投稿者アーカイブ:岡本全勝

低賃金の日本

2022年7月9日   岡本全勝

6月28日の朝日新聞は「日本経済の現在値」で、「世界と比べ下落33位、ビッグマック価格」を伝えていました。
・・・英経済誌「エコノミスト」の調査によれば、今年1月時点の日本のビッグマックの価格は390円で、57カ国中33位。10年前の320円と比べて21%高くなったが、タイや中国はそれを上回り、各64%、58%(各国通貨建て)も上昇。2000年に5位だった日本の順位は下がる傾向にある。ビッグマックの価格は各国の物価や購買力を測る参考値にすぎないものの、日本の物価水準がどんどん下がっていることは間違いなさそうだ。
なぜ、世界との違いが出たのか。1990年代初頭にバブルが崩壊した後、日本の経済が「日本病」と呼ばれるほどの長期停滞に陥ったためだ。消費の低迷で企業が商品やサービスの価格を上げられず、働き手の賃金も上がらないことで、さらに消費が停滞する悪循環に陥った・・・

記事には、国別の価格と、日本の2000年(当時は5位)からの順位が、図表になって載っています。「このような国にも抜かれたのか」と思います。しかし、これが事実です。

6月30日の日経新聞は、「韓国の最低賃金5%増 時給約1000円、日本の大都市並み」を伝えていました。
・・・韓国の2023年の最低賃金が22年比5.0%増の9620ウォン(約1010円、時給ベース)に決まった。伸び率は前年水準を維持し、10年前と比べて98%増となった。韓国の最低賃金は全国一律で、円換算では東京都(1041円)や大阪府(992円)など日本の大都市圏水準となる・・・

連載「公共を創る」第122回

2022年7月8日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第122回「行政と官僚ー信頼回復への道筋」が、発行されました。
行政への不信についての説明を続けます。
国民が行政に何を期待するかによって、行政への信頼そのものも変わります。官僚への国民の信頼の低下は、官僚機構が国民の期待に答えていないことともに、国民が官僚機構に「間違った期待」をしている面もあるようです。

すなわち、経済発展を進める時代には、官が民を指導することに効果がありました。しかし、成熟社会になった今では、官が民を指導することは効果的ではありません。国民が統治の客体という意識から主体であるということへの転換が必要であり、官僚主導から政治主導への転換です。
行政手法としては、例えば1990年代と2000年代に進められた、事前調整型から事後監視型への転換です。行政による民間活動への不透明な指導や事前調整をやめ、規制の規則を明確にして民間の自由な活動に委ねます。違反した場合や紛争が生じた場合は当事者の反論を可能にした上で、裁決や裁判など第三者を含めた公正な手続きの下で決着をつけます。行政の任務を、透明な手続きにのっとって規制の規則を定め、それへの違反を監視することに転換しようとしたものです。

例えば金融界では1990年代半ばから金融ビッグバンと呼ばれる自由化が進められました。ところが、金融機関は新しい仕組みへの移行に戸惑いました。時あたかもバブル経済の崩壊を受け、苦境に陥った金融機関がたくさんありましたが、もはや護送船団方式による救済は受けることができませんでした。長期信用を担っていた銀行をはじめ、幾つもの金融機関が倒産することになりました。

報道機関や政治家、国民による官僚たたきの中には、今なお官僚主導を期待し、それができないことへの不満があるようにも思えます。事前調整から事後監視へという改革が、行政の改革以上に国民の意識と行動の改革であることが、まだ十分に理解されていないように思えます。

今回の改革は、明治維新、戦後改革に並ぶ「第三の改革」「第三の開国」とも呼ばれます。日本が経済力で世界の先進国となったのですが、それがはじけて停滞したのが平成時代でした。30年かけても、まだ改革の道筋が立っていません。それは、前二回の改革が指導者たちが手本を輸入することで達成できたのに対し、今回の改革は国民の意識と行動を変えるものだからです。

官僚捜査案件の見送り

2022年7月8日   岡本全勝

6月25日の朝日新聞夕刊「惜別」、元編集委員・村山治さんによる、熊崎勝彦・元東京地検特捜部長の追悼記事から。

・・・ 1980年代から90年代にかけて東京地検特捜部に通算11年余り在籍した。副部長として金丸信・元自民党副総裁の脱税事件やゼネコン汚職事件を手がけ、特捜部長として旧大蔵省(現・財務省)の接待汚職事件を摘発した。事件の根っこには戦後日本を支えた護送船団システムの劣化があった。そこに切り込んだ特捜検察は、国民の支持を受け、輝いていた・・・

・・・「許せないことがある。10年たったら明らかにする」。熊さんが一度だけ、ぶぜんとした表情で私に語ったことがある。
大物大蔵キャリア官僚が捜査対象に上ったとき、法務・検察の幹部は「官僚システムが壊れる。立件すべきでない」と、現場に圧力をかけた。摘発は見送られ、熊さんはまもなく富山地検検事正に「栄転」した。
不祥事情報をちらつかせて捜査をつぶしたのか、と見当をつけたが、熊さんは何も語らず世を去った。「まあ、いいじゃないか」。梅雨空から熊さんの明るい声が聞こえた気がした・・・

フィリピン国会事務局研修講師

2022年7月7日   岡本全勝

今日7月7日は、フィリピン国会事務局職員研修で、政策研究大学院大学に行ってきました。
対象者は、上下両院の事務局職員たち45人です。コロナ禍で来日することができず、オンラインでの研修です。私は日本語でしゃべり、同時通訳を介します。講義骨子や投影資料は、事前に英語に翻訳してもらいました。
フィリピン政府の研修では、昨年に次官級の研修講師を務めました。「フィリピン政府次官研修の講師

今回も要望は、東日本大震災での対応についてです。フィリピンも自然災害多発地帯ですから、日本の経験には興味を持ってもらえるようです。前回の経験を基に、資料と話の内容を少々入れ替えて話しました。質問や感想がたくさん出たので、うまく伝わったということでしょう。

女性支援新法

2022年7月7日   岡本全勝

6月20日の朝日新聞オピニオン欄、大久保真紀・編集委員の「女性支援法、生かすには 暴力・貧困…困難に応じ丁寧な対応を」から

・・・この法律(「困難な問題を抱える女性支援法」女性支援新法)は、暴力や貧困など様々な困難を抱える女性に対する公的支援のあり方を定めるもので、本人の意思を尊重しながら最適な支援を目指す福祉の視点を打ち出した。女性支援の理念の大転換と言える。
これまでの公的支援である「婦人保護事業」の根拠法は、女性を取り締まりや管理・指導の対象とする売春防止法(売防法)だった。1956年に制定された売防法は「売春を行うおそれのある女子(要保護女子)」の補導処分と保護更生によって売春を防止することがそもそもの目的だ。勧誘罪で執行猶予となった女性を婦人補導院に収容することのほか、各都道府県に設置された婦人相談所の判断で、女性を一時保護所や婦人保護施設に入れて生活や自立を支えることを規定していた。

時代とともにニーズが多様化し、婦人保護事業の対象者が家庭関係の破綻や生活困窮などの問題を抱える女性に拡大した。2001年にはDV防止法が制定されてDV被害者が、また04年からは人身取引被害者、13年からはストーカー被害者も対象になった。

だが、DV被害者が増加すると、加害者からの追跡を阻止するために一時保護所や婦人保護施設の場所を秘匿する必要が生じ、ただ居場所が必要な一般の利用者の需要には必ずしも応えられない状況が生まれていた。
虐待や貧困で居場所がなく、街をさまよう若い女性たちが、やっとの思いで自治体の窓口や婦人相談所に支援団体とともに相談に行っても、公的支援にはなかなかつながらないのが実情だ。婦人保護施設の利用には、まず一時保護所に入ることが前提になっている上、一時保護所は携帯電話の持ち込みができず、外出もできない。ルールが多く監視されるような施設に入るなら、虐待があっても家や路上の方がましだとして、施設を敬遠する女性たちは少なくない。
その結果、婦人保護施設は利用されない施設となりつつあった。入所者数は年々減少し、19年度の充足率は21・7%だった・・・