カテゴリー別アーカイブ: 明るい課長講座

生き様-明るい課長講座

人事評価の公平性と透明性

5月22日の日経新聞女性欄「昇進 周囲が納得の評価に 女性が活躍する会社資生堂1位」から。

・・・厚生労働省の21年度調査によると、企業における課長以上の女性管理職比率は12.3%。資生堂の37.6%(23年1月時点)は平均値を大幅に上回る。管理職となる女性本人の意識付けに加えて、同じ職場で働く周囲の社員への納得感を高める働きかけがカギのようだ。

23年1月、資生堂では30歳の女性管理職が誕生した。男性の管理職が多い部署での若手女性の抜てき。周りの社員はどう見るのか。上司にあたるストラテジープランニング室の大島洋視室長は「彼女の能力や成果が正当に評価された結果だ」と話す。
女性活躍は、女性だけの問題ではない。女性管理職を増やす際には同じ職場で働く社員たちの納得感が伴わなければ「数合わせ」「お飾り」などの評判が立ち、社員の士気も下がりかねない。

社員の納得感をつくるために肝となるのは人事評価の公平性と透明性だ。資生堂は16年から年に数回の「カリブレーション(基準合わせ)会議」を実施する。部内の管理職が15人ほど集まり、部下の評価と育成計画をすり合わせる。部下1人につき5分ほどの時間をかけて複数人で話し合うことで、個人の感情や人間関係といった属人的な要素が評価に入り込む余地を与えない。会議後には部下に直接フィードバックもする。
さらに、周囲の社員が肌感覚でも昇進に納得感を持てる仕組みも取り入れる。管理職候補には管理職試験と並行して、昇進後の業務負荷がかかる仕事を一定期間任せる。部署横断型のプロジェクトリーダーを務めるなど、難易度の高い仕事をこなす姿を周囲の社員にも見せる・・・

多くの組織で、管理職は部下を評価する訓練を受けていません。評価基準はあるのですが、具体に当てはめるとなると、難しいです。そして、ある人を、その上司一人で評価することが多いです。資生堂の複数人で議論すること、それを部下に直接伝えることは、よい方法です。

職場の害虫とカビ

原発再稼働、組織風土を問題視」の続きにもなります。
職場の困りごとを議論していたときに、「害虫とカビ」という表現を教えてもらいました。指導者論や管理職の教科書には、部下を優秀に育てることは書かれているのですが、困った職員をどう扱うかについては記述が少ないです。でも、多くの上司は、それに困っています。研修でもあまり教えてもらえません。

で、「害虫とカビ」についてです。「2:6:2」の法則(仕事のできる職員、普通の職員、困った職員)は、『明るい公務員講座 管理職のオキテ』にも書きました。その困る職員と、困った職場についてです。
その中でも職場に悪影響を与える職員は、いわば害虫です。少々どぎつい表現ですが。害を与えないように指導する必要があり、場合によっては、「取り除く」必要があります。懲戒処分の対象です。

それに対し、特定の職員が悪いのではなく、職場の習慣が好ましくない場合があります。規律が緩んでいたり、規律違反が伝統になっているような職場です。職務怠慢、パワハラ・セクハラ、性能偽装、風通しのよくない関係・・・のような社風です。それを「職場にカビが生えている」と表現するのです。
「風通しがよい職場」とは、良く言ったものです。風通しのよい職場には、カビは生えません。
もっとよい表現があれば、教えてください。

在宅勤務の長所短所

5月18日の朝日新聞オピニオン欄「在宅勤務、これからは」から。
鬼頭久美子さん(サイボウズ チームワーク総研コンサルタント)の「孤立感なくす多様な場を」
・・・サイボウズは10年以上前からテレワークを採り入れています。3年間のコロナ期間を経て、現在の出社率は15%程度になっています・・・
・・・職場の一体感を得る点では、やはりオンラインはリアルに勝てないなと感じています。オフィスという同じ空間にいると、「忙しそう」「ゆったりしてる」とか、共感してくれているのを感じるとか、同僚の様子や気持ちが伝わってくることがある。仕事を進める上で、相手の状況を理解しながら接することはとても大切です。
コロナ禍で在宅勤務が続く中、社内では業務直結のやりとりしかないことで、「寂しい」「承認されている感覚がない」といった声が聞かれました。これでは仕事のやる気にも悪影響が出かねません。
一方で、仕事上の議論をある程度深めたり、アイデアを出したりすることは、オンラインでも十分にできると感じています。私は企業向けにテレワークのお手伝いをする業務を担当していますが、テレワークの利点は、働く場所を柔軟に選べること。通勤や打ち合わせ場所への移動に時間を取られず、効率的です・・・

落合恵美子さん(京都産業大学客員教授)の「柔軟性が幸福度を変える」
・・・「ステイホーム」が呼びかけられ、学校も一斉休校となった2020年4月、「自分もしくは同居家族が新型コロナの影響により在宅勤務を経験した人」を対象に緊急のウェブ調査を行いました。
当時、学齢期の子がいる知人女性はみんな仕事と家事育児の両立に悲鳴を上げていたのに、政治家もメディアもそれがあまり見えていないようでした。公的な言論の場で、この状況が語られていないのはたいへんな見落としではないかと考えたのです。
在宅勤務で家事と育児の負担が増えた、とより多く調査に答えたのは、やはり子どもを持つ女性でした。「子どものいる女性」の36%が家事育児に「困った」と回答したのに対し、「子どものいる男性」では15%に過ぎなかった。自由回答によると、多くの女性が睡眠を削って仕事をこなしていました。
共働き家庭では、同じ在宅勤務なのに夫の仕事が優先されていた。仕事の邪魔なので外出してと妻子に頼んだ、という男性すらいました。日本の住宅事情も影響しているのでしょうが、海外でも在宅勤務は妻の負担を高めたという調査結果が出ています。

女性は不安定な雇用形態であることが多い上に、家族の感染でケアをする役割も回ってくる。コロナで一番割を食ったのは、在宅勤務ができない上に有給休暇も取れずに収入が途絶え、なかなか復帰もできなかった非正規雇用の女性たちでしょう・・・

原発再稼働、組織風土を問題視

5月18日の読売新聞に「柏崎刈羽「是正不十分」禁止解除せず 組織風土を問題視 規制委」が載っていました。

・・・テロ対策の不備で東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)に出している事実上の運転禁止命令について、原子力規制委員会は17日、解除を見送ることを決めた。荒天時の監視体制などで是正が不十分と判断したためで、早期の再稼働は困難な見通しとなった・・・
・・・侵入検知設備については大雪などの自然条件に対応した設備への切り替えで、誤作動は減りつつある。規制委が重視するのは、組織や人に関わるソフト面の課題だ。同原発特有ともいえる「組織風土」が背景にあるとみる。
同原発では、東電社員である運転員の判断が最優先される「運転員ファースト」という雰囲気があった。協力会社の助言を積極的に取り入れず、東電社員が警備員に高圧的な態度をとることもあった。
規制委は、こうした組織風土の改善が不可欠と判断。東電への検査では、関係者からの聞き取りなどに加え、「行動観察」という手法を取り入れた。規制委事務局の原子力規制庁の複数の職員が同原発を訪れ、協力会社を含めて自由な議論が行われているかなどを4段階で評価した。
延べ約1500時間に上る行動観察では、社員の意識改革は進みつつあるとの評価もあったが、テロ対策の会議で代理出席者が多い場合の議論が低調だった点などを問題視した。同庁の担当者は「問題の芽が大きくなる前に摘むというソフト面の改善には時間がかかる」と話した・・・

ジョブ型が迫る管理職改革

平等社会の負の機能3」の続きにもなります。5月3日の日経新聞オピニオン欄、半沢二喜・論説委員の「ジョブ型が迫る管理職改革」から。

・・・「管理職はつらい」という声を以前にも増して聞くようになった。働き方改革などへの対応で仕事は増え、パワハラを恐れて若手との接し方も難しくなっているという。ストレスを抱え、悩む管理職は少なくない。
リクルートマネジメントソリューションズが2022年6月に実施した調査では、組織の課題として「ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」と答えた人が、管理職と人事担当者の双方で約6割にのぼった。背景には役割が曖昧な日本独特の管理職像がある。
産業能率大学総合研究所が21年に行った上場企業の部長・課長へのアンケートによると、9割超が営業などの実務をこなしながら労務管理も手がける「プレーイングマネジャー」だった。部下の育成が主体の欧米企業とは異なる。

「管理職に求められる能力は高度化しているが、実際は能力のない上司が増えている」。人事経済学が専門の早稲田大学の大湾秀雄教授は指摘する。「日本企業は給料よりも昇進を主なインセンティブにしてきたからだ」という。
平社員として活躍し貢献した人には管理職への昇進で報いる。プレーヤーと管理職では、必要な能力や役割が大きく異なるにもかかわらずだ。長期雇用を前提にしたこの仕組みは、かつては働き手のモチベーションを維持するうえで効果はあったが、必然的に多くのプレーイングマネジャーを生むことにもなった。

管理職の能力を見極め、負担を軽減するためにも、役割を再定義する必要がある。ジョブ型人事制度の導入はそのきっかけになる。職務ごとに必要なスキルを明確に定め、働き手にキャリアを自律的に考えてもらうのがジョブ型の狙いの一つだ。上司は今まで以上に部下の育成に力を注ぐ必要に迫られる。
「部下のキャリアの導き方やモチベーションの上げ方が分からない」「時間・権限・リソースが不足している」。ジョブ型人事を導入した日立製作所が管理職にアンケート調査したところ、こんな声が上位に並んだ。「自分たちはそういう育て方をされておらず、かなり悩みはある。管理職への支援が重要になる」と田中憲一執行役常務は話す・・・

日本の平等志向は、管理職教育をしてきませんでした。