業する空間では静かだと想定していたが、実際は後者でも「わははは」と声を上げて笑うレベルのにぎわいが発生していた。こうした分析をオフィスレイアウトの提案に生かし、同社が設計するオフィスでは、会社の床面積に占める執務空間の面積が10年前の5割から6割以上に増えた。ソファを設置したラウンジスペースなどにより執務空間が拡大しているのが一因だ。

リモート勤務でもウェブで会話はできるが、心理的なつながりを生む効果は限定的だ。脳科学が専門の東北大学応用認知神経科学センター助教、榊浩平さんはオンライン会話中の脳血流を計測し、参加者同士の脳活動の同期の度合いが「ぼーっとしている時と同じ」だったことに驚いた。
通常、人が対面で会話をしている時には、ほほ笑みながらうなずくことなどで脳活動が同期し、心がつながっている感覚が得られるという。オンラインで脳活動が同期しないのは、お互いの目線がずれることなどによる。「チームビルディングを目的とした雑談は対面が良い」と話す・・・

・・・オフィス用品のプラスが22年に実施した「職場の居心地WEB調査」によれば、オフィスでの雑談が「必要」と答えたのは一般社員では83%、部長職以上では93%だった。部長職以上の方がより課題意識が強い。
気軽に話しかけられる相手として最も多かったのは一般社員も部長職以上も「同期または世代の近い同僚」だったが、部長職以上は52%が2番目に「部下」を挙げたのに対し、一般社員で「上司」と回答した人は26%。上司から話しかける雑談が気まずい沈黙や気疲れで終わらないためにも、こうした取り組みは役に立ちそうだ・・・

カスタマーハラスメントは経営の課題

7月24日の読売新聞に、小林祐児・パーソル総合研究所上席主任研究員の「カスハラ 喫緊の経営課題」が載っていました。

・・・顧客からのひどい暴言や不当な要求などを受ける「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が社会問題になっています。
パーソル総合研究所が2~3月に約2万人を対象に実施した調査では、顧客折衝があるサービス職のうち35・5%が過去にカスハラを受けた経験があると回答しました。3人に1人の割合で被害を受けており、カスハラは働き手の大きな負担になっています。
被害内容をみると、「暴言や脅迫的な発言」や「威嚇的・乱暴な態度」が多い結果となりました。法律上はグレーな行為が多く、刑事事件として扱うのは難しいのが特徴です。
カスハラで報じられることが多いのは消費者向けですが、法人向けの営業の現場でも「強引に飲食に誘われた」といった事例もあります。うちは消費者向けの企業ではないからカスハラは関係ない、ということではありません。

カスハラの加害者の属性をみると、男性かつ40歳代以上の中高年層が多くなりました。
男性の方が未婚率が高く、社会的に孤立する傾向があることが背景にあるとみられます。孤立化すると、周囲からの指摘がなくなり他人への共感が失われやすい。「自分が正しい」「自分たちの頃はこうではなかった」という考えがエスカレートしがちで、これが行き過ぎたクレームにつながっている可能性があります・・・

・・・従業員のフォローもカスハラ対応には重要です。
調査では「会社は嫌がらせの被害を認知していたが、何も対応はなかった」との回答が36・3%に上りました。
カスハラ被害を受けた後に会社や上司に相談しても「ひたすら我慢することを強要された」「軽んじられ、相手にされなかった」「一方的に自分自身に責任を転嫁された」といった回答が多く見られました。被害を報告・相談した時に起こる社内での「セカンド・ハラスメント」です。
カスハラ被害が発生した時に上司が出てきて引き取ってくれるといった対応があれば、会社に対する信頼感が醸成され、仮にカスハラが発生しても、すぐに離職につながることを回避できる可能性が高いのです。
災害と同じで、カスハラもいつ発生するかわかりません。従業員向けの研修や対応事例の共有などカスハラが起きる前の体制が重要になります・・・

よく眠ると成績、業績が上がる

7月25日の読売新聞夕刊に、柳沢正史・筑波大学教授の「眠り確保で日本は元気に」が載っていました。

柳沢  色んなデータにあるように、日本人って世界一睡眠不足で、私に言わせると、日本が元気がない原因は眠れてないから。これをなんとかしたい。それに尽きます。

――OECD(経済協力開発機構)が2018年に発表したデータによると、日本人の平均睡眠時間は7時間22分とされていますね。

柳沢  これは調査対象国の平均より1時間以上短い。調査結果を見てもわかるように、生産性が高く、リッチな国の人々はよく眠っている。

――1年に換算すると15日分も寝る時間が少ないけれど、それだけ日本人は勤勉に働いているといえませんか。柳沢先生と同世代の私の受験時代は、四当五落(4時間睡眠で勉強に励むと合格、5時間寝ると落ちる)という言葉がありました。

柳沢  科学知識が教えることは全く逆で、むしろ四落五当、いや、よく眠ったほうが記憶は整理され定着するので、七落八当といってもいい。最高のパフォーマンスを発揮するには十分な睡眠が必要。だから寝ると落ちるんじゃない。寝ないと落ちる。
まして、試験前の一夜漬けはとんでもない。徹夜明けの脳は、酒酔いと同程度まで機能が低下する。24時間戦うなんてあり得ませんよ(笑)。睡眠不足になると肥満や認知症など様々な不具合も招きやすく、いいことはない。

――充分な睡眠を心がける大谷選手が、すぐれたパフォーマンスを発揮しているのは理にかなっているんですね。

柳沢  はい。スポーツもただ練習するだけでは技能向上は頭打ちになる。そこで一晩寝ると次のレベルにいける。
寝る間を惜しんで働く人は要注意ですよ。本人は頑張っているつもりでも、寝不足では効率が悪く、作業時間がかかり、ますます寝る時間が削られる。悪循環に陥ってしまいます。

――日本人はなぜ、睡眠を重視してこなかったのでしょうか。

柳沢  頑張っていいモノを作ればもうかるという成功体験が親から子に伝わり、「寝るのを惜しんで頑張れ」「いつまで寝ているんだ」という価値観が生まれたように思う。でも、それは偽りの成功体験です、私に言わせると。
ここに面白いデータがあります。「NHK国民生活時間調査」によると、私の生まれた1960年の日本人は夜10時までに就寝する人が67%もいて、今より1時間多い、8時間13分寝ていた。
次第に遅寝になっていきますが、それでも高度成長期の日本人はよく寝ていた。寝る時間を削って頑張ったから経済成長したというのは誤った認識で、よく寝ていたからこそ高度成長があったと思っていいぐらいですよ。

役職定年の課題

7月15日の朝日新聞「50代の壁「役職定年」廃止じわり 中高年のモチベーション低下・人材不足が問題に」から。
・・・50代以降、一定の年齢で管理職から自動的に外す「役職定年制」。肩書は外れ、給与が激減するため、中高年にとって働くモチベーションが下がる要因の一つとされました。ところが近年、役職定年を廃止する動きが相次いでいます。どんな背景があるのでしょうか・・・

・・・約1万6千人の従業員を抱える大和ハウスが役職定年を廃止したのは2022年4月。人事部長の河崎紀成(としなり)さん(49)によると、60歳以上の社員50人前後を元の管理職に戻したり、継続させたりした。給与カットもなくし、同じ役職なら60歳までと同じ水準で支払うようにした。
その結果、人件費は十数億円規模で膨張したという。それでも踏み切った理由は、技術者などの人手不足と、役職定年によるシニア社員の「モチベーションの低下」、それによって職場の雰囲気が悪くなり、戦力になる人材が流出したことなどだ。
「人材の流出が減り、現場のモチベーションは上がった」と河崎部長。ただ、技術職を中心に人がまだまだ足りないといい、65歳以上の技術職を中心に再雇用も積極的にすすめるという。
役職定年を廃止すれば、人事が硬直化し、ポストが若手に回らなくなると不満はないのか。
同社の部長級の平均年齢は55歳前後。役職定年の廃止は無条件にポストを約束するものではなく、人事は適宜おこなう方針だとする。「評価はシビアで、成果が出せなければ、役職定年前でも部長は交代となる」と話す社員もいる。

空調大手ダイキン工業(本社・大阪)も今年4月から役職定年を廃止した。
定年を60歳から65歳に引き上げ、これまで56歳としていた管理職の役職定年を廃止。59歳以下に適用していた資格等級、評価、賃金制度を、定年の65歳まで継続して運用する制度に変えた。
「これまで56歳以降になると、給与が減り、部長などの役職名も『参与』などに変わっていた」とダイキンの人事本部ダイバーシティー推進グループ長の今西亜裕美さん(49)は説明する。
同社社員は56歳以上の割合は20%強(23年度末時点)。「ベテランの力で仕事を支えていたので、年齢で区切るのはやめようとなった」という。60歳以降も能力や成果に応じて昇格や昇級も可能になった。

年齢による労務管理自体を見直す動きも。電機大手NEC(本社・東京)は21年4月、56歳に設定していた役職定年を廃止。約千人を管理職に復帰させた。さらにこの4月には、これまで管理職以上が対象だった「ジョブ型人材マネジメント」の対象を全社員に広げた。
ジョブ型人材マネジメントとは、年齢や経験年数ではなく、職務に対して専門知識をもつ人材などを管理職に配置し、担当職務によって報酬を決めるというシステムだ。

日本企業が役職定年制を採用するようになったのは1980年代後半ごろだ。年功序列型の人事で世代交代が滞り、役職に伴う人件費の増大などが問題視されていた。強制的に世代交代を進め、新陳代謝を図るための解決策として導入された。
パーソル総合研究所は22年、役職定年制の導入の有無などについて大手企業(32社)にヒアリング調査を行った。それによると、「制度あり」は31%、「(1~2年前に)新設」が13%、「制度を廃止」が16%、「廃止予定」が13%、「制度なし」が28%だった・・・

・・・大手企業32社の人事責任者らに、役職定年などのヒアリング調査をしたパーソル総合研究所の上席主任研究員、藤井薫さん(64)に現状を聞きました。
――企業が「廃止」「廃止予定」とした主な理由は?
役職定年となり、仕事に対するモチベーションが下がり、「働かない妖精さん」などと揶揄される50代を減らすことも理由の一つです。最近は管理職になりたがらない若手も多く、現場を仕切る「課長不足」に悩む企業が少なくありません。「バブル採用組」がもうすぐ大量定年となるので、管理職を中心に人材不足が深刻になるでしょう。

――役職定年が廃止されると人事が硬直化するリスクが生じるのでは?
組織の新陳代謝の障害になる恐れはあります。しかし、これからはゼネラリスト型の管理職より、スペシャリスト型の方が需要が高くなるのではないでしょうか。人事の硬直や専門性の陳腐化を防ぐため、役職定年のように年齢で区切るのでなく、若手も含めて2~3年の役職任期制度を設けるという手もあります・・・

退職した元職員の再雇用

6月24日の日経新聞夕刊に「退職者カムバック、自治体も 都庁「アルムナイ」募集開始 公務員離れに危機感」が載っていました。ところで、「アルムナイ」という言葉は日本語に置き換えられませんかね。やはり、英語に憧れているのでしょうか。「元職員」ですよね。例えば「元職員再採用」ではだめでしょうか。

・・・中途退職した元職員を再雇用する「アルムナイ採用」が自治体で増えている。長野県や静岡県が2023年度に導入し、東京都も24年度から始めた。売り手市場で公務員人気に陰りがみえるなか、中途退職者を即戦力として見直す動きが自治体にも広がってきた。
都は「都庁版アルムナイ採用制度」と銘打ち、4月から中途退職者の再採用を始めた。1年以上の勤務経験があれば応募できる。選考は筆記試験を免除し、書類選考と面接のみとした・・・

・・・アルムナイは卒業生や同窓生を意味する英語で、人事分野では中途退職者を指す。転職は裏切りとする風潮がかつては強かったが、最近は組織風土や業務に熟知した即戦力として評価する企業が増えている。
アルムナイ採用の導入は企業が先行しており、リクルートの再採用代行サービスの利用企業は1月時点で100社超と1年前の4.5倍になった。
生え抜きを重視する傾向が強かった自治体でも都のように導入例が出てきた。19年度以降、茨城県や神戸市、大阪府寝屋川市などが開始している。

いずれも育児や介護を理由にした退職者に限定せず、転職者を対象に含めている。選考は新卒採用や中途採用で課す筆記試験を免除し、小論文や面接のみとする例が多い。復職後の給与は退職前の職級に準じて決める。
これまでも中途退職者を再雇用する制度を設ける自治体はあったが、出産や育児、介護などで職場を離れた女性の復職支援という意味合いが強かった。育児休暇制度が充実したこともあり、制度の利用もごく少数にとどまっていたとみられる。
転職者に門戸を広げたことで、応募が増えた自治体もある。北海道は21年度に育児や介護などやむを得ない理由での退職者限定で再採用を始め、23年度から転職者を対象に含めた。技術職と専門職に限っていた募集職種を行政職に広げたこともあり、21~22年度に4人だった応募者は23年度に17人まで増えた。
自治体でアルムナイ採用の導入が相次ぐ背景には、地方公務員のなり手不足への危機感がある。安定した就職先として人気の高い公務員も、求職者優位の「売り手市場」で採用に苦戦している・・・