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松元崇さん、若者の働き方支える視点を

2019年11月3日   岡本全勝

11月1日の日経新聞経済教室は、松元崇・元内閣府事務次官の「全世代型社会保障改革に向けて 若者の働き方支える視点を」でした。
ポイントは、次のようです。
・スウェーデンは高成長で政府規模を縮小
・有意な転職支える流動的な労働市場カギ
・国が成長しなければ国民の所得増えない

・・・スウェーデンについては1995年から2015年にかけての20年間の動きが矢印で示されており、この間に政府規模が英国やドイツよりも小さくなったことが分かる。スウェーデンはかつて大きな政府で有名だったが、高い経済成長率により状況が変化したのだ。
ビル・エモット氏の著書「『西洋』の終わり」によると、スウェーデンは高い経済成長率を持続することで、93年に国内総生産(GDP)比で72%もあった政府規模を07年には49.7%に引き下げた。GDP比で約22ポイントの引き下げは、GDPが550兆円の日本の感覚に当てはめれば、約120兆円にも相当する。

スウェーデンの高成長の背景にあるのが選択と集中だ。選択と集中の時代には、企業の栄枯盛衰や個人の転職が当たり前になった。そこでは転職に際して、学校などで新たな技術を学び直す、そうした個人をしっかりと支える仕組みを持つ国の経済が成長するようになった。個人のキャリアアップを支える流動的な労働市場を持つ国の成長率が高まるようになったわけだ。
かつて転職が珍しかった時代には、そうした仕組みは経済成長にほとんど役に立たなかったが、それが様変わりしているのだ。
図でスウェーデンと正反対の動きを示しているのが日本だ。その大きな要因は、個人のキャリアアップを支える労働市場がほとんどないことによる低成長だ。日本の経済成長率は先進国の平均を1%ほども下回っている。その分だけ図の潜在的国民負担率の分母が大きくならず、負担率が上がっていくことになる・・・

・・・日本でも個人のキャリアアップを支援する取り組みは始まっている。19年6月の「骨太の方針」では、就職氷河期に正規社員になれなかった人々の再チャレンジを支援する方針が打ち出され、7月には内閣官房に就職氷河期世代支援推進室が設置された。就職氷河期世代の正社員を30万人増やす目標が掲げられている。
18年4月の週刊ダイヤモンドによれば、就職氷河期に就職できなかった人々がそのまま老後を迎えると、生活保護に依存せざるを得なくなる。「生活保護予備軍」は約147万人にのぼり、生活保護費は約30兆円にも達すると試算されている。そうした人々が再チャレンジして就職し、生活保護予備軍から脱却すれば、当人も幸せだし、日本のGDPも相当押し上げられるはずだ。ちなみに再チャレンジは、第1次安倍内閣が06年に掲げた政策目標だ・・・

原文をお読みください。
松元さんの主張については、著書『日本経済 低成長からの脱却』をこのホームページで紹介しました。

秋の休日、美術展巡り

2019年11月2日   岡本全勝

連載原稿執筆が一息ついたので、また良い天気だったので、今日は上野公園に。既に、コートールド美術館展(都美術館)、ハプスブルク展(西洋美術館)、ゴッホ展(上野の森美術館)は見たので、東京国立博物館へ。

まず、「正倉院展」へ。40分待ちでしたが。1300年近く保存されてきた美術工芸品には、圧倒されます。
火や水に弱い木造倉庫で、これまた火や水に弱い紙や木でできた書や工芸品です。よくまあ、保存されたものです。昨日、首里城が全焼したばかりです。こちらは復元後約20年で燃えてしまいました。
世界でも、これだけのものがきれいにそのまま保存されたのは、例が少ないでしょう。アジアを見てもヨーロッパを見ても、戦乱などによって多くの宝物が失われています。引き続き残っているとしたら、キリスト教会にあるくらいですかね。

ヨーロッパの石造りのお城や教会でも、盗難などで貴重品は失われます。日本も、皇室や貴族、大名が持っていたものは、戦乱や火災に遭って、また家の衰退で失われたり散逸しています。
東大寺も大仏殿は焼け落ちているのに、正倉院は奇跡ですね。落雷で火災が発生し、消し止めたとは、初めて知りました。
正倉院の建物の一部が再現されています。その大きさに、改めて驚きます。これは良い展示企画です。

次に「住友財団修復展」へ。
木造の仏像は、補修をしないと、傷んできます。修復した仏像を見ると、平安時代や鎌倉時代のものが並んでいます。それも、京都や奈良ではなく、日本各地の寺に残っているのです。これまた、大したものですね。千年も700年も前のものです。
正倉院の御物は箱に入って倉庫の中でしたが、これらの仏さんたちは、千年の間、住民を見守り続けてこられたのです。「どうでしたか?」と、話を聞いてみたいです。

福島県のお寺の仏像も、並んでいました。東日本大震災で被害を受けたと書かれています。このような、文化財、あるいは伝来した宗教の文物を、財団が支援してくださっているのです。ありがたいことです。行政だけでは、手が行き届かないのです。
連載「公共を創る」で、行政(官、税金で)と企業(私、取引で)だけが、この社会をつくっているのではない。共助(助け合いで)も重要だと、書いているところです。

ところで、コートールド美術館の目玉であるマネの「フォリー=ベルジェールのバー」。
宣伝に『主人公の女性の謎めいた表情、鏡に映る人物の不思議、卓上のガラスの蠱惑的なきらめき…人々を魅了してやまない傑作中の傑作」とあるように、確かに引きつけるものがあります(リンクを張った頁の下の方に、解説があります)。
ところが、いくら見ても、テレビでの解説を聞いても、この売店が劇場のどの位置にあるのかが分からないのです。そもそも1階でしょうか2階でしょうか。
売り子さんの後ろの鏡に、二階席と思われる観客が写っています。また、空中ブランコをやっているらしき人の足も見えます。すると、売り子さんは通路でなく、観客席の中にいるのですよね。でも、劇場って、そんなつくりになっているのでしょうか。私の知っている劇場は、売店は観客席を出たところにあるのですが・・・。この項続く

連載「公共を創る」執筆状況、第2章1

2019年11月2日   岡本全勝

先週、提出した「第2章暮らしを支える社会の要素 1公私二元論から、官共業三元論へ」の原稿が、ゲラになりました。
編集長が5回に分割してくださって、連載では第24回(11月7日)から28回(12月19日)になります。これで、一息つくことができます。よく頑張りました。

第2章1では、公共を考えるために、公私の区分や共助(助け合い)を議論してます。
これにあわせて、肝冷斎が、「公共」の言葉の起こりを調べてくれました。
「史記」より「与天下公共」(10月29日の記事)
漢の文帝(在位前180~前157)に仕えた張釈之が、文帝に向かって反論します。

法者天子所与天下公共也。今法如此。而更重之、是法不信於民也。
=法なるものは天子の天下と公共するところなり。今、法はかくの如し。しかるにこれを更重せば、これ、法、民に信じられざらん。
=法というものは天子が、天下万民とともにしているものでございます。いま、法の規定がこうなのです。それなのにそれを変えて重い罰にすれば、法が人民に信用されなくなりましょう。

さすが博学な肝冷斎。勉強になりますね。

プロの仕事、みんなと一緒につくる

2019年11月1日   岡本全勝

10月28日の朝日新聞夕刊、凄腕しごとにんは、真島悟さんの「プロデュースした通販番組、1万5000本」でした。
・・・ケーブルテレビなどで見られる通販番組「ショップチャンネル」。24時間365日生放送の番組を取り仕切るセールスプロデューサー(SP)を務める。出演者が商品を紹介するスタジオから離れた副調整室から、商品紹介の切り口を臨機応変に変え、指示を出す仕事だ・・・

・・・前職は高級紳士服店の販売員だった。ある日、同僚の代わりに常連客に対応すると「会社に来てくれないか」と名刺を差し出された。当時のジュピターショップチャンネルの社長による一本釣りだった。
「なぜ買うのに迷っているのか」「どんな情報が欲しいのか」を常に想像するのは、前職で培った接客の経験が大きい。
それでも入社当初は苦労の連続だった。生放送中、多くの情報を伝え過ぎ、怒った出演者にインカムを外されたことがある。ベテランの出演者や制作スタッフにあれこれ口を出して煙たがられたこともあった。(インカムとは、ウィキペディアによると、移動しているスタッフへの一斉指令が必要な業務で使用される構内電話。ヘッドセット付きトランシーバーだそうです)

先輩の仕事ぶりを観察し、自宅でも過去の番組を研究した。職場や飲み会の席で積極的に話しかけるうち、徐々に本音を聞けるようになり、番組づくりに対する一人ひとりのこだわりを知った。「自分にできることは限られている。先輩の力を借りていい番組を一緒に作るにはどうしたらいいかと考えるようになって、肩の力が抜けた」・・・

連載「公共を創る」第23回

2019年11月1日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第23回「哲学が変わったー成長から成熟へ 日本型行政の日本社会の曲がり角」が、発行されました。

前回、経済の停滞と社会の不安を取り上げ、平成時代は日本社会の曲がり角であったと主張しました。そしてそれは、行政にも当てはまります。
インフラ整備と公共サービス充実に成功した日本の行政は、社会の課題が変わっていたのに、以前のままの行政を延長しました。そこに、官僚に対する国民の信頼の低下があります。
先進国を目標に追いつけ追い抜けという仕事の仕方をしてきた日本の官僚は、目標に追いついたときに、新しい目標と新しい行政手法を自ら探すことを怠ったのです。昭和後期の、経済、社会、行政の輝かしい成功が、平成時代の方向転換を遅らせました。成功は失敗の元です。

今回は、注に、私が考えているさまざまな「思い」も、記述しました。指導者の理念と国民の情念、時代の風潮、保守と革新でなく作為と無作為、官僚の現状維持。少々長くなっていますが、ここもお読みください。
さて、これで第1章を終えます。次回からは第2章に入ります。