投稿者アーカイブ:岡本全勝

コメントライナー寄稿第5回

2022年7月29日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナーへの寄稿、第5回「小さな政府論の罪」が配信されました。

政治家や報道機関は、「歳出削減、公務員数削減」「小さな政府」を主張します。国民もそれを支持します。予算と職員数の総量規制と「スクラップ・アンド・ビルド原則」の適用がその手法です。
しかし近年、政府の業務は増えています。感染症対策、デジタル化、子どもの貧困対策、地球温暖化対策… 。新しい課題が生まれ、新しい法律がつくられます。仕事は増えるのに、職員数は増えない。すると、残業を増やすか、非正規職員に委ねるか、目立たないところで手を抜くかしかありません。

企業ならもうからない業務はやめるのですが、行政は法律に基づき業務を行っているので、簡単には廃止できません。政治家と国民は総論において「小さい政府」を要求しますが、各論において「この法律を廃止し、業務をやめよ」とは主張しません。それは公務員に委ねられます。ところが、各法律と予算には必ず関係者がいて、廃止や縮小に反対します。

また、企業でも社員削減は必要ですが、企画部門や開発部門で削減を続けた先にあるのは、売り上げの低下でしょう。攻めの部門に人と予算を増やさない企業は衰退します。行政機構は、社会の課題に応えるための組織です。削減だけではだめで、新しい課題に人と予算をつけて取り組まなければなりません。

政治家や報道機関が主張すべきは、「必要な課題と業務に予算と職員を増やせ」でしょう。そして総量規制を続け、削減を主張するなら、具体的に「この業務を廃止縮小せよ」と示すことが必要です。

人への投資

2022年7月29日   岡本全勝

7月20日の読売新聞解説欄、倉貫浩一・編集委員「新しい資本主義 実行計画 人への投資 賃上げ促す」から。
・・・政府は6月に発表した新しい資本主義の実行計画で、成長と分配の好循環を生み出すため「人への投資」を強化する方針を決めた。企業に研修や教育の投資額や男女間の待遇格差などの情報開示を求め、人材を成長の原動力と位置付ける人的資本経営を浸透させる狙いがある。賃上げと経済成長につながる施策となるのか。課題を探った・・・

・・・政府は6月下旬に人的資本の開示についての指針案を発表した。「人材育成」「多様性」「コンプライアンス(法令順守)」などの項目を挙げ、研修時間や費用、新規雇用者数や従業員の離職率、定着率などの開示例を示した。金融庁の金融審議会も「人材育成方針」や「社内環境の整備方針」について、有価証券報告書の開示項目にするとし、女性管理職比率、男女間の賃金格差などを「企業価値を判断するのに必要な項目」と位置付けた・・・
・・・従来、企業は、教育や研修にかかるコストを「費用」と捉えてきたが、今後は、「投資」と位置付け、業績向上のため、新製品やサービスを生み出す優秀な人材を増やすことが重要になる。人的資本関連の情報は市場関係者の投資判断材料となるため、企業は情報開示と目標の達成を迫られることになる。
海外では欧州委員会(EC)や米証券取引委員会(SEC)などが企業に人的資本関連の情報開示を求める動きが先行している・・・

・・・また、目標を達成するため、能力や成果を重視して報酬や昇進を決める「ジョブ型」と言われる人事制度の導入も進めている。目指す役職や役割に必要な能力を明示し、足りない部分は従業員が社内研修制度で補ってキャリアアップを目指す。年功序列で給与水準が上がるのではなく、より自助努力が必要になる仕組みだ・・・
・・・人的資本経営を重視する企業は、経営の成果に結びつく人材育成戦略が求められることになる。ジョブ型の人事制度は、こうした目的に合致しているが、新卒の学生を一括採用して社内で経験を積ませて育成する従来型の人事制度との融合が課題だ。デジタル関連などの高い技術や知識を持つ従業員と、様々な職種をこなすゼネラリストとして働く従業員の待遇が二極化する可能性がある・・・

祝380万番

2022年7月28日   岡本全勝

今日午後に、カウンターが380万番を達成しました。かつてはキリ番を手に入れた人に、賞品を送っていました。380万番はキリ番ではないので賞品はありませんが、手に入れた方は画像を送ってくださるとうれしいです。

つまらないこのホームページにお付き合いいただいている皆さんに、感謝します。
読者からは、「最近は新聞記事の紹介が多いようです」「記事の紹介が数日経ってからで、遅いです」との注文もいただいています。すみません。切り取った記事を後でゆっくり読むことと、だいぶ先までホームページに載せる記事が貯まっているのです。
基本的には、1日に新聞記事紹介1本、思うことや出来事1本の2本立てにしています。毎日記事を書くことはしんどいので、かなり書きためて貯金してあります。370万番は1月6日でした。「過去の記録

安倍ガバナンス改革の功績、社外取締役が定着

2022年7月28日   岡本全勝

7月20日の日経新聞オピニオン欄、小平龍四郎・上級論説委員の「安倍ガバナンス改革の功績」から。

・・・凶弾に倒れた安倍晋三元首相は、日本の歴代政治リーダーのなかで、資本市場の評価が最も高かった人物のひとりと言えるだろう。
金融緩和で在任期間中に株価を上昇させたことや、米ニューヨーク証券取引所で「バイ・マイ・アベノミクス(アベノミクスは買いだ)」と斬新なメッセージを発したことだけが理由ではない。
安倍元首相は日本市場の歴史に残るブレークスルーを成し遂げた。企業統治(コーポレートガバナンス)改革だ・・・
・・・上場企業に社外取締役がいることは、今では常識だ。しかし、その歴史は案外短い。2012年に安倍元首相が再登場する前は、社外取締役がいる企業はごく一部で、大多数の取締役会は生え抜きの男性で占められていた。欧米の投資家が「日本企業にも社外取締役を普及させるべきだ」と主張し、財界が「日本的経営の強み」を根拠に頑としてはねつける。そんな光景が、やや大げさに言えばバブル崩壊後の約20年間、ずっとくり広げられてきた。

安倍元首相は具体的に何をしたのか。
まず、14年に年金基金や資産運用会社が株主としてなすべき規範を記す「スチュワードシップ・コード」を策定。これにより株主に企業との対話を促した。翌年には企業の責任を示す「コーポレートガバナンス・コード」をつくり、株主との対話に前向きに応じるよう求めた。この項目の一つに入ったのが「社外取締役の選任」だ。

改革はなぜ成功したのか。
第1に、ガバナンスを成長戦略として位置づけたことだ。それまで企業統治や社外取締役が議論されるのは、企業不祥事がきっかけになることが多かった。コンプライアンス(法令順守)としての統治論であり、不祥事を起こさない企業には無関係と見なされがちだった。
発想を切り替え、社外取締役の役割は経営者に成長投資を促すことと再定義したのが安倍改革だった。「攻めのガバナンス」という標語も、企業に取締役会改革を促すうえで有効だった。
不祥事防止から成長戦略へ――。15年6月、ICGNがロンドンで開いた20周年記念総会では、この「コペルニクス的転回」を参加者が口々に評価していた。

安倍流ガバナンス改革が成功した第2の理由は、法律ではなく規範(コード)に訴えた点だ。伝統的な統治論は、社外取締役の設置を会社法で義務づける点にこだわった。これだと社外取締役が手当てできない企業は法を犯すことになり、処罰されかねない。保守的な大企業が反対した大きな理由だ。
そこで安倍政権は金融庁や証券取引所がコードを策定し、「原則として内容に従うべきだが、できない場合は理由を説明してほしい」という方針を打ち出した。法的な罰則は科さず、一種の逃げの余地を残した。目的を達するために手段を柔軟に考える安倍カラーを、ここに見いだす向きもある。企業の抵抗はおおいに和らいだ・・・

・・・安倍政権は財政・金融政策に比べ、構造改革が物足りないとも批判された。そんななかで企業統治は数少ない改革の成功例だ。今後、世界の潮流のなかで再評価される可能性もある・・・

『信長が見た戦国京都』

2022年7月27日   岡本全勝

河内将芳著『信長が見た戦国京都』(2020年、法蔵館文庫)を紹介します。
私たちは、京都の街並みというと、平安京を基礎にして碁盤の目のような町ができあがり、建物は建て変わっても、今日まで続いているように思ってしまいます。平安京の西側・右京は早々と荒れてしまったとは聞きますが、あまり想像ができません。

この本は、織田信長が初めて上洛したとき(1559年)に、京の町はどのような姿になっていたかから始まります。平安京から、鎌倉時代、室町時代、そして応仁の乱以降、どのような変遷を経たかを描きます。
平安京が衰退したあと、応仁の乱などが京の町の縮小に輪をかけます。上京と下京の小さな町、現在の上京区と下京区よりはるかに小さな町が、自衛のための門や堀などを持ってできあがります。
度重なる焼き打ちなどにも遭いますが、復興します。それだけの財力と住民の組織があったのです。そして、それらに支えられた日蓮宗の大寺院が建ち並んでいました。建築だけを見ていては、なぜそのような町ができたのかは分かりません。政治、経済、地域、社会から見た中世の京都です。良く分析した良著です。

なぜ、信長は本能寺に泊まったか。武装集団を泊めるだけの宿泊施設はなく、信長は自分の居城を京都に持ちません。多くの武士は、上洛して民家を借り上げ(接収)したり、大きな施設であった寺を借ります。相手にとっては迷惑な話です。逆らえば、えらい目に遭います。金で解決するか、言うことを聞くかです。